不登校に関する調査研究協力者会議フリースクール等に関する検討会議合同会議(第19回)議事要旨

1.日時

令和元年5月13日(月曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 15階1会議室

3.議題

(1)実態調査の結果(確定値)について
(2)ヒアリング

4.出席者

 委員

 (不登校に関する調査研究協力者会議)

 大場充、木嶋晴代、齋藤眞人、齋藤宗明、高野敬三、中邑賢龍、成瀬龍夫、野田正人、藤崎育子、森田洋司、森敬之、山川時彦


 (フリースクール等に関する検討会議)

 生田義久、植山起佐子、奥地圭子、金井剛、白井智子、松尾圭子、西野博之、森敬之


 文部科学省

 大濱児童生徒課長、松木生徒指導室長、廣石児童生徒課課長補佐


5.議事要旨

(事務局より配布資料の確認)
【委員】 本日は、議事として、1つは、確定した実態調査が出ているので、その結果について説明いただき、続きまして、ヒアリングという2件を予定している。
 まず、実態調査の結果について、事務局から説明をお願いする。
【事務局】 それでは、資料1-1及び1-2に基づき、実態調査の説明をしたい。これについては、前回、3月の会議のときに暫定版として一度説明したものであり、その後、確定版という形で数字が確定したので、そのような位置付けで配付している。
 それでは、まず資料1-1、民間の団体・施設との連携等に関する実態調査である。この調査対象は都道府県、市区町村の教育委員会のほか、知事部局、国立大学法人、公立大学法人となっており、計1,964が対象となった調査で、教育機会確保法成立後の取組などについて調査したものである。
 それでは、時間が限られているので、ポイントだけ説明する。5ページ目、教育機会確保法は平成28年12月に成立したが、その成立後の取組を聞いている部分である。この法律ができた後、新たに取り組んだもので多かったのがカとクであり、「不登校児童生徒が登校してきた場合の受入体制の整備」や「不登校児童生徒とその保護者に対する学校以外の学習活動の場や支援について、必要な情報の提供」が多くなっている。他方、今後検討していることでは、ケの「教職員に対する研修を通じて、法やそれに基づく基本指針の趣旨等の周知徹底」が多く、上から2番目、イのいわゆる不登校特例校、本日もヒアリングで来ていただいているが、こちらを検討しているのが59である。現在、12校しかないところから考えると、注目すべき数字ではないかと考えている。それから7ページ目の教育委員会等と連携がある民間の団体・施設の有無であるが、こちらについては「連携がない」が85%に上っている。その理由は下の方にあるとおり、域内に民間の団体・施設がないというのが多く、対象の児童生徒が少ないとか、教育支援センター等があるからといった回答も一定の割合を占めている。次のページ、8ページ目、連携のある民間の団体・施設では、約40%がいわゆるNPO法人(特定非営利活動法人)であり、全体は351である。それから10ページ目、こちらは連携のある団体で、そこに通う子供の数はおよそ2,800人である。小学生が約960人、中学生が約1,850人と、中学生が非常に多くなっている。それから13ページ目は活動内容のうち、経済的支援に係るものを聞いている。会費の減免等について、補助制度や減免制度なしが全体の8割、ありが2割になっている。次のページ、14ページ目、民間の団体・施設と教育委員会等との連携については、一番多いのがアである。通所の実績や支援状況等に関して、文書等により定期的な情報共有が全体の約7割になっている。連携内容としては、この形が一番多かったというデータが出ている。
 次、資料1-2について、こちらは教育支援センター、いわゆる適応指導教室に関する実態調査の結果である。こちらについては、1ページ目で調査時点が平成29年度間となっている。この間における教育支援センターの現状に関する基礎的情報を把握したものとなっているが、同趣旨の調査を平成27年度にも実施しているので、法律の成立が28年、それを挟んだ前後を読み取れるデータとなっている。それでは、4ページ目、これは教育支援センターの設置の有無を聞いたものであり、設置しているが1,142、設置していないが676である。その下に平成27年のデータがあるが、設置しているが1,089、設置していないが730で、若干であるが、この2年の間で設置が進んでいるということが読み取れる。次のページ、5ページ目、教育支援センターを設置していないところにその理由を尋ねたもので、多かったのはアとイで、アが「通所を希望する不登校の児童生徒が少ないと見込まれるため」、イ、「教育支援センターを運営する予算、場所の確保が困難なため」となっている。これら両方を合わせると7割を占める。その下で、教育支援センターを設置していないところに設置の予定を聞いたところ、何らかの設置に向けた検討、あるいは設置するかどうかについて検討をしていると答えたのが全体の41%である。他方で設置しないと答えたのが52%に上るというデータが出ている。11ページ目、適応指導教室における在籍者の状況であるが、小中高でいずれも在籍期間6か月以上が半分以上になっている。特に中学校が73%、7割以上が在籍期間6か月以上と、他に比べて非常に長くなっているというデータが出ている。13ページ目の在籍者の状況であるが、こちらは、まず上が小学校から中学校への進学の状況で、2のところで29年度に中1だった在籍者のうち、28年度にも在籍していた小6の者が全体の16%ぐらい。次に中学3年生に在籍していた者がどうなったかを見たのが下で、全日制、定時制、通信制を合わせると高校進学率が64.2%、6割が高校に進学できている。ただ、一番下の3.0%は在宅となっている。14ページ目は在籍者の状況について傾向を調べたもので、ア、「学校に行きたくても行けないタイプ(不安など情緒混乱)」と、エ、「人間関係によるタイプ(他の児童生徒との関係など)」が一番多く、両者を合わせると34.8%で、この1位、2位で全体の3分の1を占めている。他方、「学校に行きたくないタイプ(遊び・非行)」というのは4.2%と少ないデータが出ている。17ページ目は活動内容で、学校復帰という上から3つ目、ウ、学校復帰を重要と考えている施設が全体の中で最も多くて68.7%であるけれども、上の青い棒と下の赤い棒はそれぞれ27年と29年のデータであり、大体10ポイントぐらい前回から下がっている。この2年で割と大きな変化があったと考えている。逆に10ポイント近く増えたものがアの社会的自立、これが9.6%増、それから一番下の居場所の提供が9.5%増で、これらが非常に伸びている。それから18ページ目は適応指導教室における活動内容であるが、個別指導というのがほぼ100%に近い割合で出ており、これは27年から傾向は一緒である。また、サとシ、相談・カウンセリング、子供と保護者からがそれぞれ9割ぐらいで、その他、自然体験とか社会体験、スポーツなど様々な活動に取り組んでいるという状況が見られる。それから21ページ目、これは家庭訪問の実態を調べたところである。実施しているが33.5%、実施していないが66.5%で、およそ全体の3分の2は実施していないという状況になっている。22ページ目は学校との連携の内容を複数回答で聞いたものである。一番多いのは一番上で、通級の実績や支援の状況に関して定期的な文書により情報共有を行っているが全体の9割であり、これが一番多いという結果になっている。
 以上、時間の関係がございまして駆け足でしたが、概要の説明を終わりたい。
【委員】  それでは、ただいまの事務局からの説明に関して質問があればお願いしたい。
【委員】  2年前まで適応指導教室の全国組織に関わらせていただいていて、前回欠席だったので暫定版を見ていないが、この適応指導教室の実態調査を見たときに、設置している箇所が微増している。この部分は非常にうれしいことですが、やはり予算の確保が困難なのでできないという答えが多いことは、とても残念に思う。文部科学省の方からも補助金の制度など様々な取組があるが、予算が原因で立ち上げができないという自治体が一つでも減っていくように、更なる補助金の制度の拡充をお願いしたい。また、設置している自治体においても、この法律以降、通所者が増えているという傾向があると捉えることができる。名古屋市も倍増である。通所を申し込んでから通所できるまで2か月待ちである。昨年度、私たちの学校の児童が申し込んだときには2か月待ち、相談が始まるまでは4か月待ちである。このように各自治体、増えることによってストレスも当然発生してきている。また、職員体制にも出ており、カウンセリングなどに適応指導教室、一生懸命取り組んでいるが、専門職、臨床心理士さんがなかなか定期的に来ていただけない状況の自治体も多い。スクールカウンセラーを適応指導教室に配置できるように補助金の制度も、3年前にでしたか、変えていただいたと思うが、更なる予算的な部分、職員配置ができるような部分、もう一歩法律の広がりに沿って更なる拡充をされることを強く希望する。
【委員】  ほかにございますか。
【委員】  資料1-2の在籍者の状況、対象児童生徒の傾向のところですが、タイプ分けのところで、学校に行きたくても行けないタイプ、学校に行きたくないタイプという、この分類は必要ないかと。不安など情緒混乱とか、学校のきまりをめぐる問題とか、そういった背景とかだけでよろしいのではないか。遊び・非行の中にも行きたくても行けない子もたくさんいるし、このタイプ分けの中で、学校に行きたくても行けない、あと学校に行きたくないの分類は不必要かと思うので、次回等に反映していただければありがたい。
【委員】  ただいまの意見に関して、何か追加意見あるか。
【委員】  関連して、現象としては無気力であるとか、学業不振って出ているが、その理由というか、原因まで踏み込んでいかないと、ずっとこういう形でしか上がってきていない。原因が分かれば、もう少し対応できる部分というのはたくさんあると思う。例えば学習不振であれば、こちらで指導内容として勉強の後れを保障するということがあり、これは大して効果を上げていない部分があるのではないかと私は思う。やはり読み書きの基本的な後れのある子供たちが相当数、不登校の中にはいるというのが我々の独自の調査で分かってきていて、それは機器の代替によるとか、あるいは中学生になると、それさえも追いつかないという状況があるので、もう少しこのあたりのところを踏み込んだ実態調査をする。無気力も同じ、学力でいい点数が取れないと無気力になっていくのはしようがない。テストの配慮等があれば随分違うにも関わらず、全くそういうものがないという状況の中で起こってきている問題でもあると思うので、このような現状というか、現象の背景をもう少し踏み込んで調査していただければありがたい。
【委員】  今の意見には基本的に賛成で、それはこの調査だけではなく、問行調査で不登校の調査をやっている枠組みが検討し直されないと、現場では回答しにくいし、それから回答したからといって何が浮き出てくるかというのが、もっとその背景が分かるようなものに変えていく必要があると思う。それから、きょうの資料で教育支援センターの調査の例えば5ページです。教育支援センターを設置していない理由のイの部分は、さきほど委員がおっしゃったとおりで、そこが大事だと思うが、その次に多いのが「通所を希望する不登校の児童生徒が少ないと見込まれるため」とあるが、文科省では、児童生徒がどうして教育支援センターへの通所希望が少ないというふうに思われているか。これは教育支援センターの調査ですが、文科省はどういうふうにそこをお考えなのかなということをお聞きしたい。これが1点。それから、この報告に関係ないですが、お聞きしたいのが、きょうの議事の中で、私は、教育機会確保法、3年で見直しというところがだんだんせっぱ詰まってきているので、発言したいことを別資料で用意してきているが、それについて発言する時間はあるか。
【委員】  もちろん発言していただく機会をどこかでつくる。
【委員】  ほかに。ただいまの事務局への質問に対して説明を少し。
【事務局】  今回は「通所を希望する不登校の児童生徒が少ないと見込まれるため」という選択肢を設けて、これだけの数が出ているが、それより更に踏み込んだ調査はできていない。したがって、これが例えばその地域に限って少ないのか、あるいはよく言われている法律の趣旨の浸透というものが地域によってばらつきがあるということなのかといったことについては、正直なところちょっとよく分からないが、データとしてはこういう数が出ているということで理解している。
【委員】  1点お尋ねしたいのは、民間の団体・施設との連携の方の調査結果の5ページ、先ほど説明がありました不登校特例校等の今後予定、検討しているが59になっているが、都道府県、あるいは指定都市、具体的な内訳が分かれば教えていただきたい。それに関連して、この整理の仕方だが、教育機会確保法の制度全体としてどういう状況になっているのかというときに、取組としては都道府県、指定都市と市町村、小規模市町村も含めて、その取組は基本的にかなり質的に違うので、これを全部一緒にしても、なかなか全体としてどこに課題があるのかということは分かりにくい。これは前回でしたか、一度お願いもしたが、基本的にこの内訳というのは都道府県とその他市町村で内訳が分かるようにしていただきたい。相談体制であるとか、実際の学習の場の確保であるとかいうのは、自治体規模によって基本的に違うので、それをみんな一緒にしても全体として把握はできないということになる。ここで無理であれば、資料を付けられるときに、その内訳が分かる付表とかで、是非お願いしたい。そうなると、この不登校特例校の内訳も当然分かるはずである。
【事務局】  今後の課題ということで受け止めさせていただく。
【委員】  教育支援センターに関する実態調査の17ページの活動内容の中で、ウの学校復帰が減っているとはいえ7割を占めるというデータが出ている。これに関して文科省として、なぜ、教育機会確保法ができ、それから平成28年9月の初等中等教育局長通知が出て、文科省として社会的自立を目指すという方向に、私たちはそちらに大きく力を入れていると思っているが、まだ現場ではこれぐらいあるということを、どのようなところからこれだけ大きな数になっていると考えているか、お答えいただきたい。
【事務局】  法律ができたのが平成28年12月で、施行が平成29年2月である。今回の調査は29年度で、やはり法律ができて、まだ時間が余りたっていないということも関係していると思う。27年との比較で2年間の間に学校復帰が10ポイント下がった。これを大きな変化と見るか、まだまだ不十分だと見るかというような見方もあると思うが、ただ、方向としては、法律ができて、それが徐々に浸透してきていると言えるのではないかと捉えている。
【委員】  それでは、時間もかなり押しているので、議題2に移らせていただく。議題2では、教育支援センター、不登校特例校、フリースクール、それぞれにおける現状の取組と今後の課題や展望について発表いただく。大体1委員会、あるいは1施設15分ぐらいをめどにお願いしたい。まずは世田谷区教育委員会からお願いする。
【世田谷区】  世田谷区からはほっとスクール「希望丘」における特別支援センターの運営業務委託について御説明をさせていただく。世田谷区は5月1日現在、人口は91万人を超え、この1年間で9,000人の増加となっている。それに伴い、既に学校の教室が不足するなど子供の人数が増加している現状がある。世田谷区では、「ほっとスクール(教育支援センター)」であるが、教育支援センターについては、平成7年度より不登校の児童生徒が安心して過ごすことができる「心の居場所」として開設している。本日は、この後ほっとスクールとして説明する。区の不登校の子供の数は平成24年度以降、増加傾向にある。出現率も国の平均よりも高く、現在、在籍児童数約4万6,000人のうち、約600人の子供が不登校となっている。ここ数年、ほっとスクールの体験を含めた申込者数は増加し、年度後半には子供の利用が増え、定員を大幅に超過してしまう現状がある。また、本日配付した資料3枚目のとおり、今までは希望丘を抜かした2か所しかなく、地域に偏りがあり、通室するのが困難な地域があった。このため区では、平成30年3月に策定した世田谷区不登校対策アクションプランの中でほっとスクールの充実を掲げ、区内3か所目になるほっとスクール「希望丘」を平成31年2月に開設した。一方、ほっとスクールの子供の出席率は5割程度となっており、効果的な学習支援、多様な体験活動、また人材の確保などが課題で、民間のノウハウや人的ネットワークの活用など、ほっとスクールの充実を目的に運営業務を民間団体などに委託した。
 資料の2番、ほっとスクール「希望丘」の位置付けと運営方針である。まず、(1)位置付けとしては、ほっとスクール「希望丘」は、既存のほっとスクールと同様に不登校児童生徒の「心の居場所」として安心して過ごすことができ、日々の友人らとの関わりや集団生活を通じて社会性や協調性を育むことを確保しつつ、不登校児童生徒の社会的自立支援のため、次の2つの新たな取組を展開している。まず、1、基礎的な学力の定着を図るため、指導体制を整えるとともに、全ての教科に対応した内容が提供できるICT機器を活用するなど効果的な学習支援を行うこと。2、社会参加に向けて新たな一歩を踏み出すため、自分の適性を発見し、自己表現する力や社会性を身に付けるための取組、魅力的な体験プログラム等を開発・実施するにしている。
 続いて、3番目の運営方法であるが、先ほど申し上げたとおり民間委託をして、委託内容としては、1枚目の裏面に、ほっとスクールの運営業務、施設管理業務、その他業務の実施ということで、事業者の方はプロポーザル方式で選定した。選定に当たっては、資料の4番のとおり、運営体制や学習支援、在籍校との連携、進学に向けた支援、実績等の観点から選定した。選定の結果、30年余りにわたってフリースクールを運営しているNPO法人東京シューレさんにお願いすることになった。主な提案内容は、安心して過ごせる居場所とするための静かに過ごす部屋と活動に取り組む部屋の設定、子供によるミーティングで過ごし方のルールや活動について話し合う場の設定と、子供を中心としたイベントなどの企画・実行、不登校を経験した若者や様々な職業の人と接する機会の設定などを提案している。運営については、5番の記載のとおり、運営概要は既存のほっとスクールと同様となっており、運営体制については、こちらに記載のある業務責任者、学習指導担当、相談業務担当など、その他ボランティアなどで子供たちの支援を行っている。必要経費については概算となっているが、6番に書いてあるとおりになっている。配付資料の最後のところに「きぼうがおかニュース」を添付している。3月現在、体験者数は50名近くとなって、毎日30名弱の子供たちが通ってきている。そして、選定に当たり提案を頂いた子供たちのミーティングについては毎週月曜日に行われている。子供たちが主体的に活動するプログラムとして、実験、お料理、スポーツ、プログラミング、社会、漢字などの時間を設定することが決まっている。具体的な取組については、こちらのニュースの裏面にあるが、実験では顕微鏡で花粉を観察したり、お料理の方では予算を考えて予算の範囲内で買い物をして、自ら購入した食材で料理をするなど様々な教科の学びの体験活動となっている。また、地域と連携として、同じ複合施設内にある青少年交流センターとの連携も期待している。希望丘複合施設の各施設概要となっているが、青少年交流センターは同じ建物の3階にあり、運営は委託となっている。現在、子供たちの様々な体験や経験のためのはじめの一歩として、青少年交流センターの調理室を使わせてもらうことができた。まずは子供たちの前に職員間が連携し、お互いを知る仕組みが始まっている。そのほか、区の教育委員会が提供しますタブレット教材を使った学習、ほっとスクール合同スポーツ大会などを計画していただいており、そして既存の2つのほっとスクールとの合同会議の定期的な開催を通じ、ほっとスクール全体の充実に取り組むこととしている。
 最後に、今後の取組の方向性と不登校対策である。まず、区内の不登校の子供たちは増加傾向にあり、現在600人を超えている現状を踏まえ、学校内外の支援、家庭・保護者への支援など様々な課題がある。このため、世田谷区では令和3年度に「世田谷区教育総合センター」を開設予定で、そのセンターの1つの機能として教育相談・不登校対策機能を掲げている。ほっとスクール「希望丘」については、開始をしたとはいえ入室はこれからとなっており、様々な取組については、今後検証することになると思う。そもそも希望丘については、子供の人数もほかのほっとスクールよりも多いことから、在籍校との連携であるとか、関係機関との連携の在り方、東京シューレさんから御提案いただいている個々の子供の年間・学期ごとの個別学習計画、フリースクールでの豊かな経験とノウハウを教育支援センターとしての機能へどのように活用していくかなどを検証・検討しながら、世田谷区教育総合センターの教育相談・不登校対策機能の1つであるほっとスクールの充実に今後つなげていければと思う。
【委員】  それでは、ただいまの報告に関して、何か質問があればお願いする。
【委員】  3か所の施設間で子供の移動は可能か。要するにここが合いませんでした、こっちに移りたいですという。
【世田谷区】  通学区域は特段設けていない。3か所ごらんいただいて、それぞれ規模も雰囲気も異なるということを御案内申し上げて、それで保護者の方、御本人に現場を見ていただいて考えていただくということにしている。その後、ほっとスクールの通室先を変えるという御相談についても柔軟に応じている。
【委員】  感想と意見を、当事者の一人でもあるので話したい。まず、公と民の連携ができて、私たちがプロポーザル方式で手を挙げたのは、この確保法ができて、必ずしも学校復帰を目指すのではないと、もっと広く捉えて社会的自立の応援ということで手を挙げさせていただいた。この場所は元中学校の跡だが、複合施設としては様々な施設があって、それも活用していいよというところで、大変すばらしい施設ができている。今、全国で廃校などがいろいろ出ているが、このような使い方ができるモデルになると思う。それから、始めてみて、親とお子さんが喜ばれている。大変活気があって元気がいい。特に親の方で喜ばれているのは、1つは子供が伸び伸びとやってうれしいということ以外に大きいのは無料であるということ。フリースクールもいいけど、フリースクールに行くのにはとてもお金の点で不安とか難しいとかある中で、こういった場所があるということが大変ありがたいということと、もう一つ、私学関係の方々もいいとなっている。これが世田谷区の進んだところだと思う。大体のところは公的な適応指導教室関係というのは、私学はだめとなっていることが多い。名古屋もオーケーですよね。だけど、ほとんどそうでない。私たちは北区にあるフリースクールですけど、北区はまだである。検討しようにはなっているけど、それが世田谷区では私学もいいとなっているので、私学関係の人が本当に泣いて喜ばれる。公、民でこれからやっていくことが増えると思う。それは公も民もないわけだから、子供や親にとっていいことをやっていけばいいので、非常にいい方向ですけど、これまでやってきた文化というか考え方というのは、やっぱりそれぞれの独自性があってちょっと違う。やっていきながら、いろいろ課題を検討したり融合していく部分があったり、そこに意味があるのかなと。私も時々委託事業と下請事業ってどう違うのかと思いながら、これも検討することかなというふうに、それが多分、日本のあちこちで起きていく、そのことが子供にとってどうなんだろう、保護者にとってどうなんだろうというふうに考えていくわけだから、非常に意味があるというふうに大変評価している。ただ、1個私がここで言いたいとしたら、きょう、世田谷区の発表があるのを知らなかった。ここに来て、えっと思って、それで施設長に電話した。「話あった?」と言ったら、「いや、知りません」ということで、連携なら文科省からでもいいし、世田谷区からでもいいから、きょうやるよっておっしゃっていただければ、私どもからの資料も用意できたのにというのが1個言いたい。
【委員】  時間もちょっと押しておりますので、ほかにあえてという方がいればお願いしたい。
【委員】  相談業務の関係で、例えば教育委員会の方からカウンセラーを派遣したりとか、そういうことはされているか。
【世田谷区】  ほっとスクールの方にということか。
【委員】  希望丘さんの方で、今ここで見ていると、大学院生とか卒業生、あるいはボランティアとかということで相談業務が挙がっている。例えば1つのメリットとすれば、教育委員会からそういう人材派遣もできるが、そういうことまでされているのかどうか。
【世田谷区】  特にこの希望丘さんについては、心理職の方についても常勤で配置をしていただきたいということで、学習担当と相談担当の担当者を置いていただくというお願いをしている。教育委員会でのフォローとしては、今のところはそうした形でシューレさんの方で体制をとってやっていただいているという形態をとっていて、必要に応じてこちらの方は外からのフォローという形をとっている。
【委員】  この書き方がそういう印象を与えたかと思うが、フリースクールのスタッフ、それからここに書いてある専門の勉強をしてきた人たち、それから私たちが入って相談等、こういった居場所づくりは裏表で必ず必要なことだと思うので、私どもが責任を持って引受けながら、区のいろいろな応援があったらそれを活用したいとなっている。
【委員】  続いて、次に西濃学園からお願いしたい。
【西濃学園】  私どもの西濃学園は岐阜県の揖斐郡の山奥にある、学校法人西濃学園中学である。私は、昭和50年代、高校の教師を務めていたが、学校に行きたくても行けないといった、当時は登校拒否と言われる生徒たちと出会ってきた。その原因は甘えからだという主張も根強くあったが、実際悩んでいる生徒たちと寄り添ってみると、必ずしも甘えだけと言い切れず、一人一人に整理していかねばならない問題があると感じた。そして、出席日数など超えると留年して、もう一度やり直そうと指導しても、ほとんど退学した。当時は現在のように通信制高校やフリースクールが少なく、行き場所がなかったが、高校は卒業したいといった強い希望を持っていたのも事実。私は一人一人の生徒たちを理解した学校ができないものかと考え始め、地元の企業の支援を受け、廃止になったゴルフ場のクラブハウスにフリースクールを創立した。そして、その地域の過疎化で廃校になった小中学校を町からお借りし、学校法人西濃学園中学校を設立した。不登校で悩んでいる児童生徒たちにとって、生徒募集には困難を極めるが村落共同体の中で地域の方々と共に生活することが大切と考えている。最初の写真のような山間部で教育活動を行っている。
【西濃学園】  資料の上の方の日本地図をごらんいただきたい。不登校特例校の1つとして、西濃学園が報告をすることになったが、不登校特例校は全国に12校ある。不登校特例校と一口に言っても、そこでは多様な教育が行われている。しかし、どの学校も成績を出したり、卒業資格を取ることができればいいということに終わらず、子供たちが今をどう過ごすことができれば将来の幸福につながるか、そして、社会の幸福につながるかという目線で取り組んでいる。それでは、同じページの下の図、西濃学園の現状の取組について紹介する。西濃学園は示したように、この3つを柱に学校の活動を行っている。西濃学園では子供たちが人とつながることができて、そして社会とつながっていける、つまり、生きていけるという手応えを感じることができることを目指している。そのための3つの柱がある。それぞれの柱を基にした不登校特例校としての科目もこの図の下に科目として示したが、併せて紹介したい。次のページを上の方から見ていただきたい。「地域」という1つ目の柱。西濃学園は全寮制の学校で、全国から子供たちがやってくる。つまり、地域から見れば、よそ者の学校だし、よそ者の子供たちではあるが、その垣根を超えて共同体に組み込んでくれた。多様な人がつながり合い、共に生きていけると身をもって学ぶ。地域という柱を生かした不登校特例校としての独自の科目は「コラボレイト」と言い、コラボレイトとは、異なる他者が共に働くという意味である。写真で紹介できるのは一部であるが、草刈りや揖斐川クリーン作戦、揖斐川マラソンなどのボランティア活動がある。また、お祭りでみこしを担いで村を練り回ったり、運動会や文化祭を共催で行うなど、地域の様々な社会活動に携わらせてもらっている。いろいろな人とつながりながら自分も場を担う経験を積み、社会とつながる経験を重ねる。また、地域に生きる人たちについて学ぶ地域学習という時間もある。このような地域と共に作っていくコラボレイトという科目を年105時間行っている。2つ目の柱は「教育」である。不登校特例校としての独自の科目にはリカバリーという、左上の写真にあるが、リカバリーという時間を週に1時間設けている。生徒たちが学校へ行っていなかった時期や、学校へ行っていても学び方がうまくかみ合わず取りこぼした内容について、それぞれの進度とペースで個別や小集団で学習をしている。また、西濃学園では、授業のためには生活が安定していることが欠かせない、生活こそ学習の土台だと考えて、原則寮生活で学校生活を送ることを勧めている。次のページの上に寮生活の様子を記している。寮生活は大きな教育の場になっている。昨年、西濃学園では社会に参加できるようになるために、例えば生活管理のスキルであるとか、基礎学力のスキル、精神安定のスキルなど必要と思われる10のスキルを設定して、過去の卒業生全員を対象に、卒業時にどのようなスキルを身に付けることができたか分析した。すると、寮生と通学生では全てのスキルにおいて寮生の方が高かったという結果が出た。寮生活を経験することは、将来の社会参加のお役に立てると考えている。また、西濃学園の特色ある教育の1つに夏山登山がある。全職員と全生徒が3泊4日で北アルプスに登り、体力別にコースを分けているが、体力のある生徒は奥穂高や槍ヶ岳に挑戦する。夏山登山では命の危険にもつながる緊張感の中で、いつも以上に互いに傷つけ合わないこと、思いやりを示し合うことを意識したり、協力し合う。でも、協力し合いながらも、自分の道のりは自分で全うしなければならないという厳しさに挑戦する。全うしたときの達成感や自信はかけがえがなく、やり遂げたときの喜びや充実感はほかでは味わえないもので、西濃学園の生きた教育の大事な活動となっている。夏山登山は今年で10年目、だから10回目の挑戦になる。
