平成17年度・18年度みんなの専門高校プロジェクト推進事業報告書

都道府県名 滋賀県
推進地域名 甲賀市

1 推進校の概要

(1)専門高校

学校名 滋賀県立甲南高等学校
設置大学科 工業学科
設置小学科 薬業科
生徒数 120名
所在地 甲賀市甲南町寺庄427

(2)小・中学校(小・中学校との連携の場合のみ記入)

学校名 甲賀市立佐山小学校
生徒数 127名
所在地 甲賀市甲賀町小佐治2922

学校名 甲賀市立土山小学校
生徒数 209名
所在地 甲賀市土山町414

学校名 甲賀市立雲井小学校
生徒数 245名
所在地 甲賀市信楽町牧868

学校名 甲賀市立甲南第二小学校
生徒数 145名
所在地 甲賀市甲南町杉谷2046

2 研究テーマ及び研究において特に重点を置いたところ

研究テーマ「甲賀の薬」

 それぞれの学年で学んでいる理科の授業に関係した実験内容と、甲賀の薬を関連づけること。出来るだけ参加型の実験教室にすること。

3 研究の概要

(1)平成17年度

 身近な化学実験やものづくりを通して、化学実験の楽しさや重要性をアピールする。
 小学校の各学年で学習する理科の内容を実験を通してより深く理解するために、どのような内容が良いのかを研究し、薬について興味を引き出すように工夫した。

(2)平成18年度

 平成17年度の研究を基に、薬に興味を示すような内容を取り入れた化学実験を実施した。また、高校生が小中学生に分かりやすく実験できるように、考え方や内容を工夫した。

4 推進地域協議会の構成及び活動状況

(1)構成

氏名 所属・職名
河原 恵 滋賀県教育委員会事務局 学校教育課 課長(会長)
中野 勉 滋賀県立甲南高等学校 校長(副会長:座長)
中島 千明 滋賀県教育委員会事務局 学校教育課 指導主事
西村 文一 甲賀市教育委員会事務局 学校教育課 課長補佐
藤井 照代 甲賀市教育委員会事務局 生涯学習課
八里 良子 甲賀市立甲南中部小学校 校長(理科部会長)
村地 昭彦 甲賀市立伴谷小学校 教諭(水口ブロック代表)
吉田 茂充 甲賀市立大野小学校 教諭(土山ブロック代表)
木村 眞雄 甲賀市立油日小学校 教諭(甲賀ブロック代表)
青木 保彦 甲賀市立信楽小学校 教諭(信楽ブロック代表)
中島 真奈美 甲賀市立希望ヶ丘小学校 教諭(甲南ブロック代表)
金田 雅裕 甲賀市土山中学校布引分教室 教頭
内林 善彦 滋賀県立甲南高等学校 教頭
上山 一登司 滋賀県立甲南高等学校 教諭
森田 和行 滋賀県立甲南高等学校 教諭

(2)活動状況

1)平成17年度

  • 第1回協議会 平成17年10月11日(火曜日)15時30分〜
    • (1)平成17年度・18年度みんなの専門高校プロジェクト推進事業実施要項
    • (2)研究テーマ及びその設定理由と研究計画の概要
    • (3)協議会の構成及び検討事項
    • (4)活動の実施計画
    • (5)平成17年度 予算(案)
    • (6)平成17年度 事業計画
  • 第2回協議会 平成18年2月23日(火曜日)15時30分〜
    • (1)平成17年度 実験教室の実施報告
    • (2)平成17年度 反省と課題
    • (3)平成18年度 事業計画

2)平成18年度

  • 第1回協議会 平成18年6月20日(火曜日)15時30分〜
    • (1)平成17年度・18年度みんなの専門高校プロジェクト推進事業実施要項
    • (2)平成17年度 事業報告
    • (3)平成18年度 事業計画(案)、今後の展開について
  • 第2回協議会
     平成18年度事業報告書の発送とその意見書の回収し、平成18年度のまとめとする。

