学校の概要
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体験活動の概要
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学年 | 活動のテーマと主な活動内容 |
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すこやか | <やってみよう なかよくなろう> 学校内外の人たちとの交流 |
1年 | <なかよくなろう> 自然に親しむ活動、遊びの広がり・人とのかかわり |
2年 | <萩間博士になろう> 萩間探検、四季を楽しむ活動 |
3年 | <萩間のじまんPR大作戦> 萩間の自慢調べ、萩間のお茶でお菓子作り |
4年 | <いろいろな人とふれ合おう> 福祉体験、施設訪問 |
5年 | <米作りを体験しよう> 稲作に関する活動や観察、食べて楽しむ、伝統文化 |
6年 | <日本の文化に親しもう> 外国のことを調べる、日本の食文化に親しむ |
1年:おもちゃランド |
2年:萩間探検 |
3年:お茶工場見学 |
4年:福祉体験 |
6年:塩作り |
<活動のねらい> 米づくりを通して、日本の農業に関心を持つと同時に、この体験活動を支えてくれる人たちとの交流を楽しんだり、伝統文化に親しんだりする。
※ 各体験活動を、社会科・家庭科・学級会活動及び道徳の時間と関連させて実施する。
「きゃあ、気持ち悪いよ。」裸足で田に入ることそれ自体が貴重な体験となっている子どもたちは、講師のおばあさんから苗の植え方を教わり、教師手作りの尺ロープに沿って整然と苗を植えていく。田植えの苦労も楽しみに変えてしまうほどの活発な活動だった。ところが、友達に渡そうと思って投げた苗が隣の田に入った。すると、そこで作業をしていたおばさんが、その苗を拾ってくださった。担任は「隣のおばさんは周りのことも考えて作業している。」と厳しい姿勢で伝え、自分たちの取組を反省させた。子どもたちは、心を込めて世話をしていくことを確認し合い、お詫びの手紙を書き上げた。失敗が貴重な学びの場となった出来事であった。
休み時間を利用して観察記録をつけることになった。休日に友達と連れ立って田の様子を見に来る子もいる。そうした中、N君が黄色い斑点のついた葉を見つけ、「葉イモチ病にかかっている。」と社会科の学習で調べた病気の写真を広げながら訴えた。「本当だ。」社会科で学習している稲の病気が、実際に自分たちの田で発生しているという事実への子どもたちの驚きは大きかった。学んで得た知識と体験がつながった瞬間だった。
子どもたちの観察の仕方が変わってきた。自分たちで決めた観点だけを観察していた児童の取組が、より具体的な追求に変化してきたのだ。稲が実をつけ始めたころ、その中身が白い液状だった。これを発見したM子は、「これがお米になるのかなあ。」と疑問を持ち、数日後、同じように調べてみた。すると、今度は個体の状態(米)になっていた。「やっぱりそうだ。」M子は、体験を通して納得していった。
「これが稲の穂だよ。」学校支援委員のOさんに生育状況を説明していただき、柔らかな穂を間近に見た子どもたちは、「これがこれからお米になるんだ。」と収穫への期待に胸を膨らませた。しかし、田から出た際に互いの足を見てびっくり。ズボンに虫がべったりと付着していたのだ。「イネアオムシ」、これは、稲の葉を食い荒らす害虫だったのである。よく見ると、もち米の稲の葉が虫食いだらけである。衝撃的なこの体験は、「無農薬で育てよう。」と決めていた子どもたちの心を大きく揺らした。
翌日の総合的な学習の時間は、「農薬をまいて、蛙も一緒に死んだら困る。」という発言がきっかけとなり、自分の思いを互いに出し合う話し合いとなった。「虫にも命があるけど、このままではお米がとれなくなりそうだから、農薬をまきたい。」「自分たちがせっかく育てた稲だから守りたい。」という発言が相次いだ。昨日の衝撃的な体験、稲の生長を見守る温かな心情から、「無農薬がいい。」と主張する子どもが一人もいなくなったのも理解できた。しかし、Oさんの「害虫という虫はいないよ。」という言葉が子どもたちの心に引っかかり、簡単に「農薬をまこう。」という結論にはならなかった。苦肉の策として「蛙を逃がしてから農薬をまこう。」という意見が出され、「蛙救出作戦」を実行することになった。農薬を使うことを自らの問題として受け止め、主体的に解決しようとする子どもたちの姿が見られた。その後、かかしや鳥おどしを使っての害鳥対策も実行し、稲に何事か起きたらすぐに学校に集まることを約束して、夏休みを迎えた。
