平成17年度・18年度みんなの専門高校プロジェクト推進事業報告書

都道府県名 岩手県
連携校 気仙養護学校

1 推進校の概要

(1)専門高校

学校名 岩手県立大船渡工業高等学校
設置大学科 工業科
設置小学科 機械科・電気電子科・建設工学科
生徒数
  • 機械科 121名
  • 電気電子科 112名
  • 建設工学科 99名
  • 計332名
住所及び電話番号 〒022-0006 岩手県大船渡市立根町字冷清水1-1 電話 0192-26-2380

(2)連携校

学校名 岩手県立気仙養護学校
児童・生徒数
  • 小学部 32名
  • 中学部 20名
  • 高等部 43名
  • 計95名
住所及び電話番号 〒022-0006 岩手県大船渡市立根町字宮田33-3 電話 0192-27-8500

2 研究テーマ及び研究において特に重点を置いたところ

○研究テーマ

「専門高校の専門性(ものづくり)を生かしたボランティア活動」

○研究において特に重点を置いたところ

 次代を担う技術者を育成するため、「ものづくり」に対する興味・関心を引き出す点に重点をおいた。
 そこで本研究では、人のために役立つ「ものづくり」を行うボランティア活動の指導をとおして、「ものづくり」への興味・関心を喚起させ、専門技術の習得やその啓発を図るとともに、工業高校の専門性を生かして地域に貢献できる活動を実践することで、地域における専門高校の役割と地域との連帯感を認識させる。
 さらに、連携先となる養護学校の児童・生徒と「ものづくり」を行うことにより、連携校での「ものづくり」に対する興味・関心を促すことにした。

3 研究の概要

実施年度 実施状況
平成17年度
  • みんなの専門高校プロジェクト推進地域協議会の開催(第1回)
    事業の趣旨説明
    連携の在り方、具体的な連携事業についての研究協議
    (実施時期、実施時数、活動内容)
  • 推進校における組織編成
  • 連携事業の実施
  • 事業の成果検証(児童・生徒の変容等)・評価・報告
  • みんなの専門高校プロジェクト推進地域協議会の開催(第2回)
    中間報告、成果及び反省、来年度への課題確認
平成18年度
  • みんなの専門高校プロジェクト推進地域協議会の開催(第1回)
    前年度の反省に基づいた連携事業についての研究協議
    (実施時期、実施時数、活動内容)
  • 推進校における組織の再編成、年間計画作成
  • 連携事業の実施
  • 事業の成果検証(児童・生徒の変容等)・評価・報告
  • みんなの専門高校プロジェクト推進地域協議会の開催(第2回)
    最終報告、まとめ

4 推進協議会の構成及び活動状況等

(1)構成

みんなの専門高校プロジェクト推進地域協議会委員
所属 氏名 職名 備考
大船渡工業高等学校 大和田 洋太郎 校長 推進校
大船渡工業高等学校 滝音 幸雄 副校長 推進校
大船渡工業高等学校 佐々木 秀治 教務主任 推進校
気仙養護学校 菅原 春夫 校長 連携校
気仙養護学校 菅原 清 副校長 連携校
気仙養護学校 三浦 祐子 副校長 連携校
気仙養護学校 千田 滋久 教務主任 連携校
学校教育室 遠藤 洋一 室長 県教育委員会
学校教育室 熊谷 英範 高校教育担当課長 県教育委員会
学校教育室 及川 求 特別支援教育担当課長 県教育委員会
学校教育室 阿部 徹 主任指導主事 県教育委員会

(2)活動状況

平成17年度

  • みんなの専門高校プロジェクト推進地域協議会の開催(第1回)
    〔平成17年8月29日(月曜日) 会場:大船渡工業高等学校〕
    事業の趣旨説明
    連携の在り方、具体的な連携事業についての研究協議
    (実施時期、実施時数、活動内容)
  • 推進校における組織編成
  • 連携事業の実施
    • 1車いす用の机製作
    • 2ものづくり交流(ライントレーサーの共同製作等)
    • 3ロボット交流
    • 4車いす用スロープの製作
  • 事業の成果検証(児童・生徒の変容等)・評価・報告
  • みんなの専門高校プロジェクト推進地域協議会の開催(第2回)
    〔平成18年2月10日(金曜日) 会場:大船渡工業高等学校〕
    中間報告、成果及び反省、来年度への課題確認

平成18年度

  • みんなの専門高校プロジェクト推進地域協議会の開催(第1回)
    〔平成18年6月5日(月曜日) 会場:大船渡工業高等学校〕
    前年度の反省に基づいた連携事業についての研究協議
    (実施時期、実施時数、活動内容)
  • 推進校における組織の再編成、年間計画作成
  • 連携事業の実施
    • 1実習見学会
    • 2ものづくり交流(ペットボトルおもちゃの共同製作等)
    • 3ロボット交流
    • 4足し算練習機の製作
    • 5車いす用机の製作(継続)
  • 事業の成果検証(児童・生徒の変容等)・評価・報告
  • みんなの専門高校プロジェクト推進地域協議会の開催(第2回)
    〔平成19年2月6日(火曜日) 会場:大船渡工業高等学校〕
    最終報告、まとめ

5 推進校における活動の実施状況等

(1)活動前の地域との打ち合わせ

みんなの専門高校プロジェクト推進地域協議会(会場:大船渡工業高等学校)
〔平成17年8月29日(月曜日) 平成18年2月10日(金曜日) 平成18年6月5日(月曜日)〕

(2)活動概要

<平成17年度>

テーマ 車いす用の机製作
連携先の概要 気仙養護学校 小学部 1年 1名
活動内容の概要
  • 1内容・方法
  • 2ねらい
  • 3位置づけ
    (教育課程上)
  • 1 連携先において、車いすで学習をしている児童のための学習机を、専門高校の生徒が、生徒自身のアイディアと技術のみで製作する。
  • 2 養護学校の児童のために製作することにより、ものをつくる喜びやものづくりへの興味・関心を喚起させる。
  • 3 高校:課題研究 養護学校:交流学習

テーマ ものづくり交流(ライントレーサー製作を通して)
連携先の概要 気仙養護学校 中学部 1〜3年 19名
活動内容の概要
  • 1内容・方法
  • 2ねらい
  • 3位置づけ
    (教育課程上)
  • 1 連携先の中学部の生徒と共にライントレーサーのキットを組み立て、その完成品で共に遊ぶことにより交流する。
  • 2 教えながら作るという、今までとは異なった観点からものづくりを行うことにより、ものづくりへの関心・意欲を高める。
  • 3 高校:課題研究 養護学校:交流学習

テーマ ロボット交流
連携先の概要 気仙養護学校 中学部 19名 高等部 2年 14名
活動内容の概要
  • 1内容・方法
  • 2ねらい
  • 3位置づけ
    (教育課程上)
  • 1 連携先の中学部の生徒に、ロボットというテーマでイラストを描いてもらい、それをロボットの外側に貼るなどして完成したロボットの動作実演をする。同高等部とはロボットの一部分を共に製作し、動作実演をする。
  • 2 一年間培ってきたロボット製作の技術を、違う形で応用することにより、ものづくりへの関心・意欲と技術の応用力を高める。
  • 3 高校:課題研究 養護学校:交流学習

テーマ 車いす用スロープの製作
連携先の概要 気仙養護学校 新入学生 2名
活動内容の概要
  • 1内容・方法
  • 2ねらい
  • 3位置づけ
    (教育課程上)
  • 1 連携先の平成18年度新入生で、車いすで登校をする児童のために、段差を軽減するようなスロープを製作する。
  • 2 養護学校の児童のために製作することにより、ものづくりへの興味・関心を喚起させる。
  • 3 高校:課題研究 養護学校:交流学習

<平成18年度>

テーマ 実習見学会
連携先の概要 気仙養護学校 中学部 1〜3年 22名
活動内容の概要
  • 1内容・方法
  • 2ねらい
  • 3位置づけ
    (教育課程上)
  • 1 専門高校の実習を生徒が説明し、連携校の生徒を誘導しながら、見学・体験をさせる。
  • 2 専門高校がどのような実習を行っているか見てもらうことにより、専門高校の生徒について理解してもらう。更には、説明・誘導等を自ら行うことで、違った観点からものづくりを見つめ直す。
  • 3 高校:課題研究 養護学校:交流学習

テーマ ものづくり交流(ペットボトルおもちゃ製作を通して)
連携先の概要 気仙養護学校 中学部 1〜3年 22名
活動内容の概要
  • 1内容・方法
  • 2ねらい
  • 3位置づけ
    (教育課程上)
  • 1 連携先の中学部の生徒と共にペットボトルを使ったおもちゃを製作し、その後共に遊ぶことによって交流する。
  • 2 教えながら作るという今までとは違った観点からものづくりを行うことにより、ものづくりへの関心・意欲を高める。
  • 3 高校:課題研究 養護学校:交流学習

テーマ ロボット交流
連携先の概要 気仙養護学校 中学部 22名 全校
活動内容の概要
  • 1容・方法
  • 2ねらい
  • 3位置づけ
    (教育課程上)
  • 1 前年度同様、連携先の中学部の生徒と共に、ロボットを製作し、全校生徒が動作実演をする。また、養護学校の要望により、今年度の競技用ロボットを養護学校の児童・生徒が操作できるように新たに1台製作し、操作体験させる。
  • 2 一年間培ってきたロボット製作の技術を、違う形で応用することにより、ものづくりへの関心・意欲と技術の応用力を高める。
  • 3 高校:課題研究 養護学校:交流学習

テーマ 足し算練習機の製作
連携先の概要 気仙養護学校 小学部
活動内容の概要
  • 1内容・方法
  • 2ねらい
  • 3位置づけ
    (教育課程上)
  • 1 連携校の小学部の児童に足し算の概念を理解させることができるような教具を、専門高校の生徒が、生徒自身のアイディアと技術のみで製作する。
  • 2 養護学校の児童のために製作することにより、ものづくりへの興味・関心を喚起させる。
  • 3 高校:課題研究 養護学校:交流学習

