学校教育の情報化に関する懇談会(第7回) 議事概要

議事概要

1 日時

平成22年7月7日(水曜日)13時~15時

2 場所

文部科学省東館3階講堂

3 委員出席者(敬称略)

 新井紀子、安西祐一郎、五十嵐俊子、市川寛、馬野耕至、大路幹生、小城武彦、陰山英男、國定勇人、重木昭信、関口和一、千葉薫、野中陽一、三宅なほみ、宮澤賀津雄

4 文部科学省出席者

 鈴木文部科学副大臣、坂田文部科学事務次官、清水文部科学審議官、森口文部科学審議官、山中官房長、土屋総括審議官、板東生涯学習政策局長、川上審議官(生涯学習政策局担当)、前川審議官(初等中等教育局担当)、戸渡審議官(文化庁)、齋藤参事官(学習情報政策担当)、増子参事官付情報政策室長、森初等中等教育局教科書課長、丹羽特別支援教育調査官、安間国立教育政策研究所教育研究情報センター長

5 議事概要

(1)齋藤参事官より、資料2(教育の情報化ビジョン(骨子)【素案】)及び資料3(教育の情報化ビジョン骨子(素案)のスケジュール概要)に基づき、説明。

(2)鈴木副大臣挨拶
 今回と次回で教育の情報化ビジョン骨子の策定に向けて議論していただき、来年度の概算要求に向けたバックボーンとなるものを取りまとめていただきたい。

【三宅委員】
 タイトルにもあるように、「21世紀にふさわしい学校と学びの創造を目指し」た新しいIT基盤に、学校教育を新たにつくり直していくことが明確に述べられていることは、大変ありがたい。
 3ページに、今まで日本の教育が弱かった、相互作用的な能力、多様な社会グループに対応する人間関係形成能力、協働して課題の解決に当たっていく能力を推進するために、ITの基盤をもう一回見直す必要があると書かれているが、後ろのページになるとそのことが消えてしまっているのではないか。
 4ページの第5パラグラフ「教科指導における情報通信技術の活用」について、双方向性や協調型の授業にどのようにITが使われるのかについての記述がないのではないか。
 第二章「学びの場における情報通信技術の活用」では、最初にデジタル教科書が出てくるが、双方向性という日本が今まで弱かったタイプの授業をつくるために、デジタル教科書で何ができるのかということについての記述がほしい。
 第六章にNICERで実験すると書くのであれば、「我々が初めて取り組まなければならない学習者中心型の授業展開にITがどのように活用可能なのかについても実践的な研究を行う」と明記すると、やりやすくなると思う。

【五十嵐委員】
 何を重視して打ち出していくのかを、ポイントとして、第一章と「はじめに」との間に5項目か10項目ぐらいで明記したほうが良いのではないか。
 各章の後か、第六章の後ろの方に、配慮すべき事項として、今後検討しなければならない危惧や問題点を明記すべきではないか。

【馬野委員】
 教育の情報化ビジョンの目的は「第一章 21世紀にふさわしい学校と学びの創造」であり、それを実現するには、「第二章 学びの場における情報通信技術の活用」が有効であるという構成までは良いが、第三章と第四章は順番を入れかえるべきではないか。一人一人の教員が情報通信技術の活用指導力を身につけて向上させることであり、その時間を生み出すためにも校務の情報化を推進すべきであるという流れになるべき。

 第五章を第二章に取り込んだほうが良いのではないか。また、第二章の構成は、「1.デジタル教科書・教材」、情報端末とデジタル機器はデバイス、ネットワーク環境はインフラなので「2.デジタル端末・デジタル機器」、「3.ネットワーク環境」とし、最後に情報通信技術の活用で効果が最も期待できる分野として「4.特別支援教育」にしてはどうか。その際、特別支援教育の記述は整理して、全体を簡潔にすべきであり、特に、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の記述は削除しても良いのではないか。
 「学校教育の情報化の着実な推進に向けて」の章には、教育情報化調査研究機関の設置や情報通信技術基盤の整備の予算措置といった節を立て、これらの必要性をアピールすべきではないか。特に予算措置に関しては、過去の政府が打ち立てた情報通信技術基盤の整備の目標が期間内に未達成に終わった最大の原因が地方交付税による予算措置であったとことを指摘しておく必要があると思う。
  7ページの第6パラグラフに、子どもたちの健康に配慮した仕様や活用方法等について検討を進めるためには、デジタル教科書・教材が子どもたちの心身に悪影響があるのか検証する必要があることを追記してほしい。
 8ページの第2パラグラフに、学習者用デジタル教科書及び情報端末を「検討・推進することとする。」とあるが、「推進」は検証・検討した結果として行うものであり、現段階で推進と明記するのは早計であるため、削除すべき。
  9ページの第5パラグラフに、校内LAN整備率について、国内の状況だけではなく韓国やシンガポールに大きく遅れをとっている事実も明記すべき。また、超高速の校内無線LAN環境については、「構築を検討することも重要である」とやや腰の引けた表現になっているが、「構築すべき」と修正したほうが良い。

【重木委員】
 4ページの第2パラグラフに、学校教育の情報化は、情報教育、情報通信技術の活用、校務の情報化の3つを通して教育の質の向上を目指すと書かれている。情報通信技術の活用と校務の情報化に対応する章はあるが、情報教育に対応する章はないので、章立てして書いたほうが良いのではないか。

【関口委員】
 デジタルコンテンツの話があまり明確に書かれていない印象。NICERを中心にデジタル教材の素材をつくっていくように読み取れるが、デジタル端末のよさは、外部の一般的な情報も先生が取り込み、教材として活用できるところにあるのではないか。例えば、アナログ時代でも、いわゆる教育目的でのコピーや引用は既に認められているが、デジタル時代において、それがどうなるのか。NICERでいろいろ素材を集めるにしても、もとは新聞、書籍、その他いろいろな出版物、映像コンテンツだと思うので、教育用のフェアユース的なものをきちんと考えて、どういう形であれば素材として活用できるのかについて検討することを盛り込む必要があると思う。
 国立国会図書館が過去の蔵書の電子化を進めているが、著作権法の制限や出版業界の要請により、国立国会図書館内でしか閲覧できないといった制約がある。学校図書館あるいは学校と国立国会図書館みたいなものをオンラインでリンクさせて、教科書の写真ではなく原典を教室で見ることができたり、もっと広い教育用素材の流通、活用、共有化が図られるような取組を行う必要があると思う。
 NICERは、教育素材の共通化、標準化、あるいは学校の先生方の情報交換の場であるプラットフォームとしては非常に良いと思うが、素材開発については、もっと民間を活用していくことが言われても良いのではないか。
 12ページの「スーパーコンピュータ」に関し、スーパーコンピュータの意義は認めているが、子どもたちの学習履歴を管理するのにスーパーコンピュータが必要かどうかという点で、この流れで出てくることについては疑問。

【新井委員】
 4ページの第2パラグラフの1情報教育、2教科指導における情報通信技術の活用、3校務の情報化の定義は、括弧書きで記載されている。例えば、情報活用能力を育成することが情報教育であるとすると、議論されてきた多くのことが抜け落ちてしまい、校務の情報化は教職員が情報を共有することとすると、多くの人は校内に閉じた情報共有をイメージし、開かれた学校を目指して2000年から行われてきた学校ウェブサイトが抜け落ちてしまう。どういうものが校務や情報教育に入るのか、国民に明確に伝わるような定義を書いてほしい。

【大路委員】
 2ページの第1パラグラフに「新しい知や価値を創造する能力が求められるとともに、・・・異なる文化・文明との共存や国際協力の必要性が増大している。」、第3パラグラフに「我が国の子どもたちにとって課題となっている思考力・判断力・表現力等」と明記されており、それを踏まえたコンテンツが求められていると思うが、それに関する書き込みが必要ではないか。
 8ページの第3パラグラフに「各地域で作成された優良なデジタル教材を効果的に収集・提供」とあるが、優良なデジタル教材とは、思考力、創造力、判断力が育てられるようなものであり、文科省としてもその開発に力を入れる必要があるのではないか。
 優良なコンテンツをどのように開発するかについて書いてほしい。

