平成17年度・18年度みんなの専門高校プロジェクト推進事業報告書

都道府県名 三重県
推進地域名 伊勢市小俣町

1 推進校の概要

(1)専門高校

学校名 三重県立明野高等学校
生徒数 596名
所在地 三重県伊勢市小俣町明野1481 電話 0596-37-4125

(2)小・中学校(小・中学校との連携の場合のみ記入)

学校名 伊勢市立小俣中学校
生徒数 558名
所在地 伊勢市小俣町相合750 電話 0596-22-3610

学校名 伊勢市立小俣小学校
生徒数 671名
所在地 伊勢市小俣町元町663-1 電話 0596-22-3555

学校名 伊勢市立明野小学校
生徒数 533名
所在地 伊勢市小俣町明野1939 電話 0596-24-5171

2 研究テーマ及び研究において特に重点を置いたところ

 本校は、これまで農業、家庭、福祉の3学科がそれぞれ独自に地域の幼稚園、小・中学校、町の施設等を対象に出前授業や地域ガーデニング事業、さらには地域福祉貢献等の取組を行い、地域から一定の評価を得るなどの成果を上げてきたが、一方で、実施内容に学校全体としての系統性が見られない、学科相互の交流がないなどの課題もあった。
 この点を踏まえて、当事業においては、連携先との意見交換を十分に行うなどの「アセスメント」を実施するとともに、3学科が連携した取組を行い学校全体として系統的かつ効果的な交流事業を実施することで生徒に地域の専門高校に学んでいるという自信と誇りを育み、各学科の学習内容に関する知識・理解の定着を図る。また、生徒が小・中学生に実習等の指導をしたり、地域の住民と交流することで、コミュニケーション能力の向上を目指す。
 小・中学生については農業等の職業に対する興味・関心を高め、地域の専門高校の理解者の裾野を広げ、専門高校の活性化を図ることを目指す。

3 研究の概要

(1)平成17年度

 17年度まで行っていた近隣の小中学校への出前授業や花いっぱい運動の範囲を伊勢市小俣町全体に拡大し、地域への貢献活動を一層充実した。また、地域の人や団体との新たな研究事業にも取り組んだ。これらの取組により、生徒が地域住民との交流や小中学生の指導を通じてコミュニケーション能力を身につけ、日々の実習や学習内容の深化と定着が図られた。

(2)平成18年度

 17年度において3学科が系統性をもった取組ができなかったという反省を踏まえて、18年度は農業、家庭、福祉の3学科が連携してひとつの事業に取り組めるよう計画を立てた。生徒同士の協力と交流はもちろんのこと、職員間においても協力しあうことで、これまで見えなかった、それぞれの学科での取組における日々の学習指導内容を確認しあうとともに、相互理解が図られた。

4 推進地域協議会の構成及び活動状況等

(1)構成

氏名 所属・職名
豊島 久雄 伊勢市教育委員会教育次長
濱口 政巳 三重県立明野高等学校長
西村 善行 伊勢農協玉城支店経済1課長
北村 裕司 三重県ひじき協同組合青年部長
見並 貢一 小俣中学校長
仲世古 公男 小俣小学校長
飯田 幹生 明野小学校長
西村 三千代 小俣幼稚園長
中北 和子 明野幼稚園長
中村 正人 三重県立明野高等学校農場長・事務局
山際 久子 三重県立明野高等学校家庭部主任
高松 瑞和 三重県立明野高等学校福祉部主任
森 和久 三重県立明野高等学校生産技術科主任
久保田 仁 三重県立明野高等学校食品科学科主任
伊藤 誉 三重県立明野高等学校経済科主任
梅田 壮人 三重県立明野高等学校農業クラブ顧問
川村 周子 三重県立明野高等学校家庭クラブ顧問

(2)活動状況

1)平成17年度

  • 9月27日 第1回協議会を本校校長室で実施。
    17年度事業実施計画に基づいた具体的内容の検討について協議した。
  • 3月27日 第2回協議会を本校校長室で実施。
    17年度実施した事業の反省と18年度の計画及び調整について協議した。

2)平成18年度

  • 6月29日 第3回協議会を本校校長室で実施。
    18年度事業実施計画に基づいた具体的内容の検討について協議した。
    18年度予算案について検討した。
  • 3月5日 第4回協議会を本校校長室で実施。
    18年度実施した事業の反省と今後の継続した取り組みについて協議した。

5 推進校における活動の実施状況等

(1)活動前の地域との打ち合わせ

 各事業とも事前の打ち合わせは1回〜2回行なったが、出前授業の際には関係先の職員の本校での打ち合わせの他、こちらから施設の確認など下調べも行なった。また、明野小学校のもちつき出前授業の際には、これらの打ち合わせと下調べ以外に、前日の餅米の仕込みを明野小学校において行った。

(2)活動概要

1)活動のねらい

 生産技術科、食品科学科、経済科、生活教養科、福祉科と5学科が連携しながら各事業を進めることにより、学科を越えた生徒同士の協力と交流及び、職員間における協力を図ることができ、それぞれの学科の取組や学習指導内容を相互に確認するとともに理解することができる。また、生徒については、出前授業で小・中学生等に教えることにより、日々の学習内容の定着とコミュニケーション能力の向上を図り、自信と誇りを持てるようにする。