 3つ目の柱は「臨床」である。教育の下の写真だが、不登校特例校としての独自の科目はライフ・プランニングという名前を付けて、自分も他者も大切にするコミュニケーションや感情のコントロールを学ぶ時間を週に1時間設けている。また、臨床心理学の専門家が専任で複数おりチームで動くことができること、全生徒にカウンセリングの時間を設けていること、子供の特性把握においてリスクなど臨床心理学の手法を教育に取り入れていることも大事な臨床の活動である。しかし、それに終わらず、職員みんなが教育の捉え方だけではなく、臨床心理学の捉え方を統合して人の存在の意味や成長について広く多様な捉え方ができることを大事にしているという意味で柱になっている。できなかったことができるようになる、右肩上がりの成長だけに意味があるとはせず、できないことに豊かに付き合えることも大事な生き方で、それぞれ子供たち一人一人が社会で生きていけると実感できるような価値観やスタイルを共に考えることを大事にしている。また、担任制はあるが、一人一人の生徒に職員全体がチームで関わっており、職員の集団の在り方が生徒たちの集団の在り方を作るという考え方をはじめ、人と人との関係において常に自分を、そして自分たちを見つめるというベクトルを大事にすることも臨床から学ぶところである。
 それでは、次のページ、このような柱で教育を行う中で、2年半ほど前から自発的に生徒の間で生まれた活動がある。自主清掃で、寮生活で夜眠るまでに自分の持ち場を決め、朝起きてから朝のホームルームまでの時間のどこかで自分たちの生活や学習の場をきれいにするという活動である。自分の生活リズムを作るために始めたという生徒もいるし、先輩に誘われて始める生徒もいる。しかし、続けていくうちに、これまでは誰かがきれいにしてくれていたからきれいなところで学べたという当たり前のことに気付き、感謝が生まれる。そして、自分も人も気持ちいいとうれしいし、一人ではなく人と一緒に生きているということに気付く。自主清掃を途中でやめ、また再開した生徒がいたが、一人でゆっくり寝ているより、みんなと掃除をやった方が気持ちいいし、自分もすっきりするからと言っている。持ち場を担って人と共に生きることのできるうれしさ、これは人間の喜びの1つと思うが、そんな体験が自主清掃にはある。このような活動が生まれる場であることをうれしく思う。
 では、次に課題と展望に移るが、課題は大きく3つある。自主清掃の1つ下のパワーポイントのスライドを見ていただきたい。これは西濃学園中学校の時間割である。課題の1つは、不登校特例校という制度をもっと自由に活用できないかという思いである。不登校特例校の申請書類では削減したところを補う工夫を示さねばならず、その基準がちょっと厳しかった印象があった。この時間割を見ていただくと分かるように、結構詰め詰めで入っていて、Aという部分を省いて、不登校生徒には大切だと考えるBという活動を入れたカリキュラムを作ったとしても、どこかでAの趣旨や狙い、目標内容というものを組み込んで達成していないとならず、すると結果、過剰な活動量となるか、Aとほとんど変わらないBという活動になる。課題からの展望ではあるが、不登校特例校という制度がより使い勝手のいい制度になるともっと特例校が増えて、生徒が自分はこういう教育を受けたいと選ぶことができるような多様な教育環境が可能となっていくといいと思う。
 2つ目は、ホームエデュケーションをより豊かなものにしなければならないという課題である。これは東京シューレさんをはじめ、いろいろな学校の取組から更に学ばせていただかなければならないところであるが、1つの学校で寮生活もホームエデュケーションもという幅広いカバーは難しいのも現状である。ここでも様々な特例校が増えて、互いに連携し合えて、うちの教育よりもほかの特例校さんの教育の方が適している生徒だなと分かったときは、互いに行き来しやすいような、そのような教育環境も魅力的な展望だと思う。続いて、重複するところもあるが、平成29年より不登校特例校担当者連絡協議会に出席の機会を頂いた。そこで不登校特例校全体の特色ある教育について報告され、意見を交わし合う機会を得たが、更にそれぞれの課題について共に考え合い、意見を交換し、深く検討していく場を作りたいと考え、本年度は私どもが主体となり開催したいと文科省にお願いをしているが、是非そういう会を定例化していただければと考えている。私どもの実践と研究は学校という存在の上で成り立っている。私どもは、まず私立学校である学園の運営が安定することが第一と考えている。公的な機関からの支援も重要であるが、まず、学園独自の運営ができる生徒数の確保をしなければならないことは言うまでもなく、民間企業の支援に頼っているのも事実である。民間企業の方々が社会貢献されているという思いを更に深め続けていくために、公的な立場からもいろいろな御支援を頂ければ助かる。
【委員】  それでは、ただいまの報告に関して、質問があればお願いする。
【委員】  今の3つ目は全く私たちも賛成で、せっかく合同の連絡会議を文科省が開いてくださったのを継続することと深めるということが要ると思う。それは是非お願いしたいし、協力したいと思う。1番目に教育課程を自由にとおっしゃったことは、どのような教育課程を文科省に出したかということによるかと。お聞きしていると、私たちはもっと外して自由にやっていて、それはそういうものを届け出たからである。だからそのかげんで変えることもできると思うが、そこはどうか。文科省が何か枠をはめてきているわけではないのではないか。
【西濃学園】  削減した部分をどういうふうに補っているかということを示さなければならなくて。
【委員】  私たちは文科大臣が視察に来られた、去年。そのときも私たちはそういう説明をして、何の御指導もなく。だからどういうことなのか少し分かりにくいが、もっとできるのではないかと思う。
【西濃学園】  特例校が全部集まって、いろいろな学校の時間割ですとか、そういうカリキュラムを見せてもらったときに驚くぐらいで。
【委員】  公立と私立の違いもあるのかもしれませんので、そちらの方は文科省の判断になろうかと思うが、京都市でも最初は、特例校の制度ができる前、当時の構造改革特区を使って大胆にやろうということで、当時でも膨大な資料をもちろん出していますが、全体の授業時間数としては8割ぐらい、2割から3割減でやっていこう。あと理科と数学であるとか合科的な科目も作ったりとか、個々の子供たちに適した形での授業方法であり、形態でやっていこうということで、かなりその当時でも柔軟に認めてもらっている。特例校制度に移行して、よりそこのところは柔軟になっているとは思うが、基本的には削減した分をどう補うのかという視点ではない。私も直接聞いたわけではないので、そのスタンスに立つというのはちょっと違う、本来的ではないかなという気もするので、そこの趣旨が本当にそういうことで指導があったのかというのは、ちょっと微妙なところではないかと思う。
【委員】  文科省の方はどうか、その点に関して。
【事務局】  まず、全体として不登校児童生徒に適する形で教育課程の弾力化を求められた学校というのが不登校特例校だが、教育課程全体で、この部分を減らしたときに、その代わりに何を持ってくるか、自分の学校ではこういう課程を編成しますというものを出していただく。そこは全体的に教育の質が確保されているかどうかというところで判断をする。これから新しく特例校をつくろうとしているところが、もしかして同じ状況になっているという意味では横の連携、委員からも文科省が進めている取組を今後も継続し深めてほしいという話があったが、今、しているのは特例校だけの集まりであり、場合によっては、既に特例校になっているところだけではなく、考えているようなところにも何らかの情報が伝わるような仕組みというものが考えられるのではないかと思う。
【委員】  今このテーマってすごく重要なテーマだと思い、これまでフリースクールの問題がなかなか前に進まないと思うのは、公教育における義務教育の終了をどのように評価するかがずっと問題になっていて、そこの基準が明確でないので、とどまっているとずっと思っている。今、特例校の基準にしても、何をもって質が担保されたかという評価を誰がどのようにするのかというのが明確にならないと、きっと今後もやりにくいと思っているので、そこを是非明確化するような何らかの調査研究等を期待したい。
【委員】  具体的な数値で現在の在籍数が何人いるのかというのと、企業の支援があったということだが、保護者負担、実際の授業料なり入寮に要する経費、それは幾ら掛かっているのかというのを教えていただきたい。
【西濃学園】  本日現在で中学3年生まで27名いる。その間に体験といいまして、西濃学園へ実際に来てみて本当にやれるかどうかというようなことの期間を設けていて、それが今3名ほどおり、大体30名ぐらいで動いている。定員は1学年20名で県へ申請しているが、そこまでいったことはない。学費が一番の問題で、授業料が6万円で寮費が5万円である。全寮制でやりたい建前でやっているが、5万円の寮費が払えないと、だけどもうちの学園で勉強させたいと。比較的近いから通えるというようなお子さんと、どうしても寮生活はだめだけど、西濃学園で勉強したいという子に限っては、特別に通学制を認めざるを得ないということでやっている。
【委員】  民間が作られている奨学金制度とか、事実上そこが活用されるようなケースというのはあるか。
【西濃学園】  民間数社から創立のときから支援を受けているが、私も民間の代表に支援していただいているお金が奨学資金になるといいとお願いはしているが、それができない。今、それをうちに入れないと人件費、安いといえども、やはりかなり掛かるので、まだまだ赤字経営ですから、それを奨学資金にはまだ回せないというのが現状である。
 それでは、続きまして、トイボックスの方から説明をお願いする。
【トイボックス】  今回、池田市で15年運営しております廃校を活用した公設民営フリースクール「スマイルファクトリー」の取組について話をさせていただくが、教育内容については何度かこの会議でも発表しているし、ネットでも御関心ある方は見ていただけると思うので、主に教育機会確保法施行後の状況と課題、それを中心に話をさせていただきたい。資料4の2ページ目。自己紹介代わりということで、NPO法人トイボックス、最初は不登校対応のフリースクールというところから出発をしたが、地域の中で多様な課題に対応する担い手が圧倒的に不足しているという現状の中で、公だけではその課題に対応し切れないということから機能がどんどん拡大した。不登校対応以外に子育て支援であるとか、放課後の子供たちへの支援、相談活動、貧困の連鎖を防ぐための支援事業、障害のある若者の就労支援事業、それから福島県の南相馬市では待機児童対策ということで保育園も運営することになり、その中で、例えば不登校の子供のための場所ではなかったところへも不登校の子たちが通い始めてきているというところで、機能の垣根がなくなってきている。言い換えれば、選択肢が少ないので機能の垣根をなくさざるを得ないということも一方では言える。次のページ、スマイルファクトリーの取組で、このような形で廃校を活用して運営をしている。15年間やってきて、内容については、事例発表されている皆さんと共通の理念の部分が多いかと思う。ポイントとしては多様性を認め合い、絶対いじめを許さないという状況の中で、生徒一人一人に目が行き届く環境。それから、私たちの場合は公設民営という形の中で、原籍校と行ったり来たりができたりとか、あるいはこれは単なるやせ我慢ですけれども、池田市民であれば無料というような状況の中でやっているところで、通常の学校には通えないけれども、スマイルファクトリーには通うことができるというようなお子さんたちが常時100名ぐらい在籍をしているという状況である。その中で社会的な自立の基盤を作っているというところで、卒業生がスタッフとして働いていたり、あるいは教育委員会で活躍をしていたりというような状況も、15年たって生まれてきている。その次のページ、教育機会確保法の施行後の変化ということで、これもこの会議の中で何回もお伝えしているが、やはりこの法律ができたことで生徒たちの自己肯定感、モチベーションが明らかに高まったと、親も子も非常に明るく元気になったというのは明らかに見て取れる。それから、地域社会との連携が非常に取りやすくなった。地域社会からのまなざしが明らかに変わった。今まではちょっと怪しい感じのところというような見方もされていたが、子供たちに対して守り、寄り添うべき存在であることを地域が認識をしてくださっているということ。それから地域の方々が逆に子供たちに支えられているというようなことを言ってくださるような声も出てきており、非常に連携が取りやすくなっている。それが子供たちの自己肯定感の高まりということにもつながっている。それから、もう一つが、まだまだ十分ではない、全然足りないが、施行後、少し子供・家庭にとっての選択肢が増えたということも感じる。親御さんたち、子供さんたちの気持ちの変化という部分もあるだろうし、特に都市部では通えるところが少し増えているが、地方ではまだまだだと感じる。その中で、今も残る課題という部分は、一番が学籍の課題である。私どものフリースクールに一番近い学校で、現在10名以上が我々のフリースクールとダブルで在籍をしていて、行ったり来たりしている。それぞれ状況もニーズも全部違い、学校の方も対応に非常に苦慮している、かなり工夫をしてくださっているが、なかなか対応が追いつかず、もっと連携していかなければいけないと話している。それから、この会議の中でも話がたくさん出ているが、教育機会確保法がまだ浸透していないということによる学校や教育委員会の対応のばらつきである。まだまだ教育委員会の方で、例えば内申点が付きませんが、どうですかとか、あるいは進学するところがないですよというような、何のためのおどしかよく分からない状況が今も聞かれている。これだけ対応が追いついていないという状況の中で、一旦学校に行けなくなって傷ついてからでないと、その子の学ぶ権利を認めないという対応がいまだに存在しているというのは明らかに法の精神にも劣るゆゆしき事態であると思うので、これは早急に対応が必要であると、法の見直しということも含めて対応が必要であると感じる。最後に、子供たちの状況の多様化という中で、ますます丁寧な支援、もっと言うと個別支援が必要なお子さんたちが非常に増えているという状況がある。このお子さんたちについて、本当に学校の方でも対応がなかなか追いつかない、行政の方でも手が届かない、行き場がないお子さんたちについて、誰も取りこぼさない教育を作っていかないといけないというところで我々の方が対応するということになると、当然コストが増大する。その課題について、一時的にコストは掛かるけれど、早期に丁寧な対応をすることによって将来的な社会的コストを抑えることにつながるということをつまびらかにしていきたいという意図で、次のページ以降に、厚生労働省の予算で去年実施した調査だが、この調査結果を付けた。ちょっと長いので、また改めてお目通しいただければと思うが、昨年度は調査できる期間が短く、特に実績評価、成果評価のメイン要素が、出席日数がメインという形になったが、池田市の教育委員会と連携してフリースクールから学校復帰した後の通学状況についても追跡してデータをとることができた。必ずしも学校復帰をこちらの方でプッシュしたとか、あるいはそれを強要したということは全くないが、本人の意思で学校復帰したお子さんたちについて追跡のデータをとることができたという意味では、画期的な調査なったのではないかと考えている。今年度は、この事業をまた厚労省の方で続けることができればという前提であるが、出席日数以外にも教育相談の成果、教育相談の結果がどうなったかやあるいは私どものところに通った後の進路についても実績を図って教育の質のブラッシュアップにつなげていくような形を作っていきたい。以前に経済的支援をこういうフリースクールの子供たちが受けるには教育の質の保証をしていかないと、という議論があったと思うが、それについて何らかの参考になればという意味で添付させていただいた。また、これは資料を載せていないが、経済的支援の話の中で、公からの干渉とのバランスというような議論があったというふうに記憶しているが、私ども保育所を運営しているという中で、一例として、保育の世界で増え続けて対応し切れないニーズを支えるために、認可保育所とか認証保育所とかというような段階を作って、特に認証保育所は設立要件などが緩和されていて運営の自由度が高い代わりに、子供一人当たりの事業費を低く設定しているというようなことで運営をしている。フリースクールの質にばらつきがあるというような話もあったけれども、これも放置していたら、ばらつきも埋まらないと思うので、公と民が緩やかに関わるところから質の向上につなげてはどうかと考えたりもしている。もちろんこれはメリット、デメリットがある話なので、また皆さんと御相談の上、御提案できればと考えている。
【委員】  それでは、ただいまの発表に関して質問があればお願いする。
【委員】  報告については全く賛成。ただ、ちょっと評価のところについて、これを読んでいるわけではないからよく分からないが、登校日数とか出席日数が評価の軸になっているように見えるが、そこはどうか。
【トイボックス】  おっしゃるとおり。去年は厚労省事業であるということで、教育の分野と例えば言葉の使い方や考え方が少し違うところで、我々としてもじくじたる思いである。これがメインとなるのは本意ではないが、それよりも事業評価を厚労省予算でできるということを優先した状況がある。今年もしこれを続けることができれば、出席日数というのがメインというよりはプラスして、もっと教育内容を、あるいは子供たちの成長だったりとか、そういうものにスポットライトを当てるような調査にしていきたい。これが本当にかなり成果評価の世界の中でも教育ってとても難しいと捉えられて、なかなかデータ化がしづらいという中で、ここはお許しを頂き、長い目で見ながら、子供たちの教育内容の質を高めていくというところにつなげていくような成果評価の仕方というのをこちらとしても一緒に研究していきたいと考える。
【委員】  ほかにはどうか。
【委員】  私は公立学校の職員として伺いたい。原籍校がある以上、いろいろ連携をされていると思うが、主な連携はどのようなものかということと、あと子供たちのことを考えたら、私たちも共に連携しないとうまくいかないことがたくさんあると思うので、先生の方の学園、学校はどういう連携を希望されているというか、望まれているかを聞きたい。
