平成17年度・18年度みんなの専門高校プロジェクト推進事業報告書

都道府県名 愛知県
推進地域名 蒲郡市

1 推進校の概要

(1)専門高校

学校名 愛知県立三谷水産高等学校
設置大学科 水産
設置小学科 海洋科学科・情報通信科・海洋資源科・水産食品科
生徒数 485人
所在地 蒲郡市三谷町水神町通2番地1 電話 0533-69-2265

(2)小学校・中学校(小・中学校との連携の場合のみ記入)

学校名 蒲郡市立三谷小学校
児童数 346人
所在地 蒲郡市三谷町迫1番地 電話 0533-68-5117

学校名 蒲郡市立蒲郡北部小学校
児童数 291人
所在地 蒲郡市清田町開堰52番地 電話 0533-68-3478

学校名 蒲郡市立三谷中学校
生徒数 406人
所在地 蒲郡市三谷町原山1番地40 電話 0533-68-2365

学校名 蒲郡市立蒲郡中学校
生徒数 509人
所在地 蒲郡市新井町13番18号 電話 0533-68-6166

2 研究テーマ及び研究において特に重点を置いたところ

(1)研究テーマ

「船、海、川での体験活動をとおした地域連携の在り方に関する研究」

 水産高校が有する実習船などの施設・設備や人材の有効活用を図ることを目的に、小・中学校や地域社会との連携をすすめるとともに、海洋を題材とした学習活動をとおして、児童生徒の水産業への興味・関心を深め、小・中学校や地域及び専門高校の活性化や地域産業の振興に寄与することを目的に研究テーマを設定した。

(2)研究において特に重点を置いたところ

1)推進校と連携校との相互理解

 事業計画の調整や「出前授業」を実施する前に、連携校の小・中学校を訪問して、施設・設備及び児童生徒の状況などの理解を深めるとともに、教員間の交流を図るなど、事業を実施するに当たっての連携の在り方についての協議をとおして学校間の相互理解に努めた。

2)高等学校の教育資源を生かした活動

 「実習船『愛知丸』の一日体験航海」やダイビング体験、さつま揚げ体験などの「ミニ体験入学」の実施や、専門高校生がそれぞれの専門学科で学んだ知識や技術を児童生徒に指導する「出前授業」など、充実した施設・設備を活用して専門高校の教育内容の理解促進を図るとともに、児童生徒の水産業への興味・関心を深めさせることに努めた。

3 研究の概要

(1)平成17年度

 専門高校と小・中学校との交流を図るための校内体制の在り方及び、地域における連携を円滑にすすめるための体制づくりについて研究するとともに、児童生徒が海洋のもつ雄大さやそこに生活する動植物の世界を体験的に学習することをとおして海洋や水生生物の魅力に触れ、興味・関心をもつ内容や展開方法を模索した。また、専門高校生が児童生徒を指導することで、学習意欲を向上させるとともに専門高校の活性化を図った。

(2)平成18年度

 平成17年度の反省をもとに、校内体制の在り方を検証し、効果的な活動ができる体制を構築するとともに、専門高校の施設・設備を活用した体験学習の内容や方法、小・中学校を会場として行う出前授業について、児童生徒の興味・関心を高める体験学習の内容や方法について研究した。さらに、地域を支える人材育成の在り方について協議した。

4 推進地域協議会の構成及び活動状況等

(1)構成

1)委員

平成17年度 平成18年度 所属・職名
小林 俊雄 (同左) 三谷漁業協同組合代表理事組合長
大西 興一 (同左) 蒲郡漁業協同組合竹島支所長
永井 幸久 清水 淳 蒲郡市立蒲郡北部小学校PTA会長
山本 泰久 熊谷 衡締 蒲郡市立三谷小学校PTA会長
山下 智 中村 靖英 蒲郡市立蒲郡中学校PTA会長
藤田 政樹 小田 享史 蒲郡市立三谷中学校PTA会長
鈴木 英治 鈴木 隆夫 愛知県立三谷水産高等学校PTA会長
杉江 恭司 (同左) 蒲郡市教育委員会学校教育課長
鈴木 佳昭 (同左) 蒲郡市立蒲郡北部小学校長
竹内 宏枝 岩瀬 輝信 蒲郡市立蒲郡北部小学校教諭
武内 正 (同左) 蒲郡市立三谷小学校長
大竹 晃極 (同左) 蒲郡市立三谷小学校教諭
梅田 司 (同左) 蒲郡市立蒲郡中学校校長
鈴木 教仁 鈴木 秀一 蒲郡市立蒲郡中学校教諭
塩野谷 幸平 岩瀬 雅史 蒲郡市立三谷中学校長
田中 源五 小野 利典 蒲郡市立三谷中学校教諭
伊藤 美保 (同左) 愛知県立三谷水産高等学校長
日比 孝志 小林 清和 愛知県立三谷水産高等学校教頭
小林 清和 浅井 功 愛知県立三谷水産高等学校教諭

