12.特定非営利活動法人 黒潮実感センター

分野:環境保全

  • 黒潮実感センターでは、地域資源を活用した体験活動等を実施し、環境教育や環境保全の重要性を伝える活動を行っている。
  • 活動の趣旨に賛同する地域住民らがボランティアスタッフとして参加するなど、環境をテーマとする地域振興に住民・行政・黒潮実感センターが力をあわせて取り組んでいる点が特徴である。

1.主体活動団体

2.関係者・関係団体・活動場所

協力者・協力団体

  高知大学、大月町、高知県、すくも湾漁協

ボランティア参加者・参加団体

  島おこしの会、黒潮実感センター友の会、黒潮ボランティア里海、柏島ファンクラブ

活動場所

  黒潮実感センター(元柏島中学校、以下、センター)、柏島周辺

3.活動のきっかけ・問題意識

活動のきっかけ・経緯

  現センター長の神田氏は、大学時代から柏島の研究を続けており、その柏島の貴重な自然を守るため、一人で島に移り住み、平成10年に黒潮実感センターの活動を開始した。同時に、活動の組織化を図るため、大月町長を代表とするセンター設立準備委員会を立ち上げた。当時の柏島中学校校長の協力を受け、中学校の一室を「地域交流室」として借り、活動拠点とした。柏島の環境を守ることと、次世代を担う青少年の育成を行なうことを目的に据え、独自のプログラムを組み、ボランティアによる体験学習などを通じて、子どもたちに「環境教育」を行なうことからスタートした。
  センターの活動の方向性については、環境教育、環境保全活動を続けていくなかで次第に住民や行政の理解が得られた。平成14年10月からは特定非営利活動法人(以下、NPO)として新たなスタートを切り、現在では、センターの活動に賛同する大勢のボランティアスタッフをはじめ、「島おこしの会」、「友の会」、「黒潮ボランティア里海」「柏島ファンクラブ」などの団体も結成され、センターと連携・協力を行いながら島の将来について考えるなど、センターの活動に対する関心は地域内外に大きく広がっている。

活動のねらい

  活動のコンセプトは「島がまるごと博物館(ミュージアム)」としている。海からの恵みを受けている地域住民が、恩恵を享受するだけでなく、海を耕し守り、人と海が共存できる場所としての「里海」づくりを行い、消費型の観光立町ではなく、持続可能な環境立町を目指していくことが活動のねらいである。将来的に環境立町による地域振興が成立すれば、進学や就職により島から出て行った子どもたちも再び戻って来られるような雇用の創造が可能であると考えている。例えば、海を守ることによって漁獲高が保持できれば漁業に従事する若者が増えることが考えられる。

4.事前準備として行った主な取り組み(企画段階)

募集方法

  事務局スタッフは4名だが、体験活動の支援を行なうボランティアスタッフは50~60名程度おり、学生、漁業者、ダイバー、研究者、大工など、島内外を問わず、あらゆる職種にわたっている。いずれもセンターの活動に理解を示している有志であり、現在も募集中である。

活動資金・資材の確保

  設立時の資金や資材の確保には大変苦労したが、大学の恩師や柏島中学校の校長による資金面の支援、および町や教育委員会への働きかけのおかげで初期活動を軌道に乗せることができた。現在、資金については、NPOとしてセミナーや体験活動の参加費や委託事業、企業助成金などから得ている。資材については多くのボランティアからの提供もあり、大変助かっている。

5.活動の概要(活動段階)

  センターでは、主に下記の事業を行っている(平成15年度活動報告書より)。

  • 里海セミナー、講演、シンポジウムの開催
  • 環境教育のための学習会や体験実感学習の開催
  • エコツアー、サマースクール、エコダイビングの開催
  • 島の将来を考える島おこしの会のサポート
  • 住民の物産販売「里海市」への参加
  • 海洋資源活用の振興や豊かな漁場づくりのための調査研究(アオリイカ増殖産卵床の研究や磯焼け対策)
  • サンゴや藻場の保全活動
  • 里海村づくり
  • その他、広報活動

  上記の活動のうち、地域内外からボランティアが参加する活動は、主に体験実感学習、エコツアー、サマースクール、エコダイビングが中心になる。これらのイベントは合わせて年間約30回程度開催し、各回の一般参加者数は数名~50名である。主に小学生や中高生が参加している。各回のボランティアとしての参加者は、イベントの規模にもよるが多いときは十数名になる。

6.事業の成果

  センターの設立直後は、行政も住民も地域振興に関する活動を望んでおり、センターの掲げる「環境教育、環境保全」に対する理解はなかなか進まなかった。しかし、マスコミをはじめ、いろいろな方面で活動が取り上げられるようになり、このような情報発信が町の地域振興に有効だという考えが認められ、現在では地域一体の取り組みに発展している。
  地域内の交流を盛んに行なうことで、住民同士、或いは住民と訪問者との相互理解が進んだことが大きな成果である。例えば、以前は地元漁業者とダイバーのトラブルが多発していたが、センターが中心となり実施したアオリイカ増殖事業において、漁師とダイバーの共同作業が実現し、相互理解が進んだ。さらに、それがきっかけとなって漁業の発展とダイバーの訪問を両立させていこうという考え方を町に浸透させることにも効果があった。

7.活動にあたって留意したこと

参加に関して

  ボランティアの参加や、資金・資材の提供など、いずれの場合も、センターの活動が理解されなければ協力が得られないため、しっかりと方針を定めそのための地道な活動を続けた。このような活動が認められることによって、多くの協力者を得ることができている。

交渉や役割分担に関して

  事務局スタッフは4人中3人が島外の者であるため、センターの活動に理解をしてもらうためには、島民とのコミュニケーションを密にして同じ目線から島について考えることに十分留意した。具体的には、地道に活動を続けながら、島民一人ひとりと話をし、時には酒を飲みながら本音で議論するなど、島民の立場を理解することに努めた。

8.活動後の評価・今後の課題・展開など

事後評価について

  基本的に事務局スタッフが各プログラムの参加者の声を聞いて評価している。また、事業部会や研究部会を年に数回開催し、今後の方針を決定している。

今後の展開・課題

  現在行っている体験学習については、後継者を作るつもりで質の高いものにしていく方針である。さらに各プログラムの質の高さに応じた料金設定を行い、活動資金の確保を図っていく。今後は環境に重点を置きつつも、地域振興のための雇用機会の創出に向けた取り組みに力を入れていきたいと考えている。

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --