幼稚園における教育課題に対応した実践的調査研究

兵庫県丹波市

1.研究テーマ及び研究の観点

 さまざまな体験を通して表現する力を養い、創造性を豊かにする子をめざして
 -子どもの思いを豊かに表現させるための指導の在り方-

 子ども一人ひとりの人とのかかわりや様々な経験を広げ、その力を発揮し、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにするため、ティーム保育をすることにより、複数の教師等で様子や行動の意味を把握し、子どもの発達や指導の方向性等の目標を共有する指導の在り方を研究する。

2.地域の概要

 丹波市には、19園の公立幼稚園がある。緑豊かな山々や川の流れなど、自然に恵まれ、四季を通して自然に触れて遊ぶことができる、小規模な幼稚園が多く、1学級1担任が指導にあたる場合がほとんどである。できるだけ複数体制で、子どもの思いや気づきを把握し、それをうまく取り上げ、生かし、子どもの豊かな表現力の育成をめざしている。

3.研究協力機関

  公立幼稚園4園

   丹波市立上久下幼稚園

   丹波市立青垣幼稚園

   丹波市立春日部幼稚園

   丹波市立黒井幼稚園  

4.研究の内容及び方法

(1)研究内容

  ア 平成18年度

   地域のゲストティーチャーによる音楽活動や小学校低学年との合同交流活動を通して様々な表現力(音楽・制作・ことば・身体表現など)の育成に取り組む。

   教員の役割を明確にしたティーム保育により、個に応じた指導や支援ができるよう体制づくりに取り組む。

   表現力の共通理解と共有をするために各研究協力園において表現リストを作成した。

  イ 平成19年度

   ティーム保育を実施した場合の記録を細かに取り、一人ひとりの学びを幼稚園教員全員で共有する。そして、各研究協力園において、子どもの思いを豊かに表現できる指導の在り方を追究する。具体的には以下のような研究を行う。

 1 子どもの思いを豊かに表現させるためのティーム保育の在り方の追究

  担任と外部指導者等による指導体制におけるティーム保育の実施

  ティーム保育による園児の学びの記録の作成

 2 育ちや学びの連携を見通した評価の在り方の研究

  ティーム保育による園児の学びの記録の交流(カンファレンス)

  学期末幼小評価交流会の実施

(2)研究方法

  ア 表現力の共通理解と共有(幼稚園内カンファレンスと幼小合同研修会)
  イ 外部指導者による音楽活動、芸術活動などのティーム保育の実施
  ウ 小学校低学年との交流活動の実施
  エ 協力園合同研修会の実施(評価研修会、公開保育研修会)

   ☆表現力の捉え方として
   「言語表現」「音楽・リズム表現」「絵画・制作表現」「身体表現」等の分野に分けた、幼児の具体的な活動ととらえる。

5.研究成果及び今後の課題

(1)研究成果

  ア ティーム保育による表現力の育成

  1. 1学級1担任が指導にあたるこれまでの指導体制を改善し、担任と主任教諭、担任と小学校教諭、担任と外部指導者というようなティーム保育を実施できる体制が確立できた。
  2. 園児を複数で指導する体制を整え、支援を要する幼児への個別指導の担当や環境整備の担当等を明確にしたティーム保育を実施することにより、園児一人ひとりの表現力が豊かになった。
  3. 各園において作成した表現リストを活用することにより、表現力についてより具体的な園児の姿を捉え、援助や指導ができるようになった。
  4. 子どもの思いを豊かに表現させるには、「思いきり遊ぶ」「思いをもつ」「思いを伝える」という活動を指導計画に組み入れ、その活動の適切な場面でティーム保育を実施することが大切であることが分かった。

  イ 幼小連携による教員の指導力の向上

  1. 併設小学校の職員研修に幼稚園教員も参加することにより、2、3名程度の幼稚園の園内研修では、得ることのできない指導方法の工夫や幼児理解のあり方について学ぶ機会が増えた。
  2. 幼小連携した合同交流活動を実施するために、事前の打合せを行うことによって、園児・児童理解の機会が増えるとともに幅広い見方ができるようになった。 
  3. 効果的なティーム保育を実施するためには、目標とする表現力を指導に携わる教員全体で共通理解し、共有するチームワークが必要であることが分かった。
  4. 指導に携わる教員一人ひとりが個人あるいはグループの活動を全体として把握するために、指導前の綿密な打合せを行うことにより個に応じた環境の構成と場面ごとの支援が的確にできるようになった。
  5. 指導後のカンファレンス(学びの記録の交流)が重要であることを教員が認識し、カンファレンスの結果を次の指導に生かすような指導計画を組むことができるようになった。

 (2)今後の課題

   ア 表現力の育成について日ごろの個々の記録を取り、幼稚園教員全員で共有することや小学校とも評価を連携することに引き続き取り組んでいきたい。

   イ 幼稚園で培った力を引き続き家庭や地域へも知らせ、家庭でも表現力を伸ばし ていけるよう理解と協力を広げていきたい。

   ウ 幼小連携計画をたて、目標と評価を共有し、ともに教育していく体制づくりを 充実させたい。

   エ 研究協力園の研究の取組を柱にして、丹波市内の全ての幼稚園で実践していける よう研究を広く啓発していきたい。

 

参考:研究テーマのキーワード

 幼小連携、幼児と児童の交流、幼稚園と小学校の教員の相互理解、表現する力を養い創造性を豊かにする活動、ティーム保育、外部指導者の活用

お問合せ先

初等中等教育局幼児教育課

-- 登録:平成21年以前 --