平成17年度・18年度みんなの専門高校プロジェクト推進事業報告書

都道府県名 大阪府
推進地域名 大阪市

1 推進校の概要

(1)専門高校

学校名 大阪府立港南造形高等学校
設置大学科 総合造形科
設置小学科 工芸・デザイン 美術・造形教養
生徒数 586名
所在地 大阪市住之江区南港東2-5-72 電話 06-6613-1000

2 研究テーマ及び研究において特に重点を置いたところ

 以上の研究テーマについて、特に次の二つの視点で専門高校づくりに取り組んだ。

3 研究の概要

(1)平成17年度

  • 小・中学生がものづくりに興味をもつような木工課題について研究し、地域の「平林祭り」や大阪府教育委員会主催の「なにわっ子みらい適塾」において、木工教室を開催した。
  • 大和川堤防に、地域の方々と共に作成した陶板画を設置し、第1回大和川河口祭において除幕式を行い、日本一長い陶板画ストリートとするための第1歩を踏みだした。また、地域に陶板画制作を広めるための方策を研究した。
  • 貯木池に設置予定の模型作品(縮尺1/10,1/3)及び実物大模型を制作した。
  • 地域の人々と共同した作品制作や発表を行うための造形教育のあり方について調査・研究した。
  • 漆芸における蒔絵技法校内講習会の開催等により、木材工芸作品の技術的な向上を図り、地域の木材産業への関心を高めた。

(2)平成18年度

  • 「平林祭り」において木工教室を開催し、多くの子どもたちが楽しく参加できる木工課題について研究し、その成果を実証する。
  • 大和川の環境をさらによくするため、陶板画のメンテナンスを行うとともに清掃活動を実施した。
  • 地域に陶板画制作を広め、根付かせるための方策を研究し、以下の取組みを進めた。
    • 区内小中学生対象の陶板画原画コンクールと展覧会の開催
    • 区関係の社会人対象陶板画製作教室の開催
    • 最優秀の写真で陶板画を作成する大和川夕景写真コンクールと展覧会の開催
  • 大和川陶板画ストリートへ、陶板画を追加設置し、その効果を公園活用の変化を見ることによって検証する。
  • 貯木池に設置予定のフロートと実物のプロトタイプを制作し設置した。
  • 漆芸における蒔絵技法校内講習会の開催等により木材工芸作品の技術的な向上を図り、地域の木材産業への関心を高めた。
  • 地域の人々と共同した作品制作や発表を行うための造形教育のあり方について調査・研究した。
    • エコ夏祭りへの参加
    • 平林イルミネーションフェスタ等への参加

4 連携推進協議会の構成及び活動状況等

(1)構成

氏名 所属・職名 備考
井田 彪 京都造形芸術大学芸術学部彫刻科教授 指導助言者
林田 元宏 平林フォーラム会長  
沼田 恒雄 大和川再生協議会事務局長  
栗山 和之 大阪府教育委員会高等学校課長  
長廻 暢一 大阪府教育委員会高等学校課教務グループ首席指導主事  
杉本 清 大阪府商工労働部ものづくり支援課デザイン支援補佐  
桑田 芳治 大阪府立港南造形高等学校 校長  
繁内 一之 大阪府立港南造形高等学校 教頭  
九後 稔 大阪府立港南造形高等学校 総合造形科長(首席)  
高橋 孝壽 大阪府立港南造形高等学校 教諭  
藤田 尚子 大阪府立港南造形高等学校 教諭  
松村 理身 大阪府立港南造形高等学校 工芸科長(教諭)  
真鍋 政明 大阪府教育委員会高等学校課教務グループ指導主事 事務局
網代 典子 大阪府教育委員会高等学校課教務グループ指導主事 事務局

(2)活動状況

  • 第1回 平成17年11月2日
    学校からこれまでの取組の報告と今後の取組計画を提示する
    • 4月からの学校と大和川再生協議会との連携、及び地域との連携について
    • 学校側から様々な取り組み(アートプロジェクト)について構想を提示
    • 連携先への協力依頼や協力体制の調整を依頼した。また井田委員から長続きする連携や通常のカリキュラムに沿った展開等、具体的な示唆をいただいた
  • 第2回 平成18年3月8日
    学校からこれまでの取組の報告と今後の取組計画を提示する
    • 住之江区民に拡げる陶板画つくりの計画の提示
    • 個々のアートプロジェクト事業の進展状況
    • 平成18年度の具体的な計画について
  • 第3回 平成18年6月28日
    学校からこれまでの取組の報告と今後の取組計画を提示する
    • 個々のアートプロジェクト事業の進展状況
    • 来年度以降に継続するための方策
  • 第4回 平成19年1月31日
    学校からこれまでの取組を報告する
    • アートプロジェクトの実施状況を説明
    • 本研究の成果と今後の活動の課題を検討

