平成17年度・18年度みんなの専門高校プロジェクト推進事業報告書

都道府県名 山形県
推進地域名 米沢市

1 推進校の概要

(1)専門高校

学校名 山形県立米沢商業高等学校
学科 商業科(総合、国際、情報ビジネス科)
生徒数 558人
住所及び電話番号 山形県米沢市本町3丁目1-12 電話 0238-22-8055 FAX 0238-21-2110

2 研究テーマ及び研究において特に重点を置いたところ

研究テーマ

−商品開発と販売実習を通して米沢の街を盛り上げよう−

重点

  • 1平成16年度まで生徒による商品開発を行い、地域の人々から高い評価を受け、生徒の商業の学習への興味、関心が高まった。特に本校生が開発、商標登録している「いなごまクッキー」(いなごとごまを合わせたクッキー)の販売を更に広め、その商品の流通分野の研究を行う。
  • 2本校を卒業した生徒の中には販売職に就く者も多いが、16年度までの実践的な学習は2年次に行われるインターンシップのみであった。本校としてのチャレンジショップを持ち、そこでの接客マナーの学習や、地域に根差した商店街のあり方の研究など実体験を通して、望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識技術を身につけることを目的としたい。
  • 3米沢市内も他地区と同様に商店街の空洞化が目立つ。高校生の力で市内中心部を活性化し、地域行事である祭りなどの各種行事に参加することで、活気ある街作りの一翼を担いたい。

