(1) 研究テーマ
「地域の一貫した支援体制における障害のある幼児の指導の在り方や協力体制の在り方を探る」
(2) 研究の観点
中野市は、長野県の北信地域に属しており、私立幼稚園が2園、保育所が12所の市である。北信圏域障害者総合センターや北信総合病院、隣の飯山市に飯山特別支援学校等、障害のある幼児の受け入れや指導に関係する機関があるが、これまでは組織的に連 携を図ることがほとんどなかった。
幼稚園においては、平成17年度までは、幼稚園が独自に障害のある幼児に対応していた。平成18年度からは、障害のある幼児を受け入れた場合、市の子ども部や障害者総合センター等と指導のあり方等について、連携を図っている。
私立幼稚園 2園、保育所 12所、小学校 11校
(1) 巡回相談・ケース会議の実施
保育所に在籍する障害のある幼児に対する専門家による巡回相談のシステムの中に幼稚園を位置付け、幼稚園でのケース会議等を行うとともに、幼稚園・保育所における取組の成果を情報交換する機会を設けた。
(2) 障害のある幼児の担当者による連絡会の開催
幼稚園や保育所等で障害のある幼児を担当している教諭や保育士等の連絡会を開催し、事例発表等を通して職員の専門性を高めるとともに、幼稚園と保育所の職員が、障害のある幼児へのかかわり方について、学び合える機会を設けた。
(3) 研修会の開催
幼稚園職員と保育所保育士を対象とした講演会を開催した。
(4) 小学校との連携システムの構築
幼稚園等での個別の指導計画が小学校での指導に生かされるように、小学校教諭に幼稚園での子どもの様子を参観してもらった。
(5) 個別の指導計画の作成
個別の指導計画を作成し、幼児の理解や指導の手だてを改善しながら幼児の発達を促してきた。
1 研究成果
ア 公立保育所だけではなく、私立幼稚園に対しても、作業療法士や臨床心理士、保健師、保育士等を派遣する巡回相談を年間5回を行うことができ、延べ80名の園児に対して助言を行うことができた。
イ 市の巡回相談システムの中に幼稚園を位置付けることができ、幼稚園でのケース 会議等をさらに充実させることができた。
ウ 園内研修や巡回相談によって、職員全員が個々の幼児たちの発達障害の特性を知り、共通理解ができるようになった。
エ 障害のある幼児やその疑いのある幼児の個別の指導計画を作成することができた。個別の指導計画は、個々の幼児の実態を的確に把握し、指導の手立てや方向性を探るために作成した。個々の幼児に応じた達成状況を把握し、個別の指導計画を見直しながら援助したことで、集中力が付いてきた幼児、友だちとかかわれるようになってきた幼児等、成長の姿が見られた。また、個別の指導計画を作ったことにより、教師のかかわりや援助が幼児にどんな影響を与えているのかが明確になり、次の課題も明確になった。
オ 小学校の入学に際して、保護者と一緒に小学校を参観し、幼稚園での様子や指導内容を保護者と共に個別に小学校に引き継ぐことができ、小学校の指導につなげることができた。
2 今後の課題
ア 幼児の障害の状況に応じた職員の協力体制づくりについては、幼児一人一人の育ちと集団による育ち合いの観点から、さらに支援方法や支援体制を工夫する必要がある。
イ 幼稚園・保育所と小学校の一貫した指導のために、巡回相談による幼稚園・保育所での指導の成果や個別の指導計画を支援ファイル等を作成して引き継ぐ等、組織的に小学校につなげていくシステムの構築を検討する必要がある。
参考:研究テーマのキーワード
障害のある幼児、巡回相談、ケース会議、個別の指導計画
初等中等教育局幼児教育課
-- 登録:平成21年以前 --