2)活動内容

17年度の活動内容
関係先 期日 対象 内容 場所 指導生徒
明野幼稚園 5月29日 親子 「おやこのつどい」
  • ウォークラリー
幼稚園庭
本校農場
福祉科
農業クラブ
2月14日 全員 ダイコンの収穫 本校農場 生産技術科
2月21日
小俣中学校 11月15日 1年生 花の寄せ植え・干し柿作り・たまねぎの定植・食品色素の実験・酵母菌実験・クッキー実習・表計算検定に挑戦・イチゴの管理 本校 農業学科
ひじきあらめ組合 12月17日 地域の人々 ひじきを利用した料理教室 本校 生活教養科
1月26日 地産地消を考える講演会 本校  
小俣町社会
福祉協議会
11月9日 文化祭への招待
  • お茶会、ファッションショー
本校 生活教養科
福祉科
小俣町施設 11月21日 役場・図書館・明野駅等へのプランター設置
JR宮川駅周辺の花壇づくり
生産技術科
地域の人々 12月9日 農業クラブバザール 本校農場 農業クラブ
地域の人々 4月30日 開放農園開園式 本校農場 生産技術科
地域の人々 随時 サンファーム小俣への出品 農業学科
18年度の活動内容
関係先 期日 対象 内容 場所 指導生徒
小俣幼稚園 11月24日 ふじ組 ひじきの入ったクッキーつくり 小俣町保健センター 生活教養科
11月27日 もも組
明野幼稚園 6月3日 親子 「おやこのつどい」
  • ウォークラリー
  • さつまいも苗植え
幼稚園庭から本校農場 福祉科
農業クラブ
10月26日 全員 海藻を使ったお菓子づくり 本校調理室・試食室 生活教養科
10月13日 全員 さつまいもの収穫 本校農場 生産技術科
小俣小学校 10月2日 4B親子 クッキーづくり 小俣小学校 食品科学科
1月22日 5B親子 お好みごはんづくり 小俣小学校 生活教養科
明野小学校 5月9日 5年生 もち苗植え 本校農場 生産技術科
9月21日 5年生 もち稲刈り 本校農場  
12月8日 5年生 もちつき 明野小学校 農業クラブ
12月15日 5年生 農業クラブバザール
  • もちまき
  • もちつきと振る舞い
本校農場 農業クラブ
福祉科
家庭クラブ
生活教養科
小俣中学校 11月22日 1年生 花の寄せ植え・干し柿作り・たまねぎの定植・食品色素の実験・中和滴定実験・クッキー実習・表計算検定に挑戦・写真の加工・アイデア小物の製作・ひじきを使った調理実習・介護実習・福祉コミュニケーション 本校 全学科
ひじきあらめ組合 7月1日 活動報告(三重県県地産地消発表会) 本校 生活教養科
1月18日 共同研究事業「ひじき料理講習」
小俣町社会福祉協議会 7月14日 ふれあい交流会(ひじき料理づくり) 保険福祉会館 生活教養科
2月22日 ふれあい交流会 本校
小俣町施設 12月7日 役場・図書館・明野駅等へのプランター設置
JR宮川駅周辺の花壇づくり
生産技術科
伊勢市駅 6月16日 伊勢市前ロータリーの花壇づくり 伊勢市駅前 生産技術科
12月20日 伊勢市前ロータリーの花壇づくり
地域の人々
明野小学校
小俣町社会福祉協議会
12月15日 農業クラブバザール
  • もちまき
  • もちつきと振る舞い
本校農場 生産技術科
農業クラブ
福祉科
家庭クラブ
生活教養科
地域の人々 5月3日 開放農園開園式 本校農場 生産技術科

3)教育課程上の位置づけ

 小・中学生に実習等の指導をしたり、地域の住民と交流することにより、専門教科の知識・理解の定着を図るとともに、コミュニケーション能力を向上させる。また農業クラブや家庭クラブ活動の一環として行なうことにより、クラブ員の自信と誇りを育むとともに、やりがいや達成感を得る機会とする。

4)連携先の概要

学校名 伊勢市立小俣中学校
生徒数 558名
所在地 伊勢市小俣町相合750 電話 0596-22-3610
学校,児童・生徒等の特色・状況等
 生涯にわたって自己開発のできる生徒の育成と地域に開かれた学校づくりを目指し、出会いや触れ合いをすすめ、活力に満ちた学校づくりを目標とする。クラブ活動も活発で、特にバドミントン、卓球、陸上部は全国大会に出場するなど実績を上げている。

学校名 伊勢市立小俣小学校
生徒数 671名
所在地 伊勢市小俣町元町663-1 電話 0596-22-3555
学校,児童・生徒等の特色・状況等
 自分も友達も大切にする子をめざし、人の話を聞ける子、自分の思いを伝えられる子、自ら学びともに育つ子どもの育成を研究課題としている。町では社会福祉法人や社会福祉協議会が窓口となって「子育て支援」を行っている。