【陰山委員】
 第二章は、今までの様々な教育活動に、さらにこういうものをつけ加えてほしいというニュアンスで伝わってくる。ICTの導入により教材が共有化されるといった効率化に資する面が大きいので、教育活動が楽になることを現場に伝える文章になるよう工夫してほしい。
 教育の情報化、デジタル化を文部科学省でリードしてほしい。開発の視点をもっと強く入れて良いのではないか。
 最近、ビジネスパソコンとは違う教育機器がたくさん出てきているので、学校現場で必要なものを提起し、開発を促すような体制が必要ではないか。その観点では、19ページの第4パラグラフ「産学官連携による広範なネットワークの形成」を「産学連携等によって新たなデジタル教育システムを生み出す」というように強く訴えて良いのではないか。
 今までも情報化に対する提言はあったが、財政措置がなされず、実質的には実現せずに終わってきた部分が大きい。これは教育の分権化という基本的な制度によるものだと思うが、一方で、地域間格差や教育格差を生む1つの要因にもなっていると思う。全国的な整備がある地域においてなされなかった場合、その責任の所在を明確にする必要があるのではないか。

【野中委員】
 ビジョンがあり、それを具体化するために工程表がつくられるのが本来の姿であるが、先に新たな情報通信技術戦略工程表があり、その項目がうまく埋め込まれたビジョンがつくられている印象がある。
 ICTを活用し、児童生徒に1人1台の情報端末やデジタル教科書を持たせれば何でもうまくいくと読めるような論調になっているので、ICTをどのように活かして、どのような分野でそれが可能なのかについて切り分けて考えることが必要。
 日本では日本独自の授業文化や教育が行われており、その成果も十分にある。その中でのICT活用の現状を分析し、出てきた課題をもとに新しく求められるものについてどのように発展させるかという筋道が示されるべき。これまで培ってきた日本の授業文化や技術を活かし、充実させ、足りないところを補うという視点がなければ、学校現場には浸透しないと思う。

【安西座長】
 教育のビジョン、教育の方法と機材を入れることの間が離れている感じはする。

【鈴木副大臣】
 私は情報化とICT化を明確に使い分けており、学校現場が扱う情報の質や多様さを増やしていくことが情報化だと思う。教科書に書かれていることも情報であり、これをどれだけ質の良いものにし、質の良い提供の仕方をしていくかは、コンテンツの開発という話になると思う。
 学校経営に関しても、「いいとこみつけ」は情報化であり、様々な子どもをめぐる教育や指導情報が多角的、多様に集められ、連関され、構成されることにより、質の良い教育が提供されている。ここでは情報化とICT化は区別されているが、世の中では「情報化=ICT化」なので、これまでは、文部科学省や教育委員会を通じて教育現場へ授業や指導に関する情報を流し込んできた。それを、ステューデント・オリンエンティッドに、教育に関わる様々な人が様々な情報を持ち寄り、情報空間をどのようにしていくのか。そこには、既存のものも新しいものもあり、そのソースの多様化も非常に重要である。そして、そのソース自体が連動し、うまくコミュニケーションすることを何と呼べば誤解されずに伝わるのか、お知恵をいただきたい。
 情報編集の最大のリーダーは教師。それができる教師をどのように育てるのか、そのためにどのような情報をどこから集めてくるのか、環境づくりをどう支援するのか。それをアナログでやると大変なので、クラウド技術を活用すれば良いと思う。
 新しい概念を出すと、また新しい話が降ってきたような印象になってしまうので、今までのことを大事にしつつ、それを漸進的に改良し、目指すところに持っていきたい。一方で、革新しなければいけないことについて、どのような言い回しにすれば正しく伝わるのか、お知恵をいただきたい。
 ICTは単なるツール。ただ、ハード、コンテンツ、ソフト、端末を整備したくても、予算がボトルネックになってできなかったとならないことが重要である。そのためには、限られた予算の中で教育分野のICT化に必要な予算を安定的に確保しなければならないし、今までやってきたことでも遅れているという指摘もあるので、前倒しでやらないといけない。
 ビジョンが出るまで概算要求をしないわけにもいかないので、その視点に立った議論をお願いしたい。新たな情報通信技術戦略との関係で言えば、我々のやりたいことができる環境を十分に整備しておくことが必要。