5 推進校における活動の実施状況等

(1)活動前の地域との打ち合わせ

 実施する学校や地域と事前に実施時間、実施場所、実施する実験内容を検討し、それぞれに合った取り組みとした。

(2)活動概要

1)活動のねらい

 小中学校の理科の授業や課外学習と地域で行われる行事に出前実験として参加し、高校生が自ら工夫と研究を行い、小中学生に分かりやすく実習する力を養こととした。

2)活動内容

<平成17年度>
  • ●科学の祭典における「台所で出来る簡単化学実験」の実施、七宝焼づくり
    • 日時
      平成17年11月5日・6日(土曜日・日曜日)
    • 場所
      大津市科学館
    • 形態
      不特定多数に対する演示実験
    • 実験一覧
      1. アルミホイル火焔放射器
      2. スプーンで電気体験
      3. 何もないのに進む船
      4. ドライアイスの氷浴(簡単低温の世界)
      5. 風船をふくらまそう
      6. 進入禁止のビン
      7. 身近な指示薬
      8. プラスチックを調べよう
      9. 調味料の力(卵の白身七変化)
      10. 消える水
      11. 消えるガム
      12. エントロピーを感じよう
      13. 角砂糖は燃えるか
      14. 水中花火
      15. ヨードチンキの色を消す
      16. スパイ大作戦(インクを消す)
      17. スーパーボールを作る
      18. 蛍光スライムを作ろう
      19. 透明なタバスコ
      20. ドライアイスで色変わり
      21. 空き缶をつぶす
      22. 花びら七変化
      23. 紙コップロケット
      24. 燃えないハンカチ
      25. 割れない風船
  • ●ボーイスカウト・カブ隊への出前実験・ものづくり
    • 日時
      平成17年11月13日(日曜日)
    • 場所
      水口中央公民館
    • 形態
      小学生(ボーイスカウト・カブ隊)十数名に対する演示実験、工作
    • 実験内容
      ドライアイスの実験(簡単低温実験、液体ドライアイス、カルピスをカルピスソーダにしよう、ドライアイスロケットなど)、万華鏡づくり
  • ●甲南第二小学校科学クラブへの出前実験・ものづくり
    • 日時
      平成17年12月12日(月曜日)放課後 理科室
    • 形態
      小学生(科学クラブ3〜6年生)8名に対する演示実験、ガラス細工
    • 実験内容
      「水とガラスは似てる?、水とガラスのあいの子って?」
      水とガラスの違いの話。水とガラスのあいの子「スライム」作りと、スライムの性質を知ろう。色ガラス棒で、葉っぱのマドラーを作ろう。
  • ●土山小学校への出前実験
    • 日時
      平成18年2月3日(金曜日)4年生:1,2時間目 理科室
    • 形態
      小学生1クラスに対する演示実験
    • 関連単元
      ものの温まりかた
    • 概要
      ものの温まり方を勉強するということで、「温めてみよう冷やしてみよう」というテーマで演示実験をした。具体的には状態変化を感じてもらうために空き缶つぶしを実施し、丸底フラスコに入れた水を温めると?、お湯と水の重さ比べ、水の対流をそうめんで観察しよう、部屋の温度を確認しようというテーマで対流に関する実験を行った。
    • 日時
      平成18年2月3日(金曜日)3年生:3,4時間目 教室
    • 形態
      小学生1クラスに対する演示実験・磁石工作
    • 関連単元
      磁石
    • 概要
      実験では磁石を実際に配り、引き合うことや反発することを体験し、磁石に着くもの、着かないものを考えてもらった。そこから磁石に着くものは磁石になるんだよと言うことで、クリップを磁石にする実験を行った。次に磁石を使ったカラフルイソギンチャク(磁石の磁力線をモールで見えるようにする)を行い。引き合うとき、反発するときの磁力線の様子を観察した。その後、磁石コマの工作に移った。
  • ●佐山小学校への出前実験
    • 日時
      平成18年2月13日(月曜日)3年生:1,2時間目 理科室
    • 形態
      小学生1クラスに対する演示実験・磁石工作
    • 関連単元
      磁石
    • 概要
      基本的に土山小学校の3年生と同じ実験、工作メニューで行ったが、別に磁石を持参し、NとSの区別を付けて始めた。また液体酸素が磁石に着く事を確認する実験も行った。クラスとしてもやりやすく、人数も良かった。磁石コマの改良が検討課題であった。
    • 日時
      平成18年2月13日(月曜日)4年生:3,4時間目 理科室
    • 形態
      小学生1クラスに対する演示実験
    • 関連単元
      ものの温まりかた
    • 概要
      基本的には土山小学校で行った「温めてみよう、冷やしてみよう」を実施した。このクラスは昨年液体窒素の実験を行っていたので、ものの温まり方を詳しく行い「対流」、アルミ板の上の蝋はどれが早くとけるかな?などのテーマで実験し「伝導」やカーボンヒーターを使った実験で「輻射(放射)」を説明した。液体窒素の実験も行った。
  • ●あいの土っこ「きらねっ人」いきいき活動への出前実験
    • 日時
      平成18年2月25日(土曜日)
    • 場所
      土山公民館
    • 形態
      不特定多数に対する演示実験
    • 実験内容
      夕焼けと青空の実験、スペクトルを見る。
<平成18年度>
  • ●土山小学校への出前実験
    • 日時
