学校教育の情報化に関する懇談会(第6回) 議事概要

議事概要

1 日時

平成22年6月22日(火曜日)13時30分~15時30分

2 場所

文部科学省旧館6階講堂

3 委員出席者(敬称略)

 新井紀子、天野一、安西祐一郎、五十嵐俊子、市川寛、馬野耕至、小城武彦、重木昭信、玉置崇、千葉薫、中村伊知哉、西野和典、野中陽一、堀田龍也、三宅なほみ、宮澤賀津雄、村上輝康、若井田正文

4 文部科学省出席者

 鈴木文部科学副大臣、坂田文部科学事務次官、清水文部科学審議官、森口文部科学審議官、土屋総括審議官、板東生涯学習政策局長、川上審議官(生涯学習政策局担当)、德久審議官(初等中等教育局担当)、戸渡審議官(文化庁)、山下教職員課長、齋藤参事官(学習情報政策担当)、増子情報政策室長

5 議事概要

(1)鈴木副大臣挨拶
 本日は、教員へのサポート体制、あるいは教員のICT活用指導力、その他の論点を含めて、全体として残ったテーマについてご議論いただきたい。次回は「教育の情報化ビジョン」の骨子の素案を提示したいと思っているので、そこに盛り込むご議論をいただきたい。

(2)齋藤参事官より、参考資料1、参考資料2、参考資料3について説明。

【西野委員】
 九州工業大学では、一般社会人を対象に、実習も含めて8科目、年間200時間ぐらいの講座を開講して、1年間で情報教育支援士を養成している。
 10年ぐらい前から、教員対象の追加免許取得講座、免許法認定公開講座を開講している。10年間で160講座くらい開いており、200人近くの教職免許を発行し、既に現職で教えられている方に上級免許の専種免許の発行も行っている。
 単にコンピュータ・リテラシーを教えられる支援士や教員だけでなく、情報・情報機器を含めた情報手段を科学的に理解を図ることができるような支援士や教員を養成したいという思いがある。そういう資質が求められているのではないか、それが情報教育そのものの1つの大事な点だと思い、養成をしている。
 情報教育支援士については問題点もあり、もう70人ぐらい養成したが、卒業者がなかなか有効に現場に出ていけていない。現場のニーズは高いがマッチングが図れていない。
 都道府県や市町村の教育委員会で、教育CIOを補佐する役、地域の情報教育推進役のような人材の育成も重要ではないかと考えている。

【新井委員】
 教員のICT活用指導力、あるいは一般的に教員の指導力の向上に関しての研修については、各自治体の教育センターが担っている分量が非常に大きい。特にICT研修については、教育センターが非常に大きな役割を果たしているので、学校教育の情報化の現実解の1つは、教育センターの強化と指導主事の能力向上ではないか。
 教育センターに関しては、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の中で、「地方公共団体は、法律で定めるところにより、学校、図書館、博物館、公民館その他の教育機関を設置するほか、条例で、教育に関する専門的、技術的事項の研究又は教育関係職員の研修」等々「を設置することができる」となっており、教員の研修施設は「条例で定めておける」という、消極的な設置根拠になっている。そのことが、教育センターがICTに関して研究を行ったり、研修を積極的に行ったり、指導主事が能力を向上させるために外に出て研さんを積むための研修費用が出ていないということにつながっている。
 この5年間で都道府県及び政令都市のセンター全体に関して、研修予算が34.4%減っている。また、職員の研修のための旅費が28.3%減少しており、図書費が全くないところが7センターもある中で、最先端のICTの研修を行うことは非常に困難。
 都道府県だけでなく、市町村レベルのICTの研修は、ほとんどが1日の研修にとどまっており、なかなか効果的な研修ができない。
 県の研修センターに小中学校の先生が研修に行っても、都道府県と市町村では縦割りになっており、県で研修したことを持ち帰って利用したり、サポートを受けたりできないというギャップがある。連携をスムーズにするだけでも改善が図られるのではないか。
 自治体の教育センター等に関して、法律で「設置する」と明確に言うこと、各都道府県、政令指定都市の教育研究センターをうまく活用する、あるいは指導主事を大学等に研究に行かせて能力を向上させ、それを県に持ち帰り、研修に生かして、校内研修まで隘路がないようにスムーズに連携させることが大変重要なポイントではないか。

