22.沖縄尚学高等学校 地域国際交流クラブ

分野:イベント・交流

  • 生徒が高校のクラブ活動を通して、在外沖縄県人や在沖縄外国人との交流活動や文化体験活動を企画・実施したり、県主催のイベントに協力している事例である。
  • 国際交流に興味を持つ生徒にとって、海外移民との活動はとても貴重な経験であり、生徒の成長に大きく寄与している。

1.主体活動団体

  沖縄尚学高等学校 地域国際交流クラブ

2.活動のきっかけ・問題意識

  地域国際交流クラブの活動に至るきっかけは、顧問である与座教諭の授業である。与座教諭はJICA(ジャイカ)国際協力事業団(現 独立行政法人国際協力機構)の海外開発青年(現在は日系社会青年ボランティアと呼称)第8期生として、中南米日系社会の活性化を目的にアルゼンチンで活動した経験を持ち、そうした体験や国際交流についての話題を授業で紹介することも多かったため、それに興味を示す生徒がいた。
  最初の活動は、数人の学生が授業を通じて興味を持ち、近隣の浦添市にあるJICA(ジャイカ)の沖縄国際センターを見学に出かけたことである。それがきっかけとなり、国際理解セミナー、ODA民間モニター報告会という国際交流に関するイベントに積極的に参加することとなる。
  このような活動の中で、活動を正式にクラブ活動化しようという意見が生徒の中から生まれ、その結果、2000年1月に正式にクラブ活動として認可、活動を開始することとなった。
  クラブは当初、「地域国際交流研究クラブ」という名称で発足している。現在のクラブ名に「研究」が加わっていのは、学校教育の一環として、生徒の学ぶ機会を重視し、研究活動を行おうとする意図があったためである。
  当初の部員数は10名。最初の活動は、沖縄フィリピン協会の協力を得てフィリピンについて研究を行なうものだった。単に研究に終わらず、尚学高校の学園祭でパネル展を実施、同時に募金活動を実施、アルゼンチンの民族料理の模擬店を出店しての収益金を合わせてフィリピンのスモーキーマウンテンに寄付を行った。
  その後、「地域国際交流クラブ」は3年生の引退もあり、部員がわずか1名に減少するようなこともありながらも、活動を維持。在日韓国人、在日外国人の問題等を研究する活動を続けていく。
  活動が転機を迎えるのは、2001年に沖縄県の主催で実施された「第3回 世界のウチナーンチュ大会」である。これは海外移民の多い沖縄県ならではの大会で、海外の県系人を結びつけ、世界的なネットワークを形成することを目的として、1990年に第1回が開催され、継続的に行われているものである。そのプレイベントである移民の子弟を対象とした「ジュニアスタディツアー」の歓迎イベントを沖縄尚学高校地域国際交流研究クラブが全面的に請け負い、大成功を収めた。
  このことから、活動を通じて生徒が成長することを実感、実践できるクラブ活動とするためにクラブの名称から「研究」を省き、現在の「地域国際交流クラブ」として、積極的に校外活動を行なうこととし、活動を行っている。

3.事前準備として行った主な取り組み(企画段階)

  正式な部活となる前には、沖縄国際センター、国際理解セミナー、ODAモニター報告会等の施設やイベントの見学と、事前研究を任意のグループとして行った。

4.活動の概要(活動段階)

(1)活動内容

  地域交際交流クラブは現在部員数41名で活動している。既に引退している3年生が30名いるので、クラブ活動としてはかなりの大人数である。
  2001年度~2004年度の活動は以下の通りである。

  1. 「白梅学徒の足跡を辿れ!」プロジェクト
      沖縄戦で多くの犠牲者を出した旧制沖縄県立第二高等女学校学徒隊「白梅学徒隊」の辿った歴史を追体験し、同窓会の方々と交流、その想いを継ぐべく「後輩宣言」を行なう。
  2. 海外移住沖縄県人社会支援事業
    • 沖縄県主催「第3回世界のウチナーンチュ大会・本大会」(2002年11月)
    • 沖縄アルゼンチン友の会主催「アルゼンチン・ウチナーンチュ歓迎事業」および「支援資金造成事業」(2002年11月)
    • アルゼンチン沖縄県人支援金造成活動(2002年9月)
    • オープンキャンパスにおける「沖縄県人海外移住資料展」の開催(2002年9月)
    • ブラジル研修旅行に部員11名が参加(2002年10月)
    • ブラジル・アルゼンチン沖縄県人移住95周年チャリティー公演開催、両国県人会へ約70万円を寄付(2003年3月)
    • ブラジル・アルゼンチン沖縄県人移住95周年スタディーツアーに部員7人が参加(2003年8月)
  3. カンボジアに井戸を作ろうプロジェクト
      NGO沖縄アジアチャイルドサポートの事業計画に賛同、校内広報活動として壁新聞の作成、講演会、カンボジア資料展の開催、募金と学園祭収益金による寄付、の活動を実施。
  4. ハンセン病問題への取り組み
      沖縄におけるハンセン病問題の実情の研究とハンセン病患者・元患者との交流や支援活動を実施。その一環としてハンセン病療養所「沖縄愛楽園」、「宮古南静園」での民族舞踊等の公演、交流を行った
  5. だいじょうぶさ~沖縄キャンペーン 沖縄尚学高校協力隊プロジェクト
      前傾により省略。
  6. アフガニスタン難民支援プロジェクト
      アフガニスタン難民支援のための校内広報、書き損じはがき回収、校内での義援金募金、フリーマーケットによる資金造成活動を行った。
  7. 外部団体へのボランティア活動
    • 沖縄県主催「第3回世界のウチナーンチュ大会・ジュニアスタディツアー」(2001年7月)
    • 沖縄パンアメリカン連合会主催「移民の日パーティー」(2002年~2004年)
    • 沖縄県主催「ジュニアスタディーツアー」(2002年~2004年)
  8. 在沖外国人、県外・国外交流校との交流活動
  9. 異文化体験活動
  10. 研究活動
    地域社会の諸問題、平和学習、アジアの途上国、在日コリアン、アイヌ民族問題等についての研究を行った。