      平成18年10月23日(月曜日)4年生:4時間目 理科室
    • 形態
      小学生1クラスに対する演示実験
    • 関連単元
      「ものの温まりかた」「ものの温度とかさ」
    • 概要
      ものの温まり方を勉強するということで、「温めてみよう冷やしてみよう」というテーマで演示実験を実施。具体的には状態変化を感じてもらうために空き缶つぶしを実施し、丸底フラスコに入れた水を温めると?、お湯と水の重さ比べ、水の対流をそうめんで観察しよう、部屋の温度を確認しよう、などで体積増加、対流などに関する実験を行った。
    • 日時
      平成18年10月23日(月曜日)3年生:5時間目 理科室
    • 形態
      小学生1クラスに対する演示実験・磁石工作
    • 関連単元
      「磁石」
    • 概要
      実験では磁石を実際に配り、引き合うことや反発することを体験し、磁石に着くもの、着かないものを考えてさせる。そこから磁石に着くものは磁石になると言うことを、クリップを磁石にする実験を行い、次に磁石を使ったカラフルイソギンチャク(磁石の磁力線をモールで見えるようにする)を行う。引き合うとき、反発するときの磁力線の様子を観察する実験を実施。その後、磁石コマの工作を行った。また、液体窒素を使った実験も行った。
  • ●ボーイスカウト・カブ隊への出前実験・ものづくり
    • 日時
      平成18年11月12日(日曜日)
    • 場所
      水口中央公民館
    • 形態
      小学生(ボーイスカウト・カブ隊)十数名に対する演示実験、工作
    • 実験内容
      洗濯ノリ(PVA)からプラスチックを取り出す。
      蛍光スライム作り、ブラックライトで光るもの、七宝焼き
  • ●学びの体験広場への出前実験
    • 日時
      平成18年11月18日(土曜日)
    • 場所
      甲南町しのびの里「プララ」
    • 形態
      不特定多数に対する演示実験
    • 実験内容
      アルギン酸ゲルを使ったインテリア作り、絞り染め
  • ●雲井小学校への出前実験
    • 日時
      平成18年11月24日(金曜日)4年生:5時間目 理科室
    • 形態
      小学生1クラスに対する演示実験
    • 関連単元
      ものの温まりかた
    • 実験内容
      基本的に土山小学校の4年生と同じ実験、液体窒素を使った実験も行った。
  • ●科学の祭典における「台所で出来る簡単化学実験」の実施、七宝焼づくり
    • 日時
      平成18年11月25日・26日(土曜日・日曜日)
    • 場所
      彦根市文化プラザ
    • 形態
      不特定多数に対する演示実験
    • 実験内容
      身近な指示薬、消えるガム、スーパーボールを作る、透明なタバスコ、空き缶をつぶす、スライム作り、ドライアイスで色変わりなど。
  • ●甲南第二小学校科学クラブへの出前実験・ものづくり
    • 日時
      平成18年12月11日(月曜日)放課後 理科室
    • 形態
      小学生(科学クラブ3〜6年生)7名に対する演示実験、工作
    • 実験内容
      アルギン酸ゲルを使ったインテリア作り、洗濯ノリ(PVA)からプラスチックを取り出す。
  • ●佐山小学校への出前実験
    • 日時
      平成19年1月12日(金曜日)3年生:4時間目 理科室
    • 形態
      小学生1クラスに対する演示実験・磁石工作
    • 関連単元
      磁石
    • 実験内容
      基本的に土山小学校の3年生と同じ実験。
    • 日時
      平成19年1月12日(金曜日)6年生:5,6時間目 理科室
    • 形態
      小学生1クラスに対する演示実験
    • 関連単元
      「導線に流れる電流と磁力」「電磁石の性質」
    • 概要
      電流が流れることにより発生する磁界と、それをうまく利用した電磁石の原理をテーマに演示実験を実施。具体的には鉄粉を用いた電線周りの磁界の観察、方位磁針を利用した磁力の確認、コイルの働きと電磁石のつくり、電気から磁石ができるなら、磁石から電気を作れるか、発電機の原理などの実験を行った。また、薬に関する実験と言うことで、忍薬作りを行った。今回は薬になる草や栄養になるものの替わりに、お茶の葉を薬研という道具をつかって粉にする。寒梅粉、はちみつとでよく練りながら混る。使いやすい大きさにわけて丸める。蒸してよく乾かす。茶筒のなかで振り混ぜて金箔(きんぱく)を付ける。
    • 日時
      平成19年1月15日(月曜日)5年生:4時間目 理科室
    • 形態
      小学生1クラスに対する演示実験
    • 関連単元
      「ものの溶け方」「水溶液の性質」
    • 概要
      ものの溶け方を、水溶液についての演示実験を実施。ガーゼに包んだ食塩はどのように溶けていくか、塩が溶けない水、ミョウバンの再結晶、塩水の重さくらべなどの実験を行った。
    • 日時
      平成19年1月19日(金曜日)4年生:5時間目 理科室
    • 形態
      小学生1クラスに対する演示実験
    • 関連単元
      「ものの温まりかた」「ものの温度とかさ」
    • 概要
      基本的に土山小学校の3年生と同じ実験。液体窒素の実験も行った。
  • ●あいの土っこ「きらねっ人」いきいき活動への出前実験
    • 日時
      平成19年2月10日(土曜日)
    • 場所
      土山公民館
    • 形態
      不特定多数に対する演示実験
    • 実験内容
      ツブフワとスライムの実験を予定している。

