幼児教育支援センター事業
三重県鈴鹿市
1 研究テーマ及び研究の観点
(1)特別な配慮を必要としている幼児を担当する教員や子育ての不安を抱える保護者への効果的な援助の在り方
(2)地域の実情に応じた幼児教育と小学校教育の連携
(3)支援体制としてのサポートチームの在り方
2 地域の概要
公立幼稚園23園,私立幼稚園8園、公立保育所10所,私立保育所30所が混在している。就学前の相談機関は充実しているので,相談しやすい巡回相談によって,早期発見し専門機関へとつなげることができる。小学校以降への育ちをつなぐために,専門機関と保幼小の連携について,一貫した支援体制を構築する必要がある。
3 研究協力機関
公立幼稚園8園、私立幼稚園2園、保育所3所、小学校2校
4 研究の内容及び方法
主な事業内容 |
回数 |
事業の進め方・方法等について |
◎運営委員会 【役割】 実施体制の整備 事業計画の企画・評価 研究成果のとりまとめ |
会議年3回開催 適宜 7名 |
- 幼児教育の振興のための取組を支援するためのサポートチームの在り方につい
て研究を進める。
- 事務・会計全般を行う。
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◎サポートチーム 【役割】 教諭・保護者への相談 |
会議 年3回実施 4名 |
- 運営委員会と保育カウンセラー・幼小連携アドバイザーのパイプ役となって,
協力園・協力校へ派遣する。
- 保健所・児童相談所等の関係機関との連携を図る。
- 特別な配慮を必要としている幼児を担当する教員や子育ての不安を抱える保護
者への効果的な援助の在り方について研究を進める。
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◎保育カウンセラー 【役割】 教諭・保護者への相談 |
巡回相談 31回実施 |
- 特別な配慮を必要としている幼児を担当する教員や子育ての不安を抱える保護
者への巡回相談を行う。
- 幼小連携アドバイザーや指導主事と一緒に継続的に園訪問をし,観察・相談・
研修を実施することで,幼児理解や職員の連携について研修を深め,具体的な支援の手だてについて
指導・助言を行う。
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◎幼小連携アドバイザー 【役割】 保幼小連携に関する理解を推進する |
27回実施 巡回も含む |
- 就学前に子どもたちにつけたい力を明確にし,教員の資質向上や職場での支援
体制について指導・助言を行う。
- 研究協力園・校の合同研修会を行い,保育や授業を公開し,保幼小連携の推進
や交流の在り方について指導・助言を行う。
- 小学校・幼稚園で子育て講演会を行う。
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◎子育て講演会 親子ふれあい遊び 【目的】 親の子育て力の向上 |
実行委員会主催 1回実施 協力園8回実施 |
「みんなで子育て親育ち」の開催 (第一部)子育て講演会 演題「つなげよう ひろげよう楽しい子育て」 講師 田代 和美氏 (第二部)親子ふれあい遊びとオペレッタ「おおきなかぶ 」
- 子育てを楽しいと感じ,親も子も共に育つことを目指して,子育てに何が大切
なのかを考える機会とする。
- 就学前教育を担う職員が一堂に会して,幼児教育の重要性を発信するとともに
,職員の交流を図る。
- 親も子もともに育つ幼稚園として,保護者のニーズに応じた講演会や幼稚園か
ら家庭に発信すべきことをテーマにして講演会を行う。
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◎先進地域視察 |
東京都区立幼稚園 4か園 延べ8名 |
- 幼小連携カリキュラムの編成に取り組んでいる幼稚園・小学校を視察し,還流
学習を行う。
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◎公開保育研究会 |
玉垣幼稚園 牧田幼稚園 箕田幼稚園 |
- 協力園が実施する講演会・研修会に市内の教職員・保育士を加え,相互理解と
資質の向上に努める。