【玉置委員】
 校務におけるICT活用については特別に教員が研修を受ける必要はないのではないか。システム側が直観的にわかるようになってきているし、むしろかなり研修を受けないと使えないような校務のシステムはだめだと思う。OJTで教員は学んでいくし、特別な研修をする必要はない、そういうシステムであるべき。国の支援は、そういう基準やある程度の要件を示すことでいいのではないか。
 学校マネジメントをうまくするために校務の情報化はとても大事だということを、管理職、養成側に認識させ、現場にいいシステムが入ってくれば特別に活用能力を伸ばすための研修は必要ないのではないか。
 授業におけるICT活用については、実物投影機は現場にかなり入ってきて、いい授業をしたい教員は、教科書を大きく見せて授業をやっている。国の22年度の統計を見ると、3割の教員がまだできないという説明だったが、中学校で10人の先生のうち7人が使えば、生徒からも、大型テレビを使ったらもっと、という声も上がってくるだろう。教師用のデジタル教科書についても、タブレットコンピュータに英語のデジタル教科書を動かせるようにしてセッティングし、コンピュータに不慣れな先生に操作させ、英文やネイチャーの発音が出てくると、使えるということになる。いい授業をしたい、今まで苦労していたという思いのある教員であれば使うと思う。
 子供用のデジタル教科書については、子供が端末を持って、デジタル教科書を授業で活用するイメージが浮かんでこない。これについては、プロジェクトを立ち上げて、モデルから教員の新たな活用能力が見出されてくるのではないかと思う。
 学校において、子供が下を向いて教科書をずっと読むような授業は当然ない。ただ、それがデジタルで提供されることで学びが広がるという議論があるが、日本の学校の中で実現したときにどんな授業をしたらいいのか。ICTを使った際の学び合いの起こり方を具体的に現場に示していかないと、学校現場で使おうという気持ちにならないのではないか。

【堀田委員】
 教員に求められるICTを使った指導力は2つあると思うが、1つは、従来の教科指導等で子供たちの考えを引き出しながら学ばせるうえでICTをどのように役立てるかというものだと思う。 -3-
 教師が教室でやりたいことを助けるICTとは、子供たちの意見をうまくまとめ、共有するための装置、あるいは先生が考えていること、子供たちが考えていることを子供たち全員に見せるための装置である。そう考えると、実物投影機やコンピュータが教室に確実に配備されれば、使い勝手のいいものから先生たちは使っていく。まずは確実に学校現場に必要な装置を届けることが重要である。
 もう一つは21世紀型スキルである。これは、今までの指導法、今まで求めてきた学力にプラスして、さらに21世紀にこういう能力が必要だという部分であり、やや模索的な部分がある。そこに子供用の端末やデジタル教材がたくさん導入されてくると、混乱が生まれて、学校現場から非難されてしまうのではないか。
 子供たちがそういう道具を使っていろいろな問題解決をすること自体は賛成だが、それを教師がちゃんとディレクションしていくための仕掛けをどうつくるかということだと思う。ある教育内容を示し、やや専科的にそれを行う。そこから始めて、最終的には各教科の中で21世紀型スキルが身につくような形に段階的に移行しないと、混乱すると考えている。
 上の2つに分けて議論することが重要ではないか。前半は、あとは予算をきちんと学校現場に届ける仕組みだけの話になっているのではないか。文部科学省では、後半のところを重点的に考えていくべきではないか。

【安西座長】
 教員の側から見たときにどういう教育をしていくべきかということと、子供たち一人一人から見たときの学びのあり方をどう見るかということに分かれると思うが、現実的にはいろいろなファシリティーを入れていくことは当然必要。そのときに、今までの延長線上で入れていくのか、新しいビジョンを持ってそちらへ向かっていくのかということで多少変わってくると思う。今までのことはよしとして、別にまたビジョンを考えればいいというのは少し違うのではないか。

【堀田委員】
 今までのままでいいと主張しているのではなく、今までは各教室に整備すると言いながら、地方交付税の問題等があって届いていない現実があるということを申し上げている。予算をきちんとつけるような何らかの仕組みを使って届ければ充実する。このことと新しいビジョンは別建てで考えていくべきではないかという意味である。 -4-

【野中委員】
 現状の教育システムの中、一般的に行われている授業の中にICT活用がきちんと定着する段階を踏まない限り、先はないと思っている。昨年度の補正で、整備は7割方ぐらいついたが、これでは不十分。教員のICT活用が今はほとんど定着していない実態があるため、150%ぐらい整備をしなければならない。現状の授業の中でのICT活用を先生方が普通に行えるということをまずやらない限り、そこを飛び越えては無理だと思う。
 教育委員会の研修担当の指導主事と、整備担当の指導主事が異なっていたりする。研修の側は先生方の研修をある程度一定のレベルでやっていると思うが、導入する側の担当者に対して、今まで働きかけをしてこなかったのではないか。教育委員会の導入整備担当者に対する研修、あるいはそういうモデルを示すことが重要である。
 学校の管理職が率先してICT活用に前向きでない限り、学校の中での普及はあり得ない。上の方から研修をしないと現場の先生方の完全な底上げというのは難しい。
 教員養成は、非常に難しいと思っている。教職の中に、教科の中でのICT活用や情報活用能力を育成するための指導方法についての科目を1つ立てる。問題は、科目を立てたときにそれを教員養成の中で指導できるスタッフがきちんとそろっているかである。議論の中で、教科の教育法の中でやるべきだという議論もあったが、こちらのほうが難しい。それより、こちらも専任のスタッフを立てるというほうが可能性があると思う。
 スキルに関しては、教員養成の教員の資格を取る前に、コンピュータテスティングで先生になる人たちのスキルテストをつくって、教員になる人たちが一定のスキルを習得しているかをチェックするという仕組みもあってもいいのではないか。

【安西座長】
 機材や設備がまだ整っていないので、それをまず入れてからでないと次に行けないと考えると、これからの時代の教育に間に合わなくなるかもしれないという考え方もあると思う。そこをどう考えるかということは非常に大事なことではないか。

