選挙権年齢等が18歳以上に引き下げられることに対応し、高等学校における政治的教養の教育を充実させるとともに、政治的活動等に対する適切な生徒指導を実施するため、関係する留意点等を示した「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について」(平成27年10月29日初等中等教育局長通知)を発出しました。
これに伴い、「高等学校における政治的教養と政治的活動について」(昭和44年10月31日初等中等教育局長通知)は廃止しています。
本Q&Aは、昨年10月の通知の発出の後、教育委員会等からの要請を踏まえ、現場が実際の対応を行うに当たって抱えている疑問にお答えするものです。
高等学校等の生徒の政治活動に係る具体的な指導の在り方等については、こうした内容を踏まえつつ、各教育委員会等において適切に判断していただきたいと考えております。
※以下、単に「通知」とする場合は、「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について」(平成27年10月29日初等中等教育局長通知)を指す。
A.学校教育法第5条にあるとおり、学校は設置者が管理するものです(設置者管理主義)。学校の設置者は、学校の物的管理(校舎をはじめとした施設の管理を含む。)や運営管理(児童生徒の管理を含む。)などに必要な行為をなし得るものと解されます。学校の学校施設を学校教育目的以外で使用することについては、法令の規定に基づく場合や、学校教育上支障がないと管理者の同意がある場合に認められます(学校教育法第137条)。
学校管理規則等により、その管理について委任を受けた学校長も同様に学校の物的管理や運営管理を行うことができます。
(参考)学校教育法(昭和22年法律第26号) |
A.例えば、以下のような場合が想定されます。
【学校施設の物的管理の上での支障があると認められる場合】 |
以上の例のような教育上の支障があると認められる状態を生じさせないよう、学校は、適切な施設管理や生徒指導を行う必要があります。
A.
(校則等について)
校則は、学校が教育目的を実現していく過程において、生徒が遵守すべき学習上、生活上の規律として定められるものです。判例上、学校は教育目的を達成するために必要かつ合理的な範囲内において校則を制定し、生徒の行動などに一定の制限を課すことができると解されています。
公職選挙法等の一部を改正する法律(平成27年法律第43号)(以下、「改正法」という。)の施行以前にあって、学校等においては、教育上の支障を生じさせないようにする観点から、校則等により、学校の構内における文書図画の頒布や集会の実施を学校の許可等にかからしめることとしている例があります。従来の判例においては、こうした校則等は認められているところであり、改正法の施行後にあっても、学校の構内に関して、この基本的な考え方は変わるものではないと考えられます。
(参考1)麹町中学校内申書事件判決(抄)(最高裁昭和63年7月15日) 表現の自由といえども公共の福祉によつて制約を受けるものであるが(中略)、前記の上告人の行為は、原審の適法に確定したところによれば、いずれも中学校における学習とは全く関係のないものというのであり、かかるビラ等の文書の配付及び落書を自由とすることは、中学校における教育環境に悪影響を及ぼし、学習効果の減殺等学習効果をあげる上において放置できない弊害を発生させる相当の蓋然性があるものということができるのであるから、かかる弊害を未然に防止するため、右のような行為をしないよう指導説得することはもちろん、前記生徒会規則において生徒の校内における文書の配付を学校当局の許可にかからしめ、その許可のない文書の配付を禁止することは、必要かつ合理的な範囲の制約であつて、憲法21条に違反するものでないことは、当裁判所昭和52年(オ)第927号同58年6月22日大法廷判決(民集37巻5号793頁)の趣旨に徴して明らかである。 (参考2)昭和女子大事件判決(抄)(最高裁昭和49年7月19日) 大学は、国公立であると私立であるとを問わず、学生の教育と学術の研究を目的とする公共的な施設であり、法律に格別の規定がない場合でも、その設置目的を達成するために必要な事項を学則等により一方的に制定し、これによつて在学する学生を規律する包括的権能を有するものと解すべきである。特に私立学校においては、建学の精神に基づく独自の伝統ないし校風と教育方針とによつて社会的存在意義が認められ、学生もそのような伝統ないし校風と教育方針のもとで教育を受けることを希望して当該大学に入学するものと考えられるのであるから、右の伝統ないし校風と教育方針を学則等において具体化し、これを実践することが当然認められるべきであり、学生としてもまた、当該大学において教育を受けるかぎり、かかる規律に服することを義務づけられるものといわなければならない。もとより、学校当局の有する右の包括的権能は無制限なものではありえず、在学関係設定の目的と関連し、かつ、その内容が社会通念に照らして合理的と認められる範囲においてのみ是認されるものであるが、具体的に学生のいかなる行動についていかなる程度、方法の規制を加えることが適切であるとするかは、それが教育上の措置に関するものであるだけに、必ずしも画一的に決することはできず、各学校の伝統ないし校風や教育方針によつてもおのずから異なることを認めざるをえないのである。これを学生の政治的活動に関していえば、大学の学生は、その年令等からみて、一個の社会人として行動しうる面を有する者であり、政治的活動の自由はこのような社会人としての学生についても重要視されるべき法益であることは、いうまでもない。しかし、他方、学生の政治的活動を学の内外を問わず全く自由に放任するときは、あるいは学生が学業を疎かにし、あるいは学内における教育及び研究の環境を乱し、本人及び他の学生に対する教育目的の達成や研究の遂行をそこなう等大学の設置目的の実現を妨げるおそれがあるのであるから、大学当局がこれらの政治的活動に対してなんらかの規制を加えること自体は十分にその合理性を首肯しうるところであるとともに、私立大学のなかでも、学生の勉学専念を特に重視しあるいは比較的保守的な校風を有する大学がその教育方針に照らし学生の政治的活動はできるだけ制限するのが教育上適当であるとの見地から、学内及び学外における学生の政治的活動につきかなり広範な規律を及ぼすこととしても、これをもつて直ちに社会通念上学生の自由に対する不合理な制限であるということはできない。 そこで、この見地から被上告人大学の前記生活要録の規定をみるに、原審の確定するように、同大学が学生の思想の穏健中正を標榜する保守的傾向の私立学校であることをも勘案すれば、右要録の規定は、政治的目的をもつ署名運動に学生が参加し又は政治的活動を目的とする学外の団体に学生が加入するのを放任しておくことは教育上好ましくないとする同大学の教育方針に基づき、このような学生の行動について届出制あるいは許可制をとることによつてこれを規制しようとする趣旨を含むものと解されるのであつて、かかる規制自体を不合理なものと断定することができないことは、上記説示のとおりである。 |
(生徒に対する懲戒について)
生徒の懲戒については、当該懲戒が学校の教育目的の達成の観点から「必要かつ合理的な範囲」のものである必要があります。裁判例には、生徒の懲戒に当たり、懲戒に値するかどうか、いずれの懲戒処分を選ぶべきかを決するには、行為の軽重のほか本人の性格、平素の行状等諸般の要素を考慮する必要があり、これらの判断は学校の合理的裁量に任せるのでなければ適切な結果を期し難いとしたものや、「政治活動を理由に欠席した生徒を、学校が正当な理由のない欠席として懲戒処分することは政治的活動の自由を侵害することにはならない」としたものがあります。
なお、学校としては、あらかじめ、生徒の懲戒の基準について生徒や保護者に周知を図り、家庭等の理解と協力を得られるよう努めることが重要です。また、校長及び教員は、実際に懲戒を行うに当たっては、懲戒の手続等について定めた学校管理規則や校則等の要件を踏まえ、適正な手続を経るようにすることにも留意が必要です。
(参考1)教授会流会学生放学処分事件判決(最高裁昭和29年7月30日) 学長が学生の行為をとらえて懲戒処分を発動するに当り、右の行為が懲戒に値するものであるかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決するについては、当該行為の軽重のほか、本人の性格および平素の行状、右行為の他の学生に与える影響、懲戒処分の本人および他の学生におよぼす訓戒的効果等の諸般の要素をしんしやくする必要があり、これらの点の判断は、学内の事情に通ぎようし直接教育の衝に当るものの裁量に任すのでなければ、到底適切な結果を期待することはできない。それ故、学生の行為に対し、懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶかを決定することは、この点の判断が社会観念上著しく妥当を欠くものと認められる場合を除き、原則として、懲戒権者としての学長の裁量に任されているものと解するのが相当である。 (参考2)三里塚闘争参加生徒停学退学処分事件判決(仙台高裁昭和54年5月29日) 懲戒処分のうち退学処分は、生徒の身分を剥奪する重大な措置であるから、退学処分の選択は当該生徒に改善の見込がなく、これを学外に排除することが教育上止むを得ないと認められる限りなされるべきものであり、学校教育法第11条の規定をうけた同施行規則第13条第3項が特に退学処分について処分事由を列挙しているのは右の趣旨を明らかにしたものと解せられる。そこで学校長は退学処分を行うにあたつてはその要件の認定につき他の処分に比較して特に慎重な配慮が要請されるのであるが、学校長が具体的事案について当該生徒に改善を期待できず、これを学外に排除するのも教育上止むを得ないものと判断し退学処分を選択した場合には、右学校長の判断は社会通念上合理性を認めることができないようなものでない限り、右処分は学校長の裁量権の範囲内でなされたものとしてその効力を是認すべきものである。 (参考3)三里塚闘争参加生徒停学退学処分事件判決(最高裁昭和58年4月21日) 原審の確定した事実によれば、右第一次処分は、上告人が、成田新国際空港の建設に反対しいわゆる三里塚闘争に参加する等のため、昭和46年8月30日から9月21日までの間に10日の無断欠席をしたことが、D高等学校処罰内規4項にいう正当な理由のない欠席にあたるとしてされたものであるというのであるところ、高等学校の生徒については、学校当局において授業への出席を要求し、これに従わないで正当な理由がなく授業を欠席した場合には、これに対しその規律権に基づく処分をすることができるものというべきであり、また、生徒が政治的活動を行うために無断で授業を欠席することが正当な理由のあるものとはとうていいうことができないから、これと同趣旨の見解に立つて第一次処分に違法はないとした原審の判断は相当というべきであり、原判決に所論の違法はない。所論は、また、(中略)右第一次処分は、上告人の正当な理由のない無断欠席を理由としてされたものであつて、政治的活動をしたこと自体を理由とするものではなく、また、前記のように生徒が授業に出席することを要求されている以上、その反面として、授業を欠席して右授業時間に他の行動をする自由を拘束されることとなるのは当然であつて、そのためにその限度で政治的活動をすることができなくなつても、これをもつて政治的活動の自由に対する侵害ということができないことは明らかであるから、右違憲の主張は、その前提を欠くというべきである。 |
A.「デモ」参加の打合せは、通常は、政治的活動等に該当すると考えられます。このため、放課後、休日の空き教室の使用を許可するか検討するに当たっては、学校施設の目的外使用として適切かを、学校管理規則等に沿って御判断いただくことになります。
その際は、通知にあるとおり、学校施設の物的管理の上での支障、他の生徒の日常の学習活動等への支障、その他学校の政治的中立性の確保等の観点から教育を円滑に実施する上での支障が生じないよう、御判断いただくことが必要です。例えば、暴力行為を伴う活動を行っている団体に所属する者が参加するとの情報が寄せられるなど、学校施設の物的管理の上での支障を来すおそれが高い場合や安全が確保できない場合などは、不許可とすることが考えられます。
A.Q1のとおり、学校教育法は、設置者管理主義をとっており、学校の設置者は、学校の物的管理(校舎をはじめとした施設の管理を含む。)や運営管理(児童生徒の管理を含む。)などに必要な行為をなし得るものと解されます。
このことや、学校の状況等を踏まえ、学校教育の目的の達成の観点から「構内では禁止する」と校則等で定め、生徒を指導することは不当なものではないと考えられます。
A.例えば、以下のような場合が想定されます。
【違法なものと認められる場合】 |
A.例えば、以下のような場合が想定されます。
【生徒が政治的活動等に熱中する余り、学業や生活などに支障があると認められる場合】 |
A.お尋ねについては、学校の状況に応じて区々(まちまち)であり、一概に申し上げることは困難ですが、一般論としては、例えば、校外の交友関係等により、学校の教育活動に支障を生じている又は生じることが明らかに予見されている場合は、教育上の観点から必要な指導が行えるよう、具体的な事実の把握が必要になる場合があると考えられます。
A.放課後、休日等に学校の構外で行われる、高等学校等の生徒による政治的活動等は、家庭の理解の下、当該生徒が判断し行うものですが、このような活動も、高等学校の教育目的の達成等の観点から必要かつ合理的な範囲内で制約を受けるものと解されます。
したがって、高校生の政治的活動等に係る指導の在り方については、このような観点からの必要かつ合理的な範囲内の制約となるよう、各学校等において適切に判断することが必要であり、例えば、届出をした者の個人的な政治的信条の是非を問うようなものにならないようにすることなどの適切な配慮が必要になります。
(参考1)馳文部科学大臣閣議後記者会見録(平成28年1月4日) (参考2)衆議院議員初鹿明博君提出高校生の政治活動を届出制にすることに関する質問に対する答弁書(平成28年1月19日閣議決定) 高等学校等の生徒の政治活動に係る具体的な指導の在り方等については、御指摘の憲法の規定も踏まえ、各教育委員会等において適切に判断すべきものと考える。 <衆議院議員初鹿明博君提出高校生の政治活動を届出制にすることに関する質問主意書(平成28年1月14日提出質問第10号)> |
A.校門を出たところは学校の構外に当たります。したがって、通知の第3の3に従い、違法なものや暴力的なもの、それらになるおそれが高いもの(Q6の例を参照)はやめるよう指導すべきです。
違法又は暴力的なものに当たるおそれがない場合には、当該活動が学校の構内での活動に近い性質を有することに鑑み、他の生徒の日常の学習活動等への支障や、その他学校の政治的中立性の確保等の観点から教育を円滑に実施する上での支障が生じないよう、注意して対応することが必要です。
A.選挙運動期間内において、満18歳以上の者であれば、ホームページ、ツイッター、フェイスブック、ラインなどのウェブサイト等を利用する方法による選挙運動を行うことができます。
ただし、ウェブサイト等を利用する方法による選挙運動を行う場合、電子メールアドレスやその他その人に連絡するために必要となる情報の表示が義務付けられているほか、電子メールを利用する選挙運動は候補者や政党等のみに限られており、また、候補者や政党等から来た選挙運動のための電子メールを他の選挙人に転送することも禁止されています。
インターネットを利用した選挙運動に関する規制については、高校生向け副教材「私たちが拓く日本の未来」の参考編に収録している「投票と選挙運動等についてのQ&A」のQ15(97~98ページ)においても解説しておりますので、併せて御参照ください。
A.選挙運動用電子メールの送信については、以下のような理由により、候補者・政党等が行う場合以外は禁止となっています。
1.密室性が高く、誹謗中傷やなりすましに悪用されやすいこと
2.複雑な送信先規制等を課しているため、一般の有権者が処罰され、更に公民権停止になる危険性が高いこと
3.悪質な電子メール(ウィルス等)により、有権者に過度の負担がかかるおそれがあること
詳しくは、総務省ホームページを御覧ください(電子メールを利用する方法による選挙運動用文書図画の頒布の解禁(※総務省ウェブサイトへリンク))。
A.例えば以下のような例が想定されます。
【許される行為の例】 |
なお、各高等学校においては、「学校における携帯電話の取扱い等について(※国立国会図書館ホームページへリンク)」(平成21年1月30日初等中等教育局長通知)等を踏まえ、構内での携帯電話等の使用が制限されているものと存じます。この通知の考え方を今回変更するものではないことに改めて留意してください。
A.公職選挙法違反の罰則については、公職選挙法第16章(第221条~第255条の4)にて、違反の内容ごとに刑事罰が規定されています。例えば、満18歳未満の者の選挙運動の禁止や教育者の地位利用の禁止に違反した場合、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金が科されることになります(公職選挙法第239条第1項)。
なお、改正法の附則において、家庭裁判所は、満18歳以上満20歳未満の者が犯した連座制の対象となる選挙犯罪の事件について、その罪質が選挙の公正の確保に重大な支障を及ぼすと認める場合には、原則として検察官への送致の決定をしなければならないこととする(すなわち刑事処分の対象とする)等の少年法の特例が定められています。
(参考1)公職選挙法(昭和25年法律第100号)※改正法の施行後 第137条 教育者(学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律 (平成18年法律第77号)に規定する幼保連携型認定こども園の長及び教員をいう。)は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して選挙運動をすることができない。 (参考2)公職選挙法等の一部を改正する法律(平成27年法律第43号)附則 |