【陰山委員】
 「学校教育の情報化」は、実際に取り組んだ経験を持つ立場から言えば、「教育情報のデジタル化」。いいとこみつけや成績表をデジタル化することにより、コンピュータで一元的に管理し、それをほかの人と共有化することができ、効率化が図られる。映像も、デジタル化してポータルサイトに置いておけば共有可能である。そのためのツールやシステムづくりがICT化ではないかと理解している。

【安西座長】
 今は、学びや知識を得るといった子供が成長していくことを、情報の流れ等の面から見ていく時代に入ってきているのではないかと思う。

【新井委員】
 デバイス、インフラ、コンテンツが最初に来るのではなくて、21世紀の学校の情報化とはどのようなものか、どのような教育手法で、どのような方向に進むのかが最初の章で書かれるべき。
 情報化は、デジタル化されたスタティックなものがすべてではなく、情報が動き、異種な情報がリンケージしていくダイナミックさのほうがより重要であり、それはデジタル化された情報を理解するというセマンティックスである。シンタックスとセマンティックスの間には大きなギャップがあるため、シンタックスで全部そろえたからといって、評価できるわけではない。
 例えば、学習診断や学力テストのようなものをデジタル化し、学習者がそのサイトに行けば学習診断ができるようなものをNICERが提供することについては、非常に良い効果があると思う。一方で、授業中の学習者の視線や注目といった履歴を大量にためれば個に応じた学習ができるかというと、今はまだそういう段階ではない。したがって、できることとできないことを情報学の中で見極めて、今必要なインフラについて見ていくことが重要だと思う。
 1000人の高校生の学習履歴をとって分析したことがあるが、ノートを集めて見る以上に負荷がかかる。今は、学習履歴をとって個に応じた学習が先生の負荷なくできる段階ではないと理解している。一方で、国研には学習診断に関する長い蓄積と研究があるので、それぞれのナショナルスタンダードに合わせて学習診断ができるタイプのもの、生涯学習の観点から、誰でもそれを活用して学習診断をし、足りない部分を示唆することであれば、今の技術で可能だと思う。

【野中委員】
 1人1台の情報端末の整備については、学習者用のデジタル教材が求める学力、学習に有効かどうかをこれからやって、見直しもあるということなのか、ゴールは決まっているのか。

【鈴木副大臣】
 見直しはありうるが、1人1台の情報端末の整備やデジタル化が望ましいとなった場合、それをあらかじめ明示しておかないとすぐには実現できない。
 個人として意見を言えば、教員の教案作成能力を上げることにより、教員が生徒や学級に応じた教案を主体的につくっていく。その材料としての教科書やその他教材といった様々な教材を、それぞれの学習コミュニティーや学習ステージ、プロセスに応じてどのようにカスタマイズしていくのか、それをサポートしたい。

【安西座長】
 教育方法としてどれが良いか検証し、それがはっきり決まってからやるというわけにはなかなかいかないのではないかと思う。

【三宅委員】
 学習履歴をとってクラウド化をして活用する場合、必ずしも大量データを扱うわけではない。学習履歴をいろいろな形で共有できる基盤をどのようにつくるのかについては、まだ技術開発が必要な部分があると思う。IT、AV機器を使いたくない先生でも、撮りたい時に簡単なボタン操作で必要な部分だけの録画ができ、ネット上にアップできるような装置とインターフェイスは必要だろうし開発可能だろう。それに対して、クラスの音声をマイクでとり、それぞれの子供の話している内容を短期間でテキスト化する技術は現状の音声認識技術ではまだ解決できずチャレンジングな問題。できれば非常に有効であるだけでなく、市場も大きいので、チャレンジングな課題として、現場から産業界へ問題提起できるかもしれない。
 ビジョン骨子に挙げてほしいことは、新しいタイプの学習者中心とした協調型の授業がどれだけ有効かについて、先生方のコミュニティーをつくり、その中で協調、吟味してもらうために強力なIT基盤が必要であること。そして、その中に入れるべきコンテンツとして、NHKの有料コンテンツ、会社がつくった優秀コンテンツがあるが、それと同時に現場や現場の研究者が欲しいものは、授業の進み方そのものについての生のデータ。学習記録として、そこから学び、教育の質を上げていくための大切な情報コンテンツの一つであることが書かれていると良い。

