いじめ防止基本方針策定協議会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成25年9月12日(木曜日) 13時~16時

2.場所

文部科学省3階3F2特別会議室

3.議題

(1)団体等からのヒアリング
(2)いじめ防止基本方針の策定について
(3)その他

4.出席者

委員

安倍委員、新井委員、尾上委員、小泉委員、國分委員、實吉委員、高田委員、田中委員、野島委員、野原委員、藤川委員、森田委員、山浦委員、山田委員

文部科学省

義家大臣政務官、前川初等中等教育局長、義本大臣官房審議官、白間児童生徒課長、池田生徒指導室長、春山課長補佐、鈴木生徒指導調査官 他

5.議事要旨

(1)いじめの防止等の取組の在り方について、団体からのヒアリングが行われた。その概要は次のとおり。

 A NPO法人ジェントルハートプロジェクト
 別紙(既に配布済)のとおり意見発表があった後、次のような質疑応答があった。

【委員】
 教員の力量アップのことを言われたが、具体的に教員に何ができるようになってほしいか。

【意見発表者】
 大人が考えていることは全て正しいという認識をまず大人が捨てて、子供たちと一緒に考える時間を作ってほしい。

 B 滋賀県大津市の遺族
 別紙(既に配布済)のとおり意見発表があった後、次のような質疑応答があった。

【委員】
 背景調査では、因果関係の論証はとりあえずおいておいて、まず、事案の背景にあった事実を丹念に確認するという方向が望ましいと考えるのか。

【意見発表者】
 そうである。まず、アンケート調査や教師への調査を実施し、できるだけ事実を集め、何があったかを把握することが大事。また、学校で行う調査は限界があり、途中で調査が打ち切りになっている例が多く、学校でできる調査とその後の第三者委員会等に任せて行う調査を分けた方がいい。まず、学校の初期調査で事実をきちんと確認し、そこから先は第三者にバトンタッチしていくことが教師の負担軽減にもつながる。恐らく現場では、教師が警察まがいの調査までしなければならないのか等、困惑している状況があると思う。

 C 岐阜県可児市市民部人づくり課
 別紙(既に配布済)のとおり意見発表があった後、次のような質疑応答があった。

【委員】
 いじめ防止専門委員会にいじめの相談があったときの、委員会と学校の関係は。また、委員会の役割として「調査、判定、支援」とあるが、その活動内容は。

【意見発表者】
 いじめ防止専門委員会への相談は、相談者の同意を得て学校や教育委員会と情報を共有。その際、学校の把握状況や対応について確認するとともに、相談者側の気持ち等も学校に伝えている。同時に、学校の対応状況を相談者側に伝えている。
 また、委員会の役割として、「調査」とは事実調査のこと、「判定」とは事案がいじめ事案であるかどうかを判定すること、「支援」とは、学校の対応等について助言を含めたサポート活動をすることを意味している。

【委員】
 法14条1項の連絡協議会、14条3項の教育委員会の附属機関など、本法律で定めている機関の在り方について、可児市の経験から言えることがあれば伺いたい。

【意見発表者】
 本市のいじめ防止専門委員会は、本法律に具体的にマッチするものはないが、もともと第三者的な立場で調査を実施することを目的として設置しているものであるので、例えば、30条の附属機関に係る規定などは、これに近いのかと思っている。ただ、いじめ防止専門委員会がストレートに30条の附属機関になるかというと、もう少しメンバーを足したりすることも必要かと検討しているところ。

 D NPO法人チャイルドライン支援センター
 別紙(既に配布済)のとおり意見発表があった後、次のような質疑応答があった。

【委員】
 子供たちの相談に対して、我々は解決方法を言ってしまいがちだが、チャイルドラインの場合は、聞くという対応か、それとも、助言的な対応か。

【意見発表者】
 1本の電話で解決までは難しい。私たちの取る「寄り添う姿勢」とは、子供自身が自分にできることを見つけていくということ。具体的には、大変ないじめを受けていれば、誰かにSOSを出さないといけない。誰にだったら出せるのか、その人を見つけ、その人に、どういうふうに伝えてみようかという練習をする。学校の中で、どんな時間帯に、どんなふうに、その相談したい相手にアタックすることができるのか、そのことを一緒に考え、練習している。

 E 学校支援地域本部 横浜市立幸ヶ谷小学校
 別紙(既に配布済)のとおり意見発表があった後、次のような質疑応答があった。

【委員】
 学校を開いて外の風を学校の中に入れてくるという試みの中で、具体的にいじめの問題に焦点化して、子供たちの変化や教員の意識変化等は見られたか。

【意見発表者】
 本校はたまたまオープン教室でもあり、多くの保護者、地域の方が常に行き来しているという中で、子供たちがいろいろな人にさらされているから潜在化するという可能性もあるとは思っている。

【委員】
 横浜、神奈川では、生徒指導加配や小学校への児童支援加配等、マンパワーの配置による先駆的な取組をしているが、これによって、いじめという問題がどのくらい変わっていくという実感があるか。

【意見発表者】
 いじめの問題への対応について、一番の問題は教職員の意識や質の問題。本校でも経験年数10年以下の経験の少ない職員の割合が7割ぐらいになる。そこに、経験豊富な児童支援専任の教員が加わるということは、職員に対する指導も含めて空気感づくりという意味で非常に寄与している。

(2)文科省より、事務局作成の「いじめ防止基本方針」について説明がなされ、委員から意見が出された。

【委員】
 法律には、スクールカウンセラーや臨床心理学という言葉はない。また、「心理・福祉」とはあるが、決して「臨床心理・福祉」ではない。スクールカウンセラーという言葉がやたら多いが、スクールカウンセラーとはどういったカウンセラーのことをいうのか明示してほしい。また、教員の力量アップに関して教員の何を育成するのか、誰がいじめの対応能力のある教員を育成するのか明記してほしい。
 いじめが起こる前のクラスの状況を読み取るためのアンケートが必要。

【委員】
 9月末までに決定しなければならない方針と、それ以後継続審議が必要な事案に分けて協議会運営を進めることが可能かどうか議論をお願いしたい。組織のことだけでなく、調査方法や専門家の人選方法等々、あるいは教育相談体制の問題、これらについても、時間の制約上全て議論し尽くせないのではないかと思う。継続審議を希望する。

【文部科学省】
 補足として、教育振興基本計画も「いじめ防止対策推進法」と同様、地域における基本計画は国の基本計画を参酌して作るよう定められていたが、第1期に関してはおよそ50%が未策定という状況であった。いじめ問題に関して言えば、そのようなことが絶対に起きないよう、迅速かつはっきりとしたメッセージを是非基本方針として出していただきたい。
 まず施行と同時にはっきりした方針を明確に打ち出した上で、その後、地方公共団体がしっかりと参酌して定めているかいないかということはしっかりと検証し、何が足りないのかを積み上げていく。この点は、はっきりと議論を分けた方がいい。

【委員】
 「自殺の多くは複数の要因からなる複雑なものである」との記載について、これ自体は否定されるべきものではないが、書きぶりをどう変えるかというのが非常に重要。因果関係の特定を急ぐべきではないということを明記し、事実の確認を速やかに行うということを確認するべきではないか。
 また、岐阜県可児市では、本法律にぴったり合わない形ではあるが、教育委員会とやや距離を置き首長部局に少人数の組織を常置化した委員会が設けられており、地域にあって活動している。これは、他地域でも参考にすべき取組であり、積極的に紹介してもいいのでは。

【委員】
 法30条の附属機関に関して、これまでに実績のある附属機関等はきちんと認める内容になること。今後、地方の独自性によって同様の機関が作られる場合に、それが決して本法律に反するものではないということが理解できるようにしてもらいたい。

