(平成16年3月9日最高裁)
(平成15年6月6日仙台高裁)
平成16年3月9日 最高裁判所
(平成15年12月24日 東京高裁)
(平成15年7月11日 東京地裁)
東京都江東区立A小学校の教諭が、指導力不足、誤指導、生徒や保護者からの不信等を理由として、東京都教育委員会の「指導力不足に係る教員の取り扱いに関する要綱」に基づき江東区教育委員会から指導力ステップアップ研修を命じられたことに対して、区教委が発令した研修命令は違法であり、これにより精神的苦痛を被ったとして国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を請求した事案。
上告することが許される事由に該当しない。
教諭は、体育、水泳指導、林間学校、運動会における指導、授業中の指導力不足等について、校長等の供述等をそのまま採用するなど事実認定が誤っていると主張。
教諭は、校長が区教委に提出する申請書を見る機会や反論する機会を与えられていないこと、また、都の判定委員会も非公開であり、判定の基準・過程とも不透明であること、また、研修命令に対する異議申立ての権利も認められていないことなどが手続的に違法であると主張。
「 認定事実は関係各証拠に照らし、相当と認められるものであって、これを非難する控訴人の主張は採用できない。」
「 控訴人は、研修命令の発令までに校長が区教委に提出する申請書を見る機会を与えられなかったことから、これに反論する機会もなく、その評価の客観性を判断することもできないとか、判定委員会も非公開であり、判定の基準・過程とも不透明であって、研修命令に対し、異議申立ての権利さえ認められていないと主張する。
しかしながら、研修命令は、職務命令の一種に過ぎず、控訴人の身分、給与等に異動を生じさせるものではない(弁論の全趣旨)から、その取消しを求めるなど異議申立ての権利が認められていなくとも本人の公務員としての権利義務に影響はなく、不利益を与えるものではない。また、本人の資質、能力についての評価に対し、反論する機会がないことに不満があるとしても、この評価とこれに対する反論につきどのような手続を設けるかは、それぞれその事柄の性質に応じて制度設計を考えるべきものであり、本件において控訴人の主張するところによっても、研修命令が手続的に違法となるものではないと解すべきである。」
※ 判決文中の「控訴人」とは、本件で訴訟を提起した教諭を指す。
平成15年6月6日 仙台高裁
(平成15年2月17日 仙台地裁)
平成14年4月に、多賀城市教育委員会から長期特別研修命令を受けた教諭が、研修命令は違法である旨を主張して、当該研修命令の取消を求めた事案。
「 本件命令による研修期間は平成15年3月31日で満了し、現在、控訴人は、宮城県立A養護学校に勤務しており、本件研修を受講していないことは、当事者間に争いがない。
上記事実によると、本件命令の効果は上記期間の経過によりなくなったものであり、また、本件命令による研修は、当該教員の職務に対する主体的意欲と児童生徒に対する指導力の伸長を促し、教育現場が抱える課題に適切に対応できる力量を高めることによって学校教育の向上・充実に資することを目的とする宮城県公立学校教員長期特別研修に関する要綱に基づくものであって、本件命令ないしこれに基づく研修を受けたことを理由として控訴人を不利益に取り扱い得ることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法9条の規定の適用上、控訴人は、本件命令の取消しによって回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。そうすると、控訴人の本件訴えは不適法であり却下を免れない。」
※ 判決文中の「控訴人」とは、本件で訴訟を提起した教諭を指す。
初等中等教育局 教職員課
-- 登録:平成21年以前 --