【トイボックス】  今の連携の仕方としては、これは課題の部分とも重なるが、学校によって連携をかなり強くしてくださる学校と、今、池田市だけじゃなくて関西一円から通ってきているので、例えば距離の問題とかもあってなかなか連携がしづらい学校と、かなりばらつきがある。以前は学校側も遠慮をしていたというか、自分たちが行っていいんだろうかというような感じで問い合わせをしてこられたりとかであったが、現状を申し上げると、子供たちすごく喜ぶというか、やっぱり自分のことを見えないところでも考えてくれて、こうやって来てくれるというような、先生方に対して。特に自分の安全地帯であれば、案内するよ、くらいの感じで本当に歓迎していて、今では子供たち同士が「おたくの学校、対応いいね」とか、「ちょっとうちほったらかしなんだけど」みたいなことを話し、子供たちもそこは意識をしている。その中で、学校によっても学校の先生が、例えば一番近くの学校でいうと月に1回、こちらに尋ねてこられて、子供たちの状況を聞き、情報を共有したり、それからテストがどうしても原籍校で受けられないというお子さんについて、我々の学校に試験監督までよこしてくださってという学校もあれば、試験問題だけ預けて受けてくださいという学校もあったりと、それは校長先生とか学校の判断によるというのが現状である。一番近い学校、10名以上在籍しているという学校に関しては、かなり課題が強いお子さんもダブルスクールで通っており、逆に学校の側からもっと連携したい、例えば我々のところから学校復帰していくところの段階でも、我々のスタッフが一緒についていくとか、関わっていくとかいうようなこともできないかとか、あるいはケース会議の密度だったり、内容というのももっと深めていけないかというようなことが学校の側からも提案があるというような状況の中で、どういう連携が望ましいのかを模索している状況である。
【委員】  お尋ねで1点、特に福祉関係のノウハウとか、教育関係は乏しいのでなかなか、新しいこういう取組というのはすごいなと思うが、直接的に厚労省の事業を受けていこうという何かきっかけがあったのかと、それともう一つは、ちょっと別のところで、13ページ、14ページあたりで適応力、充実感、社会的スキルの向上という分析結果が出ているが、この種の分析というのは従前から継続的にされてきているのか。特に大学等との連携の下でされているのか。
【トイボックス】  この厚労省の事業を受けようと思ったきっかけは、直接的に申し上げてお金がないからである。これで事業費が出るということが1つと、それから我々の方で池田市と連携して15年事業をやってきているという中で、やはり税金を一部分使ってやっているものだから、しっかり実績評価をするというところでこのような話をいただき、中身としては、厚労省からの委託事業で慶應大学の伊藤健先生とか、あるいはファンドレイジング協会の方で成果評価という部分を委託として受けていただいている。
【委員】  それでは、続いて、たまりばから御報告をお願いする。
【たまりば】  それでは、「たまりば」の報告をさせていただく。私たち「たまりば」は、28年前から不登校支援をやっている団体であるが、公設民営の「フリースペースえん」は、間もなく16年になろうとしている。この中で、1ページ、認定NPOの「たまりば」としては、今、福祉分野の話もあったが、厚労省管轄健康福祉局の児童相談所3か所と連携した、大学生と子供のマッチングをする、あるいはグループ活動をする取組の委託とか、一番下の川崎若者就労自立支援センター「ブリュッケ」というような生保受給の29歳までのひきこもりの人の福祉的な支援というところも併せて行っている団体である。
 次のページ、条例を基にできたということ、今年子どもの権利条約30周年、批准25周年を迎えているが、これを基に川崎市では子どもの権利条例を作り、ここで、2ページの下ですが、公民協働で作ってきた。つまり、当事者の声を生かして作ってきた。これから公設民営が増えていく可能性の中で何が大事かというと、当事者の意見が届いているのか、当事者本人と親御さんの意見を聞いて、どんな施設をつくってほしいか、どんな施設がつくられては迷惑かということを、教育委員会からの委託を受けて、我々民間団体が調査をした結果できた。3ページの上、ここで市の関係者、学校関係、教育委員会、人権部局もみんな集まって不登校協議会を作り、所管したのは教育委員会内の生涯学習推進課である。ここで生涯学習推進課の職員から出たレジュメの文言が、いつでも、どこでも、誰でも学べる学校教育以外での学習権の保障である。つまり、私たちの取組というのは、学校教育にこだわらない生活からの学びをしていこうということで、2001年、18年前の段階から学校復帰にこだわらない生涯学習の視点に立った無料で通える不登校児童生徒のための学校外の居場所・学び場をつくろうとしてスタートした。夢パーク1万平米、3,000坪の敷地で2003年にオープンした。4ページ、ここからは子ども夢パークの外観、冒険遊び場エリアの写真。不登校児童生徒が朝9時から夜9時まで開いている夢パーク、年中ほぼ無休。月1回の施設点検しかないが、こういったスポーツ施設の中で、学校に行っている子も行っていない子も自由にスポーツができる。ごろごろ転がったり、勉強したり、ゲームをしたり、飲食もできる部屋がある。音楽スタジオがある。パソコンを使えるようになっている。そして、夢パークとしては2018年、一般利用者は年間9万人が利用するような施設の中で、スタッフ体制は、夢パーク10人とフリースペースえんに関わる12名という体制でやってきた。取組としては、冒険遊び場と同じ敷地内に不登校児童生徒の居場所があるということ、学ぶという輪っか、それから遊ぶという輪っか、そこにケアという教育と福祉を融合する、この3つの輪が、その中で作ってきた取組である。6ページ、ここからはさっと見ていただく。つまり、これはかつてのこの会議でも御報告したが、この取組が余り広がっていないようなので、こういった冒険遊び場の取組、やってみたいことに挑戦できる、禁止を持たない遊び場づくり、遊びと暮らしの主体を取り戻す。子供たちがいつの間にか消費者の役割ばかりになってしまった。全て遊具も含め、自分たちで遊具も作って遊ぶということ。火起こしをする、修理も自分たちでやる。この取組がユニセフを通じて注目されて、海外の講演に呼ばれるようになった。とにかく今、けがとか失敗を恐れて挑戦しない子供たちが増えてきた。その一方で、「0・100」タイプと言われるような完璧を目指す若者たちの生きづらさの中で、0か100かという中で生きづらさを抱えている。もっともっと日常の中で安心して失敗できる、これは学校教育現場だろうが、社会教育現場だろうが、家庭だろうが、そういったことが広がっていかないと子供たちの生きづらさは変わってこないのではないか。 五感を使って、群れて遊ぶ。快・不快を手に入れる。遊びというものが持っている力としての今はやりの非認知能力。数値化されない、人として生きていく力、目標に向かって頑張る、人とうまく関わる、感情のコントロールができる。こういった力を遊びを通して育んでいく必要があるのではないか。そして8ページ、そういった遊び環境が整備された中で、夢パークの中の「フリーススペースえん」、この現状に関しては、ここに書かれているとおりである。こういった120平米、ワンルームの中で生活空間、暮らしを取り戻すということで御飯を作って食べたり、学習したり、音楽活動したり、ゲームをしていたり、絵を描いたり、物づくりをしたり、こういった中で発達障害、知的障害、精神障害、身体障害、様々な障害の子を受け入れるというのが権利条例を基につくった施設である。適応指導教室ではこの部分が当時ウィークポイントであり、そこに光を当てなくてはいけないということで作られた。それから、適応指導教室が茶髪や金髪の子の受け入れをしていないという現状の中で、そのような子供を取りこぼしていく中で様々な、また二次的ないろいろな問題が起きてしまう。だからどんな子供も受け入れていくということを求めてつくった。そして、そこは当然無料でなくてはならない。それから、高校進学後も利用できるようにということで、内訳としては、先々月、3月の末にとうとう登録者数は小学生45人、中学生34人、高校生相当年齢の者が29人と増え続けている。ここが今、1つの大きな問題である。ここは後でまた課題として整理をしたい。9ページの上、この表は、一番右が昨年度だけれども、小学生が一番下45人、次が中学生34人、上が29人という、こういった定員30人で始まった不登校対策施設に対して数が増え続ける。その中で障害の手帳、診断名を持っている人の割合が39%まで広がっている。これをもっと年齢の高い人まで入れると5割を超える。小中高だけでもこのような診断を受けている人たち、つまり手帳を持っている、診断を受けた人たちが安心して受け入れてもらえるような公的な施設が不足している。私たちが基本理念に書いたように、教育長と話し込んだ結果、学校復帰を唯一の目的としないというところで教育長が新聞の社説に書かれたが、学校復帰だけではないということを表に出して作ってきた。その中に不登校はだめじゃない、不登校支援というのは、自分にとって意味がある時間だったと思えるような支援が大事なんだということを最初から訴え続けてきた。大丈夫の種をまこう。学校以外の学びの選択肢を作ろうということで、10ページ、毎日お昼御飯を作って食べる。これが大変大きな効果があると言い続けているにもかかわらず、こういった支援はまだまだ広がっていない。それから、カリキュラムに縛られるから生きづらさを生んでいるので、子供がやってみたいと思ったことにとことん光を当てられるような教育システムというか、そういったものを作っていく。でも、今何もできない、浮かばない、そういうときにはそれも保障していこうというのが私たちの取組である。個別の学習支援の中で、一人一人に合ったテーマで学習のやりたいことを掘り下げていく。それから、選択できる講座としては様々な、無料でもちろん選択できる講座を用意し、これは市から1円も出ていないですけど、NPOのつながりの中でいろいろなアーティストの人たちに来てもらって講座を開いている。それから、発達障害というのは、ここに紹介しようとした子は学校一の問題児だと言われた子ですが、多動で学校には不適応児だと言われた。でも、この多動な子に適応できていない学校教育の問題として捉えるべきではないか。困った子じゃなくて、困っている子なんじゃないか。この子は走り回りながら、この子の一番得意なところは何か探し続けた。私たちのような環境を整えていけば、教室という中での学校、不登校支援だけを考えている取組ではなく、その子たちが自由な自然環境の中で何が好きかということに光を当てていけば、この子の一番得意なところが見えてきて、こういった色を使うとおもしろいねというところが見えてきて、そこからこの子の可能性が広がり、大人たちがおもしろいね、おもしろいアーティストになるんじゃないのと声をかけている間に情緒が安定する。