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 子どもと私と   第2回インタビュー 

 

写真:市川慎さん

市川 慎(いちかわ しん)さん
箏,十七弦箏演奏家


プロフィール
1975年生
秋田県生田流箏曲家元の家に生まれる。
高校卒業後,東京で内弟子として入門。
1996年「二十歳のコンサート」を皮切りに,毎年秋田市にてリサイタルを 開く。
1999年度 文化庁芸術インターンシップ研修員,秋田市芸術選奨を受賞
2001年度 第7回長谷検校記念全国邦楽コンクール最優秀賞,文部科学大臣奨励賞受賞
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「子どものころから聞いていたお箏の音色」

Q   小さい頃は,どんなところで育たれたのでしょうか?

   出身が秋田で,自然豊かな土地でのびのびと育ちました。父は単身赴任,母はお箏のお稽古で忙しく,親よりもまわりにいる親戚やお弟子さんに育ててもらった感じです。親といる時間が少ない分,一つ違いの兄と一緒に,よく二人で遊びに行きました。
    母親に話を聞いてほしいときは,稽古の邪魔をしたり,かまってほしいという気持ちから,小学生の頃,学校に行かなかったこともありました。稽古の合間に様子を見に来てもらえるのが,うれしかったんですよね。


Q   幼稚園の頃はどんなお子さんでしたか?

   幼稚園に2年間通っていました。その頃は暴れん坊だったらしく,記憶にはないのですが,幼稚園でみんなに絵の具を巻き散らして問題になったことがあったそうです。
   幼稚園が終わって家に帰ってもすぐ友達と遊んでいました。小学校に入ってものびのびとしてましたね。
   高校を卒業するまで,お箏は全然弾きませんでした。特に小さい頃は,お箏のせいで親にかまってもらえないという意識が強く,お箏に関心を持つところまで行きませんでした。



Q   中学や高校時代はどのように過ごされましたか?

   中学生になって,友人などから影響を受けて,エレキギターを独学で始めました。高校生になってからは,テニスをやったり,バンドを組んでライブ活動にはげんだりしていました。
   自我も出てくる時期なので,反発心からでしょうか,お箏の稽古中に,隣の部屋で,わざとギターの音量をあげて練習したりもしましたね。それでも,母は頭ごなしに「やめなさい」とは言わずに,「お稽古中だから音量を下げなさい」と言うぐらいでした。
   一方,単身赴任の父が家に帰ってきたときは,兄弟二人で正座をさせられて,よくしかられていました。その繰り返しです。


Q   いつごろ,どのようなきっかけで,お箏の道に入ろうという決断をされたのですか?

   高校3年の時に,テレビでお箏の現代曲を初めて聴いた時に,お箏を一つの楽器としてとらえることができ,ギターに共通する点があるおもしろい楽器ではないか,と感じたことがきっかけです。お箏は正月に女性が弾くものという一般的なイメージがありますよね。生まれてからずっとお箏の音色に囲まれて育ってきたのですが,聴いていたのは古典の曲ばかりで,お箏は私にとっても新しいことができる楽器というイメージは全くなかったのです。現代曲は初めてでとても新鮮でした。そして,現代曲を聴いて初めて,こんなこともできる楽器なのだという印象が残ったのです。
   また,今まで好きなようにやってきたので,跡取りがいないから親を少しでも助けたいという気持ちもあったと思います。でも最初は本当に軽い気持ちですね。


Q   内弟子時代はどのように過ごされたのですか?

   母親に習うとどうしても甘えが出たり,感情的になったりしますから,東京で一から他の先生について習いなさいということで,内弟子に入りました。
内弟子時代はお箏の稽古をするだけではなく,掃除,洗濯,食事作りなど,先生の身の回りのこともしますから大変でした。
   それでも,楽器がおもしろいと思っていたこと,先生たちが心の広い方たちで,お箏だからこう弾きなさいというよりも,音楽としてみるという教えに助けられました。流派によっては,形が決まっていたり,礼儀から入っていくところもありますが,姿形よりも奏でる音で判断するという考え方に基づいていたので,音楽として演奏を評価していただけました。
   1日10時間以上の練習でも頑張れたのは,音楽がもともと好きでしたし,小さい頃からお箏の音色をずっと聴いてきたことが糧になっていたこと,これは今でもとても役に立っています,それから,自分でやると決めた以上はできるところまでやりたい,という強い意志があったからだと思います。


写真:市川慎さんQ   今後の活動は?

   まずは,東京での活動を広げていきたいですね。東京で吸収した曲を秋田でも広めていきたいです。レッスンをする他,コンサートも月に2・3回行いますが,作曲もします。時には,子どもたちが楽器にさわることができる活動もしています。
   いろいろな活動の中で興味深いのは,外国の方のほうが,先入観なく,お箏を楽器の一つとして捉えられるという点でしょうか。
   既存の観念を超えて,お箏が楽器として持つ魅力をもっと多くの人たちが理解し,共感できるような演奏や作曲をしていきたいと思います。