都道府県名 広島県
推進地域名 広島市
1 推進校の概要
(1)専門高校
学校名 |
広島市立広島商業高等学校 |
設置大学科 |
商業 |
設置小学科 |
情報ビジネス・情報システム |
生徒数 |
704人 |
所在地 |
広島市東区牛田新町一丁目1-1 電話 082-228-2481 |
(2)小・中学校(小・中学校との連携の場合のみ記入)
学校名 |
広島市立牛田中学校 |
生徒数 |
568人 |
所在地 |
広島市東区牛田新町一丁目14-1 電話 082-221-9073 |
連携機関 |
上記他,広島市立中学校 |
児童・生徒数または参加・協力者数 |
生徒約5,700名,教員約160名 |
2 研究テーマ及び研究において特に重点を置いたところ
(1)研究テーマ
「商業高校と地域の中学校や企業との連携のあり方について」
(2)研究において特に重点を置いたところ
中学生対象のパソコン教室や中学校教員対象のマナー指導に関する研修会などを実施することで,地域の中学校との連携のあり方を探り,地域の中学校の生徒・教員に本校をより理解していただく。
商業高校生が地域の商店街のイベントへの参加・協力を行うことやイベントの企画・立案,実施をするなどして,地域の企業との連携のあり方を探り,本校の活性化を図ること。
3 研究の概要
(1)平成17年度
中学校との連携
- 市内の中学校における中学生対象のパソコン教室や教員対象の情報に関する研修会のニーズを調査する。
- 商業高校生が指導するパソコン教室を一部の中学校の生徒を対象に試行する。
- 商業高校の教員が中学校の教員を指導する情報に関する研修会などの企画・立案を行い一部試行する。
- 試行内容の評価を行い,内容の改善・充実について検討し,次年度の本格実施に備える。
企業との連携
- 商店街との連携内容について,市役所の協力を得て商店街振興組合との調整を図る。
- 調整結果をもとに,商業高校と商店街との連携内容について検討し,イベントへの参加・協力やイベントなどの企画・立案を行う。
(2)平成18年度
中学校との連携
- 商業高校生が中学生を指導するパソコン教室を本格的に実施する。
- 商業高校の教員が中学校の教員を指導する情報に関する研修会を本格的に実施する。
- 研修会では,知識・技能的な内容を扱うとともに,中学校の教員の日常の指導上の課題を明確にし,解決できるよう指導する。
- 情報に関する研修会などをとおして情報教育の中学校と高等学校の接続・結合について意見交換し,情報教育の中高の接続・結合した指導計画の試案を作成する。
- 商業高校と中学校との連携の成果と課題をまとめ,商業高校の活性化に繋げる。
企業との連携
- 商業高校生に商店経営の原点である販売について学ばせるため,商店街の各店舗の経営者から経営理念や実務経験などについて話を聞き,店頭での販売実習を行う各店舗への弟子入りを実施する。
- 商店街のイベントへの参加・協力や,前年度に企画・立案したイベントなどを実施する。
- 商業高校と商店街との連携の成果と課題をまとめ,商業高校の活性化に繋げる。
4 推進地域協議会の構成及び活動の状況等
(1)構成
氏名 |
所属・職名 |
池田 信寛 |
広島経済大学・教授 |
山田 昌徳 |
広島商工会議所・商工部産業振興チームリーダ |
佐古 雅則 |
広島本通商店街振興組合・副理事長 |
丸岡 賢之 |
広島青年会議所・委員 |
笠間 雅一 |
テレビ新広島・部長 |
林 保 |
府中町立緑ヶ丘中学校・校長 |
清水 正剛 |
広島市教育委員会・指導第二課 |
永川 信平 |
広島市立広島商業高等学校PTA・会長(17年度) |
室田 昭生 |
広島市立広島商業高等学校PTA・会長(18年度) |
(2)活動状況
1)平成17年度
《第1回》
- 日時
平成17年9月29日(木曜日)14時〜17時
- 内容
- 校内見学(授業,施設等)
- 年度当初の事業計画
- 実施状況及び今後の予定
- 事業計画等についての協議
《第2回》
- 日時
平成18年2月24日(金曜日)14時〜16時
- 内容
- 今年度の実施状況
- 今年度の評価と次年度の課題
- 実施状況等についての協議
2)平成18年度
《第1回》
- 日時
平成18年10月5日(木曜日)14時〜17時