A.学校教育の役割としては、まずは、生徒が公職選挙法等に違反することがないよう、高校生向け副教材を活用しつつ、公職選挙法等に関する正しい知識についての指導を行うことが重要です。
しかし、もし、生徒が公職選挙法等に違反していると考えられる事態が発生した場合には、警察等の関係機関と適切に連携することになります。基本的には、法の執行に関しては関係機関に委ねつつ、学校としては、生徒指導上の課題として捉えた際に必要と考えられる指導を行っていくことが求められます。
また、懲戒処分の対象とすること自体は、必要かつ合理的な範囲内のものとして行うことは可能と考えられます(訓告や口頭注意等にとどめることも差し支えありません)が、その場合は、基準をあらかじめ明確化し、生徒や保護者に周知するとともに、学校管理規則や内規等で適正な手続を定めることが必要であることに留意してください。
A.生徒の政治的活動等に対する指導等については、
1.学校は、教育基本法第14条第2項に基づき、政治的中立性を確保することが求められていること
2.高等学校等は、学校教育法第50条及び第51条並びに学習指導要領に定める目的・目標等を達成するべく生徒を教育する公的な施設であること
3.高等学校等の校長は、各学校の設置目的を達成するために必要な事項について、必要かつ合理的な範囲内で、在学する生徒を規律する包括的な権能を有するとされていること
などに鑑み、指導等が行われるべきものです。以上について公立と私立で違いがあるものではなく、本通知の第3の記載は、一般的には、公立・私立ともに通用するものです。
なお、私立学校(大学)については、建学の精神に基づく独自の伝統や校風・教育方針により社会的存在意義が認められることや、学生もそのような伝統等の下で教育を受けることを希望して入学すると考えられることを根拠に、このような伝統や校風を学則等において具体化し、これを実践することが認められるべきであり、当該学校(大学)で教育を受ける者はその規律に服することとなるとして、政治的活動の規制を適法とした裁判例があるところです(昭和女子大事件最高裁判決)。
(参考)昭和女子大事件判決(抄)(最高裁昭和49年7月19日) |
A.地方自治法等の法律に基づき、公職選挙法中普通地方公共団体の選挙に関する規定が準用される住民投票における投票運動については、公職選挙法に基づく選挙運動に準じた規制があります。このため、生徒が地方自治法等の法律に基づく投票運動を行う場合において特に気をつけるべき事項などについて周知する必要があることから、選挙運動に準じ指導等を行うことが適切と整理しています。
他方、国民投票運動については、公職選挙法とは別途、日本国憲法の改正手続に関する法律において、投票の公正さを確保するための必要最小限な規制のみ定められているものであることから、政治的活動に準じ指導等を行うことが適切と整理しています。
(参考)現行法における、地方自治法等の法律に基づき、公職選挙法中普通地方公共団体の選挙に関する規定が準用される住民投票 |
A.学校行事等により、生徒が投票日当日に投票することが困難な場合は考えられますが、期日前投票、不在者投票といった制度を活用することで、期間内に投票することが適切であり、公欠を認めることは基本的に考えられません。
なお、一般的には、参議院議員通常選挙や地方選挙については、任期満了に伴い実施されるものであるため、投票日の時期を一定程度予想することができます。よって、学校行事の日程の設定に当たって留意するとともに、選挙の日程が確定した際に柔軟な対応を可能とする予備日の設定等を検討しておくことも有用と考えられます。
A.選挙期間中に海外に留学している生徒については、当該生徒が選挙権を有する場合、国内での投票とは異なり、生徒自ら又は生徒の家族が、住んでいる地域を管轄する在外公館(大使館又は領事館)に対して在外選挙人名簿の登録申請をする必要があります。登録申請に当たっては、留学する際に市役所、町村役場へ転出届を出しておく必要があります。在外公館の管轄区域内に引き続き3か月以上住所を有していれば、在外選挙人名簿に登録され、在外投票をすることができることになります。詳細は各市区町村の選挙管理委員会に確認の上、助言することが望ましいと考えられます。また、選挙に関する情報収集の方法について助言する等、生徒の状況に応じて対応することが望ましいと考えられます。
A.学校及び学校の教員にかかわる政治的活動の禁止等については、次の表のとおりです。
関係法令 |
禁止又は制限される行為 |
公立学校 |
国・私立学校 |
1.教育基本法 |
特定の政党を支持し又は反対するための政治教育その他政治的活動の禁止 |
