平成26年7月1日 「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の改訂について(通知)

26文科初第416号
平成26年7月1日


各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各都道府県知事
附属学校を置く各国立大学法人学長   殿
小中高等学校を設置する学校設置会社を
所轄する構造改革特別区域法第12条第1項
の認定を受けた各地方公共団体の長


文部科学省初等中等教育局長
前川   喜平
(印影印刷)


「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の改訂について(通知)


 標記の件に関しては,平成23年6月に,初等中等教育局長通知「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について」で通知したとおり,万が一児童生徒の自殺又は自殺が疑われる死亡事案が起きたときに,死亡した児童生徒が置かれていた状況について行われる背景調査の在り方について,「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」の審議のまとめとして「子どもの自殺が起きたときの調査の指針」が取りまとめられ,これらの指針や通知を参考として,各地域において必要な対応を行っていただいているところです。
 その後,同会議においては,平成25年度より,平成23年の指針策定後の各自治体における運用状況や,いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)における重大事態への対処の規定等を踏まえ,背景調査の在り方について,必要な見直しを検討してまいりましたが,このたび,別添のとおり審議のまとめを行いましたので,送付します。
 今後,万が一児童生徒の自殺又は自殺が疑われる死亡事案が起きたときに,死亡した児童生徒が置かれていた状況について行われる背景調査の在り方に関しては,改訂後の指針を参考としていただくようお願いします。
  貴職におかれては,指針の内容及び下記を踏まえ,域内の学校及び学校の設置者において適切に背景調査がなされるよう御指導いただくとともに,都道府県・指定都市教育委員会教育長にあっては所管の学校並びに域内の市区町村長及び市区町村教育委員会に対して,都道府県知事にあっては所轄の学校法人及び学校設置会社に対して,国立大学法人学長にあっては設置する附属学校に対して,株式会社立学校を認定した地方公共団体の長にあっては認可した学校に対して,周知を図るようお願いします。
 なお,「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」では,子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)のほか,「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引)」及び「子供の自殺等の実態分析」に関しても審議のまとめが行われたところですが,これらに関しては,本日付初等中等教育局児童生徒課長通知「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議の審議のまとめ『子供に伝えたい自殺予防』及び『子供の自殺等の実態分析』について(周知)」を参考としていただくよう,よろしくお願いします。



(1)総論
背景調査は,「基本調査」と「詳細調査」から構成される調査であり,その後の自殺防止に資する観点から,万が一子供の自殺又は自殺が疑われる死亡事案が起きたときに,学校及び学校の設置者(公立学校の場合は設置する地方公共団体の教育委員会,私立学校の場合は学校法人,国立大学に附属して設置される学校の場合は国立大学法人)が主体的に行う必要があること。

(2)基本調査
基本調査は,自殺又は自殺が疑われる死亡事案について,事案発生(認知)後速やかに着手する,全件を対象とする基本となる調査であること。当該事案の公表・非公表にかかわらず,学校がその時点で持っている情報及び基本調査の期間中に得られた情報を迅速に整理するものであり,必ず実施する必要があること。

(3)詳細調査への移行の判断
学校の設置者は,学校から基本調査の報告を受け,詳細調査に移行するかどうかを判断する必要があること。調査組織が平常時から設置されていないような場合には,組織立ち上げには相応の時間を要することが多く,アンケート調査や聴き取り調査の実施の時機を逸する可能性もあるため,詳細調査移行を判断する際にあわせて,アンケート調査や聴き取り調査を,調査組織による詳細調査に先行して,緊急的に実施するかどうかを,学校の設置者において判断すること。

(4)詳細調査
詳細調査は,基本調査等を踏まえ必要な場合に,心理の専門家など外部専門家を加えた調査組織において行われる,より詳細な調査であり,事実関係の確認のみならず,自殺に至る過程を丁寧に探り,自殺に追い込まれた心理を解明し,それによって再発防止策を打ち立てることを目指すものであること。
自殺に至る過程や心理の検証には高い専門性が求められることから,中立的な立場の外部専門家が参画した調査組織で「詳細調査」を実施すべきであること。この調査組織の構成は,中立的な立場の外部専門家が参画した調査組織とすることが必要であり,この外部専門家の人選について,職能団体等からの推薦によるなど,公平性・中立性の確保が必要であること。
また,いじめ防止対策推進法に基づく機関などが設置されている場合,その活用を図ることが有効であること。
子供に自殺の事実を伝えて行う調査(子供に対する調査)を,遺族の了解及び子供・保護者の理解・協力を得て実施する場合,調査は可能な限り速やかに開始することが望ましく,また,調査結果の取扱い(どのような情報をいつ頃提供できるのか)について,調査組織において必ず実施前に,具体的な方針を立て,調査組織の意向を遺族に説明し,理解を求めること等が必要であること。また,アンケート調査結果は,遺族に提供する場合があることをあらかじめ念頭におき,調査に先立ち,調査の目的や方法,調査結果の取扱いなどを調査対象となる子供やその保護者に説明する等の措置が必要であることに留意すること。

(5)いじめが背景に疑われる場合
いじめが背景に疑われる場合,いじめ防止対策推進法により対応が義務づけられており,組織を設けての調査(詳細調査)は必ず行わなければならない。いじめ防止対策推進法及び「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成25年10月11日文部科学大臣決定)を踏まえた対応が必要であり,本指針を参考にしながら,法律に基づく措置が確実に行われるよう十分に留意すること。

(6)平常時の取組
学校においては,子供の自殺予防に関して平常時から理解を深めておくこと。学校の設置者においては,研修の実施や専門家の助言を得られる体制の整備や調査組織の設置など,万が一子供の自殺が起きたときの体制整備を平常時から行っておくこと。都道府県教育委員会においても,研修や人材確保,規模の小さな地域の支援等,必要な取組の推進に努めること。

(7)児童生徒の自殺等に関する実態調査
背景調査の結果等を踏まえ,「児童生徒の自殺等に関する実態調査」で求めている調査票を提出すること(平成23年6月1日初等中等教育局児童生徒課長通知「児童生徒の自殺等に関する実態調査について」参照)。その際,平成23年6月の通知で「詳しい調査」と記載されている部分は,本通知を踏まえ,「詳細調査」と読み替えること。

お問合せ先

初頭中等教育局児童生徒課

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