- 内容
《第2回》
- 日時
平成19年2月20日(火曜日)14時〜17時
- 内容
5 推進校における活動の実施状況等
(1)活動前の地域との打ち合わせ
- 中学校への出前授業については,事前に対象学年や指導の趣旨を明らかにし,中学校の要望を基に授業内容を展開した。(半数以上が職場体験学習前のマナー指導)
- 情報誌作成等においては,生徒を前面に出し,趣旨説明文を持たせ,取材から紙面のチェックまで,直接本通商店街の各店の方を取材した。
(2)活動状況
1)活動のねらい
既存の人的・物的資源を地域や市内の中学校に提供し,社会に貢献するとともに地域活動の活性化を図り,本校生徒の活力を養う。
2)活動内容
ア 中学校との連携
- (ア) 商業高校の生徒・教員が指導するパソコン教室
広島市立の全中学校に案内を送付し,受講を受付ける。…3校,3名来校
- CG基礎を指導(課題研究「CG」選択の生徒,コンピュータ部の生徒が補助)
- (イ) 中学校との連携授業…牛田中学校1年生6クラス(約200名)
高校生による授業 市商ITC School(ハイブリッド教育)の実施
- プレゼンテーションソフトの活用について文書デザイン選択者が指導
- (ウ) 商業高校の教員が中学校の教員を指導する情報に関する研修講座
- Excel講座(初・中級)Excelの基礎から(夏期休業中)…受講者5名
- Excel講座(中・上級)通知表作成の自動化(冬期休業中)…受講者14名
- *本校HPに案内を掲載し,市外の中学校から参加者や県外の高校からの問い合わせがあった。
- (エ) 中学校の先生のためのマナー指導に関する研修講座
- 職場体験学習の事前学習と面接試験に係わるマナー指導…受講者5名
- (オ) 出前授業…年間平均33校,延べ40回 5,000人余り
- 中学校のインターンシップ前に,接遇・マナー等の研修を目的とする受講希望を多く受け付けている。(課題研究「秘書実務」選択の生徒が一部補助)
イ 企業等との連携
- (ア) 広島本通商店街との連携
- (イ) 商店街で生徒が行うイベントの企画
- 情報ビジネス科2年ビジネスコースの科目「商品と流通」において,本通商店街のマーケティング活動について学習し,イベント等の企画書を作成や,プレゼンテーションを実施した(発表会実施)
- 本通商店街のマーケティングについて学習・調査研究を行い,情報誌を作成し配付することにより,街づくり地域経済活性化の支援を図る。
- (ウ) 商店街が行うイベントへの参加・協力…情報提供の依頼
ウ 牛田商店街との連携
- (ア) 商店街が行うイベントへの参加・協力
- 3年次科目「課題研究(起業基礎)」及び情報ビジネス科2年の希望者が,商店街が行う「ほおずきまつり」(2日間,延べ10万人参加)への参加・協力)
- (イ) 商店街と連携した商品開発と販売
- 3年の科目「課題研究(起業基礎)」での商店街と連携した商品開発(コラボレーションメロンパンなど)と文化祭(来場者1,000人)での販売実習(市商プラザ)
- (ウ) 広島青年会議所と連携した商品開発と販売実習
- 3年次科目「マーケティング」で広島青年会議所平和産業振興委員会と連携した「平和」に関する商品開発(なごみキャンドル,ピースミサンガ)とアリスガーデン,平和公園での販売実習
- (エ) シティーセールスプロモーションプログラム
- 広島の観光資源の再発見,高校生の視点での修学旅行誘致のためのプレゼンテーションについて考える授業を2年生の「マーケティング」で取り組み,東海地区の4つの学校に対してセールスプロモーション活動を実施した。
- (オ) 商業高校生と地域の小学生・中学生によるサンフレッチェグッズ販売実習
- 学校近隣の牛田地区・戸坂地区の小学生・中学生(少年サッカーチームの児童・生徒)と地域のプロスポーツチームを地域ぐるみで応援を兼ねて,グッズの販売を行う。
- (カ) その他…どら菜の販売(広島菜を使ったどら焼)
- 市商生の考えた新しい広島の名産の商品化と販売活動の協力
オ 高大連携
- (ア) 大学インターンシップ
進学者に対して上級学校である商業系の大学の授業を体験
- (イ) 高大コラボレーション授業
専門性をより高めるため大学の教授と高校の先生が協力して高校生の授業を展開する。