学校名 伊勢市立明野小学校
生徒数 533名
所在地 伊勢市小俣町明野1939 電話 0596-24-5171
学校,児童・生徒等の特色・状況等
 自分の言葉で自分の思いが表現できる子、自分で考え、自分で判断し、自分で行動できる子を育成することを目標としている。個に応じた授業や個を生かした授業を行っていて、チームティーチングやコース別、均等割り授業を展開している。

学校名 伊勢市立小俣幼稚園
園児数 140名
所在地 伊勢市小俣町本町1 電話 0596-22-4092
学校,児童・生徒等の特色・状況等
 小俣町の中心に位置し、地域の方々との触れ合いや交流を大切にしながら、のびやかな明るい子の育成を目指している。とくに小俣小学校との交流を継続して行なっている。

学校名 伊勢市立明野幼稚園
園児数 48名
所在地 伊勢市小俣町明野1481 電話 0596-38-1234
学校,児童・生徒等の特色・状況等
 平成16年度より明野高校の附属施設であった「こばと園」より小俣町立の明野幼稚園に。その後も明野高校生との交流をつづけ、自然とのふれあいの中でたくましい子の育成を目指している。

事業所 伊勢市小俣庁舎・図書館・総合体育館・保健センター・北部公民館・ゆりかご園・あけぼの園・しらとり園
所在地 伊勢市小俣町
 度会郡小俣町が平成17年11月より伊勢市と統合になり、伊勢市小俣町となる。町立の施設もすべて市と委嘱団体での運営となる。図書館、体育館、保険施設、老人施設など。

事業所 三重県ひじき協同組合
所員数 8名
所在地 伊勢市東大淀町228 電話 0596-37-2133
 ひじきとあらめに代表される海藻を扱う協同組合で、ひじきの消費拡大をテーマに様々なイベントや研究事業に取り組んでいる。

事業所 伊勢市小俣町社会福祉協議会 電話 0596-27-0509
所在地 伊勢市小俣町本町3番地
 地域住民が抱かえている様々な福祉問題を地域全体の問題としてとらえ、みんなで考え、話し合い、協力して解決を図り、誰もが安心して暮らすことのできる「福祉のまちづくり」をすすめることを目的としている。地域福祉活動推進事業や老人福祉対策事業、福祉活動啓発事業、介護保険事業、児童福祉対策事業、心身障害者福祉対策事業を行なっている。

6 活動の成果

 小俣町内の小・中学校、幼稚園にはすべて出前授業を行なうことができた。特に、本校の近隣に位置する明野小学校への出前授業においては、生産から利用・消費、イベントでの地域貢献まで継続した指導ができた。また小俣中学校への出前授業では5学科すべてが協力しあって系統的に行なうことができた。事業の締め括りとしての農業クラブバザールでは、地域の方々が約250名ほど来場され、家庭クラブや社会福祉協議会、福祉科の協力のもと明野小学校児童のもちまきでフィナーレを飾ることができた。
 生活教養科においては、ひじき組合との共同研究により、おさかなコンクール三重県大会協議会賞をはじめ、全国ホームプロジェクトコンクール優秀賞、ひじきレシピ人気コンテスト三重県大会最優秀及び優秀賞、お肉の創作料理発表会三重県大会最優秀賞、同全国大会入賞等多くの成果を上げた。

7 2年間の研究の全体的な評価

 1年目は、各科の連携はあまりなく、これまで地域に貢献してきた事業を継続しているにすぎなかった。その反省を踏まえ、2年目は、中学校への出前授業を全学科で日程を合わせて実施し、中学校からの評判もよかった。また、もち米を教材とした小学校への継続的な出前授業においては、田植えから稲刈り、もちつき等を、生産技術科と農業クラブの生徒の指導により行なうことができた。さらに、農業クラブバザールにおいては、小学生や社会福祉協議会の協力で独居老人を招いてのもちつきと試食会、もちまきを行なった。一般の来場者も例年になく多く、運営した農業クラブの生徒や協力した家庭クラブ及び福祉科の生徒も本年度の農業クラブバザールの結果には大いに満足しており、学科を越えて生徒が達成感を味わうことができる良い機会となった。

8 今後の課題及びこれからの取組

 中学校への出前授業のアンケート結果で、本校の一部の生徒が自分のためになったと答えられなかったことは残念であった。原因としては、出前授業の一部で教員が説明するなど、生徒に授業の全部を任せきれなかったり、生徒を教員の手伝い的な扱いをした部分があったことが原因であると思われる。今後は、事業の趣旨を生徒に徹底させるとともに、事前指導を十分行い、生徒が全てを行うようにすることで、生徒に確実な技術と自信を付けさせることが大切であると思われる。
 事業全体としては、学校や地域のニーズに十分応えきれなかったところもあり、地域とのコミュニケーションを様々な機会を通じて行い、ニーズに合うように工夫していく必要がある。
 今回の事業を終了して、改めて本校が地域に根ざした地域とともに歩み貢献していくということが大切であることを認識し、今後より一層充実した地域連携が必要であると考える。