この子は高校から学校へ行った子だが、12ページの上、それを見に来たのが当時の文科大臣である。大臣はその場で、この取組を見ながら、既存の教育では収まり切れない子供たちが育っていく可能性がある。未来の学校の在り方のモデルの1つがここにある。このときに大臣は、ここに人と予算を付けたら日本で最先端の学校のモデルになるとまでおっしゃった。そして、未来のエジソン、アインシュタイン、未来のアーティストはここから生まれるんじゃないかというような記者発表をされた。ところが、こういった取組が果たしてどこまで、その後、文科省の中で、学校の在り方のモデルがあるとまで大臣が言ったことに対して、文科省がどういった広報、それに向けた取組をしてきているか。これが今問われていると思う。私たちのような取組が16年前から始まっていながら、まだまだ各教育委員会に広がっていかないのはなぜかとずっと考えている。過去16年間、本人が希望した場合、全て全員が学校出席としてみなされている。いつの間にか出席報告数が、毎月51通書かなくてはならず、小学校30通、中学校21通である。学校進学を希望した子はほぼ全員が高校に進学しているが、高校進学の場合、こんなふうに出席報告の負担が広がっている。それから、福祉部局との連携で、貧困の問題の中で文化的貧困、「ふつう」とか「あたりまえ」を手に入れられない。だから夏合宿、5泊6日八丈島に行っている。あとスキー合宿は2泊3日で行くが、こういったところに国や各自治体が支援をして、「あ、生きていく上でこんなおもしろいことができるんだ」というのを手に入れていけば、子供たちはそこから意欲を持って勝手にまた学校だろうが、社会だろうが出ていく。神奈川県での取組としては、学校・フリースクール等連携協議会を13年前から作っている。後でここをお読みいただきたいが、民間フリースクールが持っている力ということ、これをしっかりと行政は、先生たちは知らなければいけない。その裏のページ、14ページ、教育委員会から派遣されている。今年も女性の古典の先生が1年間ここで過ごし、高校の先生と子供たちが出会う。視察団は昨年170件、視察・見学、それから取材があった。間もなくドイツの視察団が文科省の外郭団体の関係から今年もやってきますけれども、様々な視察、去年1年間で韓国の15の自治体の市長がここを見に来て、これを海外に持ち帰っている。生きているだけでオーケーだよという、こういったことを伝えていこう。
今、課題1としては、先ほど108人まで小中高で入会希望者が増えている。受け入れ人数は30人のはずだった。これはどうするんだということで、昨年秋、市長と1時間半にわたって話をした結果、「えん」の上に2部屋増築するということで、今、設計業者も決まり、来年着工になる。それからスタッフ2人を加配することになった。とにかく入会希望者は後を絶たず、説明会の申込受付日、その日で20人の枠がすぐに埋まる。相談件数も多い。課題2、適応指導教室で小学生の受け入れがまだまだ進まない、結局私たちのようなところにあふれてくる。もっともっと適応指導教室が小学生を受け入れる。どうやったら子供が来られるような体制を作るかというところと連携が必要じゃないか。障害の診断を受けた子供たちが広がっているということ、これはうちでは無理だよと言われた。でも、うちには食事介助の必要な車椅子の子も来ていれば、統合失調症の人も来ていれば、様々な障害の子たちが一緒に過ごす。それは専門的に言うと無理だと言われてしまうが、カオスのようにインクルーシブな中で、混ざり合う中で子供たちが大変元気になっている。その中でこういった取組をまた一つ参考にしていただけたら、非行の子供たちもここに通ってくる。少年院、鑑別所を出たり入ったりしている子。それから、不登校支援のゴールが、通信制サポート校とか全日・定時制などの高校進学ということがゴールになってしまう。だけど、義務教育終了後の支援体制を本気で考えるところは、教育委員会。教育委員会はやっとの思いで不登校の子が高校につながった、サポート校につながった、定時制高校につながった、通信制につながった、そこを中退しないで済むようにどういう継続した支援ができるかということを本気で検討しないと、とりあえず高校を出た、あるいは中退した、その子たちが問題を先送りしただけで引きこもっているという大きな問題を抱えているのが日本社会だと思う。課題4、局長通知が出ているにもかかわらず、いまだにおどしのような学校復帰を、耳を疑うようなことをおっしゃる校長先生、教員が余り減っていないように感じる。これは文科省にも伝えたいことだが、教育委員会とか学校現場で是非この通知がどのように内容が周知徹底されているのか。本来、指導要領の解説書にまで記載されていると聞いているが、このことを知らない教員がこれだけ多いということ、これに対してのアンケート調査を実施してほしい。併せて教育機会確保法の認知度が学校現場でどれほど広がっているかということも知りたい。課題5、定期券の購入の仕方、いまだに知らない校長、教員が多くて、昨年あった校長の例で言うと、「定期なんか買えるの、そこへ行って、どこの学校がそんなことをやっているの?」と言う、いまだにこのレベルであるということ。それから、こういった出席報告が51通にもなって事務負担、郵送料等の負担が増加しているけれども、学校現場では最初の頃、この連携が始まった頃は、「すみません、フリースペースさんに行っているんだったら、いついつまでに御報告いただけるとありがたいんですけど」という、そういうところから始まったこの取組が、もう一方的に教員から電話がかかってきて、「あのさ、あしたまでにやってくれない。ちょっとさ、もっと実数ちゃんと書いてくれない」というような、全く上から目線で指示を出してくる教員がいたりして、これ学校の下請けとしてやり始めたことではない。一人一人の子供の最善の利益のために協力していこうという趣旨が伝わっていないということ、これは教員・管理職研修が必要ではないか。それから、課題6の中で、こういった公設民営がなぜまだまだ広がらないのか。そして広げようにも、指定管理者制度が2006年に作られたときの予算の算出根拠が、週4日月額17万円という市を退職した校長先生に払う金額と、これから若者がここを担っていく金額が同じわけがない。多くの退職金をもらってしっかりと収入を持っていた人の算出根拠で予算が策定されれば、これからここを担っていく若者たちが生きていくことができない。こういったことは、それでも大臣が見えたときに、「川崎市は頑張ってお金を付けたね」とおっしゃいましたが、本当に、先ほど世田谷区が頑張って、もう一歩上の金額を付けられているようですけど、こういったところが更に制度設計していく。そういうところに、最近こういった公的機関には競争入札でとにかく安ければいいということで企業体に任せようというのがいろいろな福祉事業にも広がりつつありますけれども、やはり基本的に子供の最善の利益は何かということをしっかり考えた行政職員がここにまなざしを持っていないと、この事業は結構危険な方向に行っちゃうんじゃないかなというのを感じる。私たちNPOのミッションである「子供を無理やり既存の制度に合わせようとするのではなくて、子供のいのちの方に制度や仕組みを引き寄せる」という、これを是非この会議から更に広げていけたらいいと思う。
【委員】  それでは、ただいまの御報告に関して御質問があればお願いする。
【委員】  今もう走っていって抱きつきたいような心境になって、ありがとうございました。本日、御発表いただいたところで、ものすごく危機感を持って聞いていたのが、学校を取り巻く環境が、これだけやわらかく子供たちの受け皿を作ろうとしている中で、学校が一体何をやっているんだというところが本当に浮き彫りになってきていると思う。旧態依然とした学校の取組が子供たちをここまで追い込んでいるにもかかわらず、外側が一生懸命それに動き、学校が全然ついていっていない現状をどうにか変えていかないと、委員が最後におっしゃっているとおり、子供のいのちの方に学校が全然引き寄せられていないような気がしてならない。ですから、最初に出たアンケートの結果ですけれども、相変わらず子供たちの現状とかけ離れたものを大人が代わって答えて、それを基に話し合いがなされることを考えていくと、ここを機に学校を抜本的に見直すような、子供のためになる取組をしていかないと手遅れになってしまうという危機感を非常に持っている。
【委員】  私はレジュメを持ってきているので、それを見ていただきたい。というのは、今週の木曜日に合同の議連が開催される。それはやっぱり確保法の3年で見直しということを踏まえて開かれるので、今までに聞いたところでは、この会議で出たものを文科省から議連に伝えるというのを聞いている。ですから、私は発言の機会がなくても、ここに8項目書きましたけど、これは出しているということをお伝えしたい。今、時間がないので、この中で特に、まず1番目、これは前回の会議のときにも申し上げたが、確保法ができ、基本指針に統一するように今までの文書の言葉を書き直すということを去年の7月11日に文科省の初中局長の方から話が議連であった。それから10か月たっている。この前にもそれどうなっているのかと言ったら、ちょっとよく分からないようなお答えであいまいだったので、もう一度、そこは非常に大事だと思うので、今、文言の統一についてはどうなっているんだということを質問しますのでお答えいただきたい。もしまだ進んでいないのなら、作業日程を示されたい。それから、2点目に、学校以外の重要性も認め、家庭で育つということも含めた子供の成長支援が幅広くなっているわけですが、でも経済支援については、はっきり言って解決していなくて、一方、10日のニュースで改正子ども・子育て支援法も入って、今、幼保無償化というのはかなり進みそうである。でも、不登校の子供たちというのは、憲法で小学生、中学生は無償とされている中の義務教育段階のことで、それで経済的な支援が一切なく親任せというふうになっている事態は、やはり早く解決しなければいけないということで、経済支援のことを真剣に文科省でも、いろいろな委員がおっしゃっていましたが、検討されたい。 それから、3点目にフリースクール等の機関の方の応援というのも、いつまでも機関にお任せみたいな感じで国がやっているところも、こういう確保法ができたから、そこを例えば教育機会確保支援交付金とか何とか名前を付けて、具体的な支援の検討をお願いする。それから、4点目は仕組みの問題で、さっきも仕組みの問題が出ていたが、親の就学義務の問題をもうちょっと進めたい。そして、ここに5、6、7とちょっと細かいことを書いてある。 8点目に、さっきも出ていが、最も感じるのは周知不足なので、私たち自身も努力している。だけど、もうちょっと国とか行政がこの確保法の周知を一生懸命やることで、子供や親たちが楽になったり、先生方も楽になったり、それから長期休み明けの自殺も防げると思うので、そこのところをお願いする。
