幼児教育支援センター事業

千葉県千葉市

1 研究のテーマ及び研究の観点

(1)研究テーマ

  1. 幼児教育の振興のための取り組みを支援するサポートチームの在り方
  2. 幼小連携の推進及びカリキュラム開発等における効果的支援の在り方

(2)研究の観点

  1. 幼児教育を支援するサポートチームとして、幼稚園を支援するチームと保護者及び幼児を中心に支援をする総合巡回相談チームの2つの側面からチーム構成を行い幼児教育の支援を実施することとした。
  2. 幼小連携の推進
     幼児を交えた交流活動はこれまでに多くの幼稚園や小学校の間で行われているが、子どもどうしの関係性を強めるような実践に加え、十分な事前の打ち合わせや反省に基づいた改善が必要とされる。また幼児がとかく受け身となりがちなので、幼児の主体性を発揮できるような活動についての取り組みを強化する。
  3. 幼児教育カリキュラムの開発
     千葉市には科学館、動物公園、ポートアリーナ、花の美術館、都市緑化植物園、泉自然公園等の有効な教育資源が多い。これらの施設において具体的な体験・遊びを通して学ぶ特性を持つ幼児のための参加型知的カリキュラム(参加体験型で、幼児が楽しく無理なく学ぶための仕組みを取り入れ、千葉市の教育資源を活かして構成されたプログラム)を作成してもらい、幼児への有効性を評価する。個々の幼稚園では与えられない豊かな体験をこれによって幼児に与え、知的好奇心を促す体験とした。

2 地域の概要

                           (平成19年5月1日現在)

  人口   幼稚園  小学校  保育所 
幼稚園数 幼児数 学校数 児童数 所育所数 幼児数
千葉市 933千人 国立 1 157 1 802 0 0
公立 0 0 120 51,364 60 6,813
私立 96 16,884 0 0 32 3,665
合計 933千人   97 17,041 121 52,166 92 10,478

 

 平成13年3月に「千葉市児童保健福祉推進計画」を策定し、子育てと就労の両立支援や子育ての不安・負担の軽減、さらには、次代を担う子どもたちが健やかに育つための環境づくりを進めるなど「子どもたちが明るく健やかに過ごすまちの実現」を目指して各種施策を推進してきた。そこで、平成17年3月に保健、福祉、教育、まちづくりなど、多岐の分野にわたる施策を総合的に推進するため、8の基本目標、25の基本施策、246の個別事業からなる「夢はぐくむ ちば 子どもプラン 千葉市次世代育成支援行動計画」を策定した。基本目標の「心身ともに時代を担う人間をはぐくむ教育の充実」に幼児教育支援センター事業を位置づけ千葉市幼稚園協会の協力を得て幼児教育のための支援を推進している。
 また、幼児教育の支援のため、小学校と連携し、幼児・児童の健全育成と発達を促進するとともに教育(保育)内容の向上を目的とした「幼・保・小関連教育推進協議会」を教育委員会内に設置し、幼児教育支援センターと連携を図っているほか、指導内容や教職員の研修及び幼保小の連携について調査研究・協議を進めた。

3 研究協力機関

  ○私立幼稚園4園(研究協力園) ○千葉大学(共同研究)

(1) 幼児教育支援センター事業の組織体制

 既存の幼・保・小関連教育推進協議会を中心に協議を行い、その下にサポートチームを位置づけ、幼稚園への総合巡回相談を事業の核として実施した。また、幼小連携アドバイザーと保育カウンセラーは事例検討会講師として位置づけた。

千葉市幼・保・小関連教育推進協議会の概要

4 研究の内容及び方法

(1)サポートチームの在り方について

 臨床心理士等の有資格者から構成されたサポートチームを全ての区の会場となる幼稚園に派遣し、定期的に総合巡回相談を行い、円滑な小学校との接続が可能となるような支援を行う。
 また、幼稚園教諭が活用しやすいプログラムを市内の教育資源を活かして開発するとともにこのプログラムの開発に携わるチームの在り方を含めて研究を推進した。
 なお、これまでの幼児教育実態調査からサポート資源をリストアップし、それをコーディネートする立場で幼児教育支援センターが機能することでよりよいサポートが可能になると考えられる。
 このことから、幼児教育支援センターとしては、サポートの評価を適切に行い、地域資源のネットワークを活かしていくことが地域の教育力向上に寄与することになると考えられる。しかし、短期間で同時に2つのサポートチームについて適切な評価をすることは難しいと考えられるため、プログラム開発を担当するチームについて幼稚園教諭の評価を得ることにした。