5 推進校における活動の実施状況等

(1)活動前の地域との打ち合わせ

 平成17年度は、大和川再生協議会と平林フォーラムとの連携を進めたが、平成18年度は他の地域の諸機関とも連携を深めた。
 区民情報誌による広報活動を行うとともに、区役所の区民企画室と連携し、3つの行事について区生涯学習推進委員会と大和川河川事務所から後援を受けた。
 また、国土交通省が管理する堤防壁面に陶板を設置するため、区役所の協力を得て占有許可を取得した。17年度は大和川再生協議会が事務手続きを行い、18年度は本校が事務手続きを行った。
 また、陶板画の原画コンクール入選作品展開催のため、地下鉄「住之江公園」駅前の「オスカードリーム」(商業施設)のウインドウを借用した。また、夕景写真コンテスト作品展開催のため、北区梅田にある「曽根崎地下歩道イベントゾーン」を借用した。
 夕景写真コンテストの主催者として日本写真映像専門学校に協力を依頼した。
 本校独自に大和川河川敷の清掃(陶板画の清掃管理も含む)を行うため、河川事務所、漁協、大阪市公営所、地域のライオンズクラブと連絡を取り協力を依頼した。
 エコ夏祭り参加に当たっては、大阪市港湾局と協議した。

(2)活動概要

 次のA)〜H)のプロジェクトに取組んだ。プロジェクトの実施において次の点に留意した。

  • 1広い意味での造形芸術活動と位置づけること
  • 2自己表現という目的以外に、造形作品が社会的な役割を持つことを生徒が理解できるようにすること
  • 3さまざまな関係性の中で、その活動において何が出来るのか、何をするべきなのかを生徒が考えること
  • 4地域と連携した様々な活動を行うことにより、「地域に信頼される学校づくり」をめざすこと
  • A)平林祭りにおける木工教室の開催
    5月中旬に開催される平林祭りにおいて、生徒が講師となり子ども向けの木工教室を開催した。平成17年度は糸鋸盤を使って動物のジグソーパズル、平成18年度は動物のオーナメント作りを行った。
  • B)第1学年全員による陶板画の制作と、生徒会による大和川清掃の実施
    科目「工業技術基礎」における素材研究(陶芸分野)において、陶板を作成し大和川堤防に貼り付けた。また、大和川陶板画ストリートの作製を通じて、生徒自身が自分たちで出来る大和川の河川環境を守る行動を考え、自発的な清掃活動を実施することになった。
    この清掃活動は大阪府の「心の再生」府民運動のひとつとして評価され、大和川環境整備協議会からも感謝状をいただいた。
  • C)住之江区内小・中学生対象の陶板画ストリート陶板画原画コンクールの開催
    住之江区内の小・中学生(養護学校高等部も含む)対象に平成18年6月に原画を募集した。152点の応募があり、33点を入選作品とした。その中から校種別に優秀作品を選定し、本校の生徒が陶板画として加工した。また、9月2日から22日まで、住之江公園駅前のオスカードリーム2階で入選作品展を開催した。
  • D)住之江区在住者等の陶板画制作教室の開催
    区民情報誌上で参加者を募集したところ、12名の応募者があった。本校の施設を活用して陶芸に親しんでもらうと共に、地域に根ざした学校づくりの一環とした。
  • E)大和川夕景写真撮影会の実施と同写真コンテストの開催
    大和川の河口は真西に向いている。真西には明石海峡大橋が見え、秋分の日にはその橋脚付近に沈む夕陽を見ることができる。その「日本一夕景の美しい大和川河口」を写真で表現する撮影会を実施した。また、撮影会での作品を中心とした夕景写真コンテストを開催した。撮影会には40人が参加し、コンテストには39点の作品応募があった。応募作品の中から最優秀作品1点を陶板画に加工して大和川陶板画ストリートの一部として設置した。(平成19年2月)また、平成19年3月16日から2週間、JR北新地駅の東にある曽根崎地下歩道イベントゾーンで展示を行った。この展覧会には応募写真だけでなく、本校を含む関係4団体の大和川や平林地区における活動内容や学校紹介もあわせて展示した。
  • F)平林イルミネーションフェスタ、エコ夏祭りへの参加
    学校では経験することが少ない素材やテーマに取り組むことによって新しい造形の可能性を見つけるために、大阪市港湾局が主催する「エコ夏祭り」のテーマに沿った立体造形作品を制作した。大阪市の海上ゴミ集積場から立体造形の素材を選び出し、3つのテーマで作品を作った。また、平林フォーラムから依頼を受け、イルミネーションライトによる造形作品を生徒有志が制作し、展示した。
  • G)木工作品の質を高めるための漆芸講座の開催
    生徒の木工技術や知識の向上をねらいとし、漆の塗りと蒔絵の技法を学習した。
  • H)貯木池を活用した立体造形作品の展示計画
    学校設定科目「立体造形」の基礎的な課題を発展させ、空間概念の学習だけでなく重力を含めた素材と形の関係を学習するため、実物大の展示教材を制作した。