【委員】
 法31条2項における都道府県知事の再調査については、学校からの報告を受け、学校の調査が不適当と判断した場合に、学校に再調査を求め、再度報告書の提出を求める程度のことしかできないのではないか。ここでは、どのような調査が想定されるのか明示してほしい。

【委員】
 小学校と中学校が連携していじめ防止の機関や組織を設けるといった内容を書き加えてほしい。

【委員】
 学校だけでなく社会全体で子供たちの様子を見ていくという趣旨に照らし、少し家庭のニュアンスが弱い。家庭として子供をどう見ていくかということも明記してほしい。

【委員】
 学校基本方針について、地域や保護者にも理解を得なさいということでなく、策定の際に保護者や地域の方が入っておかないと、きっちりした学校単位の基本方針はできない。

【委員】
 校長の強力なリーダーシップや組織としての対応について、この点を強調することによって多少改善がなされるのでは。また、些細な情報であっても、全てが校長まで確実に伝わっていく、そういった伝達経路、報告経路を確立させることは重要。

【委員】
 組織的な対応として、学校で基本方針を策定後、いじめ防止年間計画を策定して実施し、そしてPDCAサイクルで検証しなくてはいけない。
 いじめの事案について、なぜ気付いてあげられなかったのか、また、気付くために何が必要だったのか、そういったいじめの実態から学ぶものを現場で検証しながら、そこをしっかりやっていかないと教員のスキルアップは図れないのではないか。

【委員】
 重大事案等について、調査があった後の遺族や保護者に対する説明や情報提供に関しては、「説明責任」という言葉を使って基本方針に記載すべきだと思う。また、28条の調査の後、30条の報告をするに当たって、遺族や被害児童、被害保護者の意見を添えて報告をするということは非常に望ましいことだと思っている。

【委員】
 法28条に関して、フォーマット、マニュアル等をある程度標準化して作成し、普及していくことは、隠蔽しない仕組み、きちんと説明される仕組みを確保していくことにつながるというところまで方針に書かないと、余り実効性がないように思う。

【文部科学省】
 平成22年度に審議会がまとめた、「子供の自殺が起きたときの調査の指針」というマニュアルがあるが、まさにこれをいじめ自殺のみではなく、いじめの重大事案に当てはめて、しっかり議論した上で、ブラッシュアップした形に作り上げていく必要があると、委員の議論を聞きながら改めて思った。しっかり対応してまいりたい。

【委員】
 いじめを知らせてきた児童やいじめられていることにSOSを出している生徒に対して、安全をどのように確保しどう支援していくか、また、どのような組織的な対応が可能なのか具体的に示す必要がある。

【委員】
 例えば普及啓発協議会を頻繁に開催し、教職員の意識を高めていくことや、過去の事例から学ぶことなどを訴えていく必要があるのでは。また、「豊かな心の育成」という点で、学校教育に限定している部分があり、もう少し幅広に捉えたいじめへの対応策を明記してほしい。

【委員】
 多くのことが教育委員会や公立学校のことに関して書かれているので、「学校は」という書き方の中に、可能であれば、私立学校の方策があるとすれば「私立学校は」と、基本方針の中に書き込みをしてもらえるとありがたい。

【委員】
 重大事案の初期調査に関して、「子どもの自殺が起きたときの調査の指針」では、まず全教師から聞き取りがあり、次に子供からとなっていて、この順序がまずいのではないかという指摘がある。なぜこうなっているのかという経緯や考え方を説明してもらった上で、議論ができたらと思うのだが。

【副座長】
 ガイドラインを作成した一人として、本ガイドラインは、子供の自殺全体を防ぐにはどうしたらよいのかということでスタートしているので、まずは状況の確認という意味で全教師から聞き取りをして、そして、それを踏まえて、子供たちの中にいじめと限らず動揺が起きているから、その動揺を見ながら、その子供たちの聞くべきところから聞いていくということで、まずは状況の把握、そして子供たちに適切に聞いていくという、そういう順番になっている。

(3)最後に、文科省から、今後の会議の進め方について説明があった。

── 了 ──

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成25年11月 --