3)教育課程上の位置づけ

 3年生の課題研究2単位で生徒の研究テーマの一つとして班を編成し、実施にあたった。

4)連携先の概要

 小学校については教務主任とクラス担任、各イベントについては主催者と事前に連絡を取り合い、実施する実験内容を決めていった。

6 活動の成果

 出前実験を行うために、各学年で学習する理科の内容を実験を通してより深く理解するためにはどのような実験が良いかを考えて、材料を用意する。出前実験を実施するための練習と準備を行い、全体の説明や模範実験、各児童のグループで実験補助を担当する生徒などの役割を決める。児童が実験にどのように取り組むかを観察し、より分かりやすい実験教室にするように工夫する。その結果、児童に教えることで、教えることの難しさなど、生徒の総合的に考えていく力が養成できた。
 中学生の体験入学での実験や親子ものづくり教室なども、生徒が自分から積極的に参加して、実験教室のノウハウを学んだ。
 小中学校の理科教員の研修会も実施した。18年8月17日(木曜日)に甲南高校の薬業棟実習室で液体窒素を使った実験、出前実験のノウハウを学ぶ内容で行った。
 19年2月17日(土曜日)も本校の生物工学実習室で、サーマルサイクラーによる遺伝子の増幅(PCR)、制限酵素によるDNAの切断、電気泳動による確認、小学校でもできる簡単DNA抽出を行う予定である。来年度以降についても、市教育委員会や小学校と連携しながら、職員研修の一環として、甲南高校の施設や地域のフィールドを活用し、「やさしい理科実験」の講座や「野外観察」「昆虫観察」等を実施したいと考えている。他に、今年度は地域の薬草のデータファイルを作成し、いくつかの小学校に配付した。来年度は、地域の薬草の電子データベース化を予定しており、携帯電話を使ってデータ検索できるようなシステム教材の開発を予定している。

7 2年間の研究の全体的な評価

 2年間の研究によって、いくつかの小学校と連携して多くの実験教室を実施することができた。児童や生徒が、化学実験やものづくりの興味や関心を持ち、実験のおもしろさや大切さを学ぶことができたと思う。また、教える高校生も、自ら考える力や工夫する力が育成された。2年目からは甲賀の薬について学ぶ機会をつくることができて、今後さらに発展させていけるようになった。

8 今後の課題及びこれからの取組

 研究指定終了後も甲賀市教育委員会や小中学校と連携を取りながら事業を継続し、化学実験のおもしろさや大切さを伝えていきたい。この事業を通して、高校生自身の自ら考える力や工夫する力を伸ばせたことは大きな財産となった。