意気揚々と田んぼに向かった子どもたちであったが、すぐに稲刈りに取りかかるということはなかった。刈った稲を束ねるための“すがい”を作る作業があった。藁を編んで作るのは簡単ではなかったが、自然のものを無駄なく利用するという知恵に感心していた。また、刈った稲を“はざ”に掛けるために、交差させて束ねることも教わった。初めて使う鎌に四苦八苦しながらも、稲刈りは無事に終わった。作業後の作文には、自分の父母が、かつてすがい作りを手伝ったことを聞いたり、今まで家の米作りに無関心であったことを反省したりした様子が書かれていた。
学芸的行事である萩間伝説劇場の演目を決定するにあたり、今年のテーマを“米作り”と決めた。地域に伝わる米に関するお話や行事を調べる活動を通して、収穫祈願のための“蛭ヶ谷の田遊び”という芸能に決定した。詳しいことを調べるために、学校にあったビデオを視聴することから活動を始めることになったが、昔の言葉や独特の言い回しは子どもたちだけで理解するには難しすぎた。そこで、実際に田遊びにかかわっている地域の方を講師に招き、田遊びの意味や成り立ちを話していただいた。さらに、地域の方に尋ねたり、実際に演じてみたりしながら、田遊びについての理解を深めていくことになった。田遊びの内容をできるだけ忠実に再現しつつ、見ている人にも分かりやすいアレンジを加えてシナリオ作りを進めた。その過程で子どもたちは、せりふだけでなく、行事そのものの意味まで理解するようになった。“蛭ヶ谷の田遊び”は自分たちの米づくりと深くかかわっていることに気付いていった。
萩間伝説劇場で上演した「萩小風蛭ヶ谷の田遊び」は、地域の方たちにも好評で、子どもたちの自信につながった。
おいしいご飯の炊き方を覚えたり、米のいろいろな食べ方を調べたりしながら、日本の食文化にふれ、親しむ活動を行った。玄米と白米の味の違いを感じたり、米が形を変えて私たちの生活を支えていることを実感したりできた。もち米を使ったおはぎ作りでは、地域の方たちに協力していただき、おいしく楽しんで食べることができた。蒸したもち米のねっとりとした感触や煎りたての大豆を石臼で挽いたきな粉の香ばしい香りなどを楽しみながらの活動となった。この活動を通して、今度は家族と一緒に作りたいという思いを強くした子どもも多かった。
最後は、餅つきで締めくくりをした。杵で餅をついたり手返しをしたり、自分たちの力でやり遂げ、ペアの3年生と一緒においしいお餅をほおばった。最近ではあまり見られなくなった伝統的な餅つきを体験して、大満足の活動となった。
様々な活動を通して、自分たちが多くの人たちに支えられていることを実感してきた。この気持ちを伝えるために、米づくりにかかわってくださった方たちに作ったお米を差し上げ、食べていただくことにした。手紙をそえたお米のプレゼントに、地域の方から感謝の言葉をたくさんいただいた。このことで、これまでの活動がより豊かなものに感じられた。自分たちが使った田んぼには、子どもたちの発想でレンゲソウの種をまいた。春にはきれいなレンゲの花が咲くであろう。
体験活動が子どもたち一人一人の学びを豊かにはぐくむものになってほしい。そこで、地域・保護者・学校の関係者が連携・協力する、学校支援委員会を組織した。地域からは、生涯学習ボランティアグループや、農協の青年・婦人部らの協力をいただいている。
年3回の委員会では、米の生育に関することやおはぎ作りへの協力等、専門的な立場から細かな助言をいただいた。とりわけ、「試行錯誤や失敗から『子どもが考えるという経験』が、豊かな体験になるという考えで指導に当たろう」との合意を得たことは大きな成果だった。また、支援活動を終えて、「今の時代ではできない大切な活動をしている。」「素直な気持ちで取り組んでいて、作物に対する子どもたちの愛情を感じた。」「登下校の子どもを見るのが楽しみになった。」などの感想をいただき、この活動に熱心かつ真摯に取り組んでいただいたことがうかがえた。
本校は、体験活動を総合的な学習の時間を中心とした授業で行い、評価の視点を、1課題を見つける力、2問題を解決する力、3表現する力、とした。
例えば、「病害虫が発生する時期になった。いずれ農薬を散布することになるだろうが、そこに至るまでの子どもたちの学びの過程、つまり、問題を解決していこうとする姿こそ大切にしたい。」というような教師の願い(目標)は、子どもたちの表れをつぶさに見取ること(評価)によって、問題を意識化させ解決の手だてを考えさせる、より適切な指導へと生かされていく。具体的には、2‐3「農薬をまくか?!」の実践に述べたとおりで、このような指導と評価の一体化の姿勢は、全教育活動で一貫して行っている。
初等中等教育局児童生徒課生徒指導室
-- 登録:平成21年以前 --