2)幹事

平成17年度 平成18年度 所属・職名
川村 則夫 高須 勝行 愛知県教育委員会高等学校教育課長
川嶋 繁勝 国枝 裕 愛知県教育委員会高等学校教育課主査
鵜飼 愛一郎 (同左) 愛知県教育委員会高等学校教育課指導主事
杉山 英俊 (同左) 愛知県教育委員会義務教育課指導主事

(2)活動状況

1)平成17年度

第1回 7月13日(水曜日)14時〜16時 蒲郡市民会館
連携推進協議委員の紹介、推進事業の趣旨説明、今年度の活動計画等
第2回 12月16日(水曜日)14時〜16時 蒲郡市民会館
今年度の実施状況の報告と反省、次年度の実施計画の検討等

2)平成18年度

第1回 6月6日(火曜日)13時〜14時30分 蒲郡市役所
昨年度の活動の成果、今年度の進め方と活動計画案等
第2回 12月15日(金曜日)10時〜12時 蒲郡市民会館
今年度の実施状況の報告と反省、2年間の総括的評価と今後の取組等

5 推進校における活動の実施状況等

(1)活動前の地域との打合わせ

 平成16年度中に、平成17年度から2年間の取組について、その概要を教頭が連携校の小・中学校に出向いて説明した。平成17年度は初年度ということもあり、従前からの取組を中心に、連携校4校への出前授業を各2回、計8回計画するなど事業の拡充を図った。
 平成17年度当初に、教頭と教務主任が連携校4校を回り、各校の実務担当者との会議をもち実施計画を立案した。水産高校で実施する体験学習については、「実習船『愛知丸』の一日体験航海」と「ミニ体験入学」の2本とした。また、「出前授業」については、実施期間と体験学習のメニューを示して、それぞれの小・中学校からの希望を調査するとともに、実施期日や対象学年等の計画を立てていただいた。実施期間を9月から11月にかけての3か月間に絞ったことで、水産高校の教員、生徒は集中して取り組むことができた。

(2)活動概要

1)活動のねらい

 本県は漁業・養殖業総生産量は全国18位であり、アサリやウナギなど三河湾、伊勢湾及び太平洋近海を漁場とする水産業が盛んであることから、県立三谷水産高等学校は県内唯一の水産高校として、水産業に携わる後継者育成をはじめ、広く海洋に関する職種に従事する人材育成が求められている。このような背景を踏まえて、1児童生徒が海洋のもつ雄大さやそこに生活する動植物の世界を体験的に学習することによって海洋の魅力に触れ、興味、関心を高める、2児童生徒を指導することをとおして、専門高校生の学習意欲を向上させる、3交流活動をとおして、県立三谷水産高等学校に設置する4つの学科の特色を児童生徒や保護者、地域の方々に広く理解してもらう、4水産高校に整備されている電子顕微鏡や実習船などの設備を活用し、沿岸の水産資源の調査などを高校生と一緒に行うことにより、児童生徒の海洋環境への関心を高め、地域水産業を支える人材の育成を図る。