【宮澤委員】
 第四章に様々な事項が羅列されているが、現場の先生が理解できるか心配。CIOは重要であるが、教育現場で実行できるのか。また、司書教諭が配置されていない学校がいっぱいある中、本当に機能するのか。
 ツール、環境として提供するものは、今の段階で一番良いものをお願いしたい。
 ただ、それを現場の先生に使ってもらうには、明確なビジョンを提示するのはもちろんだが、それを踏まえて、今やらなければならないものは何なのか段階を追って書くべき。
 実際に学習履歴の活用までいかなくても、記録があるだけでも、現場の先生は使っていくと思う。使う方向性をできる限り視点として入れていけば、先生方も少しイメージがわくのではないか。

【國定委員】
 第六章に記載されている事項が2020年度までに実現できるのか、よく見えない。総合的な実証研究は重要であるが、そのためには様々な知見が必要であるし、実証研究を進めていく過程の中での新しいデジタルコンテンツの開発や新たな情報端末の開発といった具体の行為がなされることによって、全国に展開していくのだと思う。そのための人の支援、人の機関、組織の基盤について記載されるべき。
 第六章の第2パラグラフ「NICERの機能・体制の強化」は重要であるが、かなり限定的。前段では韓国の教育学術情報院やイギリスの教育工学通信庁といった事例が大上段に構えて出てくるが、結論は「総合的なポータルサイトの創設に向け、NICERの機能・体制の強化」となっている。そして、全部そろったコンテンツの全国への発信・提供方法については、第3パラグラフの支援措置と組み合わせて行うところまでは理解できるが、大事なのはそれまでのプロセス。実証研究を誰がサポートするのかという視点が欠けているように思う。
 指導者用デジタル教科書については、教科書会社を中心に進んでいるので、そこに開発を促していくという大まかな方向感が出ているが、学習者用デジタル教科書や特別支援教育の情報化については、非常に漠然としているのではないか。
 あらかじめ最大公約数的な環境を整えていくことは大事だと思うので、人的支援・組織についても、もう少し幅広くビジョンの中に盛り込んでいく必要があるのではないか。

【鈴木副大臣】
 例えば、専門教員(情報)のような教員を養成することは別途打ち出し、専門教員にはきちんとICTを使えるようになってもらい、その専門教員のサポートを得て、他の一般教員もできる限りやってもらうことは腹案としてある。しかし、教員コミュニティー間のチームにどのような役割が必要で、その人たちをもとにどのようなベストなチームを組成すれば良いのかについては、実証研究のマターでもあり、チーム編成も小・中・高で異なると思う。中・高では、そのチームの中に学習者自身が入ってくるので上記の腹案が必要になるかと思うが、実証研究の確認をとってとなれば、いずれにしても、教員全体の底上げとリードする教員の養成が必要なので、そこを先行的に書くという同意が得られれば、書けると思う。そのあたりの濃淡を議論すれば、もう少しメリハリが出るのではないか。

【國定委員】
 学校教育の情報化を推進するためには、国を挙げた推進体制の構築をある程度視野に入れておかなければいけないと思う。そこまで書けないとしても、その実証研究をするためのサポート体制が必要なのではないかということ、このサポート体制が実証研究段階を過ぎた後には常設の機関として専門的な推進機関に昇華していくということが第六章中に書かれれば、現実感のある推進体制の構築ができると思う。

【陰山委員】
 堀田委員提出資料では、現実的に動いているところについての分析と、どうすれば活用されるようになるのか、どのような効果がもたらされるのかについて意見が出されている。教育のICT化あるいは情報化はこれまでもかなりなされているが、きちんと分析されて次の行動へ移っていない。
 日本の制度の場合、実際に行われていることに対する分析が弱いと思う。アメリカでは、そこがきちんと分析されて、機器の開発にフィードバックされている例もある。今のNICERを中心とした機能を強化、総合的な体制にして、高度な研究開発を行うものを用意することは、非常に意味があると思う。
  昨年のスクールニューディールで多くの機器が入ったので、現段階できちんと分析し、このような効果が出てきているということを国民に知ってもらえれば、次の段階に移ることができ、予算も確保できるようになるのではないかと思う。

【重木委員】
 ICTを使うと、最初は事務の合理化のような分野から進んでいく。そして、その後は、セクションごとがつながり、お互いにコミュニケーションをとったり、情報を共有し合うということにより、お互いの生産性の改善といったメリットが大きくなってくる特徴があると思う。
 学校同士でいろいろなノウハウや教材を共有できるような仕組みをつくること、学校外とのつながりにおいても様々な情報交換ができるようにすることは非常に大事であると思う。
 ビジョン骨子案で、教務における情報化、情報利用、校務の情報化が別々に書かれており、別々に行われるべきことのように見る人もいるかと思うが、情報システムの導入でよく見られるケースとして、別々にしてしまうと、情報の入力が二重、三重に行われることになり、かえって現場の負担が重くなってしまう。
 したがって、成績、授業の進捗管理、教務の情報を連動して校務の情報化につなげて、それを総合的に一本化することを初めから考えておくことは非常に重要なことであるし、各学校間でいろいろなデータの交換がしやすいように標準的なフォーマットを定めておくことをもっと強調する必要があるのではないか。

【野中委員】
 昨年のスクールニューディール等で入った機器の活用による効果の検証と同時に、地域格差を解消すること。それをまず徹底的にやるところから記述すべき。
 第六章の実証研究部分は、例えば児童用のデジタル教科書の活用についての実証研究のように、具体的に項目立てして書き、それを検証することにすれば良いと思う。
 総務省のフューチャースクール事業はかなり仕様が決まっており、1年目は技術的な検証を行うこととしている。文部科学省としては、それを教育内容や教育方法にシフトして検証することを明記することが必要である。
 研究開発学校に関しては、小学校段階から児童の情報活用能力育成を中心にした教科、あるいは領域等の設定について提案し、何人かの委員から賛同を得られたと思う。研究開発学校で具体的に検証する中身についても盛り込んでほしい。

【五十嵐委員】
 ICT化は随分前から図られており、いろいろな実践はあるのに、なかなか広まらない問題として、整備すべきなのに整備されていないというハード面での現状や、サポート体制の必要性、小規模の教育委員会の問題など、いろいろあると思う。したがって、こういう現状が障害になっているのでもう少し検討しなければならないということを、最後の章でも良いので、項目としてきちんと明記すべき。
 学校は、機器がきちんと整備されていることが第一条件。機器の整備を活かすためにはサポート体制が必要で、この両輪は絶対に必要。これは、「教育の情報化に関する手引」や「学校のICT化のサポート体制の在り方について」の復唱になってしまうが、大前提としてやっていかなければならないと思う。
 環境が整えば、教員は、良いものであればどんどん吸収していく。日野市では、「ICT教育」ではなく「ICT活用教育」と言っている。どのように活用するかというところに教員の力量が問われるのである。
 学習履歴は、そんなに難しいことではない。我が校の例として、時々画像を見せながら授業を行っているが、生徒にどうしても理解してほしいときには個別学習支援システムが効果を発揮する。個に応じた問題で各生徒の状況が教師用画面に出て、何にも変化がないときにはランプがつき、先生はその生徒に寄り添うことができるので、コミュニケーションが深まる。一見、個別学習支援システムのようなICTは対コンピュータというイメージを持たれるかもしれないが、先生と生徒とのコミュニケーションが図られ、様々な教科の中で、異なる背景や多様な能力を持った子どもたちがコミュニケーションして新たな価値を生み出すこともある。
 校務の情報化についても、効率化だけではない。日野市では、ICTを活用してすべての先生の週案簿を見ることができる。他の先生の授業を見合ったりする中で校内のコミュニケーションが広がったり、教材を共有したり、学校の力がつく。
 ICTを活用すると最初は負担が増えるが、それを乗り越えれば、よさが分かってくる。今後1人1台の端末を持つようになれば、ある程度経験のある教員であれば、アイデアがどんどん浮かんでくるので、こんな学びが実現できるというわくわくするようなことを書くと良いのではないかと思う。

 同時に、一方的な指導にならないように、教員にはナビゲーター的な要素も必要になってくると思う。いろいろな情報を制御しながら方向性を持っていく力も増えてくると思うので、これまでうまくいかなかった点、新しいものが入るにあたって気をつけなければいけない点を章立てして書き、各章で、何を言いたいのか、これからどのようなことが行われる可能性があるのかといった方向を全体の構成にすると良いのではないか。

【宮澤委員】
 小学校、中学校、高校の現場はつながっておらず、学校種ごとに最適化されている。その中で、各学校種をどのようにつないでいくかということは、非常に難しい話。懇談会において最終的にどのような人材をつくるかということをミッションとし、それをもとに各学校に具体的な方向性を与えていかないと機能しないと思う。
 過去にも類似のプロジェクトはいっぱいあった。現場の先生や現場の先生とつながりのある人から意見を聞くなど、今できることもある。例えば、資料3に「学校現場で展開された好事例の収集・普及」とあるが、うまくいかなかった事例も集めて、それを踏まえて反映してほしい。

【新井委員】
 先導的教育情報化推進プログラムなどすでに学校教育の情報化に関する様々なプロジェクトがある中で、広まらなかったもの、広がったもの、いろいろなものがある。今後のワーキンググループ等で、今までのプロジェクトがどのぐらい広がったのか、費用対効果はどうだったのか、良かった点と反省すべき点、今後の21世紀型では何をつけ加えれば良いのかを考えるべき。その中で、すでに設計に入れるものと新たに実証実験が必要なものとを区別して考えるべき。
 校務の情報化に関しては、先導的教育情報化推進プログラムにおける熊本県の事例や学校ワンストップシステム、日野市の取組など、ずいぶん実証研究が出ている。校務の情報化は、保護者、地域、先生、教育委員会といった学校教育を取り巻くすべての人たちの間で情報流通がスムーズに図られ、教育の質がよくなると同時に効率が上がることだと思う。校務の情報化は、今まで行われたことを整理すれば、来年度に走ることができるところまで来ていると思う。
 教育についてはいろいろ手法があるので、研究指定校での実施は必要な段階かもしれない。また、デジタル教科書は新しい話なので別途実証研究が必要なものだと思う。現在総務省が行っている事業とうまく連動して、その中に文部科学省として研究してほしいことを埋め込んでいくようなことだと思うし、動けるものはすでにチェックしてアクションの段階に入っていると思うので、その切り分けをワーキンググループでやってほしい。

【市川委員】
 7ページの第4パラグラフに関し、多くの教科書会社がデジタル教科書の開発を進めているが、「これらの開発を促進するとともに、学校設置者が容易に入手できるような支援方策を検討する必要がある。」とは、具体的には何を想定しているか。
 8ページの第3パラグラフに関し、「映像・画像等授業で使いやすい教材をデータベースとして集積・共有化していくことが求められる。」と記載されているが、今では民間やNHKなどでいろいろ優秀な教材ができていると思う。NICERの最たる役割は、新しい学びや新しい教育について先生が授業で役立つような方法や事例を数多く収集して提供していくことだと思う。
 デジタルコンテンツを教育に利用していくためには、著作権の問題は避けられない。コンテンツを利活用・促進できるような著作権の教育における利用の優遇的な制度の検討について、少し盛り込んでほしい。

【齋藤生涯学習政策局参事官】
 デジタル教科書の開発の促進については、現在も教科書会社で開発が進められているが、検討していない会社も含めて開発をお願いする、もしくは促していきたいと考えている。また、教育委員会や現場の先生方が集まる場で、学校現場においても今後使用を検討してほしいと申し上げることは考えられる。
 支援方策に関しては、現在ではデジタル教科書の類についても地方交付税に基づく財政支出が考えられると思うが、積算上では、デジタル教科書・教材といったものが必ずしも入っていないので、その拡充が考えられる。さらには、一括交付金の議論も今後は視野の中に入ってくるかもしれない。

【小城委員】
 企業でも、新しい戦略をやるときには新規投資を行う。ただ、新規投資以上に大事なことは、既存の経営資源をどのように新しい戦略にアラインするかということ。したがって、今後実証研究を行う際には、ここでの議論に加えて、既存のこれまでの資産自体を21世紀に向けた力に一斉にアラインするような、トータルな実証研究をすると良いのではないか。

【安西座長】
 今日委員から示された意見も検討の上、次回改めて骨子案が提出されると理解している。次回の懇談会では、骨子をまとめる。懇談会は続くが、詳細についてはワーキンググループを設置し、そこで議論を続けていく。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局情報教育・外国語教育課

(初等中等教育局情報教育・外国語教育課)

-- 登録:平成23年03月 --