「幼児教育振興のための支援体制の整備」
幼児教育を地域に開かれたものにしていくとともに、地域で幼児教育の振興のための取組を支援するため、広島市教育委員会内に保育カウンセラー、幼小連携アドバイザーからなる幼児教育サポートチームを設置し、地域の関係機関と連携を図り、幼稚園、保育所、小学校、家庭等を支援する体制の整備を目指す。
○ 幼児教育の振興のための取組を支援するためのサポートチームのあり方
本市の幼児教育を振興させていくための体制づくりを検討する。
○ 特別な配慮を要する幼児に対応する教員や子育て不安を抱える保護者への効果的な援助のあり方
保育カウンセラーや特別支援教育に関する専門家を配置することにより、特別な配慮を要する幼児への効果的な指導や、子育て不安を抱える保護者への効果的な援助の在り方を探る。
○ 幼小連携の推進やカリキュラム編成の効果的支援のあり方
幼小連携アドバイザーを配置することにより、幼保小連携を推進していく効果や課題を明らかにし、カリキュラム編成における視点や配慮点を明確にする。また、課題解決のためのカリキュラム編成をする。
(1) 地域の概要 (平成19年5月1日現在)
人口 | 幼稚園 | 小学校 | 保育所 | |||||
幼稚園数 | 幼児数 | 学校数 | 児童数 | 保育所数 | 幼児数 | |||
広島市 | 1,166千人 | 国立 | 0 |
0 |
2 |
977 |
0 |
0 |
公立 | 27 | 2,005 | 140 | 67,041 | 90 | 10,983 | ||
私立 | 92 | 15,839 | 3 | 873 | 67 | 8,373 | ||
合計 | 1,166千人 | 119 | 17,844 | 145 | 68,891 | 157 | 19,356 |
(2) 指定地域における幼児教育に関する課題及びこれまでの取組
近年、本市においては、少子化や女性の社会進出、就業形態の多様化に伴い、幼稚園の園児数は減少傾向にあり、多くの幼稚園において定員割れが生じている。
子どもを取り巻く環境の変化は、子どもの育ちにも大きな変化をもたらしており、自然体験や直接体験などの豊かな体験の機会の減少をもたらすとともに、家庭の教育力の低下はコミュニケーション能力や自制心、耐性といった社会性の涵養や基本的生活習慣の定着に影響を与えている。
これまでの幼稚園と関係機関が連携した支援事業の実施状況は次の通りである。
(平成19年5月1日現在)
幼稚園名 | 4歳児 | 5歳児 | 合計 | 教職員数 | |
広島市立緑井幼稚園 | 学級数 | 2 | 2 | 4 | 5 |
幼児数 | 45 | 70 | 115 | ||
広島市立大町幼稚園 | 学級数 | 1 | 1 | 2 | 3 |
幼児数 | 28 | 35 | 63 | ||
広島市立安東幼稚園 | 学級数 | 1 | 1 | 2 | 3 |
幼児数 | 29 | 35 | 64 | ||
広島市立山本幼稚園 | 学級数 | 3 | 2 | 5 | 6 |
幼児数 | 88 | 90 | 178 | ||
広島市立落合幼稚園 | 学級数 | 1 | 1 | 2 | 4 |
幼児数 | 19 | 26 | 45 |
(1) 研究の内容及び方法
○ 幼児教育支援運営委員会 ※年間2回実施
学識経験者、(公私)幼稚園長、(公私)保育所長、小学校長、広島市教育委員会職員等を構成メンバーとし、年間2回実施し、実施体制の整備、事業計画の企画、評価、研究成果のとりまとめを行う。
○ 幼児教育サポートチーム
大学教授、医者等を構成メンバーとした保育カウンセラー、幼小連携アドバイザーが、研究協力園と連携し、保護者の相談、講演会、教員への指導等の直接的支援や基本的生活習慣の定着やコミュニケーション能力を向上させるための実践的な研究(事例研究)やカリキュラム編成の支援をする。
○ 研究協力園
幼児教育サポートチームと連携を図りながら、基本的生活習慣の定着やコミュニケーション能力を向上させるための実践的研究(事例研究)やカリキュラム編成をする。
○ ワーキング会議 ※年間2回実施
幼児教育サポートチームと研究協力園の代表を構成メンバーとし、幼児教育サポートチームによる幼児教育の取組の支援及び基本的生活習慣の確立やコミュニケーション能力の向上を目指した指導計画の作成を行う。
(2) 平成19年度実施内容
○ 運営委員会・ワーキング会議
・ 第1回 日時 平成19年6月1日(金曜日) 15時~17時