 A)〜H)のプロジェクトは、「工業技術基礎」や学校設定科目「立体造形」「写真」や総合的な学習の時間、部活動において実施した。

(3)連携先の概要

[平林フォーラム]

 平成15年度に地元の若手企業家により設立された。地域の潤いとなるよう花を植え、貯木池にあるフローティングハウスで音楽会を定期的に開催し、平林祭りを企画運営するなど地域の活性化に取組んできた。平成18年12月には平林イルミネーションフェスタを開催した。地域の活性化に向けた行政の取り組みにも参画している。

[大和川再生協議会]

 平成12年12月に大和川河口域のライオンズクラブのメンバーが主となり設立した。5年前から大和川河口において魚つり大会を実施することを目標に掲げ、美しい大和川となるよう、河川敷の清掃、芦刈り、シジミの稚貝放流を行うなど、美しい大和川をめざして活動を進めてきた。平成17年9月23日に第1回大和川河口祭りを開催し、魚つり大会を実施するという所期の目標を達成したが、大和川の水質環境等には大きな変化がないことから、更に5年間活動することとし、2010年に向けて大和川河川事務所が掲げる目標達成に協力している。大和川陶板画ストリートも同協議会の大きな事業の一つである。

6 活動の成果

 活動の目標は

 の二点である。
 大和川堤防に貼り付けた陶板画の維持管理に生徒自身が関わるべきだと考え、生徒会が中心となり陶板画と周辺河川敷の清掃活動を実施したこと(この活動は、大阪府の心の再生府民運動と大和川環境整備連絡協議会から表彰を受けた)や、地域から要請を受け参加した平林イルミネーションフェスタに関わった生徒が、同好会を立ち上げ外部からのベントへの参加要請に積極的に関わろうという意欲を持ったこと等は、生徒が造形をとおして社会性を身につけることができた成果であると考える。
 また、平林イルミネーションフェスタの開催に際し、推進校の参加を楽しみにしているという地域の方の声や、小・中学校との交流が今まで以上に盛んになったことなど、2年間の活動をとおして、近隣地域の方々の本校に対する期待がさらに大きくなったと実感している。

7 2年間の研究の全体的な評価

 大和川の堤防に貼り付けた陶板画に関する事業については、地域の方々との共同制作や、小・中学生に対する様々な催しなど学校の施設を活用し本校の特色をいかして地域に貢献する取組みを行うことができた。この取組みを通して「地域に信頼される学校づくり」を推進することができた。
 地域との連携に取組んだ結果、この事業で連携した2団体以外に、大和川河川事務所や区役所、漁協、日本写真映像専門学校などと連携ができたことは大きな成果である。
 大和川河川事務所は、同事務所が提供するラジオ番組とテレビ番組で本校の事業を取り上げ、大和川堤防への陶板画の設置と大和川夕景写真コンテストについて広く周知する機会を得た。
 また、曽根崎地下歩道イベントゾーンで開催した大和川夕景写真コンテスト作品展では、同時にこの2年間の研究概要を写真で展示し、本校の紹介ビデオを終日大画面で放映した。会場が毎日数千人の人々が行きかう繁華な空間であったことから、多くの人に本校の取組みを知ってもらうことが出来た。

8 今後の課題及びこれからの取組

 今後の課題は、この2年間の研究により足がかりができた地域との連携事業の継続である。
 大和川再生協議会との連携事業である大和川陶板画ストリートへの陶板画の設置については、2010年に同協議会が開催を予定している第2回大和川河口祭りに向け、日本一長い陶板画ストリートを目指して継続していく予定である。また大和川夕景写真コンクールについても継続する。
 平林フォーラムとの連携事業については、「平林祭り」における木工教室をはじめ、イルミネーションフェスタへの積極的参加など、より地域に密着した活動になるよう、本校の特色をいかした取り組みを展開していくつもりである。
 そのため、これらの事業に学校として主体的に取り組むための、連携推進協議会を発展・充実させることが必要である。