平成17年度・18年度みんなの専門高校プロジェクト推進事業報告書

都道府県名 山口県
推進地域名 長門市・萩市

1 推進校の概要

(1)専門高校

学校名 山口県立日置農業高等学校
設置大学科 農業科
設置小学科 生物生産科・生活科学科
生徒数
  • 男子 55人
  • 女子 151人
  • 計 206人
住所及び電話番号 〒759-4401 山口県長門市日置上401番地2
電話 0837-37-2511 FAX 0837-37-2513

(2)連携校または地域の連携機関

学校名または連携機関の名称 児童・生徒数または参加・協力者数
長門市立日置小学校 児童 179名 協力者 2名
長門市立日置中学校 生徒 123名 協力者 2名
山口県立萩養護学校 児童生徒 75名 協力者 2名
山口県畜産試験場 協力者 1名
山口県長門農林事務所 協力者 1名
RDA(Riding for the Disabled AssociationJapan 協力者 1名
山口県障害者乗馬の会 協力者 6名
社会福祉法人「ふたば園」 児童部・成人部 協力者 1名

2 研究テーマ及び研究において特に重点を置いたところ

 「動物介在活動(動物セラピー)を活用したボランティア活動」を研究テーマとする。
 生徒が動物介在活動を実践することにより、その方法と効果を理解することはもとより、地域交流の態度と実践力の習得に結びつける。また、地域住民の動物介在活動に対する有用性と農業高校への理解促進を図る。

3 研究の概要

(1)平成17年度

ア 障害者乗馬活動の理解と学習活動

  • 動物介在活動についての学習活動
  • 障害者乗馬に関する学習活動
  • 県下で行われる障害者乗馬会へのボランティア活動と調査活動

イ ウマの馴致活動

  • ウマの飼育・取り扱いに関する研修
  • 障害者乗馬活動に使用するウマについての研修
  • ウマの飼育・調教

ウ 障害者乗馬会開催のための準備活動

  • 校内施設の調査
  • 障害者乗馬会開催のために必要な施設の調査
  • 不備な施設を改善する活動

(2)平成18年度

ア 障害者乗馬活動

  • 障害者乗馬会開催に向けての準備
  • 障害者乗馬会の開催
  • 実施した障害者乗馬会についての評価・研究

イ ウマとのふれあい活動

  • ウマとのふれあい活動の準備
  • ふれあい活動の開催
  • 実施したふれあい活動についての評価・研究

ウ ウマの馴致活動

  • ウマの飼育に関する研修
  • 障害者乗馬活動に使用するウマについての研修
  • ウマの飼育・調教

4 連携推進地域協議会の構成及び活動状況等

(1)構成

氏名 所属・職名 備考
田浦 保穂 山口大学農学部 教授(臨床獣医学) 有識者
安部 康人 山口県畜産試験場 企画情報室 室長 県行政
嶋屋 佳子 山口県長門農林事務所畜産部畜産振興課 主任 平成17年度 県行政
川口 めぐみ 山口県長門農林事務所畜産部畜産振興課 技師 平成18年度 県行政
池辺 有紀 RDA Japan 人材育成理事 連携機関
田原 哲生 長門市立日置小学校 校長 連携校
山本 達明 長門市立日置中学校 校長 平成17年度 連携校
山本 幸生 長門市立日置中学校 校長 平成18年度 連携校
野崎 匠 山口県障害者乗馬の会 代表 連携機関
縄田 裕三 社会福祉法人「ふたば園」 作業指導員 連携校
さき 滿穂 山口県立萩養護学校 校長 連携校
永冨 康文 山口県教育庁指導課 課長 平成17年度 県行政
川野 あきら 山口県教育庁高校教育課 課長 平成18年度 県行政
長見 聰 山口県立日置農業高等学校 校長 平成17年度 推進校
中村 芳喜 山口県立日置農業高等学校 校長 平成18年度 推進校

(2)活動状況

1)平成17年度

ア 第1回地域協議会(平成17年8月31日開催)

 本研究のテーマに使用している「セラピー」とは実際には医療用語の「治療」という意味であり、このプロジェクトにおいては不適当であるとの指摘を受けた。この後、活発な意見交換が行われ、1「乗馬」についての学習をもっと深める。2障害者や介助についての勉強が必要である。3最初から難易度の高い障害者乗馬に限定せず、地域での「乗馬や馬とのふれあい」とすること。4以上の意見を参考に計画書の見直しをする。などの貴重な意見をいただいた。

イ 第2回地域協議会(平成18年2月13日開催)

 各委員から設備面と活動面のアドバイスを受け、これからの方向性として、以下の4点を確認した。1設備の面においては、本校の馬場で山口県障害者乗馬の会主催による障害者乗馬会を開催してもらい、そのために必要となる改修を主催者側に教わりながら行う。2校内的にクラブ昇格が始めからは無理ならば、まずは同好会をつくる。担当の教員を1人配置し、その教員自身がウマのことに精通し、生徒に指導できるよう努める。3同好会が中心となり校内で定期的に乗馬会を開く。そのときにウマに関する授業を受けている生徒達が同好会をサポートする。定期的に校内乗馬会を開くことにより、本校全体(生徒だけでなく教員にも)にウマに関する意識を広め、高めていく。校内乗馬会から、地域の児童生徒への乗馬会や一日体験講座へ広げていき、障害者乗馬へとつなげていく。4乗馬療法より乗馬活動に重点を置く。本校の乗馬活動を地域住民に活用してもらい、農業高校への理解促進を図る。生徒はこの活動を通して地域住民、障害者乗馬関係の方々とふれあうことにより地域交流の態度と実践力を身につける。

