(平成16年10月22日)
文部科学省初等中等教育局児童生徒課
今回号より、毎月1回、各都道府県・指定都市教育委員会生徒指導担当部署に対して、生徒指導に関するメール・マガジンを配信することといたしました。
現在のように社会の変化が著しく、国をあげて教育改革が進行している中、文部科学省と各都道府県・指定都市教育委員会との双方向の意思疎通が図られていることは、非常に重要です。このメールマガジンにおいては、各都道府県・指定都市教育委員会等との意思疎通の緊密化を図ることで、施策の趣旨等の一層の浸透を図り、最終的には施策の効果が円滑に児童生徒まで届くようにすることを目指しております。子ども達に対して直接教育できるのは、学校(教員)、家庭及び地域であって、我々、行政としては、『施策』という手段によって、そのような教育現場の実践を支援していくしかありません。その際、どんなに素晴らしい施策を実施していたとしても、施策の効果が、教育の現場まで浸透し、その恩恵が子ども達まで伝わるようにしなければ、せっかくの施策も台無しなのです。
また、このメール・マガジンの狙いとしては、我々からの情報提供だけでなく、各都道府県教育委員会等から施策に対する意見・提言を受け入れることによって、双方向的な意思疎通のためのシステムを構築し、関係者がそれぞれの役割と責任を分担しながら、「子ども達のために」協働していくことにもあります。
さらに、このメールマガジンを活用すれば、各都道府県・指定都市教育委員会から教育現場の実情に合った施策の在り方に関するご提言等を収集し、施策の改善に役立たせることも可能であり、また、このメールマガジンを通じて、各地域又は学校の良い実践事例を紹介し、各地域又は学校の教育改革の一層の進展を図ることも可能になるのではないか、と考えております。
これまで、文部科学省では、年に数回、各都道府県・指定都市教育委員会生徒指導担当部署に対して連絡協議会を通じて施策の紹介を行ってまいりました。しかし、それにはどうしても「対象の広がり」、「施策の浸透度」及び「広報の回数」に限界があるものです。それが、今回のメールマガジンが有効に活用されれば、もっと頻繁かつ定期的に、文部科学省の施策の情報提供ができ、メールであるが故に各都道府県教育委員会等から返信もできるため、各地域からのご意見や模範となる実践事例の収集等も可能になるものです。
このメール・マガジンでは、現在、1.巻頭言、2.施策紹介、3.各地域又は学校の優れた生徒指導上の取組みの紹介、4.施策に関する各地域からの提言又はQ&A、5.その他主要の行事の予定や連絡事項等を考えております。
今回、このメール・マガジンにおいては、各都道府県・指定都市教育委員会だけを対象に配信することにし、上記のような内容の情報を提供することと致しましたが、その配信対象や内容等に関しては、今後の反応次第で、色々な発展形があり得ると考えております。このメール・マガジンは、今後どういう発展形をたどるのか未定ですが、このメール・マガジンが、生徒指導上の関係者間の意思疎通を円滑にし、子ども達へのより質の高い教育の提供の一助となることができるよう、各都道府県・指定都市教育委員会の皆様方と協力し合いながら、成功させていきたいものです。
(1)文部科学省では、10月5日に、「児童生徒の問題行動対策重点プログラム(最終まとめ)」を公表いたしました。これは、本年6月1日に発生した長崎県佐世保市の小学校6年生女子児童の同級生殺害事件を受けて、同種の事件の再発防止に向けて、文部科学省内に設置した「児童生徒の問題行動に関するプロジェクトチーム」において検討した対処方策です。今回のプログラムの特徴的な点は、後述の通り、総花的な対処方策ではなく、その名の通り「重点」を絞ったプログラムであることと、理念的なものではなく、むしろ、すぐに施策化して行動できるようなものであることにあります。
(2)今回の「最終まとめ」の内容としましては、これまでの児童生徒の問題行動対策の一層の充実を図るとともに、特に重点的に、1.「命を大切にする教育」、2.「学校で安心して学習できる環境作り」、3.「情報社会の中でのモラルやマナーについての指導のあり方」の3点について、学校、家庭、地域及び関係機関等が緊密な連携をとりながら実施していくこととし、その推進方策を示したものです。
