学校におけるいじめ問題への的確な対応について

【写】

各都道府県警察の長 殿
(参考送付先)
庁内各局部課長
各附属機関の長
各地方機関の長

警察庁丙少発第1号
平成25年1月24日
警察庁生活安全局長


昨今、いじめを受けていた少年が自殺等深刻な事態に至ったという重大な事案が発生するなど、学校におけるいじめ問題をめぐり少年の保護と非行防止の両面から憂慮すべき事態が生じている。
学校におけるいじめ問題については、一義的には教育現場における指導により重大な結果に至る前に解決されるべきものであるが、警察としても、いじめ事案への必要な対応を適確に行うため、早期把握に努めていく必要がある。いじめ事案は学校を中心に発生することから、学校が認知したいじめ事案について適時・適切に連絡を受けることが必要不可欠であるなど、いじめ事案に的確に対応するためには、これまで以上に学校との連携を強化しなければならない。
そこで、各都道府県警察にあっては、下記のとおり、学校や教育委員会等とこれまで以上に緊密な関係を構築するなどして、学校におけるいじめ問題に的確に対応されたい。
なお、本通達は文部科学省と協議済みであることを申し添える。


1 学校におけるいじめ問題への対応に関する基本的な考え方

 学校におけるいじめ問題については、教育上の配慮等の観点から、一義的には教育現場における対応を尊重しつつも、犯罪行為(触法行為を含む。以下同じ。)がある場合には、被害少年や保護者等の意向や学校における対応状況等を踏まえながら、警察として必要な対応をとっていかなければならない。特に、被害少年の生命・身体の安全が脅かされているような重大事案がある場合は、捜査、補導等の措置を積極的に講じていく必要がある。

2 いじめ事案の早期把握

(1) 少年相談活動による早期把握

少年相談活動は、学校におけるいじめ事案(以下単に「いじめ事案」という。)に関する情報が警察に寄せられる機会であり、事案を早期に把握する上で重要であるため、次の点に配意して活動を推進すること。

ア 少年相談活動の周知

  警察の少年相談活動においていじめ事案に関する相談にも対応していることについて、非行防止教室等の様々な機会を活用して、少年や保護者に対して積極的に周知すること。また、少年サポートセンターの警察施設外への設置や少年相談室の整備、少年相談専用電話のフリーダイヤル化、電子メールによる相談窓口の開設等を引き続き推進するとともに、これら相談窓口についても周知を図ること。

イ 相談内容等の的確な把握

いじめ事案に関する相談が寄せられた場合には、事案の内容や被害少年の置かれている状況を的確に把握するため、事案の経過、その具体的な内容等を可能な限り詳細に聴取すること。そのため、まず第一に、相談者の心情に配意した対応を行い、相談者との信頼関係の構築に努めること。

ウ 的確な対応

  把握した事案の内容等に応じ、相談者の立場に立った適切な指導・助言を行うとともに、相談者が求める場合には、警察から学校に連絡の上、連携した対応を迅速に行う旨説明するなど、相談者に安心感を与えられるよう努めること。

エ 担当職員の対応能力の向上

相談者と信頼関係を築き、安心感を与えられる対応を可能とするよう、少年の心理等に関する知識やカウンセリング技術の習得・向上を図るための各種教養や部外研修の受講機会を拡充するほか、いじめの実態等に関する知識を習得させるなど、少年相談活動に従事する職員のいじめ事案に関する相談への対応能力の向上を図ること。

(2) その他の警察活動を通じた早期把握

少年の問題行動の背景にいじめがある場合もあり得ることから、いじめ事案の早期発見を図るため、非行少年の取調べや不良行為少年の街頭補導のほか、地域警察官の街頭活動を始めとするあらゆる警察活動に際し、いじめが潜在している可能性を念頭に置いて活動するよう努めるとともに、いじめ事案に関する情報を把握した場合には、少年警察部門に情報集約すること。

(3) 学校等との連携強化による早期把握

ア 学校等との情報共有態勢の構築

  犯罪行為として取り扱われるべきと認められるいじめ事案について学校から相談等があった場合には、警察としても、学校や教育委員会等(以下「学校等」という。)と連携して必要な対応を適確に行わなければならないが、そのためにも、警察と学校等が日頃から緊密に情報共有できる態勢の構築が重要であることから、次の取組を積極的に進めること。

(ア)連絡窓口の指定
警察と学校等との間で連絡窓口となる担当職員を指定しておくこと。

(イ)学校警察連絡協議会等の活用
いじめを行っている少年に対して学校で指導を行っているにもかかわらず、十分な効果を上げることが困難である場合において、当該少年の行為が犯罪行為として取り扱われるべきと認められるときは、学校から警察に早期に相談することとされており、特に、被害少年の生命・身体の安全が脅かされているような場合には、直ちに警察に通報する必要がある(「犯罪行為として取り扱われるべきと認められるいじめ事案に関する学校からの相談・通報への適確な対応について」(平成24年11月2日付け警察庁丁少発第180号)参照)ところ、これらの相談・通報が確実に行われるよう、学校警察連絡協議会等の場において認識の共有を図るとともに、相談等を行うべきか否か学校が判断に迷うような場合には積極的に一報するよう申し入れるなど、連携した対応が早期に可能となるよう相談等の促進を図ること。
あわせて、学校警察連絡協議会等の場において学校におけるいじめ問題に関する警察と学校等との連携について具体的に協議を行うなど、学校警察連絡協議会等の活性化を図ること。
(ウ)警察と学校等との協定等の活用
警察と学校等との相互連絡の枠組みに係る協定等における連絡対象事案として、犯罪行為として取り扱われるべきと認められるいじめ事案を盛り込むことにより、連絡が一層円滑に行われるよう、当該協定等について必要な見直し等を行うこと。

イ スクールサポーター制度の活用

スクールサポーターは、警察と学校との緊密な連携を図る上での架け橋として重要な役割を果たしていることから、スクールサポーター制度の拡充に努めるとともに、警察署等に積極的に配置し、次の活動を行わせるなどして活用を推進すること。また、教育委員会等においてスクールサポーター制度に類似した制度を運用している場合には、当該教育委員会等に対し、退職警察官の採用、従事者と警察署等との情報交換を行うための連絡協議会の開催等を通じて確実に警察と学校等との連携が図られるよう、強く要請すること。
(ア)学校への訪問活動の強化による情報の収集
学校への訪問活動を強化し、校内の巡回、教員等からの聞き取り等により、いじめを始めとする少年の問題行動等に関する情報収集に努めるとともに、把握した情報については、学校及びスクールサポーターが配置された警察署等(以下「配置署等」という。)に確実に連絡・報告すること。
なお、活動を通じて、保護者等からいじめ事案に関する相談を受けた場合には、相談者の立場に立った適切な指導・助言を行うこと。
(イ)犯罪行為として取り扱われるべきと認められるいじめ事案に関する速やかな連絡等
犯罪行為として取り扱われるべきと認められるいじめ事案を認知した場合には、学校及び配置署等に速やかに連絡・報告するほか、警察に相談等を行うべきか否か学校が判断に迷うような場合等には必要な助言を行い、警察と学校等が連携して早期に対応できるよう努めること。

3 いじめ事案に関する情報の集約及び共有等

(1)管轄署への情報の集約

いじめ事案への対応は学校等との連携を密にして行う必要があることから、いじめ事案に関する情報を学校の所在地を管轄する警察署(以下「管轄署」という。)以外の警察署等が把握した場合には、その内容を速やかに管轄署に連絡すること。

(2)関係する警察署等における情報の共有等

被害少年の求め等により管轄署以外の警察署等がいじめ事案への対応を主として行う場合には、管轄署にその旨連絡した上、管轄署及び対応を行う警察署等は、当該事案に関する必要な情報を共有するなどして、引き続き緊密に連携すること。

4 把握したいじめ事案への適確な対応

把握したいじめ事案については、事案の重大性及び緊急性、被害少年及びその保護者等の意向、学校等の対応状況等を踏まえ、 次の点に配意して、警察として適確な対応を行うこと。

(1)被害少年の生命・身体の安全が脅かされているような重大ないじめ事案への対応

被害少年の生命・身体の安全が現に脅かされているような重大事案及びこれに発展するおそれが高い事案については、迅速に捜査等に着手するとともに、学校等に対しても被害少年の保護のため必要な措置を要請するなど、被害の更なる深刻化の防止を図ること。

(2)被害少年又はその保護者が犯罪行為として取り扱うことを求めるいじめ事案への対応

(1)の重大ないじめ事案に当たらない事案であっても、被害少年又はその保護者が犯罪行為として取り扱うことを求めるときは、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、被害の届出を即時受理した上、学校等と緊密に連携しつつ、被害少年の立場に立った捜査・調査活動を推進すること。
なお、警察による捜査等を契機として加害少年から謝罪等がされた結果、被害の届出が取り下げられるなどにより、立件に至らない場合もあり得るが、いじめ事案の円満な解決に寄与すること自体が被害少年の立場に立った警察活動であるという認識を捜査幹部・捜査員に徹底すること。

(3)その他のいじめ事案への対応

被害少年の生命・身体の安全が脅かされていたり、そのおそれが高いとは言えない事案であって、被害少年及びその保護者ともに警察で犯罪行為として取り扱うことを求めないものについては、一義的には、教育現場における指導により解決されるよう、その対応を尊重することが適当である。そのような事案を警察で把握した場合には、被害少年又はその保護者の同意を得て、学校等に連絡の上、必要に応じて、加害少年の健全な育成を図るため注意・説諭をするほか、学校が加害少年に指導する際の助言、いじめ防止を主眼とした非行防止教室の開催等の適切な支援を行うとともに、学校等から対応状況や事案の経過について引き続き連絡を受けるなど、緊密に連携すること。
なお、学校等が加害少年に繰り返し指導を行っているにもかかわらず、十分な効果が見られないような場合には、必要に応じて、スクールサポーターを常駐させ、また、被害少年や保護者の意向を再度確認するなど、警察としてのより主体的な対応を検討すること。

(4)被害少年に対する支援

被害少年の精神的被害を回復するために特に必要と認められる場合には、保護者の同意を得た上で、少年サポートセンターを中心として、少年補導職員等により、カウンセリング等の継続的な支援を行うとともに、支援をより効果的に実施するため、被害少年カウンセリングアドバイザーや被害少年サポーター等の活用を図ること。
また、スクールサポーターによる被害少年への助言等についても、学校に配置されたカウンセラー等や少年補導職員等の行うカウンセリング等と連携して効果的に行うよう努めること。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)

-- 登録:平成25年03月 --