平成17年度・18年度みんなの専門高校プロジェクト推進事業報告書

都道府県名 千葉県
推進地域名 茂原市

1 推進校の概要

(1)専門高校

学校名 千葉県立茂原樟陽高等学校
設置大学科 農業・工業
設置小学科 生産技術科・生産流通科・生活科学科・農業機械科・緑地計画科・電子機械科・電気科・環境工学科・環境化学科・建設科
生徒数 973名
所在地
  • 樟陽校舎 千葉県茂原市上林283番地 電話 0475-22-3315
  • 工業校舎 千葉県茂原市東郷1901番地の3 電話 0475-22-5145

2 研究テーマ及び研究において特に重点を置いたところ

研究テーマ

「茂原樟陽高校生による駅前商店街の活性化事業」

特に重点を置いたところ

  • (1) 本校から約1キロメートル離れた茂原駅前商店街と連携し、商店街の活性化を図る。商店街駐車場に新たに新設されたイベント用の建物をアンテナショップとして活用し、学校の生産物・加工品等を販売する。
  • (2) 農産物や加工品については、生徒が実習で販売をしているものの、時間が限られているため販売は広い範囲では行えない。しかし、新鮮な農産物や加工品等については広く地域の方々が求めているものであり、販売を継続することにより地域との結びつきをさらに深める。
  • (3) 農産物販売をとおして、生徒のコミュニケーション能力を高める。

3 研究の概要

(1)平成17年度

生徒による駅前商店街の視察・農産物販売の定着化・アンケート調査

(2)平成18年度

生徒による駅前商店街の視察・農産物販売の定着化・アンケート調査
ローテーションによる販売実習(校内アンテナショップでの販売・商店街での販売)をとおした地域住民とのコミュニケーションの実践

4 連携推進地域協議会の構成及び活動状況等

(1)構成

氏名 所属・職名 備考
齋藤 喜治 茂原駅前商店街 理事長  
小田 公美 茂原駅前商店街 専務理事  
日改 健也 茂原駅前商店街 副理事長  
加納 晃 茂原駅前商店街 副理事長  
斉藤 三美 茂原駅前商店街 副理事長  
加藤 貞夫 茂原駅前商店街 監事  
桑田 晃宙 茂原駅前商店街 事業部長  
中村 光一 茂原市役所 経済部商工観光課 振興係長  
貝沼 智 茂原市商店会連合会事務局  
小澤 初男 千葉県立茂原樟陽高等学校 校長  
時田 和之 千葉県立茂原樟陽高等学校 教頭  
弓削 愛一郎 千葉県立茂原樟陽高等学校 教頭  
今井 登 千葉県立茂原樟陽高等学校 事務長  
石丸 光二 千葉県立茂原樟陽高等学校 教諭 農場長
渡邉 龍司 千葉県立茂原樟陽高等学校 教諭 生産技術科長
近藤 司 千葉県立茂原樟陽高等学校 教諭 草花担当
久保田 悟 千葉県立茂原樟陽高等学校 教諭 野菜担当
安藤 善剛 千葉県立茂原樟陽高等学校 教諭 畜産担当
野口 仁 千葉県立茂原樟陽高等学校 教諭 生産流通科長
藤江 秀孝 千葉県立茂原樟陽高等学校 教諭 食品加工担当
関 数房 千葉県立茂原樟陽高等学校 教諭 食品加工担当
渡辺 朋幸 千葉県立茂原樟陽高等学校 教諭 情報処理担当
丸 直男 千葉県立茂原樟陽高等学校 教諭 草花担当
山本 昭博 千葉県立茂原樟陽高等学校 教諭 作物担当
渡辺 一弘 千葉県立茂原樟陽高等学校 実習助手 野菜担当
丸 徹 千葉県立茂原樟陽高等学校 実習助手 野菜担当
石井 明 千葉県立茂原樟陽高等学校 実習助手 果樹担当
沖田 準一 千葉県立茂原樟陽高等学校 実習助手 畜産担当
吉田 和弘 千葉県立茂原樟陽高等学校 実習助手 畜産担当
長谷川 繁夫 千葉県立茂原樟陽高等学校 実習助手 畜産担当
田中 嘉一 千葉県立茂原樟陽高等学校 実習助手 草花担当
戸村 薫 千葉県立茂原樟陽高等学校 実習助手 情報処理担当
福岡 秀人 千葉県立茂原樟陽高等学校 実習助手 果樹担当
金綱 弘明 千葉県立茂原樟陽高等学校 農業用務員 作物担当

(2)活動状況

1)平成17年度

  • 月曜日の第3学年課題研究(2、3、4限)において生産技術科6名で実施した。
  • 授業時間
    2限 9時50分〜10時40分 販売物準備
    3、4限 10時50分〜11時50分 販売
    12時〜12時40分 会計・レポート
  • 移動・販売物の運搬は学校のマイクロバス・トラックを利用した。
販売物及び販売回数
  • 下表のとおり、授業では1学期4回・2学期9回・3学期2回の合計15回行った。また、10月22日(土曜日)は商店街のイベントに合わせ1日行った。
1学期
回数 期日 販売物 来客数
1 6月6日 カボチャ・トマト・ジャガイモ・キャベツ  
2 6月20日 イチゴジャム・トマト・クフェア・鶏卵・ジャガイモ・ベゴニア  
3 6月27日 トマト・ジャガイモ・カボチャ・ベゴニア・鶏卵・イチゴジャム  
4 7月4日 トマト・カボチャ・トウモロコシ・ジャガイモ・鶏卵・ブルーベリージャム  
2学期
回数 期日 販売物 来客数
1 9月5日 鶏卵・ナシ・イチゴジャム・ジャガイモ  
2 9月12日 ナシ・ブルーベリージャム・鶏卵 17
3 9月26日 サツマイモ・ブルーベリージャム・鶏卵・ナシ 25
4 10月3日 鶏卵・イチゴジャム・サツマイモ・パンジー 28
5 10月24日 米・ハボタン・パンジー・ビオラ・サツマイモ・鶏卵・キュウリ 30
6 10月31日 サツマイモ・米・キュウリ・パンジー 19
7 11月7日 サツマイモ・キュウリ・チンゲンサイ・鶏卵・カキ・米・パンジー・ストック 28
8 11月28日 チンゲンサイ・ブロッコリー・キャベツ・カキ・パンジー・鶏卵・ダイコン・メロン 49
9 12月5日 チンゲンサイ・ブロッコリー・キャベツ・カキ・鶏卵・パンジー・シクラメン・プリムラ 42
3学期
回数 期日 販売物 来客数
1 1月16日 ネギ・シクラメン・プリムラ 31
2 1月23日 プリムラポリアンサ・プリムラマラコイデス・ ハクサイ・シクラメン 6
  • *空欄は来客数の調査を実施せず。

2)平成18年度

  • 金曜日の第3学年総合実習(4、5、6限)において、生産流通科22名で実施した。なお、22名を3班に分割し、1班を「商店街での販売」、1班を「校内アンテナショップでの販売」、残りの1班を「次回のための準備や調査」としローテーションで展開した。
  • 授業時間(販売実習を行った班)
    4限 11時45分〜12時35分 販売物準備
    5、6限 13時20分〜14時20分 移動・販売
    14時20分〜15時10分 移動・会計・レポート
  • 移動・販売物の運搬は学校のマイクロバス・トラックを利用した。
販売物及び販売回数
  • 下表のとおり、授業では1学期7回・2学期9回・3学期2回の合計17回行った。また、10月21日(土曜日)は商店街のイベントに合わせ1日行った。
1学期
回数 期日 販売物 来客数
1 5月12日 カーネーション・サルビア・バーベナ・ジャム・ブルーサルビア・マリーゴールド・ガザニア 32人
2 5月19日 カーネーション・ジニア・バーベナ・ジャム・ブルーサルビア・鶏卵・ガザニア・ポーチュラカ 30人
3 5月26日 カーネーション・ジニア・バーベナ・ジャム・ブルーサルビア・鶏卵・ガザニア・カボチャ・鶏卵・エゴマ 35人
4 6月2日 カーネーション・ジニア・バーベナ・ガザニア・ブルーサルビア・トマト・ジャガイモ・カボチャジャム・鶏卵 46人
5 6月16日 ナスタチューム・バラ・トマト・ブロッコリー・ジャガイモ・トウモロコシ・キャベツ・ジャム・鶏卵 33人
6 6月23日 ケイトウ・ヒマワリ・バラ・キャベツ・トマト・ブロッコリー・ジャガイモ・ジャム・鶏卵 29人
7 6月30日 ケイトウ・ヒマワリ・ポーチュラカ・トマト・キュウリ・ジャム・カボチャ 44人
2学期
回数 期日 販売物 来客数
1 9月8日 コリウス・サツマイモ・キャベツ苗・ブロッコリー苗・カリフラワー苗・ナシ・ブドウ 23人
2 9月22日 ミニシクラメン・サツマイモ・コシヒカリ・ナシ・鶏卵 20人
3 9月29日 ミニシクラメン・サツマイモ・コシヒカリ・鶏卵・ジャム 29人
4 10月13日 ミニシクラメン・コリウス・パンジー・トマト・サツマイモ・ジャム・栗の甘露煮・鶏卵 53人
5 10月27日 パンジー・ミニシクラメン・トマト・鶏卵・コシヒカリ・ジャム・ストック・ハボタン・キュウリ・五色トウガラシ 47人
6 11月10日 パンジー・ミニシクラメン・ハボタン・トマト・キュウリ・ブロッコリー・チンゲンサイ・カキ・ストック・パンジー・ブドウソース・ネギ・ルバーブジャム・ポインセチア・チェイランサス 49人
7 11月24日 カキ・ジャム・ブロッコリー・キャベツ・ネギ・トマト・パンジー・ハボタン・ポインセチア・シクラメン・コシヒカリ・ハクサイ 48人
8 12月1日 ハボタン・パンジー・ポインセチア・シクラメン・ジャム・ハクサイ・キャベツ・ダイコン・ネギ・鶏卵・コシヒカリ 37人
9 12月8日 コシヒカリ・カボチャ・キャベツ・ハクサイ・ネギ・トマト・レタス・シクラメン・ハボタン・パンジー・ジャム・チェイランサス 20人
3学期
回数 期日 販売物 来客数
1 1月12日 ジャム・下仁田ネギ・ハクサイ・ブロッコリー・カリフラワー・チェイランサス 14人
2 1月19日 下仁田ネギ・ブロッコリー・エゴマ・橙砂糖漬け・ヤーコン砂糖漬け・ジャム 28人

5 推進校における活動の実施状況等

(1)活動前の地域との打合せ

 平成17年度当初、商店街役員と本校職員による打合せを実施し、商店街での第1回農産物販売の日程や2回目以降の連絡方法等を検討した。その後、生徒へ事業の内容を説明し商店街の販売所を訪問、商店街の様子を見学し、理事長より商店街の概要を伺った。

(2)活動概要

1)活動のねらい

 農産物販売をとおし、商店街に1人でも多くのお客様を集め、活気ある商店街にする。今年度から新しく「茂原樟陽高校」としてスタートしたが、茂原樟陽高校の名を広く地域に広めるとともに、地域との結びつきを強くする。さらに、農産物を販売することにより生徒のコミュニケーション能力の醸成を図る。

2)活動内容

 農産物販売・アンケート調査・イベント参加・美化活動

3)教育課程上の位置づけ

  • 平成17年度 生産技術科3年生 課題研究3単位で実施
  • 平成18年度 生産流通科3年生 総合実習3単位で実施

4)連携先の概要

 茂原駅前商店街には、70軒余りの商店があるが組合に加盟している商店は59軒である。年間3回の大売り出し期間等を設定し、抽選会なども年3回実施するなどして商店街の活性化を図っている。また、昨年は、商店街駐車場に、多目的に利用できる8坪の施設を建て、本校の農産物販売所としての利用や、北海道の風連町商店街と連携し北海道の特産物販売を催したり、商店街の役員が中心となり商店街に活気が出るような取組を行っている。

6 活動の成果

 平成17年度及び平成18年度の2年間、茂原駅前商店街で農産物販売をとおした商店街の活性化に取り組んできた。「お客様を1人でも多く商店街に来てもらおう。」と試行錯誤しながら実施した。活動の成果を、「商店街に来てくださったお客様」、「商店街の店主の皆さん」、「生徒」の各視点からとらえてみた。「商店街に来てくださったお客様」については、活動状況の来客数からもわかるように平成17年度の実施当初は、非常に少なかったが、その後、徐々に増えていった。18年度は、実施する曜日や時間帯が違っても、前年度からの取組が定着し引き続き多くの来客数があった。また、1年目、2年目に数回にわたりアンケートを実施し、農産物を買ってくださるお客様の意見や感想を伺い、17年度と18年度を比較してみた。数字は数回行ったアンケートの回答をパーセントで表示した。

平成17年度

お客様用アンケート質問事項

  • 問1 毎週月曜日(長期休業、祝祭日を除く)学校の農産物を販売にきていますが知っていますか?
  • 問2 今日、買っていただいたのは何回目ですか?
  • 問3 問2で複数回と回答した方で今まで一番おいしかったものは何ですか?
    (鶏卵・ジャム・トマト・キュウリ・サツマイモ・ジャガイモなど)
  • 問4 農産物の品質はスーパーと比べてどうですか?
  • 問5 農産物の値段はスーパーと比べてどうですか?
  • 問6 販売している生徒達の接客態度はどうですか?

平成18年度

お客様用アンケート質問事項

  • 問1 毎週月曜日(長期休業、祝祭日を除く)学校の農産物を販売にきていますが知っていますか?
  • 問2 今日、買っていただいたのは何回目ですか?
  • 問3 問2で複数回と回答した方で今まで一番おいしかったものは何ですか?
    (鶏卵・ジャム・トマト・キュウリ・サツマイモ・ジャガイモなど)
  • 問4 農産物の品質はスーパーと比べてどうですか?
  • 問5 農産物の値段はスーパーと比べてどうですか?
  • 問6 販売している生徒達の接客態度はどうですか?
  • 問7 広告や商品の紹介などの資料は見やすいですか。
  • 問8 良い点や改善点などがありましたらお書き下さい。
    • 生徒が一生懸命に取り組んでいるところに好感が持てる。
    • 草花は育て方のメモなどがあると良い。
    • 販売物の種類がもっと多いと良い。
お客様アンケート

 問1の「農産物販売していることを知っているか」では、平成17年度が51パーセントに対し、平成18年度は93パーセントと商店街での本校の農産物販売がある程度定着したことが伺える。問2の結果からも、商店街での販売が定着したことを伺い知ることができる。また、農産物の品質や価格、接客態度については、2年間にわたり良い評価を得た。一方、商品の価格表示などについては、2年目のみにアンケートを実施したが販売物の種類や商品説明など、改善の余地があることがわかった。
 「商店街の店主の皆さん」についても、アンケートを実施した。商店街での農産物販売では2年目が平成18年度では、「知っている」と回答した商店主が90パーセントであり、ほとんどの商店街の方々にこの取組が周知されていることがわかった。理解され、実際に農産物を買いに来てくださった方も65パーセント近くいる。また、1年目は商店街が「活気づきた」と回答してくれた方は4パーセントであったが、2年目は50パーセントの方が「活気づいた」と評価してくれた。店主の皆さんに、この1年間の取組についての感想を伺ってみたので多く寄せられた意見をあげる。

平成17年度

商店主アンケート

商店主アンケート 17年度

平成18年度

商店主アンケート

商店主アンケート 18年度

 「生徒」については、農産物販売をとおして様々なことを体験し学び取ってくれた。1年間の感想を書いた中から、生徒から多くあがった意見をまとめてみた。

7 2年間の研究の全体的な評価

 「商店街に1人でも多く足を運んでもらいたい。そのために、生徒や学校の力を貸して欲しい。」その商店街の方々の一言から、学校としてもできる限り協力していこうと、この事業が始まった。農産物販売を継続することにより、「毎週金曜日は、茂原樟陽高校の農産物販売の日」として定着した。現在は、本校生徒が到着するのを待っていてくれるお客様もいるようになった。また、商店街の役員の方は、毎回農産物販売を一緒に手伝っていただいたり、その他の店主の方々も関心を持ってくれるようになった。そして、何より生徒自身が農産物販売をとおして、達成感や成就感を体感してくれた。具体的には、社会常識や接客態度などを学習することができたことや、生徒及び職員がコミュニケーションを図りながら地域の方々と交流を持ち、地域に根ざした高校であることを再認識し、新たに茂原樟陽高校として地域の活性化に役立てたことを実感できたことは、大変すばらしいことであった。

8 今後の課題及びこれからの取組

 商店街での農産物販売は定着し、来客数も増加した。しかし同時に農産物を買った方が「商店街」をあまり利用していない状況もわかった。また、実施したアンケートからもわかるように、商品の価格表示や商品の説明など販売についての改善点も発見できた。これらのことを含め今後の課題を整理すると次のようになる。

 文部科学省の指定は、今年度で終了するが地域に根ざし地域から理解され、愛される学校、地域から求められる学校を目指し、2年間で培ってきた実践をもとに工夫・改善を加え、この取組をさらに推進・発展させていきたい。