2)活動内容

  • ア 実習船「愛知丸」の一日体験航海
     水産高校のシンボルである実習船「愛知丸」に一日体験乗船し、三河湾、伊勢湾の航海を体験することをとおして、海や船に親しむとともに、海洋や自然についての興味・関心を深めることを目的に、平成17年度・18年度の夏季休業中に4回実施した。主な内容は、遠洋漁業実習(マグロ延縄)や愛知丸の船内構造と緊急避難の方法の説明、エンジンルーム、ブリッジの見学と海洋観測の体験などである。小・中学校からは、保護者、教員を含めて2年間で延べ124名が参加した。
  • イ ミニ体験入学
     従来から中学3年生を対象として実施している「中学生体験入学」の内容を、連携校の児童生徒、教員、保護者にも対象を広げ、三谷水産高校の教育活動についての理解を深めることを目的に、平成17年度・18年度夏季休業中に2回実施した。「魚の飼育体験」、「ダイビング体験」、「缶詰巻締め体験」、「さつま揚げ体験」、「風船ホーバークラフトの製作」、「コンピュータによる画像処理体験」、「超ミクロの世界の観察」、「電波を探してみよう」の8講座を設けた。小・中学校からは、保護者、教員を含めて2年間で延べ209名が参加した。
  • ウ 出前授業
     三谷水産高校の生徒が、日ごろからそれぞれの専門学科で学んでいる知識や技術などの学習成果を連携校の児童生徒に披露することをとおして、身に付いた知識や技術の確かさを確認する機会となった。また、児童生徒の新たな興味・関心への動機付けや、地域の児童生徒、教員に三谷水産高校の授業内容や生徒の理解を促進することを目的に実施した。「愛知丸でのマグロ延縄漁業、遠洋乗船実習の体験談」、「ロープワークについての講義と実習指導」、「インターネットによる調べ学習の実演と体験」、「ルアーづくりの実演と体験」、「磁力を調べる実演と体験」、「音を伝える実演と体験」、「河川の生物調査と稚アユの放流」、「蒲郡周辺の淡水魚類相について」、「干潟の調査」、「ツメタガイの生態」、「食品加工の過程と安全衛生への取組紹介と指導」、「練り製品の作り方の実演と体験」、「ニジマスの飼育技術」の12講座を設け、連携校の小・中学校や近隣の河川を会場として実施した。平成17年度に16回、18年度に12回実施し、2年間で延べ2,350名が参加した。

3)教育課程上の位置付け

 科目「総合実習」、「課題研究」、「水産情報技術」に位置付けた。

4)連携先の概要

  • ア 蒲郡市立三谷小学校
     明治5年創立という歴史のある小学校で、学区は比較的自営業が盛んで、地元の「三谷祭」に象徴される活気が町全体に溢れている。小学校では、朝のチャレンジ学習に読書を取り入れ、保護者から図書館ボランティアを募るなど子どもたちへの読み聞かせの活動を進め、読書に親しむ雰囲気を育てている。また、学年を縦割りにした異年齢集団によるファミリー活動を児童会の計画に組み入れており、学年を超えて交流し合う姿が見られる。平成18年度は、蒲郡市教育委員会から「学ぶ楽しさのある算数学習」について研究委嘱を受け、子どもたちが「楽しかった、分かった」と実感できる授業づくりに取り組んでいる。
  • イ 蒲郡市立蒲郡北部小学校
     東に五井山、北に鉢地と、蒲郡市の奥まった山裾に位置しており、周囲は、みかん畑に囲まれ、落合川と西田川に挟まれた自然豊かな地域にある小学校である。地域の特性を生かし、総合的な学習の時間「静里」で、稲作、イチゴの栽培、落合川の環境等の学習を続けている。また、平成16年度から公民館活動に協力してホタルの幼虫を飼育し、ホタルの里づくりをすすめている。地域の方々の学校に寄せる思いは強く、近年、運動会、産業文化祭、北部まつりなどを地域と連携して取り組んでいる。子どもたちは、おじいちゃん先生・おばあちゃん先生から手取り足取り教えてもらい、生き生きと活動している。
  • ウ 蒲郡市立三谷中学校
     天下の奇祭として有名な「三谷祭」をとおして、地域が一体となった団結の強い地域に位置する中学校である。昭和22年4月の開校以来、「独立独歩」の校訓のもと、知・徳・体の調和のとれた、心豊かな人間の育成に努めている。生徒は、学年を縦割りにした活動を柱に、体育大会・合唱コンクールなどの行事に明るく精力的に取り組んでいる。三河湾に浮かぶ名勝、三河大島の清掃などにも積極的に参加し、地域との結びつきを強めている。総合的な学習の時間などでは、地域の方々を講師に招いて「町の先生から学ぶ」学習を意欲的に展開している。また、平成16年度に、蒲郡市教育委員会から「共に『学び』を育む生徒の育成」について研究委嘱を受けるなど、「生きる力」の定着に向けて取り組んでいる。
  • エ 蒲郡市立蒲郡中学校
     昭和22年4月に開校した中学校で、蒲郡市の中心部に位置し、校区は商業地域・住宅地域・みかんを中心とする農業地域からなっている。「正しく 明るく たくましく」の教育目標のとおり、生徒は明るく素直であり、日々意欲的に学習や運動に取り組んでいる。平成13年度から3年間、蒲郡市教育委員会の研究指定を受け、学習指導の研究を進め、平成15年度には「『智恵』を育む生徒の育成−一人一人の問題解決能力を高め合う教科指導−」をテーマに、学習指導研究会を開催した。平成16年度から蒲郡市は2学期制を導入していることから、2学期制の長所が生かされるよう全職員が一丸となり、改善意識をもって日々教育活動に取り組んでいる。