  また、この他、地域の観点を重視するというスタンスから、沖縄の伝統芸能や諸外国の民族舞踊にも取り組んでおり、交流活動などの際の発表や、義援金造成の際の公演に役立てている。

(2)資金調達

  これらの活動の経費や、寄付を行なう際の資金の調達は、活動の根幹を成す重要な課題である。
  日々の活動資金については、クラブ活動費として学校から支給される額の他、学園祭での模擬店(民族料理の提供)の収益の一部を活動費に当てている。しかし、校外活動が増えるとそれだけでは足りないため、活動費の多くは自己負担となり、多くの生徒の保護者が負担している。
  それ以外には、企業等の理解による現物支給での寄付などもあり、沖縄本島以外で活動する際に航空運賃や宿泊費の減額等の協力が得られる場合もある。
  義援金の拠出の際には、校内での募金活動や、場合によっては外部からの募金を募る場合もある。特に、公演による義援金の収集はクラブの技法として確立しつつある。地元の市民ホールを借りて父兄や卒業生、地元企業等に広告の出稿、チケットの購入の協力を要請し、資金を作る手法である。
  ブラジル・アルゼンチン沖縄県人移住95周年のチャリティー公演ではこの手法で当初の目標を大幅に上回る70万円の寄付が可能となった。

5.事業の成果

  • 各募金、資金造成事業ではイベントなどの手法を通じて毎回目標額を上回る募金を行っている。また、観光誘致キャンペーンでは、修学旅行を中止した学校に働きかけ、中止を撤回するなどの成果を上げている。
  • 各活動を通じてボランティアの対象だけでなく、行政、保護者等の理解を得ることができた。
  • 学校の立場からは、活動を通じた生徒の成長に明確な手応えを感じている。現在は校内での評価も高まり、部員数が増加して、新入部員を制限するまでになっている。
  • 活動はマスコミに度々紹介される他、様々な表彰を受けており、そのことは高校の広報面でも良い影響を与えている。

6.活動にあたって留意したこと

  高校の部活動で行なうボランティア活動であるため、活動を通じて社会の役に立つだけではなく、その経験が生徒の成長につながることが重要である。
  そのため、どの活動についても事前の研究に時間をかけることを意識している。
  クラブの活動については、学校も校長が旗振り役を勤めるなど、協力的である。校外活動の中でも療養施設との交流などは、受け入れ先の都合により平日しか活動できない場合があるが、その場合にも参加した部員を公欠扱いにするなどの措置が取られている。
後述する各種の表彰や、マスコミでの紹介などは学校の評価をも高めるものであるため、学校の理解は進んでいる。
  なお、受賞した表彰は以下のとおりである。

  • ボランティアスピリット賞・コミュニティ賞(2004年11月)
  • 財団法人日本青少年研究所 第10回~第12回「いきいき活動奨励賞・特別優秀活動賞」(2002年~2004年)
  • ジュニアスタディーツアーへの協力に対し、沖縄県知事より感謝状(2002年~2004年)
  • 第12回テンダーハート賞(2003年10月)
  • 日本BBS(Big Brothers and Sisters Movement)連盟より感謝状(2003年9月)
  • だいじょうぶさ~沖縄キャンペーンの取り組みが桐原書店・高等学校英語副読本に紹介される(2003年4月)
  • モンゴル・カンボジアへの支援活動に対して、NGO沖縄アジアチャイルドサポートから感謝状(2003年4月)
  • 在ブラジル沖縄県人会、在アルゼンチン沖縄県人会から感謝状(2003年3月)
  • 高校生国際ボランティア全国大会出場(2002年8月)
  • 電通主催「沖縄は今」ビデオ作品展 努力賞(2002年7月)
  • 第3回世界のウチナーンチュ大会への協力に対し、在アルゼンチン沖縄県人連合会、沖縄アルゼンチン友の会より感謝状(2001年11月)

7.活動後の評価・今後の課題・展開など

活動にあたって障害になったこと

  • 沖縄尚学高校は沖縄県では有数の進学校であり、生徒の部活動の時間が週3日と制限されていること。
  • 高校の部活動の範疇であるため、卒業により生徒が入れ替わるため、活動の継続には指導教諭の資質が欠かせないこと。

事後評価について・今後の展開・課題

  現状の活動のチャンネルを維持しつつ、(観光の風評被害のような)時事的に発生する課題に対応できる体制を作っていきたい。現在も既にスマトラ沖地震に対する支援活動を開始している。
  高校での取り組みでは生徒は常に入れ替わっていくものである。そのため、活動の承継は何より大切なことだと位置づけている。

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --