平成17年度・18年度みんなの専門高校プロジェクト推進事業報告書

都道府県名 福島県
推進地域名 棚倉町

1 推進校の概要

(1)専門高校

学校名 福島県立東白川農商高等学校
設置大学科 農業科・商業科・家庭科
設置小学科 生産流通科・食品加工科・商業科・情報処理科・生活情報科
生徒数 490名
所在地 福島県東白川郡棚倉町大字棚倉字東中居63番地 電話 0247-33-3214

(2)小・中学校(小・中学校との連携の場合のみ記入)

学校名 福島県東白川郡棚倉町立社川小学校
生徒数 157名
所在地 福島県東白川郡棚倉町大字逆川字山梨子山19 電話 0247-33-3351

学校名 福島県東白川郡棚倉町立棚倉中学校
生徒数 504名
所在地 福島県東白川郡棚倉町大字棚倉字城跡88番地5 電話 0247-33-3176

2 研究テーマ及び研究において特に重点を置いたところ

○研究テーマ

学校と地域相互の連携による農業教育の活性化と地場産業の振興について

○研究において特に重点を置いたところ

 研究・交流の中心となる柱として、「楽しい野菜づくりコレージュ・ド・農商」「ブルーベリー加工技術の支援」「サツマイモ栽培」「義務系及び緑化支援」「その他ボランティア活動」の5つを掲げ、それぞれの講座に職員を数名ずつ配置し、交流活動を分担して取り組むこととした。それによって、交流の効率化を図るとともに、本校生徒と教師が一体となって農業科の活性化や学力の向上を図った。
 また、棚倉町では平成17年度より町おこしとして遊休農地活用の一方策としてブルーベリー栽培を支援し、ブルーベリーの特産品化を目指して、本校に加工技術の支援を要請してきた。これを契機に、ジャム製品の開発に向けた加工支援を展開し、加工体験や商品化に向けた試みや試食会を数回開催し、ジャムを町の特産品の一つとして育てあげた。

3 研究の概要

(1)平成17年度 (2)平成18年度
  • 1協議会の発足
  • 2協議会の開催(第1回)
  • 3推進校における組織の編成
  • 4実行委員会の開催(第1回)
  • 5事業の実施
  • 6協議会の開催(第2回)
  • 7課題の確認
  • 1協議会の開催(第3回)
  • 2実行委員会の開催(第2回)
  • 3事業の実施
  • 4成果の検証・評価
  • 5まとめ
  • 6協議会の開催(第4回)

4 推進地域協議会の構成及び活動状況等

(1)構成

(推進地域協議会委員)

氏名 所属・職名 備考
大竹 正志 福島県立東白川農商高等学校長 協議委員長
藤田 幸治 棚倉町長 協議副委員長
渡邉 勇喜 棚倉町教育委員会教育長  
原 正久 棚倉町商工農林課長  
鈴木 喜一 棚倉町ブルーベリー愛クラブ会長  
下重 秀俊 棚倉町立棚倉中学校長  
兼谷 邦夫 棚倉町立社川小学校長  
菅家 敏之 福島県教育庁学習生活指導グループ参事  
柳沼 陽一 福島県県南教育事務所指導課長  

(推進地域実行委員)

氏名 所属・職名 備考
橋本 清輝 福島県立東白川農商高等学校教頭 実行委員長
佐藤 耕 棚倉町商工農林課主幹兼課長補佐兼係長 実行副委員長
佐川 喜則 棚倉町立棚倉中学校教頭 実行副委員長
緑川 庄司 棚倉町商工農林課農業経営専門委員  
鈴木 喜一 棚倉町ブルーベリー愛クラブ会長  
笹原 美智夫 棚倉町ブルーベリー愛クラブ副会長  
小川 博光 棚倉町立社川小学校教頭  
大和田 範雄 福島県教育庁学習生活指導グループ主任指導主事  
安部 久雄 福島県立東白川農商高等学校農場長  
高橋 豊治 福島県立東白川農商高等学校教諭  
岡部 富洋 福島県立東白川農商高等学校教諭  
郷田 芳博 福島県立東白川農商高等学校教諭  
久保木 均 福島県立東白川農商高等学校教諭  
小野 浩嗣 福島県立東白川農商高等学校教諭  
鈴木 茂男 福島県立東白川農商高等学校教諭  
佐藤 洋子 福島県立東白川農商高等学校教諭  
本多 永典 福島県立東白川農商高等学校実習教諭  

(2)活動状況

1)平成17年度

1第1回協議会の開催「平成17年7月11日(月曜日)」
  • ア、委員長、副委員長選出
  • イ、事業の趣旨説明
  • ウ、平成17年度の事業の進め方について
  • エ、平成17年度の実施計画等について
  • オ、実行委員会の開催について
2第1回実行委員会の開催「平成17年9月9日(金曜日)」
  • ア、委員長、副委員長選出
  • イ、事業の趣旨説明
  • ウ、平成17年度の事業の進め方について
  • エ、平成17年度の実施計画等について
3第2回協議会の開催「平成18年3月17日(金曜日)」
  • ア、平成17年度における事業報告について
  • イ、平成17年度における事業の成果及び反省について
  • ウ、平成18年度における事業について
  • エ、ブルーベリー試飲のアンケート

2)平成18年度

1第3回協議会の開催「平成18年7月18日(火曜日)」
  • ア、平成17年度の事業内容について
  • イ、平成18年度の事業の進め方について
    • 平成18年度の実施計画等について
    • 平成18年度のこれまでの実施状況について
  • ウ、実行委員会について
2第2回実行委員会の開催「平成18年9月1日(金曜日)」
  • ア、平成17年度の事業内容について
  • イ、平成17年度の成果及び反省について
  • ウ、平成18年度の実施計画等について
  • エ、平成18年度のこれまでの実施状況について
  • オ、第3回地域推進協議会の内容について
3第4回協議会の開催(予定)「平成19年3月19日(月曜日)」
  • ア、平成18年度の事業内容について
  • イ、平成18年度における事業の成果及び反省について
  • ウ、全体の成果及び反省・評価について

5 推進校における活動の実施状況等

(1)活動前の地域との打ち合わせ

 連携先(棚倉町立社川小学校、棚倉町立棚倉中学校、棚倉町商工農林課、棚倉町生涯学習課、棚倉町ブルーベリー愛クラブ、コレージュ・ド・農商参加者)とは、開講式やオリエンテーション、打ち合わせ会議などを設け、実施計画や諸注意等を促してから開始し、次回の活動については事前に電話連絡や文書発送、打ち合わせ(会議)等を行って計画的に実施した。

(2)活動概要

項目 1)活動のねらい、2)活動内容、3)教育課程上の位置づけ 4)連携先の概要(1連携先名、2人数、3実施場所、4実施期間)
コレージュ・ド・農商
  • 1)自らの手で有機栽培による安全な野菜づくりを学び、食生活を豊かにするとともに収穫の喜びを味わい、身近な自然や緑を暮らしに生かすことができるよう支援する。
  • 2)
    • 開講式
    • 野菜栽培の基礎と実習1
      −ジャガイモの植え付けと夏野菜について−
    • 野菜栽培の基礎と実習2
      −栽培管理と秋野菜について−
    • 野菜栽培の基礎と実習3
      −秋から翌春の野菜栽培−
    • 病害虫防除
    • 収穫祭(そば打ち体験)
  • 3)総合実習・課題研究
    (生産流通科3年 野菜班7名)
  • 1コレージュ・ド・農商参加者
  • 217人
  • 3本校社川農場
    (課題研究圃場)
  • 44月〜11月
ブルーベリーの支援
  • 1)地域の特性を生かした栽培技術の普及改善や加工技術の開発を支援する。
  • 2)
    • ブルーベリー支援会議
    • 栽培現地研修
    • ジャム加工体験
    • 試食会
    • ブルーベリー商品の開発
  • 3)総合実習・課題研究
    (食品加工科3年 農畜産加工班8名)
  • 1棚倉町ブルーベリー愛クラブ
    棚倉町商工農林課
  • 222名
  • 3本校食品加工科実験棟
  • 45月〜11月
サツマイモ栽培
  • 1)植物を育てることやおいしいサツマイモをつくる喜びを体験させる。
  • 2)
    • オリエンテーション
      (学習の計画・講義等)
    • トラクター耕運作業の見学
    • 植え付け
    • 雑草の除去や雑草の名称を覚える
    • 収穫(いもの本数や計量)
  • 3)総合実習(生産流通科3年作物班7名)
  • 1棚倉町立社川小学校
  • 23、4年生56名
  • 3本校社川農場
    (課題研究圃場)
  • 44月〜11月
義務系及び緑化支援
  • 環境緑化研修会
    • 1)学校の環境美化に役立てさせるとともに、児童とともに学習環境づくりを推進する。
    • 2)
      • 花壇づくり
      • プランターや鉢の植え付け
      • 栽培管理
      • 肥料の施し方
      • フラワーアレンジメント
    • 3)課題研究(生産流通科3年草花班7名)
  • 1東白川郡内の小・中学校の先生
  • 221名〜33名
  • 3本校農場、農業実験室
  • 45月、12月
  • 草花栽培と花いっぱい運動
    • 1)学校や施設に草花の栽培技術や花壇づくりを支援する。
    • 2)
      • 春、秋用花壇づくり
      • 土の作り方
      • 肥料の施し方
      • シクラメンの寄せ植え寄贈
      • 花壇づくり作業の援助(施設)
    • 3)課題研究、総合実習
      (生産流通科3年 草花班7名)
  • 1棚倉町立棚倉中学校
  • 2美化委員30名
  • 3棚倉町立棚倉中学校
  • 46月、11月、12月
  • 1知的障がい者通所施設「ドリーム&ホープ」
  • 220人
  • 3「ドリーム&ホープ」
  • 46月
  • ガーデニング教室
    • 1)草花栽培・管理の実践を通し、ガーデニングに対する知識と関心を高める。
    • 2)
      • 種まき、
      • 鉢上げ、挿し木、挿し芽
      • 摘心、肥料の施し方
      • シクラメンの鉢替え・葉組み
      • フラワーアレンジメント
    • 3)総合実習(生産流通科3年草花班7名)
  • 1棚倉町民希望者
  • 224名
  • 3本校草花温室
  • 44月〜11月
その他ボランティア活動
  • 1)清掃や美化活動などのボランティア活動を推進する。
  • 2)
    • 公共施設や福祉施設のへのプランター設置
    • 町内の奉仕活動(全校生徒)
    • 花壇用苗もの寄贈
    • シクラメンの寄せ植え寄贈
    • 棚倉町子どもの居場所づくり
  • 3)課題研究など
  • 1
    • 棚倉町役場
    • 棚倉警察署
    • 棚倉郵便局
    • 老人ホーム「寿恵園」
    • 棚倉町立近津小学校
    • 棚倉町立棚倉中学校、
    • 知的障がい者通所施設「ドリーム&ホープ」