3 研究の概要

  実施状況
17年度 4月
  • 米沢商工会議所と共同して市内空き店舗を利用し、本校生によるチャレンジショップを開店することを決める。
5月
  • チャレンジショップの開店施設を捜し、市内上杉神社近くの中村パン屋店内の一部を借りて、常設のショップを開店することを決める。
  • 市内「ドラマティック戎市」に参加し「いなごまクッキー」等の販売を行う。
    (戎市は市内新町商店街で行っている活性化事業の一つで、日曜に歩行者天国として、市場形式のお祭を行っている。)
6月
  • チャレンジショップ実行委員を募り、店長、副店長以下各種部門長を決める。
  • 実行委員によりチャレンジショップの名称を募集。「米商っぷ」(よねしょっぷ)と決定する。「米商」と「ショップ」を合わせたものである。
  • 市内「ドラマティック戎市」に参加し、いなごまクッキー等の販売を行う。
7月
  • 第1回「みんなの専門高校プロジェクト」研究協議会を開催する。
  • 実行委員のビジネスマナー教育(各部長に名刺を持たせ、名刺交換など)を行う。
  • 開店(23日)に向けた準備に入る。看板、幟などを発注する。全国の専門高校より実習製品を仕入れる。
  • 生徒が駄菓子問屋より菓子、クジ等を仕入れる。
  • 広告を作成し、新聞折込広告として市内新聞店に依頼する。
  • ポスターを製作し、市内小中学校及び高校に配付、掲示を依頼する。
  • 23日「米商っぷ」をオープンする。前日まで高校野球大会が行われ、本校が準決勝に進出したこともあり、大変な盛況ぶりであった。店舗場所も上杉神社近くで、地元の人たちはもちろん、観光客にも好評であった。
  • 夏休み期間の販売日を火曜日、木曜日、日曜日の午前10時より午後4時までとして生徒による実習を行った。
  • 3年生課題研究「画像処理班」が米商っぷのCM製作を行う。
8月
  • 第2回目の仕入れ会議を行い、より売れる商品の仕入れを検討する。
  • 実行委員による駅前商店街通行量調査→通行量から考えられる駅前商店街の在り方を、駅前商店街に提言する。
  • 夏休み期間の店舗実習に関しては、実験的なものを取り入れた。具体的には天候を考えた販売などである。
  • 授業日の店舗実習は火曜日、木曜日の午後4時から6時とする。
9月
  • 地元ケーブルテレビ局主催の「NCV祭」に「米商っぷ」を出店する。
  • 置賜総合支庁主催「置賜食と文化の祭典」に「米商っぷ」を出店する。
  • 市内「ドラマティック戎市」に「米商っぷ」を出店する。
  • 9月については全ての日曜日に、出張店舗開店を行った。
10月
  • いなごまクッキー用材料のいなご採りを実施する。
  • 米沢市主催「マナビィ生涯学習フェア」に「米商っぷ」を出店する。
  • 長井市主催「長井頂上祭」に「米商っぷ」を出店する。
  • 「米商っぷ」に関する生徒研究の発表内容について、米沢商工会議所の方々より指導助言をいただいた。
11月
  • 市内「ドラマティック戎市」に「米商っぷ」を出店する。
  • 冬期間の営業を一時休止し、商品管理のみに切り替える。
  • 新製品「いなごまラスク」を開発する。
12月
  • 在庫管理を行う。
1月
  • 実行委員を3年生から2年生にシフトする。
2月
  • 上杉雪灯篭祭に「米商っぷ」を出店する。
3月
  • 米商っぷ販売員研修会
    • 対象:総合ビジネス科2年生80人
      • 研修助言者
        萓場 陽子 氏(販売教育インストラクター)
      • 内容
        販売員としての心得、発生練習、接客マナー実践
  • 米商っぷ実行委員研修会
    • 対象:米商っぶ実行委員20人
      • 研修助言者
        遠藤 智栄 氏(NPOセンター事務局長)
      • 内容
        新製品開発の訓練
18年度 4月
  • 商工会議所より援助をいただき、米沢駅前植野酒店の空き店舗に新店舗を決定する。
  • 駅前商店街への挨拶を兼ねて、テント販売を実施する。
5月
  • 店舗を改装する。
  • 上杉祭「川中島の合戦」に合わせて、プレオープンする。
  • グランドオープンに向けて、商品仕入などの準備を行う。
  • 27日 オープニングセレモニーを行う。
    次週より火曜日と木曜日はPM4時〜6時の営業とし、土曜日はAM10時〜PM5時の営業とする。
6月
  • 平成18年度6月分「ドラマチック戎市」に参加する。
  • 平常営業を開始する。
7月
  • 米商っぷシャッターのペンキ塗りを行う。
8月
  • 「駅前盆踊り大会」へ参加し出店する。
9月
  • ドラマチック戎市に参加する。
  • 商品開発会議で「五穀まんじゅう」(仮称)の開発を決定する。
  • 「置賜の秋祭り」に出店する。
10月
  • いなごまクッキー用のいなご採りを行う。
  • 「米坂線80周年記念事業」で車内販売を行う。
  • 米沢市「生涯学習フェア」に出店する。
  • 米沢市「おしょうしなマラソン大会」に出店する。
11月
  • 長井市「横丁アートセッション06」に出店する。
  • 埼玉県さいたま市「全国産業教育フェア」に出店する。
12月
  • 「みんなの専門高校プロジェクト推進事業」研究発表会を開催する。
  • クリスマスセールを実施する。
2月
  • 上杉雪灯篭まつりに参加する。
  • 駅前商店街イベントに参加する。
  • 広告作りなど、生徒の体験学習を実施する。

4 推進地域協議会の構成及び活動状況等

(1)構成

氏名 所属・職名 備考
岩間 弘一 米沢信用金庫会長 学校評議員
土岐 孝一 米沢商工会議所中小企業相談所長  
松田 理 株式会社上杉コーポレーション常務  
伊藤 優子 株式会社ニューメディア米沢放送部長  
白木 和志 米沢市役所商工観光課長  
鈴木 和他 山形県置賜総合支庁商工労働観光課長  
飯塚 博 山形大学工学部機械システム工学科教授  
横山 繁美 米沢ビジネスネットワークオフィス  
阿部 優 山形県教育庁高校教育課指導主事  