6 活動の成果

(1)実習船「愛知丸」の一日体験航海

 帰航途中で行ったアンケート結果から、小学生では、初めて船に乗ったことや海がとても気持ちよかったことなど初めての体験航海に関する感想が多かったのに対して、中学生では、マグロ延縄漁業の仕組みに興味をもったことや海洋観測の方法が分かったことなど専門的な内容に関心をもったことが伺えた。軽い船酔いをする参加者があったが、海のすばらしさや水産業の意義など多くのことを学び、体験できたのではないかと思われる。

(2)ミニ体験入学

 さつま揚げ体験では、塩分の量によって練り製品の硬さが変わることや、地元では練り製品が有名であることを学習した。このことにより、「総合的な学習の時間での地域学習に関連した発展学習ができた」との評価をいただいた。近隣の児童生徒、保護者が今回のミニ体験入学に参加して、「水産高校の存在は知っていたものの、どんなことを学ぶ学校であるのかを初めて知った」などの感想も多く、地域に水産高校を理解してもらうよい機会となった。

(3)出前授業

 干潟の調査では、地域に海があっても親しむ機会の少ない子どもたちが海の魅力や楽しさを肌で感じるよい機会となったことや、音を伝える実演体験では、糸電話による専門高校生との触れ合いをとおして、子どもたちに専門高校への新たな興味・関心をはぐくむ機会になったと思われる。また、専門高校生の学習成果を発表するよい機会となったばかりでなく、子どもたちの清新さに快い刺激を受け、学習意欲を高めるなど自己の学校生活に生かしたいと述べる生徒もいた。

7 2年間の研究の全体的な評価

 これまで県立三谷水産高等学校では、小学生との共同稚アユ放流やニジマス養殖への協力、中学校に向けた「水産高校通信」の発行や中学生体験入学などの交流活動を実施してきた。
 愛知県教育委員会や蒲郡市教育委員会の指導のもとでの事業を推進するに当たって、連携校の小・中学校や漁業協同組合の協力を得ながら、研究テーマに沿って計画・実践した。連携校の児童生徒についての相互理解や教員間の交流の深化、本校の教育資源を生かした「実習船『愛知丸』の一日体験航海」や「ミニ体験入学」、「出前授業」をとおした地元小・中学校との連携強化を図るとともに、本校の活性化も図ることができた。
 特に、専門高校が有する人的・物的な教育資源を地域の小・中学校等に還元し、活用をすすめることができたことは大きな成果であった。

8 今後の課題及びこれからの取組

 校内体制づくりでは、学校として一貫した組織作りは難しく、従前のように学科による対応となったことが課題として残った。
 2年間の研究終了後もこの交流活動を効果的に継続して取り組むためには、校内の体制づくりをすすめるとともに、この事業の趣旨を専門高校や連携校、地域が相互に理解することが重要である。「出前授業」の準備のため各学校の体制づくり、児童生徒などの様子を確認したことや、体験入学などをとおして相互に理解し合えたことにより、事業計画及び実施の基礎を築くことができた。また、子どもたちが水産高校生に対し、「お兄さん」、「お姉さん」と親しみと尊敬の念をもって接してくれたことや、「出前授業」後の感想文からは水産高校や水産業について興味・関心を高めてくれたことが分かった。
 今後は、各学校が連絡を綿密に行い、交流学習を年間指導計画に組み込むなど、継続的に実施できるようにするとともに、地域に愛され、信頼され、期待に応えられる、開かれた学校づくりに努めたい。
 また、県内唯一の水産教育を担っている水産高校として、日本の水産業、海運業、海洋産業等に寄与する人材の育成を一層図っていきたい。