推進地域・推進校 【小学校・ビオトープに関わる体験活動】 自ら学び、生き生きと活動できる子どもの育成 福島県鮫川(さめがわ)村立鮫川(さめがわ)小学校

学校の概要

  1. 学校規模
    • 学級数:12学級(内特殊学級1学級)
    • 児童数:253人
    • 教職員数:19人
    • 活動の対象学年:全学年・253人
  2. 体験活動の観点などからみた学校環境
    • 本村は、福島県の南部に位置し、人口は4千5百余人である。主産業は農林業で、面積の約8割ほどが森林原野で自然豊かである。地形は丘陵原野型で起伏が多く、耕地は山麓の斜面と山あいにある。
    • 本校は、鮫川村のほぼ中心に位置し、役場、公民館、図書館などの公共施設、商店等が集中している地区にある。
    • 最近村では、休耕田を利用した豆の栽培、さらに小学校統合による廃校の有効活用する地域再生策を打ち出した。また各地区毎に子どもの教育を考える懇談会を開催するなど、地域ぐるみで地域活性化をめざす気運が高まりつつある。
  3. 連絡先
    • 〒963‐8401
      福島県東白川郡鮫川村大字赤坂中野字道少田86番地
    • 電話:0247‐49‐2005
    • FAX:0247‐49‐2017
    • 電子メール: samega-e@smile.ocn.ne.jp

体験活動の概要

  1. 活動のねらい
    • 各教科、総合的な学習の時間等との関連を図りながら、様々な体験活動を取り入れ、自ら学び、生き生きと活動できる児童を育成する。
    • 郷土の豊かな自然や風土、先人の築いた歴史や文化を学んだりするなど幅広い体験活動の展開をとおして、郷土を知り、見直し、愛する心を育て、さらには将来に夢を持ち自分たちの郷土を誇りに思う児童を育成する。
  2. 活動内容と教育課程上の位置付け
    (単位時間数)
    • 自然大好き(ビオトープ)
      (1、2年:創意活動10単位時間、3~6年:総合的な学習の時間10単位時間)
    • さめっ子タイム(課題追求活動)
      (1、2年:生活科10単位時間、3~6年:総合的な学習の時間10単位時間)
    • 農業体験・収穫祭
      (1、2年:生活科13単位時間、3~6年:総合的な学習の時間13単位時間)
    • ボランティア活動
      (1、2年:創意活動2単位時間、3~6年:総合的な学習の時間2単位時間)

1 活動に関する学校の全体計画

(1)活動のねらい

  1. 自分達の力で休耕田に池や川を作ることで、自然に興味・関心を持たせ、鮫川村の自然にも目を向け、郷土愛を育むことができるようにする。
  2. 身近な場所に水辺をつくることで、理科や生活科の授業、クラブ活動の教材など学校教育全体に生かすことができるようにする。
  3. ビオトープづくりの計画・作成・活動を通して、自主的な活動や体験の仕方、同学年・異学年間の協力の仕方、地域の方々との関わり方を身に付けることができるようにする。

(2)全体の指導計画

  豊かな体験活動には、さめっ子タイムや農業体験、ボランティア活動などいろいろあるが、ここでは、自然大好き(ビオトープ)に関する内容の計画について記す。

学年 単位時間数 活動内容 教科等との関連
全学年 2 学校周辺探検 1年 国語
生活
たんけんしたよ、みつけたよ
いきものだいすき
2年 生活 生き物とともだち
3年 理科 こん虫をしらべよう
4年 理科 あたたかくなると
6年 理科 地球と生き物のくらし
全学年 1 生き物誘致計画 児童が考えた設計図のイラスト 
全学年 1 設計図作成
下学年 4 建設地除草
上学年 4 ビオトープ建設
全学年 2 ビオトープ観察 4年 理科 暑くなると、すずしくなると、寒くなると
5年 国語
理科
地球環境について考えよう
流れる水のはたらき

2 活動の実際

(1)事前指導

  環境委員会の児童に、野生生物の生存する空間を示す「ビオトープ」という言葉を教えた。そして、トンボやホタル、メダカなどを身近な場所「学校」で観察している様子を想像させた。また、ビオトープ建設方法をVTRで見せてイメージさせた。そうすることで、児童主体でのビオトープ作成を図った。

(2)活動の展開

  ○ 毎週月曜日の児童会活動の際、環境委員会の児童が今後のビオトープの方向性について話し合い、全校生にアンケートを取ったり、各学年に活動内容などを提案したりしている。

日程 環境委員会の取り組み 全校生の取り組み
5月上旬 学校周辺探検を呼びかけた。 学校周辺を探検し、動植物の観察を行った。
5月下旬 どんな生き物を呼ぶかのアンケートをとった。 魚、トンボ(ヤゴ)、蛙など水棲生物を呼びたいと考えた。
6月中旬 どのようなビオトープを作るか呼びかけた。 各学級から設計図をだしてもらい、アンケートの結果、次のような形のものに、決定した。
  • 4×10=40平方メートル
  • ひょうたん型

8月下旬 ビオトープの枠組への杭打ちを行った。 杭を打ちやすくするために、下学年によりビオトープ現場の除草を行った。
9月上旬 ビオトープつくり(池・川づくり)を呼びかけた。 上学年が中心になり、学校上の休耕田の穴掘りを行った。
6年以上前から休耕田だったため根がはっており、鍬やスコップなどで穴を掘るのに児童は苦労をしていた。男子は鍬を地面に刺し丈夫な根を切った。女子は根が切れて掘りやすくなった地面の穴を掘った。男女が役割分担し協力して作業を行った。
10月中旬 棲息していたイモリの写真  地域の方々と観察会を行った。
池や川には、何も放流しなかったが、ガムシ・水カマキリ・マツモムシ・イモリの存在が確認された。また、今まで見られなかったシオカラトンボが飛んでいるのが見られたので、多分ヤゴもいると思われる。
10月中旬 ビオトープの名前を決めるためにアンケート調査を行った。 「ひょうたん島」「うきうきランド」などの意見があったが、「SAMEGAWAワールド」に決定した。
10月下旬   SAMEGAWAワールドの決まりを作るためのアンケート調査を行った。 大切に活用するために、次のように決まった。
「生き物を大切にする」「木道以外のところを歩かない」「池にゴミを入れない」「池には作業以外入らない」
11月上旬 みんなで考えた決まりを受けて、木道設置の設計図つくりを呼びかけた。 池や川の観察がしやすく、ビオトープを壊さないようにできるものを考えた。
12月予定 木道建設 ビオトープづくりをしている6年生の写真 
1月以降 ビオトープへの意識を高めるためのクイズを考える。
年間 ビオトープ観察日誌(生物観察など)の記入をする。

(3)事後指導

  次年度の各学年の学習指導に活用していきたい。そのためにも、自然環境の大切さやビオトープや自然を守る必要性について指導したい。特に、水の大切さや池と川をきれいな状態に管理する方法を学ばせたい。

3 体験活動の実施体制

学校及び学校支援委員会の体制

  体験活動を推進するにあたり、活動に関係する地域の各団体の代表による学校支援委員会を設置して委員から活動についての意見・助言をいただきながら校内の推進委員会を中心に実践化を図るようにした。

学校及び学校支援委員会の体制の図

配慮事項

  • 児童主導で行うことができるように、子どもの考えを引き出したり、子どもと同じ目線で指導を展開し、児童に成就感を味わわせるようにした。
  • 休耕田に入っての作業だったので、必ず長靴を履くことを徹底した。
  • 鍬やスコップなどを使用したので、周りを確認して使ったり、足に刺したりしないように注意を促した。

4 体験活動の評価の工夫と指導の改善

  各学年ごとに、児童たちが活動した後に、絵や文章などで反省をした。それらから、児童たちがビオトープづくりに意欲的に取り組んだ様子や生物観察を楽しんで行い、自然に興味を示し始めたことがうかがえた。今後はさらに、自分達で「休み時間にも、ビオトープで生物を観察したい。」という児童が増えるような工夫をしていきたい。

5 活動の成果と課題

(1)成果

  自然環境についての知識が増え、各教科での学習にも生かせるようになってきた。また、自然で遊ぶ楽しさを覚え、休み時間にもビオトープに足を運ぶ児童が見られるようになってきた。休日に家族で川に行ったり、友達と近くの自然を探検したという話が聞かれるようになった。
  ビオトープづくりの計画・作成・活動を通して、自主的に活動したり、友達同士で協力したりする態度を身に付けることができた。

(2)課題

  池に観察用の橋を設置したり、呼びたい生き物のために必要な植物を植えたりしたい。また、ビオトープをよい状態に保つための管理方法を教師が学び、児童に指導していきたい。そのためにも、外部指導者に協力していただき、打合せや活動を行っていきたい。
  次年度の教育課程には、各学年でできるビオトープの活用法の位置づけをしたい。その際に、ビオトープや自然に興味を持たせるための楽しい活動も盛り込んでいきたい。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)

-- 登録:平成21年以前 --