【事務局】  まず、学校復帰を前提ですが、これはおっしゃるとおりで、基本指針においては、支援に際しては登校という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて社会的に自立することを目指す必要があると書いてある。それに対して、通知文等々に学校復帰を前提という言葉があるので、これは去年来ずっと私の方にも直接おっしゃられていますし、電話は受けていますけれども、課内ではもちろん検討している。ただ、いつもおっしゃられて、私も同じ回答で申し訳ないが、児童生徒課の中だけの議論では終わらない。当然のことながら初中局全体であり、文部科学省全体の議論になるので、そこは御理解いただきたい。ただ、日程をお示しということだけれども、これはこの会議の場でも先般、反対の懸念の御意見をお出しになられた委員もございまして、きょうは欠席されておりますけれども、そこをよく御議論いただいて、当然ながら私どもとして、昨年の局長の答弁も聞いて、引継ぎを受けているので、しっかりやっていかないといけない。他方で慎重論、懸念もありますので、そこはしっかり御議論いただいて。
【委員】  今の件に関しては、もちろん委員の方々がそれぞれいろいろなお考えがあるだろうと思うが、1つは、確保法の精神をどういうぐあいに尊重し生かし、行政に、政策に移していくかということが基本であるので、その線に沿いながら、委員の方々に御理解いただくということがまず必要だろうかと。ただ、ここで反対意見があるから、あるいは消極論があるからということだけで肯定、否定のバランスという問題ではなかろうかと私は思う。
【事務局】  確かに学校復帰が前提ということですと、もう完全に100%学校に帰るということですので、そういった意味では確保法の趣旨であるとか、基本指針の趣旨に合うのかというのは、当然御指摘のとおりだと思うので、そこはしっかり我々の方で引き取って、この場で御意見を頂戴し、我々としてもしっかり議論して検討していく。日程についてはまだお示しができる段階ではないということで御理解いただきたい。
【委員】  御理解できない。法律ができて、文科省としてはそれをいかに、そういう意味では実践していく、執行していくという立場にもかかわらず、ここで反対意見が出たからどうのこうのというのはちょっと違うのではないか。議員さんたちにもそれをおっしゃる。それから、議員さんからもそれはちゃんと検討して作業を進めるべきだということ、私たちの目の前で議員さんたちが事務局におっしゃっていました。そういう問題にも関わらず、ここでの意見がどうのこうのだからということではなく、子供たち、親たちに責任を持ってやっていただくということがあるので、この作業日程というのは何月何日という細かいことじゃなくてもいいが、今の姿勢では、去年からずっと、この前の3月もそうですけど、本気でやる気持ちがあるのかなと。ですから、今もやっていますけどってさっきちらっとおっしゃったんですけど、本当にやるんだったら、いつ頃までにどういうことをやりますよというような、そういうことをお示しいただきたい。
【委員】  いろいろな立場の方が参画されているが、委員の話を聞いても、私ら知らんこともたくさんある。情報量も違うということで、今回新年度に入って初めての会議であったので、この会自体の位置付けであるとか、スケジュールとか、当然そこから始まるのかなと思っていたので、いささかちょっとけげんな感じがあった。もともとスタートのときから極めて異例な形で、いわゆる立法作業とこの会というのは同時並行で、更には不登校とフリースクールが分かれて議論するという中で、参加者自体がそれぞれ、その時点時点で何を議論するのか余り明確にならないままに、今の話を聞くと、その点については既に何か議論があったかのような聞き取りをされているのであれば、私どもも一つ一つの問題についてクリアにポイントを絞って、就学義務の問題であるとか、あるいは個別学習計画の在り方であるとか議論した覚えはない。そういうところのスタンスであったら、私ら自身一人一人委員の参画されている意識も違うのではないかなと思う。きょう頂いたヒアリングというのも何のためにしているのか。この時点でヒアリングをするという意味はどこにあるのかという説明もなしに1時間にわたって話を聞いても、ちょっとわけが分からないというのか、今この時点で私たちは何をしようとしているのか。教育機会確保法が3年たって、具体的な議論をしようというのであれば、もうちょっとそこに的を絞った焦点であるとか、逆にその積み上げの上で立法作業が進むという形にもなっていないという中で、いろいろ苦労されてきょうの持ち方になっているというふうに推察はする。何らかの形でそれぞれの会議の冒頭なりに、あるいはスケジュール、進め方であったり、整理の仕方であったり、それをしていただく、責任があるのではないかと思う。
【事務局】  おっしゃるとおりだと思う。私の方でマネジメントといいますか、しっかりビジョンを示せなかった点については申し訳なく思いますし、御意見を頂きましたので、次回、資料を早めに送付する、あるいは論点を明確にして、これについて議論頂く。場合によっては先に御意見を頂戴し集めて、皆さんに紹介するというようなことも進め方として考える。それから、委員のおっしゃったスケジュールの関係だが、私の一存で答えられる問題ではないので、しっかり議論して、次回のこの会議の場でスケジュールをお示ししたい。それで御理解いただけますか。
【委員】  私も先ほどの意見と一緒だが、改めて学校復帰を一番目指さなきゃいけない学校をどう変えていくかということを私はきょうの会議で改めて認識した。その場合に義務教育をどう捉えるかということとか、そういったものを含めたときに、この場でこの法律自体を見直す意見をと言われたときに、きょうの発表を聞くと、その難しさを感じた。ただし、例えば自分自身は現場で働く者なので、最初にテストの受けさせ方だけで子供が不登校にならなくて済むかもしれないような意見もあったし、学校を変えていくという視点もあるし、今、学校に行けずに家にいる子たちをどう助けるかという、最終的に目指すところは、皆さん思いは同じだと思うが、義務教育となると、本当に憲法上の問題とか大きな問題を考えて、今の時代に合った子供たち、学校をどうするかということにもなる。
【委員】  いろいろな御意見が出ているが、もう一つ事務局の方にお願いしたいが、事前の方は、それはそれでいいとして、ここで出た議論、あるいは論点等がある。例えばきょうは、議事が実態調査で、ここから浮かび上がってきた幾つかの文部科学省に対する、あるいは事務局に対する御要望もある。例えば委員から出た問行調査の枠組みについて改めて検討しろと。問題の児童生徒の傾向、これについて、幾つかの理由があるが、あれではよく現場の対応、あるいは実際の対応が不可能だから、それも併せて検討してほしいといろいろな要望が出た。ただ、もちろんほかの論点もいろいろと報告の中から浮かび上がった。なぜ学校復帰が多いのかとか、あるいはいろいろな要望の中で、予算措置の問題、あるいは支援センターそのものが増えない理由は何かというようなところも論点で出てきながら、後の議論が展開され、皆さん方のヒアリングとも絡み合いながら問題点がクリアになってきた。それに関して、今後どういうぐあいに進めていくのかということも非常に大事なことであり、それを議論するための私は時間も欲しいと申し上げた。具体的にどう展開するのか、あるいはこの会議として何を提案していくのかということも非常に大事なところである。それに関して、今後ひとつ御検討いただきながら、とにかく2時間で足りないから3時間にしようとかいうようなことも前、基本方針を決めるときにいったことでもありますし、これも確保法の3年の見直しということもあるので、そういうところに向けて、この会議として何をすべきなのか、この議題1つを取り上げても、いろいろな問題点が浮かび上がる。意見の言いっ放しで終わっては、この会議、何の意味もないので、皆さん方の御意見をくみ上げて、事務局と我々とで共同作業を進め、子供たちの状態が良くなるようにと私も願っているので、是非とも御配慮を頂きたい。
【事務局】  承知。御指摘を多々お受けしているので、しっかり次回に向けて準備をし、また皆さまともやりとりをさせていただきたい。
【委員】  確認したいが、1番は3年で見直しとかじゃなくて、確保法ができた。できたら旧と違う。だから旧を直してということに対して態度があいまいなのでそれを言っているので、見直しの問題とちょっと違う。それは是非進めていただきたい。
【事務局】  別問題として捉えている。
【委員】  それは私も先ほど整理したように、御意見はそれぞれお持ちかもしれないけれど、その前提に法律が決まったということがあるという認識は我々共通して持っておかないといけない。
【委員】  それでは、ちょっと時間をオーバーしたが、皆さん方のいろいろな御協力できょうも、先行き一歩進めるかなというような期待を持っているので、事務局の方、よろしくお願いする。これで閉会とする。
【事務局】  それでは、以上をもちまして、本日の会議を閉会とする。

―― 了 ――

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