令和2年11月30日 児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)

2初児生第15号
令和2年11月30日

                                                                                                                                                        


各都道府県教育委員会指導事務主管課長
各指定都市教育委員会指導事務主管課長
各都道府県私立学校主管課長
附属学校を置く各国立大学法人担当課長
附属学校を置く各公立大学法人担当課長         殿
小中高等学校を設置する学校設置会社を
所轄する構造改革特別区域法第1 2 条
第1項の認定を受けた各地方公共団体の担当課長

 

文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
江口 有隣
(印影印刷)

                                                                                                                                        

                                                                                                                                                            

児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)



 平素より,文部科学行政に対する御理解・御協力を賜り誠にありがとうございます。
 標記については,これまでも自殺対策基本法(平成18年法律第85号)等に基づき,学校において,児童生徒の自殺予防の取組の充実に積極的に取り組んでいただいているところです。
 しかしながら,近年,自殺者全体の総数は減少傾向にあるものの,令和元年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によれば,令和元年度の児童生徒の自殺者数は317人であり,自殺した児童生徒数は高止まりしている状況にあるところです。また,人の目の届きにくいSNSを利用し,自殺願望を投稿するなどした高校生等の心の叫びに付け込んで,言葉巧みに誘い出し殺害するという極めて卑劣な事件も発生しています。
 また,自殺対策白書の資料でも指摘されているとおり,18歳以下の自殺は,学校の長期休業明けにかけて増加する傾向があります。特に,警察庁・厚生労働省の自殺統計によると,本年8月における児童生徒の自殺者数は60人で,前年同月と比較して約2倍,そのうち,女子高校生の自殺者数は22人で前年同月と比較して約7倍となっています。
 そのため,これらの時期にかけて,学校として,児童生徒の自殺予防について組織体制を整え,取組を強化することは,児童生徒の尊い命を救うことにつながります。特に本年は,5月27日付けで「新型コロナウイルス感染症に対応した小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における教育活動の再開後の児童生徒に対する生徒指導上の留意事項について(通知)」を各教育委員会等に対して発出したところですが,学校として,保護者,地域住民,関係機関等と連携の上,長期休業明けにおける児童生徒の自殺予防に向けた下記に掲げる取組を積極的に実施するようお願いします。
 なお,昨今,新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための配慮が求められていることに御留意いただき,感染防止対策を徹底した上で,必要な措置を行っていただきますようお願いします。
   貴職におかれては,下記の事項について御留意いただき,都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対して,都道府県にあっては所轄の学校法人及び私立学校に対して,附属学校を置く国立大学法人及び公立大学法人にあっては附属学校に対して,構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体にあっては認可した学校に対して,周知を図るとともに,適切に御対応いただきますよう御指導をお願いします。
 


    毎年,学校の長期休業明けにかけて児童生徒の自殺が増加する傾向があることを踏まえ,以下に掲げる取組を,学校が保護者,地域住民,関係機関等との連携の上,これらの期間において集中的に実施することが考えられる。
   
(1)学校における早期発見に向けた取組
   各学校において,長期休業の開始前からアンケート調査,教育相談等を実施し,悩みを抱える児童生徒の早期発見に努めること。また,学級担任や養護教諭等を中心としたきめ細やかな健康観察や健康相談の実施等により,児童生徒の状況を的確に把握し,スクールカウンセラー等による支援を行うなど,心の健康問題に適切に対応すること。学校が把握した悩みを抱える児童生徒や,いじめを受けた又は不登校となっている児童生徒等については,長期休業期間中においても,全校(学年)登校日,部活動等の機会を捉え,又は保護者への連絡,家庭訪問等により,継続的に様子を確認すること。特に,長期休業の終了前においては,当該児童生徒の心身の状況の変化の有無について注意し,児童生徒に自殺を企図する兆候がみられた場合には,特定の教職員で抱え込まず,保護者,医療機関等と連携しながら組織的に対応すること。また,児童生徒からの悩みや相談を広く受け止めることができるよう,自殺対策基本法(平成18年法律第85号)第17条第3項に定める「困難な事態,強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育」(以下「SOSの出し方に関する教育」という。)を実施するなどにより,「24時間子供SOSダイヤル」や,SNS等を活用した相談窓口の周知を長期休業の開始前において積極的に行うこと。
 (※)SOSの出し方に関する教育については,「児童生徒の自殺予防に向けた困難な事態,強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育の推進について」(平成30年1月23日付け29初児生第38号,社援総発0123第1号文部科学省初等中等教育局児童生徒課長・厚生労働省大臣官房参事官(自殺対策担当)連名通知)を参照。
 
(2)保護者に対する家庭における見守りの促進
   保護者に対して,長期休業期間中の家庭における児童生徒の見守りを行うよう促すこと。保護者が把握した児童生徒の悩みや変化については,積極的に学校に相談するよう,学校の相談窓口を周知しておくこと。その際,「24時間子供SOSダイヤル」をはじめとする電話相談窓口も保護者に対して周知しておくこと。なお,これらの各家庭における保護者による見守りについては,長期休業の開始前又は長期休業期間中における保護者会等の機会や学校(学級)通信を通じて,保護者に促すことが考えられること。
   
(3)学校内外における集中的な見守り活動
   長期休業明けの前後において,学校として,保護者,地域住民の参画や,関係機関等と連携の上,学校における児童生徒への見守り活動を強化すること。また,学校外における見守り活動については,教育委員会等の地方公共団体において,学校,警察等関係機関,地域の連携を一層強化する体制を構築し,取組を実施すること。特に,児童生徒が自殺を企図する可能性が高い場所については,これらの時期に見守り活動を集中的に実施することが有効であること。
 
(4)ネットパトロールの強化
   児童生徒によるインターネット上の自殺をほのめかす等の書き込みを発見することは,自殺を企図している児童生徒を発見する端緒の一つである。このため,都道府県教育委員会等が実施するネットパトロールについて,長期休業明けの前後において,平常時よりも実施頻度を上げるなどしてネットパトロールを集中的に実施すること。自殺をほのめかす等の書き込みを発見した場合は,即時に警察に連絡・相談するなどして当該書き込みを行った児童生徒を特定し,当該児童生徒の生命又は身体の安全を確保すること。

【参考】

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

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