6 活動の成果

(1)コレージュ・ド・農商

 受講者の中には、2、3年と継続して野菜の栽培実習を続けている方がおり、栽培方法の工夫やアピオスなどの新しい野菜の作付けを行うなど、独自の試みが見られるようになった。また、受講者は年々野菜づくりに自信が持てるようになり、自分で作った採りたての野菜は本当においしいという声が多く聞かれた。

(2)ブルーベリーの加工支援

 ブルーベリー愛クラブや棚倉町商工農林課との連携を図りながら、ジャム製品の開発に向けた加工支援を展開し、加工体験や商品化に向けた試み・試食会を数回設けるなどして、ジャムを町の特産品の一つとして導いた。

(3)サツマイモの栽培

 平成15年度から地元小学校の「総合的な学習の時間」の一環として、サツマイモ栽培を支援してきたが、毎年収穫量も多く、高校生とふれあいながらの作業も貴重な体験になっている。収穫したサツマイモは家庭に持ち帰り調理したりバザーで地域の方に販売するなど好評をいただいており、今では社川地区のちょっとした名物になっている。

(4)義務系及び緑化支援

 小・中学校の先生方を対象に実施しているフラワーアレンジメントについては大好評であり毎年実施して欲しいとの要望がでる程であった。
 棚倉中学校の花壇づくりでは、中学校独自で、野菜づくりや花壇づくりなどを実施したくてもなかなか機会がなく、専門的な知識を持った身近な高校と一緒に作業をするなどして交流を深めることができたことは大変良かったとの感想をいただいた。
 ガーデニング教室では、大変楽しく受講できたとの感想が多く、まだまだ勉強して知りたいことが多くあるので来年度も実施して欲しいとの意見が全員の方から出た。

(5)その他ボランティア活動

 関係機関へのプランター設置やシクラメンの寄せ植え寄贈は、毎年恒例となり大変喜ばれている。生徒はボランティア精神を育む機会が多くなり、自主性や自発性が見られるようになり自信を持って積極的に活動するようになった。

7 2年間の研究の全体的な評価

 生徒にアンケートを実施した結果、生徒たちは地域間との交流の楽しさを感じ、連携先で自信を持って積極的に活動したり、気軽に話すことができるようになったと回答している。また、「授業がわかる」から「考える」「できる」ようになったと平素の学習を深化・発展させることができており、学力の向上に繋がっているものと考える。
 連携先についても、連携先のアンケートによると、「大変良かった」「心が癒される」「感謝している」などの回答が多く、本校との交流活動はある程度満足のいく結果が得られたのではないかと思われる。特に地場産業の振興については、町と協力しブルーベリージャムを町の特産品の一つとして導き、町おこしとして取り組んだ遊休農地のブルーベリー栽培支援に一役買うことができた。また、「コレージュ・ド・農商」「サツマイモ栽培」「ガーデニング教室」などの各交流活動ともスムーズな運営ができ、継続して実施して欲しいとの要望がでる程の評価を得た。こうした中で、ブルーベリー支援に関しては新商品化に向けた大きな期待がよせられている。

8 今後の課題及びこれからの取組

 今回の交流により地域との連携が更に深まりつつあるが、連携をより強固なものとするためには、校内の体制を強化し学校の教育計画の中で積極的な情報発信をすることが大切である。また、職員間の十分な討議と連携先との綿密な打ち合わせをし、生徒が主体的に交流が持てるよう教師の適宜助言が必要である。
 ブルーベリーの加工支援については、今後の新商品としてアイスクリームやジュース等が考えられるが現状の施設設備では限界があり進展していない状況にある。更に、予算の面でも削減され、これからの取り組みに影響を与えるものと予想される。
 様々な課題もあるが、今後も今までに行ってきた活動を継続するとともに、地域の方々からの要望や依頼があれば可能な限り応え、今後においても特色ある学校づくり・開かれた学校づくりに取り組んでいきたい。