学校の概要
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体験活動の概要
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本校では平成12年度に地域の窯元さんの協力を得て,校庭に登り窯が設置された。それをきっかけに児童が作品を作り,登り窯で素焼きをし,釉薬を塗り,本焼きをするという一連の活動を行うようになった。また,昨年度から陶業協会主催の窯祭りでの販売活動を始めたことにより,窯元さんや窯祭りに訪れた方々とさらに交流を深めることができた。今年度は5学年の総合的な学習に「大谷焼の窯元になろう」という単元を位置づけ取り組んできた。ねらいは以下の通りである。
時期 | 単位時間数 | 活動内容 | 各教科等との関連 |
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4月 | 2時間 | 学習計画を立てよう | |
5~6月 | 15時間 | 大谷焼を徹底解剖しよう 大谷焼の土の特徴,野焼き体験 窯元さんを訪ねよう,大谷焼の歴史調べ |
(理)種の発芽と土の関係 社団法人わたしたちの生活と工業生産 |
7~10月 | 20時間 | 大谷焼の職人さんに挑戦しよう 土づくり,成形,窯入れ,素焼き,窯出し,色つけ,本焼き |
(図)粘土を使って (人権)正しい職業観をもつ |
10月~12月 | 20時間 | 窯祭りに出店しよう 販売に向けての準備,パネルづくり 学んだことをまとめよう |
(国)調べたことを発表しよう 社団法人伝統産業 |
1月~3月 | 18時間 | 大谷焼のすばらしさを全国に発信しよう | 社団法人わたしたちの生活と情報 (特)学習発表会 |
1~4学年でも窯元さんを講師に招き,大谷焼の作品づくりに取り組むことで大谷焼が身近なものとなるようにしている。また,4学年の児童は,窯祭りに出店した5学年の店を見学したり,進級前に5学年の総合的な学習の発表を聞いたりすることによって学習に対する意識を高めている。
郷土の伝統文化としての大谷焼をさらに詳しく知るために,窯元さんを見学し,作業の様子や職人さんの思いを聞き取る調べ学習を行った。
5学年では窯元さんを講師として土づくりに取り組んだ。鮮やかな手つきで土が練り上げられているのを見て,児童も土練りに挑戦し,作品づくりへの意欲を深めた。作品は全校児童が作成し,登り窯で焼く活動は5学年児童が行った。8月に窯詰め作業と素焼き,9月に窯出し作業と釉薬による色つけ,10月には再度窯詰め作業を行い,本焼きに取り組んだ。児童は,素焼きで800ド,本焼きでは1,200ドの温度まで窯の温度を上げるための作業を見学したり手伝ったりしながら,職人さんの苦労を想像し,できあがりを心待ちにしていた。本焼き後の窯出しでは,一つ一つの作品の仕上がりに大きな歓声が上がった。
窯元さんに聞き取りをし,作品づくりを進めていく中で「窯祭りで作品を売ってみたい。その利益で窯の修理を行いたい。」という児童の声から始まったのが,昨年度の窯祭りでの販売活動である。その活動を引き継いで今年度も5学年児童が販売活動に取り組んだ。児童は毎年作っている自分の作品の他に,箸置きや置物などの小物づくりに取り組み,今年度は約280点の売り物を作成した。また,これまでの活動をわかりやすくパネルや新聞にまとめて,当日に来てくださったお客さんに説明できるように準備を進めた。
窯元さんを訪ね,大谷焼について調べる体験活動を通して,児童は地域の人とふれ合う楽しさを学んできた。その経験から,窯祭り当日に児童の店に足を運んでくださったお客さんとも交流したいという願いを込めて,販売作品には小さなメッセージカードをつけた。カードには作品の説明や思いを書き,本校の住所とカードを書いた児童の名前を添えた。
窯祭りは11月の第2土曜,日曜に行われている。当日は,たくさんの方が児童の店を訪れてくださった。説明に熱心に耳を傾け,「可愛らしい作品ができたね。」と声をかけてくださるお客さんに,児童は生き生きとした表情で応対していた。また,普段は消極的な児童が「私達の店に来てください」と大きな声で呼びかけたり,挨拶をしたりする様子も見られ,自分たちの店での販売体験を通して自己表現力を身に付けていることを実感することができた。そして,児童の作品は完売。昨年度来てくださった方が児童の作品を楽しみに今年も来店してくださったり,新聞記事を見て足を運んでくださったりした方も見られ,この活動が窯祭りの中で根付いていくことを感じることができた。
窯祭りが終わって数日すると,作品を買ってくださった方々からメッセージに対するお返事が届くようになった。中には「作品を使っているよ。」と写真を添えてくださった方もあり,児童は大喜びであった。自分たちの活動によって,大谷焼が各地に広まっていると実感することができた。
昨年度は大谷焼販売活動での利益を窯の修理に役立て,お世話になった窯元さんや手紙をくださった方にお礼状を出し学習は終了したが,今年度は大谷焼を全国に広げていこうという学習へと進めている。児童は体験を通して自らが学んだ大谷焼の素晴らしさを全国の方々に知ってほしいと目を輝かせている。
体験活動を通して,地域の方とつながる力や地域に誇りをもつ気持ちを持ち続けるよう指導をしている。本校では縦割り班でのボランティア活動やお年寄りとの交流を行っている。その場面で大谷焼を通しての体験活動で培った力を発揮できるよう機会を設けている。さらに,5学年での活動を生かし,6学年の総合的な学習の時間では,大谷焼による卒業制作を行ったり,地域の方々の協力を得てバザーを行ったりする活動に取り組むなど継続した指導を心がけている。
学校支援委員会は,大谷焼陶業協会の8名の窯元さんにより構成され,登り窯の維持・補修,作品製作時の指導,窯詰め・火入れ時の指導にご協力をいただいた。
本焼きでは,1,200ドの高温となる登り窯の近くでの作業をするため,事前点検や修理を丁寧に行い,児童の安全管理には十分に配慮した。
今年度の総合的な学習では,本校児童の課題である「主体的に学ぶ意志・能力・態度」を養うために,「自然と関わる」「人と関わる」「文化と関わる」という3つの大きな柱を設けて取り組んでいる。評価に関しては「気づく力」,「関わる力」,「表現する力」,「生かす力」の4つの観点と評価規準項目を設けている。5学年では,年間を通して大谷焼に関する体験活動を行っているため,小単元の場面で関わる対象を明らかにし,目的をもった活動ができるように努めた。そして,活動を振り返り評価したことを次の活動に生かしていくようにしている。
児童はこの体験学習を通して,地域への誇りと感謝の気持ちをもつことができるようになった。それは地域の方との交流から学び,自ら行事に参加するという体験があったからであろう。また,多くの人と関わることによって,表現力と「私達にもできる」という自信を身に付けた。児童の感想にも活動を通して得られた感動や自信が生き生きとした言葉で綴れられていた。充実した体験活動は,児童に自己表現する力を与えるものであるということを改めて実感した。
今後もさらに地域との交流を深め,地域に根ざした豊かな体験活動を行っていきたい。そして,これらの活動を通し,主体的に学ぶ意志と能力をもった児童の育成に努めたい。
初等中等教育局児童生徒課生徒指導室
-- 登録:平成21年以前 --