○ |
○ |
2.教育公務員特例法 |
国家公務員の例による政治的行為の制限(人事院規則に定める政治的行為の制限) |
○ |
× |
3.公職選挙法 第137条 |
教育者の地位を利用した選挙運動の禁止 |
○ |
○ |
4.公職選挙法 |
公務員の地位を利用した選挙運動の禁止 |
○ |
× |
5.義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法 第3条 |
職員団体等の組織又は活動を利用し、義務教育諸学校に勤務する教育職員が児童生徒に対し、特定の政党等を支持又は反対させる教育を行うことを教唆又はせん動することの禁止 |
○ |
○ |
1.教育基本法第14条第2項により、法律に定める学校(学校教育法に規定する学校及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律に規定する幼保連携型認定こども園)は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育(党派的政治教育)と、政治的意義を有する目的をもって、政治に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉になるような行為を行うこと(政治的活動)をしてはならないとされており、これらは国公私立の別を問わず禁止されています。
この禁止行為の例としては、学校教育において、政党の政策や主張に言及する際、一つの政党についてのみ教える場合や、ある政党の政策を支持ないし反対するよう教育を行うことなどがあげられます。
2.教育公務員特例法第18条により、公立学校の教育公務員の政治的行為の制限については、地方公務員法の規定によらず、国家公務員法第102条及びこれに基づく人事院規則14-7(政治的行為)によることとされています。
この禁止行為の例としては、職員室において特定政党の機関誌を配布することや、特定の候補者のポスターやビラ等を回覧、掲示又は配布することなどがあげられます。
なお、この制限は公立学校の教育公務員に適用されるものであり、国・私立学校の教員には適用されません。しかしながら、国・私立学校の教員が上記のような行為を行った場合は、その態様によっては、1.教育基本法第14条第2項の政治的活動の禁止に該当する可能性があることに留意する必要があります。
3.公職選挙法第137条により、教育者(学校教育法に規定する学校及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律に規定する幼保連携型認定こども園の長及び教員)は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して選挙運動(特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為)をすることができないとされており、国公私立の別を問わず禁止されています。
この禁止行為の例としては、教員がPTA等の会合の席上で特定の候補者へ投票するよう依頼することや、特定の候補者に投票するよう児童生徒を通じてその保護者に依頼することなどがあげられます。
4.公職選挙法第136条の2により、公務員は、その地位を利用して、選挙運動をすることができないとされています。
この禁止行為の例としては、公務員の内部関係において、職務上の指揮命令権等に基づく影響力を利用して、公務員が部下又は職務上の関係のある公務員に対し、選挙に際して投票を勧誘することなどがあげられます。
なお、この制限は公務員に適用されるものであり、国・私立学校の教員には適用されません。
5.義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法第3条により、何人も、職員団体等の組織又は活動を利用し、義務教育諸学校(国公私立の別を問わない)に勤務する教育職員に対し、これらの者が、児童生徒に対して、特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆又はせん動してはならないとされています。
これらの政治的行為の制限については、「教職員の選挙運動の禁止等について(※国立国会図書館ホームページへリンク)」(平成27年2月27日付け各都道府県・指定都市教育委員会教育長あて文部科学事務次官通知)において例示しており、その内容を文部科学省のホームページにも掲載していますので、そちらも御参照ください。
初等中等教育局児童生徒課
-- 登録:平成28年02月 --