カ 関連事業(講演等)
- 講演会
商業科目「商品と流通」で広島本通商店街について学習
- 講師
- 広島本通商店街振興組合理事
- 販売促進企画部長
田 諭 様
- 教職員研修会
先進校の宮崎商業の取組み(宮崎県の状況も含む)
- 講師
- 宮崎県商業教育研究会 事務局長
- 宮崎商業高等学校 情報処理科主任
- 田代 晃一 先生
- 『宮崎県における商業教育の推進状況について』
- 教職員研修会
先進校の山口県の商業教育の取組み
- 講師
- 山口県立岩国商業高等学校
- 校長 三吉 英太 先生
- 『これからの商業教育と商業高校』
- 教職員研修会
上級学校との情報交換と連携(先人の経験と今後の方向性)
- 講師
- 福山大学経済学部
- 助教授 小林 陽治 先生
- 『商業教育の可能性とこれからの商業教育に期待すること』
- 先進地視察…近県先進校視察
岡山東商業高等学校,岡山県倉敷商業高等学校の取り組みについて各担当者より説明を頂いた。同じ県内の高等学校ではあるが,行事の中から生徒の活力を沸き立たせる方法と,学校行事よりもクラブ活動と授業を中心に据えている異なる学校の基本方針に基づいて指導が行われ,成果を挙げている。
3)教育課程上の位置づけ
既存の履修科目に位置づけての実施の中で,本来のシラバスを変更して行う場面もあり,特別な取り組みという観があった。また,課外活動を要する事柄については,長期休業中等での実施するよう授業時間の確保にも考慮した。
4)連携先
- 広島青年会議所
- 広島本通商店街振興組合
約200店舗
- 牛田商店街振興組合
約110店舗
6 活動の成果
みんなの専門高校推進プロジェクト事業の取り組みによる連携先との関係を振り返ると,中学生に対する同一の授業を3度繰り返すことにより,P(Plan)・D(Do)・C(Check)・A(Action)(事業活動の「計画」「実施」「評価」「改善」)というマネジメント手法の検証を行うことができたことが成果の一つである。その他,生徒が中学生に対する指導を通じて,学習内容に対する理解を深めることができた点,地域に実際に出向いて学習する体験を通じ,実社会の現状と社会人としての応対等,学校にはない厳しい人間関係についても学ぶことができた点なども成果として挙げられる。
専門高校の授業内容について,中学生へのPR活動を含んだ出前授業については,2年間で延べ約10,000人余りの中学生を対象として実施した。今後,マナーの習得など,出前講座を受講した生徒の成長に期待したい。
7 2年間の研究の全体的な評価
学校外からの指導を積極的に受け入れ,学校外に向けて発信することを中心に活動を進めてきた成果として,地域の方々との連携が一層深まったことや,学校外の様々な場所で学習成果を発表することにより,多くの生徒が自らの学習内容に自信を深めると共に,商業高校生としてのプライドを少しずつ築いていったことが挙げられる。
2年間のすべての取り組みの評価を数値に置き換えることは難しいが,総評すれば,「改革のデパート」と例えられる様々な取組が,専門教育の活性化に向けた教職員の意欲を一層喚起し,新規事業“市商デパート”の次年度実施を決定したことが成果を象徴するものと言える。また,本校に対する中学生の進学ニーズについても,約2倍程度であった昨年の入学志願倍率は,今年度,若干下がりはしたものの,1.6倍の高さを堅持している。
8 今後の課題及びこれからの取組
中学校や大学などの教育機関,地域商店街や青年会議所等と連携した学校外での学習活動を活性化するためには,連携組織とともに専門教育を推進する三年間の系統的カリキュラムの構築及び,活動に必要な教育予算の保障という二つの課題がある。
今後は,地域商店街のHP作成支援活動などの先行事例に学びながら,進むべき方向性について検討を深めたい。また,本事業を契機に連携を深めることができた様々な組織との繋がりを維持することにより,校内だけでは十分に経験できない,本物(人・物・金)に触れる専門高校ならではの取り組みを継続して模索したい。その第一段として,産業界とのネットワークを活かし,より一層地域社会の協力を得てデパート形式による販売・経営学習「流通実験マーケット」を体験的に学ぶことを計画している。