【野中委員】
 実際に導入しても使われていない実態はないか、入れ方が悪かった例はないか、それはいろいろな制約があったからだと思う。スクール・ニューディールでも、予算と交付税で、教育委員会によっては交付税の措置が足りなくて十分な整備ができなかった。そういうところはただ提示機器があってコンテンツがない、実物投影機もないので、工夫しようと思ってもできない。そういうことをきちんとやらない限り、先生が使っていくということはあり得ないのではないかということである。

【三宅委員】
 今あるものでできることが、先生と子供の関わりの中で見えていれば、先ほどからのいろいろな議論がうまく進むと思う。普通にやれることだが、まだなされていないことで21世紀型スキルが育つのであれば、積極的に一緒にやろうというスキルも目的もお渡しする、こういうことのためにこうやろうという働きかけをすることも大事だと思う。
 先生方にコンピュータがあって、ネットワークが本当に使えるのであれば、例えば今日の授業の教案と授業の様子を全国に発信して、いろいろな先生方と、教材を協調的に吟味できるようになると、随分物事が進むという話をすると、うちのネットワークでそういうことができるのかという反応はある。ネットワークとして学校の職員室で使っているコンピュータがどう使えるかということを知らないのであれば、教えていくようなシステムがあるといい。
 ICTを使うとどのように学び合いが起きるのかということが先生に見えていない。授業で、自分がどんな質問をしたら子供がどう反応してきたかという学びのプロセスの記録をネットワーク上にたくさん溜められると、全部チェックしていなくても、先生と子供の学びの記録が取れ、それを子供たちと振り返るチャンスができるだけで、学び合いのチャンスが広がる。あるいは、クラスの中で考えて、いろいろなアイデアが出てきたときに、ネットワークでつながっているほかの学校につないだら、違った視点が入ってきて学び合いが広がったという使い方が、今あるものでできるのだが、されていないところはかなりある。こういうものを掘り起こしていくことによって、教育を変えていくためにICTが使えるということを、目的とやり方と評価の仕方をセットで先生方に届けていかないと、先生方から「今のではだめだからこうして」という要望が出てきて、文部科学省が走ることにならないのではないか。そういう形にしていくことが、私たちが議論していく中で1つのねらいだと思うので、そういう話も最終的には提言の中に入るようになっているといい。

【村上委員】
 参考資料1の「教員のICT活用指導力」のデータは地域別の整理になっている。これを年齢階層別の整理にすると、また違った光が当たってくるのではないかと思う。なぜなら、1990年代の中ごろぐらいに高校生だった「デジタルネイティブ」の世代が30歳代に入ろうとしている。よって、これから教員全体のICTリテラシーの水準というのは、加速度的に高まっていくのではないかと思う。ただ、それはICTリテラシーの問題で、ICTで教えるリテラシーにつながるかどうかはまた別の問題であるので、ICTリテラシーを持つ人と教え方のスキルの高い人のコラボレーションがどのくらい起こるかというのが1つの鍵だと思う。そういうプラットフォームをつくっていくのが、国の重要な役割の1つではないか。
 ICTの世界でのiPad等の成功の大きな要因は、インターフェースをオープンにしたことである。そのことで瞬く間に万単位のコンテンツやアプリケーションが乗ってきたことは非常に大きいと思う。
 教育の情報化を考えるときも、全国どこからでも、教員であればだれでもオープンに、特定単元の授業コンテンツを動画で登録できるような仕組みを生み出していくことが重要である。教員のコミュニティーは、一定レベル以上の知的水準を持った人の集まりである。教員の中で教え合う仕組みをつくるために、教育コンテンツのディレクトリのナショナルセンターのような仕組みをつくっていくことが非常に重要ではないか。先生方同士でサポートし合うような仕組みを国がサポートすることが必要である。ビジョンの中にはこういう視点も入れていただければと思う。

【五十嵐委員】
 15年前に、子供たちが教室の中ではできない学びがICTでできるとすごく感動した経験を持っている。
 教室でフェース・トゥ・フェースで話しても、言葉はすぐ消えていくが、文字や画像で何度も吟味していって、そこでやりとりが膨らんでいく。学びのプロセスは着々と蓄積されていくし、それを子供たちが振り返ることもできる。それがほかの学年にも広がっていき、教師は隣のクラスの学びを見ながら自分の指導も考えることができた。
 実際にICTへのアプローチの仕方で、今まであまりICTに響かなかった先生も、それで「あっ、そうか」と思うことも確かにある。
 ICTを広げるやり方も大事だと思う。広げてから深めるのではなく、広げながら、一方で学びを深めるやり方もある。両方のアプローチで進んでいく必要があるのではないか。

 実際に機械が整備されていても使われないのは、そこにはビジョンがないからではないか。日野市には教育委員会や市としてのビジョンがある。それに基づいて校長がビジョンを持つ。校長のビジョンを達成するためにICT支援員、メディアコーディネーターが支援に行き、授業を一生懸命手助けする。
 ICT活用指導力について、1つ項目が足りないと思っている。表現するというところまではあるが、そこから情報交換とか協働学習というレベルのものは含まれていない。これは絶対につけ加えるべきである。付け加えてバージョンアップして、先生たちの指導力を高めていく必要があるのではないか。これからの教員の力は、ICTを使って協働学習を指導できる力が大事だと思う。
 デジタル教科書を使うと、教え込みにならないのか不安な気持ちがある。デジタル教科書を使って教え込まない指導方法、指導力、それから学習記録を振り返って子供の学びを分析し、それに基づいて個別に指導できる力をぜひ大学の教科教育か教育方法の時間で身につけていただけたらと思う。

【重木委員】
 参考資料1を見ると、どちらかというとハードウエアとか回線が整備されているかどうかということを中心にまとめられていると思う。
 実際の授業においては、ハードウエアと回線だけあっても、先生の負担が大きくなるだけなので、既存のコンテンツや先生方が工夫してつくられたコンテンツをほかの人が流用できるような、あるいは、それを参考にしながら、自分の授業に生かせるような仕組みの整備が非常に重要になってくるのではないか。
 教育ということで指導要領に基づいてやっていることを考えれば、国が手助けして、ある程度体系的に整備する。国の役割として、早目に整備したほうがいいのではないか。
 著作権法等の問題が起きないようにうまくデータベースを整備していくという視点が必要なのではないか。

【安西座長】
 「理科ねっとわーく」では、理科のメディア教材の蓄積と流通について、多くの人が努力して続けている。

【堀田委員】
 参考資料1の電子黒板の導入を見て、5万6,000台とすごく入っているように見えるかもしれないが、学校は3万7,000校あるので、1校当たり1台程度でまだまだ整っていない。十分に導入されているが、使われていないのではなく、まだまだ全然届いていないという認識を持っている。
 超高速インターネット整備率は66.5%だが、超高速というのは30メガbpsである。何百人もいる学校で三宅先生のおっしゃっているような学習をやるのは現実的ではない。こういう状況を考えたときに、十分に導入されているが、先生たちは使わないということではなく、もっとたくさん整備されて、そこで教師に有効だという実感をさせない限り、うまくいかないのではないか。
 ハードウエアの部分が調べられて公表されるので、自治体はここを中心に整備していくため、予算はハードウエアにつぎ込まれて、コンテンツまで回らないことが繰り返されると、テレビはあるが何もつながっていないというようなことが起こって、中途半端な整備になるというのが野中委員の話だと思う。
 教室のICTについて、強いイニシアチブを国が示すべき段階にあるのではないか。同時に、21世紀の子供たちのための能力の育成に向けて、条件整備とカリキュラム整備をきちんと進め始めなければならないのではないか。

【安西座長】
 単体のハードウエアを入れていくことと、ネットワークあるいはコンテンツ流通を整備していくことを両方並行してやるべきだと思う。ネットワーキングやコンテンツの流通ということが非常にこれから大事になるのではないか。

【堀田委員】
 それは了解していて、ネットワーキングするものがないということ、まだ十分でないということを申し上げている。

【若井田委員】
 現職の教職員の資質向上という点では、教育センターの役割と指導主事の役割の重要性は言うまでもないが、一番大切なのは、各学校の中で教職員が資質、能力を伸ばせる環境づくりではないか。
 世田谷区では、教職員同士が学び合う環境整備として、イントラネットで95校の学校がアクセスできて、教材をフォルダにプールできるようなシステムをつくった。これからコンテンツをためていくところである。
 中学校においては、これからの情報利活用能力、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、問題解決能力を伸ばすような教科を置いていいのではないか。それが現職教員の対策にもなると思う。大学での教員養成も非常に重要で、今述べたような能力を徹底的に伸ばすような大学養成のあり方が問われるだろう。
 教員がICT機器を手軽に利用するためには、情報端末とか、デジタル教材等の使用は継続性がなければならない。教員には抵抗感があるので、国のほうで学校教育における情報端末やデジタル教材はどうあるべきかを考え、著作権、ライセンスの問題とも絡むが、ある程度の使用のモデルを示した方がいい。
 自治体は何をするにも予算がないとできない。ランニングコストを含んだサポート体制もそうだが、人的措置、機器の更新、コンテンツ購入の予算も必要である。地方交付税に頼っている予算構造ではなく、しっかりとした国の施策が必要である。

【西野委員】
 教育センターでの教員の研修は大切だが、やはり校内での研修が非常に有効で ある。数少ない例だが、隣の市のICT支援員で働いておられる方が小中学校に行って、その時間を設けてやっている。当然、その小、中学校でICT指導に関して中心になっている方々と組んで行うのだが、非常に有効で、行っている市と行っていない市とのICTに関する活用率はかなり差があるのではないか。ただ、時間の確保が非常に難点で、例えば講習会を行うにしても、なかなかそろわないという問題がある。現場は非常に忙しいので、先生の時間をどう確保するかということが課題としてある。
 児童生徒のICT活用能力育成のための時間もある。21世紀を生きる力を育成するような時間を、小学校、中学校で設ける必要がある。つまり、きちんとしたカリキュラムをつくるということになるが、そういうことを次の新課程に向けてぜひ考えていかなければならないのではないか。中学校でも高等学校でも情報教育に充てられている時間が非常に少ない。児童生徒のICT活用能力を育成する能力、活用するというだけではなく、情報や情報手段そのものを理解する力をきちんと学ぶ時間を保証することが必要である。

【清水文部科学審議官】
 教員の資質能力の総合的な向上方策についての諮問は、教員に求められる専門性とは何かと問おうとしている。学校ごと、教科ごと、実践的指導能力やさまざまな他のものも含めて、専門性とは何かという部分の中で、どの教員にもすべて求められる専門性、ICTに関連して言えば、こういう内容をやっているが、これをすべての教員に養成ということで十分なのかという議論。そして、専門性とは何かという問題は、免許状の専門性、各講師区分ごと、教科ごとという部分で、教員に求められている専門性は教科専門性だけなのかという議論もあると思う。教科専門性に加えて、例えばエクスパタイズという観点を考えれば、通常求められているよりもより深めた専門性を持っている、あるいは持っていないという部分も、多様な教員という形であればその議論は出てくるだろう。
 それは免許状との関係であると同時に、養成課程のあり方の問題である。養成課程のあり方の問題というのは、養成課程を終えたことが免許の要件なら、ラーニング・アウトカムをだれがどこで保証するのかという問題になる。スキルチェック等を踏まえた上での免許状であり、そのトータルのシステムとしての課程認定と評価という流れの中で考えるべきではないかということを、この諮問から読みとっていただければと思う。
 専門性というものを考えた場合に、現に教員として採用されたものについて、専門性というのはより深化、熟成という段階があり得る。そこを免許状という中で考えることはできるのか。例えば専門免許状というものがあるが、学校を構成する教職員集団の中で、専門性の深まりというものをどう評価するかという問題とも重なり合う。これはまさに研修の問題として議論された問題。こういう問題意識を背景として諮問が行われている。そういうことについて、ICTという観点から考えた場合に、どんな議論、提案がいただけるのかと、非常に関心を持っている。
 教員養成のシステムは、完成形になるまで10年あるいはそれ以上かかる。ただ、現実問題として、現に今学校があり、教員がありという、待っていられない状況の中で、免許状制度や、大学等での研修機会、校内研修を通じて、どう充実していくかという観点がある。また、新しい教員の養成にシステムとしては10年以上かかるとしても、その専門性というものをどう評価し、考えていくか、何が学校の教員に本当に求められているか、免許状という観点でどう見たらいいかというのは、議論としてあるかもしれない。

【安西座長】
 この諮問文の中には、専門的基盤とか、免許状のこと、研修のこと等が内容にかなり含まれている。ここで議論されている、ICT関係の教員の問題についても、直接的に関係してくると思う。中長期的には教員もだんだん変わっていくので、そういう中で、教育の情報化ビジョンと教員の資質向上等がドッキングしていくことは十分考えられる。

【新井委員】
 校内研修が大変重要で非常に効果が高いことはよく認識している。例えば広島市などでも、近隣の情報科学部の学生がICT支援員として派遣されて、先生方と一緒にICTを活用した授業をつくるという試みも行われていて、大変成功していると聞いている。
 ここでは全然違う2つの議論が行われている。21世紀に新しいタイプの教育が必要になってきているということに関してはICT支援員の問題ではない。大学を変えるということになると10年がかりになるかもしれないし、もう大学を出た方もおり、その方たちも待ったなしで21世紀の教育へ方向性をやや転換していただかなければいけないという問題がある。そのときに、教育センターと校内研修との連携がないと、多分回っていかない。教育センターの研修というのは、その地域におけるベストな21世紀の教育のあり方の概念を大学院等で聞いてきたり、大学の先生との共同研究で開発をしたりした上で、地域で実際に実行してみて、実効性の高いものを選んで、具体にしていくというような研究事業をやっている。そこがすごく重要で、校内研修まで落とし込むということを、一番短いサイクルで実効的にできているのは、多分教育センターだろう。
 どういう21世紀の教育になるかということとは別に、そこを抜かして何かができるものではない。教育コンテンツの流通の仕組みということを考える上でも、教育センターが大量に蓄えている教育コンテンツをどのように共有化するかという仕組みがネットワークで必要という話であれば、村上委員や重木委員がおっしゃったようなことも実現できると思う。

【小城委員】
 私は企業再建の仕事をしてきたが、数千人規模の会社の従業員の行動を変えるのが一苦労である。人の動きはそう簡単に変わらないとすれば、全国の先生方100万人の動きを変えるというのは大変である。問題意識が高い1割、2割はすぐ変わるかもしれないが、100万人の大多数が現場で本当にICTを使いこなすためには、おそらく研修だけでは難しいと思う。評価制度なり、免許なり、少し厳しい仕組みも同時に入れていかないと動きというのはなかなか変わらないのではないか。

【宮澤委員】
 目を輝かせる子供たちとグローバル人材をどうやってつなげるのか、なかなかわからない。正しい学びを行いながら、どういう人をつくるのかが明確でない状態で現場に落としても、現場の先生はよくわからない。情報機器を活用する教育とは何かということを現場の先生方と話をしても、小学校、中学校の先生は比較的イメージがわくが、受験に追われている高校の先生に聞くと、うまくイメージがわかないと言っている。校種によっての格差、地域差等も多くある。小中が非常に連携してビジョンもあるが、高校に行くとビジョンがつながらないということもあり、ちぐはぐになっているのではないか。情報機器をうまく使って、メッセージを持ちながら共有していくことは必要だが、一番重要なのは一貫したビジョン、接続性である。何を検証させるかということを明確に伝えた上で、役割分担していかないと、機械だけ入れてもサポートがないとなかなか動かないのではないか。
 一番重要なのは、先生方の支援をどうやるか。そのためには、教育センターも必要かもしれないが、外部の方々のお力添えもないと何年もかかってしまうので、民間の方にもお力添えをいただくような仕組みができないか。

【千葉委員】
 県の教育センターの情報モラルに関する講師を務めており、昨年、主に携帯電話とかインターネット絡みの話で、数十名の先生方に集まっていただいて講習をした。私は子供たちのいる現場には顔を出すことがほとんどないので、実際にどういう形で講習が伝わっているのかを先生に聞いた。高等学校の先生に、学校に帰って情報共有をしているかについて聞いたが、できておらず、学校に帰ると、その先生が専門にやってほしいという実態がほとんどのようだ。教育委員会からの指示が全くなく、方向性が定まっていないことも、講師の立場としては少し残念である。
 電子黒板が入った現場に話を聞いたが、1台入り、授業ではとりあえず1回使った。しかし、動かしたいソフトがあるが、ハードだけあっても動かす環境がないということで、なかなか授業ができないとのことであった。さらに、市町村の教育委員会から指示がないという実態がわかったので、教育委員会に聞きに行くと、情報化に関してはこれからということだった。これからどうなるか大変期待はしているが、実態としてはなかなか活用されていないという現状がある。

【野中委員】
 ICT支援員について、高等学校と小中学校では、明らかにニーズが違う。高等学校は、テクノロジー寄りの支援を求めていて、結構難しいことを求められる。小中学校のほうは、事業支援みたいなところで求められる。ICT支援員を教育委員会がきちんとコントロールしているところはうまくいっているが、そうでないところはうまくいっていないように思う。
 資料6で提出した情報化に関する機関の設置について、総合的、継続的に調査研究をする機関としてはイギリスのBectaがあるが、そういうところでは、例えば5のところに調達とあるが、機器の一括調達だけでなく、サービスのフレームワークやテクニカルサポートのフレームワークみたいなものを国がつくり、その基準に照らして認証を受けた機関がきちんと学校のサポートをする仕組みをつくっている。システムの仕様策定について一括調達をするので、ここでコスト削減も図れているが、サービスやサポート、ハードウエアの仕様等を含めて、こういうところをやる機関が必要ではないかと思う。
 Bectaでは、情報化のビジョンやナショナルカリキュラムへの組み込み等に提言や参画をしている。また、毎年情報化実態調査をやっていて、整備だけではなく、活用実態や課題の洗い出し等もやっている。大きな研究プロジェクトとして、2002~2003年ぐらいに、学力とICT活用の関係について、電子黒板やタブレットコンピュータなどのICT機器を経済的に恵まれない地域に大量に導入して、どこまで教育効果が上がるかというかなり総合的なプロジェクトをやっている。まず、こういうものをやっていくことが必要ではないか。
 研修に関しては、TDA(英国の教員研修機関)等との連携、あるいは「Teachers'TV」という教員研修向けの放送番組があり、これはネット上で日本でも見られるようになっている。
 最近は、低所得者の100万の家庭にインターネット接続コンピュータを配付したり、優れた学校の表彰をしたり、情報化の基準を満たした学校にICTマークの認証をする制度もある。こうしたさまざまな取り組みをやって、情報化を少しずつやってきた。これが10年ぐらいかかっている。どこからやるかと考えたときに、段階を踏まないで一足飛びにカリキュラムを変えましょう、新しいテクノロジーを導入しましょうといってもうまくいかないのではないか。その他、最近では中等教育学校の建てかえのときに、ICT導入のモデルを提示することもやっている。
 イギリスは政権交代でBectaは秋に廃止らしい。新しい政府の仕分けで、ナショナルカリキュラム自体もかなりの影響を受けていると聞いている。こういう機関をつくるとしたら、政権交代があっても残るような機関をつくっていただきたい。

【玉置委員】
 先ほどから、指導主事が指導主事になっていないというお話があるので、教育委員会の立場で言っておきたいと思う。確かに、市町村や県には指導主事がいるが、現場の指導はしたくてもできない状況がある。校務の情報化に関する文書を軽減していただくと、学校現場への指導できるようになる部分もあるのではないかと思う。
 校務の情報化で、通知表やいろいろな話題が出ていたが、国で文書の発送や収受のシステムを統一していただくと一番早いのではないか。これは非常に現場の軽減になる。私は現在、教育事務所にいるが、教育事務所に来るまでに、本文が1枚の上に県の教育委員会の鑑文がつく。そして、学校に行くときには、本文の上に4枚ぐらいの紙がついていることになる。このようなことが全国で行われていて、私も決裁を1日に幾つもするが、これを電子政府というような形で統一ができれば、現場が負担の軽減を感じられるのではないかと思う。そうなれば、指導主事が本来の指導主事として働けるのではないか。

【五十嵐委員】
 最終的に通知を受け取る学校としても、文書は何とかならないかと思っている。
 教員のサポート体制のことであるが、文部科学省から既に、学校ICT化のサポート体制のあり方という報告書が出てから、全国で5つの自治体がモデル的にやっており、ICT支援をうまく活用している非常に良い実践があるので、そういうことをもう少しPRしたほうが良いのではないかと思う。
 サポート体制が継続していくためには、ICT支援を制度化する必要があるのではないか。そうすれば小規模の自治体などでもそのような支援制度がきちんと位置づくだろうし、一刻も早く制度化をしてほしいと思う。
 最終的な究極のサポート体制は、ICT支援ではなく、メディア教諭だと思っている。現在の司書教諭がその機能も併せ持ちながら、メディア教諭として新しく改編されたらどうかと思っている。徐々にICTを活用していくことが日常化していけば、どんどん新しいニーズが生まれてきて、希望が膨らんでくる。授業の質をどう高めるかという支援が役割になってくるので、メディア教諭が各学校に1人いれば、だいぶ学校は助かると思う。将来的にはそういう検討をしていただけたらと思う。

【新井委員】
 図書室が小・中・高校で、1人1台パソコンという時代が来る前に一番重要なのは、図書室・図書館が情報の中央司令室のような形で機能をするということだと思う。小学校は、本や図鑑などからどのように情報を取捨選択し、活用し、読み込んでいくかということから始まって、どのように本を探すかという本の探し方の段階である。それから、それ以外のマルチメディアを活用した広い意味での情報活用能力を子供たちが培っていく一番重要なゆりかごのようなところに学校図書室・学校図書館がなっていくことが重要である。それに関しては、ICT支援員という以上に、図書館司書が必ず学校に一人はいて、その方が併せてメディア的な免許を持っていることが一番望ましいと思う。実際、図書館の司書養成課程においてはそのような教育が行われており、多くの司書が情報共有能力をつけているので、そのことは決して非現実的ではないと思っている。
 問題なのは、特に小学校などでは教諭が兼担していて、学校図書館司書という 存在がほとんどなくなっていることである。学校図書館にちゃんと人がいるということが多分重要なのだろうと想像する。
 最近、日本の20代の女性はインターネットを使うことに関しての関心と信頼性が他国に比べて極めて低いというデータが出ているという非常にショッキングなことを聞いた。ヨーロッパ、アメリカの20代と比べて、日本人の女性はインターネットを使うことに対して非常に怖いという印象を持っているとのことである。20代の若手の方がそのように思っていることは大変問題だと思う。
 学校での情報モラル教育が怖いものには触らせないという教育になっていて、ネットワークを活用することの勘どころを実地で全然教えていない。本来ならば、インターネットを使った情報活用においてどのようなことが起こるかということは、学校で、ある程度安全なところで教習所のようにして経験を経るべきだと思う。そのことを小・中で行われていない。そういうことをきちんと行わない限り、座学でこのような危ないことがあるというビデオだけを見せていると、ずっと日本ではそういう状況が続くのではないかと非常に懸念している。

【安西座長】
 今、メディアやネットワークという言葉が出てきているが、個人的にはそういうことがとても大事だと思っている。

【千葉委員】
 情報モラル教育をしている立場から話をさせていただきたいと思う。年間に多い年は20回程度、先生方の前で話をしているが、その後、職員室に行って、先生方からどのような教育をしていますかという話を伺うようにしている。
 例えば、現在、プロフというものが非常に危険な状況になっているが、先生方がそういう裏サイトについて子供たちの動向を調査しているかという話を必ず聞くようにしているが、ほとんどの先生方からは怖くてアクセスできないという言葉が返ってくる。先生方に怖いものだという意識がある。子供たちがどういうサイトを見ているのかという調査についても、先生方からは同様の言葉が返ってくる。
 私は、決して怖いものではないから、先生方も率先してアクセスして実態を見てください、その上で教育をしてくださいという話をしている。10年ぐらい続けているが、先生方が直接そういうところにアクセスをして、子供たちの実態を見ていただくことがなかなかできないという現状がある。
 最近、先生方の研修会が多いが、先生方の情報モラルの教育をするにはもっと多くの時間が必要だと思う。予算の面もあると思うが、そのことについては、もっと真剣に考えてほしい。

【重木委員】
 ICTの特性として非常に有利な点は、デジタルで何回コピーしも劣化しないことや、瞬時に伝えることができるということで、教材やコンテンツのデータベースの確立といった点である。
 また、個人単位の管理をリアルタイムでできるという特性もある。これを授業に応用した場合にどうなるかを考えると、児童または生徒の理解度を瞬時に把握し、その結果をもって、個人ごとに最適な指導をしていくことが可能になってくると思うが、突き詰めて考えていくと、現在、一般的に行われている一斉授業とは違った形になってくるのではないかという気がする。将来的な展望を考えるならば、そういったことの実験も早目に着手し、経験を積み重ねて、知見を得ていったほうがいいのではないかと思う。

【安西座長】
 将来にわたって、日本のこれからの教育をどうしていくのかということについては、学習者中心の教育にしていくべきだろう。また、ネットワークなどが大事であろうということは、将来のビジョンとして入ってくるべきなのではないかと思う。
 一方で、現状を考えると、そこまでどのように持っていったらいいのかという議論になると思う。電子黒板については、放置が起こり得ることは初めからわかっていたと思う。そういうことを非常にきめ細かく詰めながら、ロードマップをきちんと描かなければならないと思うし、現場の状況は大事にきちんと考えていかなければいけないと思う。

【三宅委員】
 ICTの使い方について、教員支援や教員の資質、能力向上を考えるときに、ネットワークの基盤がまず大事だということで話を詰めるなら、24時間いつでも問い合わせができるような強力なセンターをまずつくることである。ネットワークがきちんとしていれば、サービスセンター化することが可能である。
 学び合いも、ネットワークがきちんとしていて、先生方が共有し合えれば、すべての教科、学年、学力差のあるクラス、低いところでも高いところでも、やったほうが良い効果が出るということは言えると思う。
 先生たちの資質を上げていくということを考えるのであれば、そこで国の指導は大事だと思うが、そのときに大事なのは、一種類の先生をつくらないということである。多様性を目指す教員資質養成を考えておかないと、ネットワークをつくっても全体が崩壊してしまう可能性があると思う。

【馬野委員】
 最近の報道によると、ある情報端末に関して、いったん審査にパスして配信が始まったアプリについて、ある日突然、削除されたケースが出ているということである。これでは、審査をパスして配信されていた教科書が何の予告もなく、突然、削除されることも起こり得る。
 仮に日本の歴史教科書が削除され、日本とは歴史認識を異にする国の人たちがそのことを殊更喧伝したりすると、日本側の歴史認識問題に敏感な人たちの間で、「相手国が圧力をかけたのではないか」という疑心暗鬼が生じて、対立感情をあおってしまうことになるのではないか。
 何よりも、日本の将来を担う子供たちを育てるために使う教科書が、公権力による検閲ではないとは言え、外国の民間企業の事前審査を受けることについてどう考えるか。国家主権にもかかわる問題だけに、それらをきちんと整理していく必要があるのではないかと考える。

【安西座長】
 端末やデジタル教科書をどうするかということ等については、おそらく今後、ワーキングコミュニティ等をつくっていくのではないか。今は、どこの企業の何を使うかという問題を扱っているわけではない点ははっきりさせておきたいと思う。
 むしろ、前々から申し上げているように、学びや教育の方法、教員の研修等のあり方も含めて、将来の教育のあり方や情報をベースにした、それを取り込んだ教育のビジョンを出していくことが大事だと思っている。

【中村委員】
 この懇談会のアウトプットに対するスタンスは、本日、配布された参考資料2の新成長戦略の工程表18ページにあるように、政府全体の方針として期限を切って前に進むということとされたのは非常に喜ばしいが、本日の話を聞いていると、現状の状況とはかなりギャップがあるのではないかという気もする。これを政府として本気で進めるということであれば、相当な政策リソースをここに、外から取ってきてでも注ぐ必要があるだろうし、ここで出されているアイデアのすべてをぶち込むぐらいの総合的な政策パッケージを組む必要があると思う。
 さらに、何年までに何%のカリキュラムでデジタル教科書や教材を使うことにするのかというブレークダウンをしていく必要や、予算、法制度、推進組織、実験やトレーニングのプランといったものを含んだ政策パッケージをつくるというのが我々に課された仕事になってくるのではないかと考えている。
 この施策は教育だけではなく、ほかの分野、医療、行政といったジャンルの情報化と同時並行で進められる施策になってくるので、政府部内の連携を取りつつ進めるというスタンスが大事ではないかと考えている。

【安西座長】
 この懇談会が将来の学びのあり方について、きちんとしたビジョンを持ち、こういう技術が必要なのだということを言っていかなければならないと考えている。しかも、それをある程度迅速にやらないと、政府全体のスピードと合わなくなってくる可能性がある。教育の問題は、なかなか決着がつきにくい問題であるが、ぜひ、皆様にはご協力いただければと思う。

【西野委員】
 デジタル教科書等を入れていくときに、今まで日本でずっとやってきたような同期して進めていくような教育、学習観にはなかなかつながっていかないのではないか、うまく用いられないのではないかと思っているので、非同期的な、それぞれの、個々の児童生徒が学んでいく、その伸びしろを見ていくという学習観に立たなければいけないのではないかと思う。
 教員のICT活用指導力の育成、子供たちに対する情報教育の充実、それを実際に行っていくためのワーキンググループ等を継続して行っていただきたいと思っている。

【宮澤委員】
 こういう動きをより広くの先生方、教育関係者に理解していただくことが必要だと思っている。もう少し広い場で、シンポジウムのような形で、広く先生方にご意見を聞ける場所、こちらから発信する場をつくっていただき、広く広げる方向性も考えていただきたいと思う。

(以上)

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-- 登録:平成23年03月 --