【交流に関わる体験活動】 地域と連携した交流体験活動 富山県立八尾高等学校
学校の概要
- 学校規模
- 学級数:13学級
- 生徒数:510人
- 教職員数:55人
- 活動の対象学年:全校生徒510人
- 体験活動の観点などからみた学校環境
- 全国的に有名な「越中おわら風の盆」に代表される伝統文化や自然に恵まれた地域にある。
- 人口約2万2千人の小さな町で、少子高齢化が進んでいるが、観光イベントや産業(テクノポリス構想)をはじめ、町全体が活性化を目指している。
- 昨年度、八尾町の幼・保・小・中・高が連携し「八尾学園推進協議会」を設置して児童・生徒の健全育成を推進する様々な活動を行っている。
- 連絡先
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体験活動の概要
- 活動のねらい
- 八尾町という地域にある学校として、積極的に地域の行事に参加して地域住民との交流をとおして地域社会に対する理解を深める。
- 地域の子どもやお年寄り、障害者の方との交流をとおして乳幼児期の発達や高齢者・障害者の福祉に対する理解を深める。
- 活動をとおして得られる自己理解をもとに将来の進路を考える一助とし、また、これからの社会で必要なコミュニケーション能力や自己表現力を育てる。
- 活動内容と教育課程上の位置付け
- 交流に関わる体験活動
- 販売実習「高啼エイト」 (商業40時間)
- 保育実習・独居老人宅訪問 (福祉38時間)
- 福祉施設訪問 (福祉36時間)
- 文化や芸術に関わる体験活動
- 地域行事「坂のまちアート」作品作り
(芸術46時間)
- 郷土芸能「越中おわら」体験活動
(体育36時間)
- 社会奉仕に関わる体験活動
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1 活動に関する学校の全体計画
活動のねらい
(1)販売実習「高啼エイト」
- 「坂のまちアート」と連携して地域との交流を図るとともに、より実践的な活動を目指す。
- 昨年度は、情報会計科2・3年生の2クラスで実施したが、今年度は、3年生の1クラスによる実施となるため、普通科からボランティアを募集して参加生徒の拡がりを図る。
(2)保育実習・独居老人宅訪問
- 地域の保育所・幼稚園施設、独居老人宅を訪問して、授業で学んだことについて理解を深める。今年度は、地域の子どもや高齢者との交流を活動後も継続して行えるようにする。
(3)福祉施設訪問
- 地域の福祉施設や病院で実習を行い、少子高齢化社会で必要とされる豊かな人間性を育む。
(4)「坂のまちアート」作品作り
- 1年生の美術選択者が「坂のまちアート」の併催行事である「未来の芸術家達のアート展」への作品づくりをとおして地域行事に参加する。
(5)「越中おわら」体験活動
- 郷土芸能である「越中おわら」の踊りを全校生徒が体験することにより地域の伝統文化についての理解を深める。
(6)ボランティア活動
- これまでの地域との交流活動を生かしながら、1年生が地域と密着したボランティア活動を行い、自己の成長を期待するとともに地域社会の一員として貢献する態度を養う。
全体の指導計画
活動の名称 |
実施学年 |
活動内容 |
教育課程上の位置付け |
時間数 |
販売実習「高啼エイト」 |
3学年 情報会計科 |
生徒自身で企業組織を作り、仕入れから販売まで実践する。 |
商業 課題研究 |
40時間 |
保育実習 独居老人宅訪問 |
3学年 生活福祉科 |
保育所・幼稚園、独居老人宅を訪問して交流を深める。 |
家庭 福祉 |
38時間 |
福祉施設訪問 |
2学年 福祉コース |
地域の福祉施設を訪問して交流する。 |
福祉 |
36時間 |
「坂のまちアート」作品づくり |
1学年 美術選択者 |
地域行事「未来の芸術家達のアート展」へ出品する。 |
芸術 |
46時間 |
「越中おわら」体験活動 |
全校生徒 |
「越中おわら」の踊りを学び、体育大会で発表する。 |
体育 |
36時間 |
ボランティア活動 |
1学年 |
地域と密着したボランティア活動を行う。 |
総合 |
35時間 |
2 活動の実際‐交流体験活動を中心として‐
1.販売実習「高啼エイト」
事前指導
- 「坂のまちアート」実行委員会や八尾町商工会と念入りに打ち合わせを行った。
- 外部講師招聘…大学や地元商工会から専門家を招聘し、専門的知識を学んだ(昨年度)。
講義内容 |
日程 |
講師 |
市場調査・販売促進 |
7月10日 1.2限2年生 3.4限3年生 |
富山国際大学 地域学部教授 |
経営計画 |
7月11日 1.2限3年生 |
八尾町商工会 事務局長 |
販売戦略 |
7月12日 1.2限2年生 3.4限3年生 |
会社 課長 |
- 「坂のまちアート」出店店舗との連携…手打ちそば講習会、甘味所、ベンチャーキッズなど
(今年度は、手打ちそばなどに、普通科生徒からボランティアを募集した。)
- 組織づくり(株式会社組織、各店舗での役割)を行い、生徒自身ですべて企画をした。
活動の展開
- 15年10月11日(土曜日)~13日(月曜日)
- 「高啼エイト」は、生徒自身で行う伝統行事(今年で第13回)であり、昨年度から初めて地域へ出店した。それに伴って、場所(学校から町内へ)や購入者(生徒・保護者から町内の住民・観光客)などの販売環境の変化に対応した活動となった。
- 理論と実践とのギャップを生徒は感じているようであったが、持ち前の若さで大きな声で販売を行っており、生徒たちの生き生きとした表情が目立った。
- 生徒一人ひとりが責任を持って活動に取り組み、天候やその日の売り上げ状況を見ながら、計画を変更したり追加注文をしたりするなど柔軟な対応が見られた。
事後指導
- お客さんのアンケートを集計し活動を見直した。株主総会の準備。
2.保育実習
事前指導
- 「保育」の授業で乳幼児期の身体発達や精神発達及び遊びの様子などを学んだ。
- 自分が学びたいテーマを持たせる。(「保育実習記録」冊子を作成し記入する。)
- 各自の実習先を決めてグループ編成をして、自作の教材作りや出し物の練習を行った。
活動の展開
- 15年7月9日(水曜日)~11日(金曜日)
- 八尾町内の8つの保育所、幼稚園でグループ別に3日間、それぞれの担当のクラスに入って保育士としての体験活動を行った。生徒たちは、保育士の方々の幼児たちとの接し方を見て学んだり、いろいろと教わったりしながら、からだ全体で幼児たちと触れ合ってよく遊んでいた。最終日には、それぞれ自作の教材(劇・歌・クイズ・ダンス・ゲームなど)を用いて発表した。
- 幼児の可愛さや素直さ、豊かな感性に触れ、自分の育ってきた過程を理解したり、「保育」の授業で学んだことについて理解を深めたりできた。また、保育士としての体験を通じて働くことの大切さを学ぶことができた。
事後指導
- 「保育実習記録」(感想レポート含む)の提出及び幼児たちへ手紙を送付した。
3.独居老人宅訪問
事前指導
- 2年次に「訪問介護員養成研修」を学んだ。3年次の「社会福祉基礎」、「社会福祉援助技術」の授業で高齢者の特徴や接し方について学んだ。
- 八尾和紙で高齢者向けのプレゼント作りを行った。
活動の展開
- 15年6月19日(木曜日)、10月16日(木曜日)、11月6日(木曜日)
- 八尾町福島地区の独居老人宅14軒を2人グループで2軒を担当し、コミュニケーションを取りながら互いに理解を深めて交流を行った。初回訪問時に八尾和紙のしおりに手紙を添えてあげたり、3回目訪問時には手作りのプレゼント(小物入れなど)をあげたりした。思いがけないプレゼントに大変喜ばれた。お年寄りの方は、生徒と一緒にお茶を飲んだり、話し相手になったりすることを楽しみにしておられた。また、お年寄りの方から趣味の手芸作品をプレゼントされたこともあった。
事後の指導
- 「訪問記録表」(感想レポート含む)の提出及び八尾和紙の年賀状を作成して送付した。
4 ボランティア活動
事前指導
- 「総合」の時間では、1.共生社会に生きる2.夢を実現する3.生き方を考える、の3つのねらいのもとに、土・日曜日や夏季休業を利用してのボランティア活動を呼びかけた。
- 活動分野として「地域社会」、「福祉」、「自然環境保護」、「学校生活」、「国際」の5つの分野を設置して、年間活動計画を立てた。
- 「ボランティア基礎講座」を開催して、特に福祉施設で活動する際の心得について学んだ。
- ポイント制度(1時間1ポイント)を導入して、1年間で10ポイントを目標にする。
- 生徒全員、ボランティア活動保険に加入した。
活動の展開
「地域社会」分野の「八尾学園さわやか運動」では、町内の4つの小学校と2つの中学校へ行って、校門であいさつをとおして小・中学生と交流をした。参加した生徒は、「小学生が、元気よくあいさつをしてくれて気持ちよかった」、「1日が楽しく始まった」、「地域社会の役に立った」などの感想を述べている。
事後指導
3 体験活動の実施体制
勤務先又は機関団体名及び職名 |
勤務先又は機関団体名及び職名 |
日本ペンクラブ会員 作家、同窓生 |
社会福祉法人フォーレスト八尾会 指導員 |
会社 社長、同窓会長 |
富山大学 人文学部教授、同窓生 |
越中八尾観光協会 理事 |
会社 課長 |
八尾老人健康施設「風の庭」 婦長 |
PTA会長 |
学校関係者(校長・副校長・教頭・事務部長・教務主任・生徒指導主事・科主任) |
- 委員会は年3回実施した。支援委員の方々には、活動の計画から実施状況、評価まで貴重な意見や支援をしていただいた。活動の場や指導者の確保については、学校や学科の行事として年間行事計画に入れて対応した。
4 体験活動の評価の工夫と指導の改善
- 「高啼エイト」では、生徒の活動日報より自己評価を行い、お客さんのアンケートから各店舗での活動について反省会を行った。また2月にはプレゼンテーションと株主総会を行う。
- 保育実習では、事後の反省会を行い、保育所の先生から指導・講評をしていただいた。生徒は実習記録により自己評価を行い、またクラス全員の前で報告会を行った。
- 独居老人宅訪問では、生徒の訪問記録やクラス全員の前での報告会に加えて、お年寄りの方との会話の内容を全て書き出させて、コミュニケーションの取り方の事例研究を行った。
- ボランティア活動では、生徒のボランティア参加状況と活動報告書により評価した。
5 体験活動の成果と課題
- 「高啼エイト」は、地域で行うことで、より実践的な活動になった。手打ちそばやアート展示場所の補助などに普通科生徒がボランティアで参加するなど、参加生徒の拡がりにつながった。
- 保育実習では、実習後の夏季休業中にボランティア活動として保育所を訪れたり、将来保育士を目指したりする生徒も出てきた。また、9月の体育大会では、幼稚園児を招いて一緒に見学したり参加したりして交流を深めた。
- 独居老人宅訪問では、生徒は各自の目標を持って訪問に取り組み、コミュニケーションを取ることに努め、お年寄りに対する理解が深まった。また、放課後や夏季休業中に継続して訪問した生徒もいた。
- ボランティア活動では、生徒全員にボランティアを体験させるための促進剤として「ポイント制度」を導入した。これにより生徒にボランティアを体験する「きっかけ」を与え、その後は生徒自身が自発的にボランティアの芽を成長させるよう改善に努めたい。
- これまでの体験活動は、情報会計科と生活福祉科を中心に行ってきており職業観の育成等に効果がみられた。しかし両科は今年度で閉科となり、来年度から完全に普通科単科高校となる。
そこで、これまでの体験活動のノウハウを情報・福祉両コースの活動に生かすとともに地域に密着した体験活動をボランティア活動へ継承させていきたいと考えている。