23.東京都立成瀬高等学校 ボランティア部

分野:国際協力

  • マリやアフガニスタンへの物資支援を中心としたボランティア活動を行っている。活動から学びとることや、ちょっとした奉仕への気持ちを大切にして活動を行っている。
  • 物資輸送がきっかけで現地への植林募金が設立されるなど、波及的な効果も生まれている。

1.主体活動団体

  東京都立成瀬高等学校 ボランティア部

2.活動のきっかけ・問題意識

  学校創立20周年の事業として、1998年に生徒会が中心となって任意の「ドラえもんボランティアグループ」を結成。マリ共和国へ物資の支援を行なうことを企画し、支援物資の調達と、送料を調達するためのバザーの開催を行った。
  その後活動は一旦途絶えたが、5年前、生徒の希望により市村教諭がボランティア同好会を設立、活動を再開した。しかし活動は日常化できなかった。3年前には活動しているのはほとんど一人という状態になったが、顧問とマンツーマンで1年間活動した後、希望者が増えて活動も本格化し、学校が正式に部活と認めるまでになった。

3.活動の概要(活動段階)

(1)海外への物資の送付

1.マリ共和国への物資の支援

  当初より実施している事業で、古着・文房具などの物資を送っている。ボランティア部では物資の収集、選別や送料の確保のためのバザーなどを実施している。

2.アフガニスタン共和国への物資の支援

  上記マリ共和国への事業と同様に実施している。特に冬物衣料などはアフガニスタンに重点的に送っている。アフガニスタン共和国を対象に加えたのは、マリ共和国までの物資の輸送コストが多大であるため、せっかく物資を集めても、輸送コストがないために無駄にしてしまう恐れがあったためである。アフガニスタン共和国までは(マリ共和国に比べて)輸送コストが低いので、たくさんの物資を送ることができる。

3.南アフリカ共和国への教材の送付

  南アフリカ共和国へ英語の教科書等を送っている。ある予備校が仲介をしてくれるので送料が安く、教科書や英語の本等不要になったものを集めこれを送るので取り組みは容易である。

4.物資の送付のための資金造成

  マリ共和国までの送料はダンボールひとつ分で約3,500円、アフガニスタンへはその半額程度の金額となっている。活動において、ボトルネックとなっているのが送料である。そのほか梱包資材や衣類、靴等を洗う洗剤等の費用も負担している。
  そのため、ボランティア部の活動においては、主な収入源である文化祭でのバザーおよび募金による資金造成が重要な要素を占めている。

(2)学外のイベント等への参加

  町田市で実施している障害者スポーツ大会や福祉作業所のイベントにボランティアとして参加する他、こどもエコクラブでの児童の相手や、町会の広告立て看板撤去作業への協力などを行っている。
  また、白樺湖で実施した合宿では清掃ハイキングなどのボランティア活動を行った。

(3)学内での活動

  学内では、花壇を整備して花を植える活動を行っている。植物を育てることはその成果がわかりやすく、「手間をかけて成果を得る」ことに対する体験として最適である。この活動は学校内はもちろん地域からも高い評価を得ている。

(4)その他の活動

  ボランティア活動のニーズは、時期により発生するため、臨機応変に対応し、積極的に活動を行っている。三宅島の災害時には、同じ都立高校ということで都立三宅高校に寄付を行った。現在も、新潟や、スマトラ向けの募金活動を実施している。

4.事業の成果

  部活動としては部員数も増加(20名)し、またPTAや地域の理解にも支えられて定着している。
  活動に参加した生徒の意識が変わること、またコミュニケーション能力などが目に見えて成長することが一番の成果だと感じている。また、特に物資の支援活動を行なうことで、生徒がものを大切にするようになるのもひとつの成長である。活動の経験から福祉分野を進路に選ぶ生徒も現れている。
  物資の支援活動は定着しており、本年度はマリにダンボール72箱、アフガニスタンに11箱の古着等の支援を行った。
  物資の輸送ばかりでなく、マリ共和国に対して植林募金も行っている。これは一本あたり2,000円の募金をすることで、苗木を購入して現地の子どもが世話をするという取り組みである。既に100本に届く募金がなされており、現地には「成瀬の森」という地域ができているという。

5.活動にあたって留意したこと

  • 人を育てることを第一の目標にしているため、「何をしなくてはならない」という意識を持たず、高校生でも取り組めることであれば何でも積極的に取り組んでいく。ボランティアの対象は時期により変化することが当たり前である。現在は新潟やスマトラ沖地震の募金活動も行っている。
  • 高校生の活動であるため、活動の中から学んでいく要素があることが大切と考えている。例えば、国際支援活動であれば、異文化や国の成り立ちなどを理解することは非常に重要である。そのために活動に際しては事前学習の時間を設けるようにしている。
  • ボランティア部には目立った活動をしたくて入る生徒もいるが、長続きしないのが実情である。活動の多くは地道なことであり、おとなしいが真面目な生徒が活動の中心となる。部員の勧誘については、そうした生徒を選んでいる。
  • 特に海外への物資の支援は他のボランティアと違い、対象者からの「ありがとう」の言葉は伝わってこない。活動自体の意識を理解し自分で喜びを感じられることが重要である。
  • ボランティア部の活動自体は、非常にわかりやすいため学校にも理解され、PTAからの協力を得ることも多い。特に物資の提供や、バザーへの出品集めなどはPTAの協力なしではありえなく、非常に役立っている。また、地域の公立高校の強みは、PTAが地元であることである。そのことから保護者を通じて活動が地域に知られるところとなり、周辺の住民や企業などからの協力の申し出もある。

6.活動後の評価・今後の課題・展開など

活動にあたって障害になったこと

  • 高校の部活動で可能なボランティア、という観点で活動の対象を見ているので大きな障害は生じていない。
  • 但し、物資支援事業では、もっと多くの物資を送りたいが送料の高さが障害となっている。

事後評価について・今後の展開・課題

  • 現在行っている国際ボランティア(物資支援)については、今後も継続し、さらに成長させて行きたい。教育的な面からは、アジア圏を対象にした活動を取り入れていきたい。
  • ボランティア活動への参加者は必ずしもボランティア部の生徒である必要はないと考えている。同校の取り組みでは、一時的なボランティアへの参加を「ボランティア部のボランティア」と呼んで歓迎している。将来的にはボランティア部が窓口となって多くの生徒が「ボランティア部のボランティア」として参加する形態になればよいとしている。
  • 活動の継続は最重要課題である。現在のところボランティア部は入部希望者も多いが、同校を含めた多くの高校で文系のクラブ活動が大幅に低下しており、その面からはしっかりと勧誘を行って、活動を続けていくことも重要である。

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生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --