9.松江市 天神町ふれあいプラザ(まめな館)

分野:福祉

  • 中心市街地の空店舗を福祉施設に転用し、来館した高齢者に対する各サービスを地域住民がボランティアで行っている事例である。
  • 当初の目的は中心市街地の振興および高齢者が集まる場所の提供だったが、現在ではその目的が達成されている。さらにサークル活動などを通して、高齢者と世代の違う地域住民との間の地域交流に大きな広がりが生まれている。

1.主体活動団体

  松江市 天神町ふれあいプラザ(まめな館)

2.活動のきっかけ・問題意識

  1999年、松江市が中心市街地活性化事業の一環として空店舗に悩む天神町商店街内に空店舗を転用した施設「まめな館」、「いっぷく亭」を設置した。(両館を合わせて「ふれあいプラザ」と呼称)
  設置場所である天神町商店街は、従前より「高齢者にやさしい商店街」をテーマに活性化活動を行い、毎月25日に開催される「天神市」は多くの高齢者でにぎわうことで有名である。しかしながら、全国的な中心部の空洞化傾向の影響から商店街には廃業等による空店舗が多数発生、行政(松江市)では、空店舗を福祉施設に転用することで、商業振興と福祉対策の両面に役立てることを目的とした。
  なお、両施設は福祉分野の予算により設置されている。

3.事前準備として行った主な取り組み(企画段階)

  設置前年度より準備室を設置し、この時点より館長が就任、館の事業プランを作るとともに、周辺住民等に呼びかけをおこない活動の基盤づくりを行った。
  ふれあいプラザでは、比較的規模の大きな建物であるまめな館では、ボランティアの参加による交流がなされ、バス停の前にあるいっぷく亭ではマッサージなどのサービス(有償)が受けられる施設となっている。

4.活動の概要(活動段階)

  まめな館は交流施設として、「お年寄りのたまり場」として機能するために設置されている。いつ誰が来ても話し相手がいるように近隣に居住する登録ボランティアが1~2名常駐し、来館者の話し相手になっている。(一般ボランティア)常に話し相手がいることが確保されていることや、ボランティアとはいえ仕事として好き嫌いなく積極的に対応する人間がいることから、来館者は安心してここを訪れることが可能になる。
  月に一度はボランティアによる健康体操が行われ、その他にも様々な教室活動が行われるなど、地域の交流が行われている。(専門ボランティア)地元子育て支援センターと共同で、お年寄りと若い親子での芋掘り遠足なども実施している。
  また、小中学生が「総合教育」等の時間を利用して活動に参加することも多い。

5.事業の成果

  両館の利用者は平日でも平均180名にも上る。また、地元商店街で「天神市」が催される日には高齢者を中心に500名もの利用者がある。
  現在、まめな館に常駐して来館者の相手をする一般ボランティアに登録している人員は24名、全員が周辺に居住する高齢者である。
  まめな館で実施されている教室、サークル活動は郷土の歴史、パソコン、化粧教室、囲碁、茶道など24団体となっている。これらはボランティアによる指導が行われ、地域の交流を生み出している。
  子育て支援センターと共同しての芋掘りなどの催しでは、高齢者が子どもにしつけを行ったり、若い母親に育児のアドバイスを行なうなどの交流が見られた。

6.活動にあたって留意したこと

  • ふれあいプラザの目的は、「高齢者の居場所作り」である。但し、行政により設置された施設であり、あまり予算も潤沢でないことから、ボランティアの協力により活動を拡大してきた経緯がある。この性格がわかりやすいことが、多くのボランティアが協力を申し出るようになった要因のひとつである。
  • 最初に拠点としての施設が設置されたことが重要である。すなわち、施設があるから、高齢者が安心して集まれる環境ができ、そこに人が集まることによって方向性が決まり、それが事業へと発展していく。最初の施設なしにはこのことは非常に難しい。実際にまめな館で行われている教室活動の中には、ここに高齢者が集まるから、という理由でボランティア講師等が申し出てきて始まるものも少なくない。まめな館という「場」が求心力を生んでいる効果である。
  • 運営を行なう人材が大きな要素である。マネージャーである館長は松江市内で中学校の校長を務めた人物であり、その知識と人脈により専門ボランティアによる教室・サークル活動や小中学生の活動への参加を創り出してきた。

7.活動後の評価・今後の課題・展開など

活動にあたって障害になったこと

  • 活動自体は手探りで行ってきたため、ノウハウの取得が大変だった面はあるが、活動に際しては特に障害とは感じていない。
  • 地元商店街とは特に連携はなされていない。行政の管轄が、経済と福祉で違うことなども理由のひとつであろう。商店街活性化という営利事業に携わる組織と、純然たる福祉を目的とした組織では方向性が合わず、精神的に疎遠になってしまうことが多い。

事後評価について・今後の展開・課題

  • キーマンである館長伊藤氏の属人的資質に事業が依存している面がある。館長は両館の開設以前の企画段階から就任し、教室やサークルの創設、イベントの企画、実施など一貫して両館での取り組みの拡大に努めてきた。現在でも教室やイベントの講師などは伊藤氏の個人的人脈で勧誘することが多いという。また、小学生、中学生が総合的学習の一貫してこの施設を訪問し、手伝いをすることなどもあるが、これも元校長という伊藤氏の人脈によるところが大きい。事業を継続的に実施するには、こうした属人的なノウハウを引き継いでいくことが必要である。
  • まめな館での取り組みにより、地元の住民の交流、意世代間の交流が図られている。ボランティアという枠に捉われず、それを「地縁」に育てていくことが、本事業の最大の目的である。

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生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --