都道府県名 福岡県
推進地域名 糟屋郡宇美町
研究において、重視したのは以下の点である。
生徒は、実際に店舗経営を行うことで、お客様や他店との従業員とコミュニケーションを図り、社会性を身につけたものと思われる。さらに、商品陳列の工夫、与えられた業務を遂行するだけでなく組織の一員として、お客様への積極的で適切な「声かけ」等、進んで行う姿が見られ、「自ら課題を設定し、解決する能力」の育成に大いに貢献した。
接客マナーの向上やイベントの効果は、「にしてつストア宇美店」で行った来店者へのアンケート調査から理解できる。平成17年9月に実施したアンケート調査の結果によれば、回答者の80パーセントが店の印象について「感じが良かった」と答え、70パーセントが「次回も来店する予定である」と答えている。また、平成18年10月に行った調査では76パーセントの回答者が「感じが良かった」と答えている。昨年度の調査に比べ4ポイント下がっているが、「次回も来店する予定である」と答えた来店者が88パーセントにのぼり、昨年度に比べ18ポイント増えるなど差別化の効果が現れている。
本校が取組んでいる店舗経営は、多くの新聞やTVに取り上げられた。また、宇美町商工会の機関紙に紹介されるなど、パブリシティを通して地域に浸透しつつある。平成18年10月に実施した来店者へのアンケート調査から、来店する地域が宇美町68パーセント、須恵町23パーセントと広がりつつある(平成17年の調査では来店者の90パーセントが宇美町)。さらに、本校生徒と近隣中学校生徒による地元スーパーマーケット内での共同販売体験会の実施も、本校店舗経営をPRすることに貢献した。
販売情報に関するビジネスデータの収集と分析によって、本校マーケットの課題を発見することができた。本校マーケットの課題は2つである。一つ目が安価な仕入先の確保が難しいことであり、二つ目が開店から30分ごとに調査した「青果時間帯別売上表」の結果、青果の約70パーセントが午前中(11時30分)までに売れ、午後に来店されるお客様に「品薄感」を感じさせることである。この「品薄感」が平均買上率が低い原因の一つと考えられる(平成18年度1回あたり、平均買上率65.1パーセント)。
社会人の講話、「課題研究」における生徒の調査研究や討論、地元文化会館での発表会等を通して、生徒たちは「自らの在り方生き方」を考え、高い志を持ち、進路意識の向上につながったと思われる。2年間の取組と夏季休業中に行われるインターンシップ等がキャリア教育の充実にもつながっている。
平成19年度は、年間14回の有店舗経営を予定している。「課題研究」の時間を利用し、生徒を「仕入・販売部」、「広告宣伝部」、「経理部」等に分け、店舗経営を円滑に運営していく計画である。平成19年2月に、2年生に対して行った「課題研究」選択仮調査の結果、84名の生徒が本校マーケットに関わりたいと答えている。
現在、福岡県では本校を含め3校が継続的に有店舗経営を行っている。このような学校の生徒同士が綿密に情報交換し、福岡県の起業家教育に関する取組がもっと活発になることが望まれる。本校はこのような起業家教育の中心校をめざし、今後とも取組んでいく所存である。今後も、来年度に向けて、より円滑に効果的な店舗経営ができるように職員の協力体制を強化し、経営感覚あふれる生徒を育成していきたい。
特になし