2)平成18年度

ア 第3回地域協議会(平成18年8月29日開催)

 ふれあい活動や乗馬活動に使用するウマの飼育状況や馴致についてのアドバイスをいただき、ふれあい乗馬会の開催方法や障害者乗馬会の準備と広報活動などについて貴重な意見をいただいた。

イ 第4回地域協議会(平成19年1月23日開催)

 このプロジェクトは、動物介在活動を主体とする方向で進められてきており、ウマの飼育管理や調教の技術、乗馬会を開催することができる力量がつき、生徒のアンケートの結果を見ても大変よいプロジェクトとなったという高い評価をいただいた。今後は作業療法士など専門家による学習の機会と障害者へのふれあい体験の機会をふやすこと、乗馬などの効果の検証となるアンケートを実施しすることなどの課題や、他の活動グループの参考となるので活動の成果を冊子にしてほしいという要望もいただいた。

5 推進校における活動の実施状況等

(1)活動のねらい

 ウマを用い、生徒が企画・運営し、飼育管理や乗馬などの体験活動を行う。小・中学生や障害者には、日常では経験することのないウマの背中の動きや視線の高さを体感する乗馬や、給餌やブラッシングなどのふれあいの中で喜びや楽しさを体験してほしい。生徒達には、来られた方に安全で楽しい活動をしていただくため、自らが受入態勢を考え、日々の学習内容を復習し、活動に臨んでおり、この活動から指導性・社会性・科学性をしっかりと学ばせたいと考えている。

(2)活動内容

ア 小学生の農場見学

 近隣の小学生が遠足で来校したとき、生徒が自分達が学んでいる畜産農場の説明を行った。科目「課題研究」で「ウマを使ったふれあい活動」という研究テーマで活動している生徒が実施した。

イ 感動!発見!ふれあい!教室!!2006「馬まるごと体験教室」

 この行事の主催は長門市教育委員会日置事務所で、今年度から開始した行事である。1回限りの事業ではなく、継続的な行事にしようと考えており、今年は8月と11月の2回開催した。体験教室の流れは、全体説明→乗馬→ブラッシング→厩舎作業→アンケート記入→記念撮影である。すべての運営を馬クラブの生徒と科目「課題研究」で学習している生徒で運営している。

ウ 中学生1日体験入学

 近隣の中学3年生を対象に日置農業高校を理解してもらう活動として、実施している。畜産分野では毎年、ウシに親しむ活動をしていたが、今年からウマを加えた。

エ 農高祭と日置ふるさと祭り

 学校祭や地域の祭りにウマの乗馬会やふれあいコーナーを設け、地域の人々に乗馬体験やウマを身近に体験していただく活動をした。

オ ヘルパーのための講習会と障害者乗馬会

 障害者乗馬を推進する認定NPO法人であるRDA Japan主催の「ヘルパーのための講習会」と「障害者乗馬会」を開催した。この講習会には、本校生徒の他に社会人の方や他の農業高校生も参加し、障害者乗馬の効用と方法や障害者乗馬のチーム編成と突然の事故の応急処置などを学んだ。2日目には、障害者乗馬会を開催し、ヘルパーとして活動した。

(3)教育課程上の位置づけ

 科目「畜産」「生物活用」「課題研究」「総合実習」及び部活動「馬クラブ」

6 活動の成果

(1)地域協議会の指摘事項

  • ア 日々ウマと関わる活動をしている生徒を中心とした事業にする。
  • イ ウマや乗馬についての学習が必要である。
  • ウ 障害者や介護についての学習が必要である。
  • エ 最初から障害者乗馬ではなく、地域での乗馬やウマとのふれあい活動から開始して、生徒に地域交流の態度と実践力を身につけさせる。
  • オ 学校全体のウマに関する意識を広め、高めることが大切である。

(2)生徒の変容

  • ア 安全な乗馬会を実施するには日常の飼育管理やウマに対する向かい方が大切であることを学び、自分の役割に責任感のある行動をとるようになった。
  • イ 一つの行事をやり遂げるために、協力体制ができあがり、計画的に遂行できた。実施後、改善点を見いだし、次回の開催に生かすことができた。
  • ウ 動物に対する観察力が生まれ、きちんとした評価を行い、改善策を考えるようになった。
  • エ 子ども達に対して、乗馬についてわかりやすく説明するにはどうしたらよいかを考え、自ら学習しはじめた。

(3)地域活動を通して

  • ア 乗馬体験は新鮮で、楽しんでいただけている。
  • イ 乗馬だけではなく厩舎作業やブラッシングなど、興味や関心が多方面にわたっている。
  • ウ 長門市教育委員会との協力体制ができた。

7 2年間の研究の全体的な評価

以上の四点が本事業を2年間行った成果として確認できる。

8 今後の課題及びこれからの取組