内容 ・事業説明・進捗状況及び今後のスケジュールの確認
・意見交換
・ 第2回 日時 平成20年3月27日(木曜日) 15時~17時
内容 ・研究協力園の報告
・就学前教育・保育プログラムの検討
○ サポートチーム派遣
【保育カウンセラー派遣 28回】
・特別な支援を要する幼児の理解及びその幼児と保護者への適切な支援方法
・保育カンファレンスの進め方
・個人カルテの作成と活用
・保護者との面談相談
・教職員対象、保護者対象の講演会の実施 等
【幼小連携アドバイザー派遣 24回】
・小学校との連携・交流のあり方について実践及び指導助言
・教師の援助のあり方について事例を通した研修
・幼・小連携カリキュラム作り
・教職員対象、保護者対象の講演会
○ 研究会参加
研究主題 「小学校生活を見通した幼児期の遊びや生活のあり方の研究」
時期・場所 2月6日(水曜日) 福岡教育大学附属幼稚園
参加者 研究協力園より代表1名、合計5名
日程・内容 ア 公開保育
イ 講演「保護者と共に:教育の質の向上をめざして」
講師 福岡教育大学准教授 北野 幸子
ウ ポスターセッション・ワークショップ
○ 講演会等開催
日時・場所 | 参加者 | 内容 |
子育て講演会 平成19年9月2日(日曜日)13時30分~15時30分 フェニックスホール |
公私立の幼稚園、保育所、小学校、中学校の教職員及び保護者1,500名 | テーマ「喜びや感動が可能性を引き出す」 講師 筑波大学名誉教授 村上 和雄 内容 遺伝子工学の研究から「感性と遺伝子は繋がっている」ことの究明から、想像をはるかに超える、人間の持つ偉大な可能性を開花させる「眠れる遺伝子の目覚めさせ方・考え方」を解き明す。 |
幼保小連携推進フォーラム 平成20年1月10日(木曜日)14時30分~17時 中区民文化センター |
幼稚園、保育所、小学校の教職員400名 | テーマ 「育ちをつなぐ学びをつなぐ」 実践発表 「ともに学びともに支え合おう」 発表者 広島市立深川小学校教諭 小林健吾、西山浩子 対談 「育ちをつなぐ学びをつなぐ」 対談者 文部科学省初等中等教育局幼児教育課幼児教育調査官 湯川 秀樹、広島大学大学院教授 小原 友行 幼小連携が学校教育において果たす役割やこれからの連携のあり方等について |
(1) 研究成果
ア サポートチームの支援については、各園からの要請により、園の実態や課題に応じて計画的、継続的に取り組んできた。具体的な保育場面を通して、子どもの見取りや指導のあり方、保護者との面談の仕方など、より実践的で具体的な指導助言を受けることができ、教育・保育の改善、充実や教職員の指導力の向上につながった。
イ 子育て講演会や小学校・幼稚園・保育所合同の研修会等の開催により、子どもの発達の特性や家庭及びそれぞれの教育施設での生活の様子、かかわり方など理解することができ、これまで子育てや幼児児童理解、指導のあり方などに対して抱いていた保護者や教職員の不安をある程度解消するとともに、お互いが連携し教育・保育を推進していくことの重要性を再認識することができた。
ウ 基本的な生活習慣の定着とコミュニケーション能力の向上に視点をあてた指導計画を、実践を基に、幼小連携アドバイザーの助言を得ながら作成することができた。
(2) 今後の課題
ア こうした成果を、研修会やグループ研究等の機会を設けて発信し、広島市の幼児教育の充実に生かしていくことが大切である。
イ 本事業の成果を踏まえ『就学前教育・保育プログラム』を策定し、小学校・幼稚園・保育所・認定こども園等施設へ配布することとしており、幼稚園教育要領及び保育所保育指針の改訂内容を踏まえながら、啓発・普及に努めていく必要がある。
ウ 幼児教育と小学校教育の連携については、幼稚園、保育所等の設置状況など地域の実態や連携の重要性に対する認識の違いなどにより、小学校区によりその取組内容などに差がある。連携を強化、継続していくために、本市が推進している幼・保・小連携推進事業の一層の充実を図りたい。
参考:研究テーマのキーワード
幼小連携、幼・保・小連携、幼小連携アドバイザー、幼児と児童の交流、幼稚園と小学校の教員の相互理解、保育所との連携、家庭との連携、幼児教育支援センター、障害のある幼児、保育カウンセラー、特別支援教育、基本的な生活習慣、研修、子育て支援、コミュニケーション能力、指導計画、就学前教育・保育プログラム、個人カルテ
初等中等教育局幼児教育課
-- 登録:平成21年以前 --