(2)活動状況

1)平成17年度

  • 推進協議会の開催
  • 「米商っぷ」への提言など

2)平成18年度

  • 推進協議会の開催
  • 研究発表会における指導、助言
  • 協議会員が所属する団体の各種イベントに「米商っぷ」の招待を受ける

5 推進校における活動の実施状況等

(1)活動前の地域との打ち合わせ

地域の商店街活性化の一翼を担うため、積極的に商店街の会合などに参加し、イベントの打ち合わせや、商店街活性化問題会議などで提言を行なった。

(2)活動概要

1)活動のねらい

かつて賑わっていた商店街を、復興させる手伝いを高校生が行うことによって、地域の人たちと高校生との交流を図る。

2)活動内容

商店街のイベントや、米沢市などで主催するイベントへの参加
空き店舗を利用した販売実習

(3)教育活動上の位置づけ

  • 1)交通量調査や市場調査から「マーケティング」
  • 2)販売活動や接客マナーから「ビジネス基礎」「商品と流通」
  • 3)会計処理から「簿記」「会計」

(4)連携先の概要

  • あら町商店街
    「ドラマティック戎市」を開催し、商店街活性化を目指す。
  • 駅前商店街
    かつて賑わっていた街づくりを目指す。
  • 各自治体
    地域活性化を目指す。

6 活動の成果

 本プロジェクトを実施したことにより生徒は各種の調査、実習、会計処理などの実践活動を通して、それに対応する教育課程上の商業科目のより多くの実感を持って理解することができた。また、様々な企画がマスコミに取り上げられることが多く、地域の人たちはもちろん、卒業生からも本校生の努力に対して評価や激励の言葉をいただくことが多かった。それらが生徒の自信につながり、普段の学習活動などにも良い影響が出たと思われる。その顕著な例として、本校における検定取得率が前年の3倍以上にもなり、多くの生徒が上級資格を取得した。さらに、高校生と地域商店街が一体となって様々なイベントに取り組むことにより、珍しさも手伝って集客率が高くなるという効果も生まれた。
 昨年度の本校の高校入試倍率が2倍を超え、県内一の高倍率であったことは、本プロジェクトを通して中学生の関心を集めたことも一つの要因であると考えられる。

7 2年間の研究の全体的な評価

 チャレンジショップ「米商っぷ」を中心に様々な活動を行ってきた。当初は開店し運営することに多くの不安があったが、年間を通して商業教育活動に大きな効果があった。プラス面で述べれば、1学校内の活動では見られない生徒の活き活きした姿を目にすることができた。特に、普段は大人しい生徒が大きな声を出して店頭で「いらっしゃいませ」とお客様に声を掛けたり、「遠征販売」と称して店舗から商品を観光地などに持ち出して販売する姿などがあった。学校内での様子からは考えもつかない生徒の姿を見ることが出来た。2地域の人たちと多くの場で触れ合うことにより、地域の人たちが本校を見る目が変わってきたように思う。特に長井市に出店したときには、出店前から広告などで地域住民に知らされていたということもあり、本校卒業の年配者がわざわざ店舗に足を運び、後輩である生徒を激励する場面もあった。その他中学生や小学生に対してもアピールすることができた。3机上の学習では分からないことを実体験によって得ることの大切さを、教員、生徒ともに身を持って実感することができた。全体を通して準備などで苦労はあったものの、このプロジェクトによって得たものは大きい。

8 今後の課題及びこれからの取組

 今後の課題としては、本プロジェクトが終了することによって、この2年間で積み上げた実績を基に、そのノウハウを次年度へどのように引き継ぎ発展させていくかということである。商業科をはじめ全校的な課題として検討し、計画を立てていかなければならない。
 当面する問題としては、予算面であるが、何とか工夫して可能な限り研修なども実施したい。現在の空き店舗賃借料については、米沢商工会議所から、今までの実績が認められ、来年度いっぱいは援助をいただくことになっている。
 今後とも、「米商っぷ」をはじめ様々な活動を通して、地域に根ざし、地域に愛される専門高校となるよう一層努力していきたい。