福岡県筑前町における中学生の自殺事件について
平成18年10月19日
文部科学省
- 18年10月11日、福岡県筑前町の町立中学校2年の男子生徒が自宅の納屋でビニール紐で首を吊り、窒息死。「いじめられてもう生きていけない」等といったメモが本人の上着のポケット、納屋の床、学校の美術室等にそれぞれ残されていた。
- 事件後、学校による生徒からの聞き取りやアンケート調査から、当該生徒に対する他の生徒からのいじめがあったという認識に立ち、詳細な調査をしている。
- また、1年生の時に、当時の担任教諭から「偽善者」と言われていたことや当該生徒のあだ名の原因をつくったことなどが報道された。こうした不適切な言動があったことは、筑前町教育委員会も認めている。
- しかし、それが他の生徒による当該児童へのいじめを誘発したこと、自殺につながったことについては、現在調査中としている。
- 文部科学省は、職員3名を福岡県教育委員会に派遣。県教育委員会同席の下、筑前町教育委員会から事情を聴取した。
福岡県筑前町における中2男子生徒の自殺について
1 事実関係
(1)当該生徒に対する他の生徒からのいじめについて
(聞き取りやアンケート調査(1回目)から判明)
- まわりから相手にされない
- トイレでズボンを下げられそうになったことがある(亡くなった日の6校時終了後)
- あだ名でのひやかし
〔生徒に対するアンケート調査〕
- 1回目(記名式)
実施期日: 10月12日(木曜日)全校集会後の1校時
対象:全校生徒
内容:
- 当該生徒の件で原因等知っていること
- 自分のことを(学級・学年も)含めて今の気持ち
- あなたが今困っていること
- 2回目(無記名式)
実施期日: 10月16日(月曜日)全校集会後の1校時
対象:全校生徒
内容:
- 三輪中学校の先生に「考えてもらいたいこと」や「期待すること」
- これから、あなたはどのような生き方をしたいか
どちらのアンケートについても全体の内容等、詳細については、現在、学校において整理しているところ。
(2)不適切とされている(1年生時の)担任教員の言動について
(当該生徒のみに関わること)
- 当該生徒が友だちの落とした消しゴムを拾った際に、担任教員が、「おまえは偽善者にもなれない偽善者だ」と言った。(昨年の1学期)
- 担任教員は、当該生徒の保護者から相談のあった家庭での行動を、学級の複数の生徒の前で話した。このことで、当該生徒はあだ名をつけられ、学級だけでなく学年でもそのあだ名でひやかされるようになった。(昨年の1学期)
- 2年生の担任となる教員への事務引継ぎ時に、当該生徒のことを「この子はうそをつく子だ」と伝えた。(今年4月当初)
(当該生徒やその他の生徒に関わること)
- 担任教員が、成績を「いちご」の品種に喩え、当該学年・学級の生徒を、1「あまおう」、2「とよのか」、3「ジャム」、4「出荷もできないいちご」とランク付けをしていた。当該生徒にもランク付けをした。(昨年の1学期)
- 授業中に、他の生徒の身体的特徴をからかった。(昨年の1学期)
これらの事実関係とともに、言動の経緯・背景等、詳細については、現在、学校と筑前町教育委員会が調査中である。
2 現時点での課題や反省点(筑前町教育委員会)
- 管理職を含め教職員の間での情報の共有化や報告・連絡・相談の徹底がなされていなかった。
- 教員が日常的に生徒たちの不安や悩みのサインに気づく手だてが不十分だった。
- 教員の言葉遣いや態度など、教員としての資質に課題があった点がある。
- 教員の不適切な言動が、生徒に精神的な苦痛を与え、まわりの生徒に当該生徒に対する誤った見方を植え付けた可能性がある。
福岡県教育委員会等の対応について
平成18年10月19日
福岡県教育庁教育振興部義務教育課
1 事案発生以後の県教育委員会の取組
- 詳細な調査を行い、徹底した原因究明を行うよう筑前町を指導
- いじめ問題への学校の取組の総点検を行うよう、各市町村に指導通知を発出
- いじめ問題への学校の取組の総点検について、結果の報告を求めるよう通知を発出
- 緊急に校長会等を開催し、いじめ等の生徒指導上の諸問題に関する、危機意識の一層の高揚や、管理職を中心とした校内指導体制の確立を図ること等についての指導通知を発出
- 担当スクールカウンセラー1名に加え、緊急支援として追加派遣
- 筑前町へ福岡県指導主事を派遣
2 今後の県教育委員会の取組
- 調査結果を踏まえた、これまでの取組のより一層の充実と改善及び新たな取組の検討
3 事案発生以後の筑前町教育委員会の取組
- 臨時教育委員会の開催
- 児童生徒の指導体制の改善についての通知の発出及び臨時校長会の開催
- 調査委員会の準備会の開催