テーマ 車いす用の机製作
連携先の概要 盛小学校 特殊学級 2年 1名
活動内容の概要
  • 1容・方法
  • 2ねらい
  • 3位置づけ
    (教育課程上)
  • 1 連携先において、車いすで学習をしている児童のための学習机を、専門高校の生徒が、生徒自身のアイディアと技術のみで製作する。
  • 2 養護学校の児童のために製作することにより、ものをつくる喜びやものづくりへの興味・関心を喚起させる。
  • 3 高校:課題研究 養護学校:交流学習

6 活動の成果

1中学部・高等部(連携校)の生徒の感想文から

  • 本当に楽しかった。
  • また会いたい、一緒に遊びたい。
  • 高校生を見てすごいと思った。
  • またいろんなことを教えて欲しい。
  • 完成して嬉しかった。

2高校生(推進校)の感想文から

  • 人に教えることの難しさを改めて感じることができ、良い経験になった。
  • (連携校の生徒の)顔が生き生きしていて、一緒に作ってよかったと実感した。
  • 人のことを思って(考えて)作る大切さを知った。
  • 学校では絶対に体験できないことだった。
  • 「ありがとう」と言ってくれたのがとても嬉しかった。
  • 自分達の作品が誰かの役に立てて本当に良かった。

≪養護学校の生徒について≫

  • 自分の実習時間よりも真剣に取り組んでいた。
  • 自分の持っていないものを持っている。
  • 全く自分たちと同じ。
  • 「誰かと一緒でなければ行動できない、何もできない」と思っていたが、自分たちで考えてそれを行動に移していた。
  • 周りの人たちにも、障害のある人の本当の姿を分かってもらいたい。

3先生方(連携校)から

  • 工業高校の生徒の優しさや一生懸命さが伝わってきた交流であった。
  • 養護学校の生徒に対し、偏見を持たずに素直に関わってくれた。
  • 養護学校の生徒が、工業高校の生徒のことを見て静かに話を聞くことができたのは、工業高校の生徒の気持ちが伝わったからだと思う。
  • 担当教員同士の連携がうまくとれていたと思う。
  • 交流したことにより、養護学校の生徒も生き生き活動できた。
  • 今後も(是非とも)続けて欲しい。
  • 第17回岩手県高等学校工業クラブ連盟生徒研究発表大会“優秀賞受賞”
    「プロジェクトメンバーとして−人のためのものづくりで何ができ、何を得られるか−」
  • 新聞掲載11回 テレビ放送2回

7 2年間の研究の全体的な評価

 上記の活動成果から、推進校の高校生は事前の不安はあったものの、本事業を体験した事により「ものづくり」から生まれる様々な可能性、今までとは異なった観点から「ものづくり」の楽しさ、難しさ、大切さを実感できたようである。現場で見ていても、交流を行う度に彼らの本事業に取り組む姿勢が明らかに変化していった。
 さらに、本事業の大きな成果としては、養護学校と交流したことにより、今までの養護学校に対する考え方が大きく変わったように思われる。実際に、工業高校の生徒達の感想からも、以前から抱いていた養護学校のイメージを一新させ、さらに、そのことを周りの人たちに理解して欲しいというところまで発展させている。これは、本事業において養護学校と連携したことがプラスの要因となって現れたものと思われる。交流を重ねるごとに、工業高校の生徒達の養護学校の児童・生徒に対する(笑顔を見たい・喜んでもらいたい等の)思いが増し、そのことが次のものづくりへの意欲となって現れた。養護学校と連携することにより、自然とものづくりへの興味・関心・意欲を喚起させることができた。
 また、参加した養護学校の生徒の感想から、本事業の活動を肯定的にとらえていることが窺える。連携校での「ものづくり」に対する興味・関心を促すという点でも、実際に高校生が実習している様子をみたり体験したことは、完成した喜びや次の取組への意欲となって現れ、ものづくりに対する興味・関心の促しは十分にできたと考える。
 この他に、連携校の先生方からも、今までは養護学校側からするとほとんど交流の機会がなかった工業高校に対して、本事業を通して数多く交流したことにより、工業高校生のことをより知ることができたことはたいへん意義深いものであり、良い刺激を受けたとの評価をいただいた。
 このことは、本事業の活動を通して、専門高校が有する人的・物的資源を地域の学校に還元し、活用する取組の有効性が認められたのではないかと考える。
 専門高校の活性化を図るという点については、上記の連携校の先生方からの意見や、工業祭での本事業の特別ブースの設置、県工業クラブ生徒研究発表大会での優秀賞受賞、さらには、2年間で県内の新聞社に計11回、テレビ放送2回等、本事業を積極的にPRすることにより活性化は十分図られたものと思われる。

8 今後の課題及びこれからの取組

 連携校から、これから先も何らかの形で交流していきたいとの意見を数多くいただいた。本事業としての取組は今年度で最後となるが、この取組を今後も継続・発展させていきたいと考えている。