(2)幼小連携の推進について

 より密接な連携交流として、ねらいを幼児・児童の発達的特性の理解、保育・教育方法、教育内容の相互理解、教員どうしの交流に置いた保育カウンセラーを交えた事例検討会を相互の保育・授業参観を通して行うことが考えられた。
 連携に当たっては単なる交流活動のみでなく、互いの教育や保育の様子を理解することを大切にし、発達段階ごとにどのような教育が展開されているかということをしっかりと把握することでそれぞれの教育の質的レベルを向上させることができることと、無理のないよりよい接続のためにも大きな効果をもたらすことが確認された。
 課題として残されたものとしては、時間の確保をどのように行うかということと小学校として幼稚園にどのような生活習慣を求めるかということなどを含め、基本的な事項について要望をすることも大切である。
 また、特定の幼稚園児が近隣の小学校に入学するわけではないが、どの小学校に入学しようとも円滑な接続となるように各幼稚園の教育方針のもとで基本的な資質を幼児期に身に付けさせておくことが求められている。
 なお、小学校での児童の教育活動の様子について幼稚園への情報提供を密にすることで保護者にとっては入学先となる小学校への不安解消が図られるため、小学校から積極的に幼稚園を通して保護者に情報提供をしていくことが大切である。

(3)幼児教育カリキュラムの開発について

 カリキュラムの開発については、実践的な課題解決のために行われる方法として「立案、実施、結果の評価、修正、実施、結果の評価、再修正・・・・」の循環を繰り返すアクションリサーチの手法を取り入れた。
 なお、対象となる幼稚園がすべて私立幼稚園ということもあってそれぞれの教育理念に基づいて経営が行われているので、幼稚園の教育方針に活かせるようにするため、形式的でなくゆるやかな方法で構成することとし、幼児の活動プログラムという形での開発に取り組むこととした。
 プログラムの開発にあたっては市の人材や教育資源活用を図り、それぞれの施設の状況を熟知した職員が関わることにより、継続的でかつ発展的な支援が可能となった。
 メリットとしては教育資源として人材の活用が図られるほか、開発にあたっては経費の節減を図ることができる。
 なお、プログラム開発施設については施設への関心の拡大につながり、幼児を対象とした事業を起こしやすくなるなどの効果が期待されている。このようなことを踏まえて段階をおってプログラムの開発について整理したものを以下に示す。

  • プログラムの開発に当たっては教育上のねらいをはっきりさせ、施設の状況を熟知した職員による作成に加え、幼児教育の視点について大学等の幼児教育の専門機関と幼児教育支援センターと共同で精査を行う。
  • プログラムの開発過程としては、幼稚園での試行を行い、実際に幼児教育に携わっている立場から幼稚園の教諭の意見を取り入れて修正を行う。
  • プログラムの展開後の事後指導について幼稚園教諭と協議し、幼児の実態に即した事後のフォローまでをシステムとして取り入れる。
  • 開発プログラムはあくまで一般化されたものであるため、自園の実態に即した形で無理なく取り入れて行くことができるようにするため、それぞれの施設の専門職員の指導のもと、多くの幼稚園教諭がねらいを含めてプログラムの展開方法を理解した上でプログラムの深化を図る。

5 研究の成果及び今後の課題

(1)研究の成果

  1. 円滑な小学校入学を目的とした幼児期の様々な課題の早期解決のために保育カウンセラーの果たした効果は大きく、これまでの電話相談に加えて、対面形式の相談を取り入れることにより、個々の問題の解決について保護者や幼稚園教諭が取り組むべき方向性が見えるようになった。
  2. 幼児教育プログラムの開発により、本市の人材を活かした教育資源の活用が図られ、施設と幼稚園の双方向の活動が容易に展開できるようになった。

(2)今後の課題

  1. 保護者には軽度発達障害を中心とした相談による支援が必要であることから、引き続き相談活動を専門的な知識を有する有資格者による活動として定着していく必要がある。
  2. 幼稚園教諭には開発した幼児教育プログラムがどの園でも活用しやすいものにしていくために、プログラムに関する情報提供のほか、幼稚園教諭の研修も必要となると考えられる。
  3. サポートチームのうち、総合巡回相談を担当した保育カウンセラーの効果測定及び各幼稚園における保護者支援のためのワークショップの開催など、保護者のストレス解消に向けた取り組みの強化が必要である。

参考:研究テーマのキーワード

幼小連携、幼小連携アドバイザー、幼児教育支援センター、保育カウンセラー、幼児教育開発プログラム

お問合せ先

初等中等教育局幼児教育課

-- 登録:平成21年以前 --