- 遊びの中の学びを明らかにし,保幼小の連携を図る。
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◎実技研修会 |
2回 |
- 実技研修会を開催し,職員の力量を高めるとともに,就学前教育に関わる職員
の交流を図る。
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幼保職員相互派遣体験研修 |
1名 1日間 |
- 職員を相互に派遣し合い,互いに教育・保育を体験することにより,相互理解
を図り,保幼の連携カリキュラムの作成に役立てる。
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5 研究成果及び今後の課題
1 研究成果
- 継続的に公開保育と事後研修会を行い,幼児理解と発達課題等教師の支援の在り方について研修を深めることによって,具体的な支援の仕方がわかりより積極的に幼児と関わることができるようになった。
- 校種を超えて,職員の相互理解につながった。・戸惑いや不安を抱いている保育者や保護者にとっては,適切な助言が自信になり安心して前向きに保育にあたることができ,気持ちを楽にすることができた。
- 幼児の発達障がいについて,臨床心理士など専門家と保育観察をすることで早期発見ができ,保護者や園と連携して子どもの支援にあたることができた。
- 幼小連携アドバイザーの派遣により,小学校での子どもたちの現状を踏まえて,幼児教育の課題(幼児の遊びが,学童期の学習や生活にどのようにつながっているか)を明確にし,職員の資質と意欲の向上につながった。
- 職員同士の人間関係等にかかわるメンタル面での相談・助言を受けることができ職場も活気付いた。
- 幼小の連携の重要性を再認識するとともに,職種をこえて相互理解を図るために,実際に保育・授業参観をして,事後検討会をもち,意見交換することが発信につながった。
- 公立幼稚園では就学前教育の関係機関に保育を公開し鈴鹿の幼児教育を発信する使命を実感した。また,研究会の在り方は市全体で実施することも有効であるが,近隣園を中心とした日常の公開保育をし,事後検討会をもつことで保育基礎の研修が再認でき,指導力の向上につながった。
- 保護者の参画型保育参加や子育て講演会を実施した。そこでは,地域の方や保護者ボランティアを活用し,保護者の相談に応じたり,話し合える場を提供したり,子育て講演会を実施したりして,保護者は子育てに生きがいを感じ,幼児を中心として共に支え合う関係ができつつあるという成果が見られた。
2 今後の課題
- 幼小の連携については,公立幼稚園は小学校に併設しており,園長が兼務であることから,幼児と児童の交流活動や職員同士の連携はある。しかし,幼児期の遊びから小学校以降の学びへの移行について幼児教育への理解が十分に得られていない。外部評価を取り入れながら,幼児教育の振興と充実を図るため,幼児教育の専門性を高め,情報発信の在り方を探る必要がある。
- 絵本の読み聞かせやリズム遊び,絵画制作などの実技研修や幼稚園での行事の在り方について理論と実践を検討した結果,実践内容の意味を再検討する。
- 幼児理解に基づいた保育者の指導技術については,経験の浅い保育者をサポートしながら互いに保育の質を高めていくために園内の職員が主体的に研さんを深めていく必要がある。
- 本市は,公立・私立幼稚園と公立・私立保育所(園)等69ヶ所の施設が混在している。中学校区での保幼小の連携を図り,幼児教育のセンター的役割の在り方を探ってきたところ,地域性や各施設の特色を生かしながら教育課程編成を統一することは,困難であることがわかった。が,今後は就学前教育として,検討していく必要がある。
- 鈴鹿市めばえネットワーク会議において,情報の共有を図り,特別支援を要する幼児の早期発見・療育,就学指導等にかかわる一貫した支援体制の構築に努めてきた。今後は,実践する機関の充実を図る。
参考:研究テーマのキーワード
幼小連携、幼・保・小連携、幼小連携アドバイザー、幼稚園と小学校の教員の相互理解、保育所との連携、家庭との連携、幼児教育支援センター、障害のある幼児、保育カウンセラー、特別支援教育、子育ての支援、子育て力向上