本プログラムの詳細は、先日の『生徒指導担当課長補佐(主幹)連絡会議』において説明したところですし、文部科学省のホームページ上に掲載しておりますので、より詳細は、そちらをご参照下さい(※現在ページはありません。)。
(3)今回、お伝えしたいことは、むしろ、今後の都道府県・指定都市における取組みの推進についてです。
今後は、もちろん、文部科学省においても、本プログラムの実施のために必要な予算の確保など所要の条件整備を進めていくつもりですが、各都道府県・指定都市教育委員会におかれても、既存の取組の中ですでに実施可能な事項については、早急にその推進を図っていくことが重要です。実に、今回の重点プログラムの中には、国の予算の成立を待つまでもなく、実施できるものが多々あります。特に、上記(2)1.の『命を大切にする教育』や2.『伝え合う力を育て、望ましい人間関係を構築するための教育』などは、すでに、いくつかの学校において実践事例が蓄積されていることと思います。そのような実践事例を普及させていくことだけでも重要な施策なのです。
実際、これまで幾つかの県においては、佐世保市の事件を踏まえ、これまでの施策の見直しを行っているところがあります。例えば、事件が発生した長崎県(同県の今回の事件に関する調査報告の第2次報告は、http://www.pref.nagasaki.jp/edu/info/houkoku2.pdf(PDF))はもちろんですが、その他では、例えば、大阪府教育委員会において、佐世保市の事件後、独自に「問題行動対策プロジェクトチーム」を設置し、学校教育や家庭教育のあり方について議論を重ね、「わたし聴いてほしいねん!」という学校教育・子ども達・家庭へのメッセージ(http://www.pref.osaka.jp/kyoishinko/jidoseito/kiite.html)を作成しておりますし、広島県でも、教育長の指示のもと、「文部科学省のプログラムに照らして、県としてどのような対策が取りうるのかについて鋭意検討中である」と聞いております。
今後とも、各都道府県・指定都市教育委員会におかれては、子どもたち誰もが命の大切さや他人を思いやる心を身に付けるとともに、情報社会の進展を踏まえながら、安心して日々の生活を生き生きと送れるよう、本プログラムに示された方向に沿った施策の実現に向けて、一層のご尽力を頂きますようお願いします。
文部科学省においても、単にプログラムを示すだけでなく、予算の獲得等所要の環境整備を進めるとともに、このメールマガジンのように施策の趣旨が浸透するような取組みや、他県・他地域の取組み事例を紹介するなどの取組みを進めてまいります。
布忍小学校は、大阪市の南側に位置する松原市にある、創立約130年の学校です。
これまで、同校は、学級経営の基本に、子ども達の「集団づくり」を位置付け、教師集団の統一した指導と地域と連携した取り組みを行いながら、子ども達に保護者や地域の人々からの聞き取りやフィールドワークを通じて自分の暮らしや親の思いや頑張りを見つめさせる取組みを実践し、人権教育において大きな成果を残してきました。
同校の取り組みは、単に人権教育のみならず、自学自習の力を培うことを狙いとした授業改善、幼・小・中の連携、地域とのネットワーク作り等において、多岐にわたり興味深い取り組みを行っているのですが、今回は、特に、地域と連携した、選択・参加・体験型の人権総合学習、『ぬのしょう・タウン・ワークス』に絞ってご紹介したいと思います。同校の多岐にわたる教育実践に関しては、同校のホームページをご覧下さい(http://www.e-kokoro.ed.jp/matsubara/nunose/)。
『ぬのしょう・タウン・ワークス』の概要については、以下の通りです。
今回、布忍小学校の取組みを紹介したのは、その取組みの内容というよりも、教育現場のモチベーションとちょっとした工夫で、「厳しい家庭状況の児童が多い状況であっても、子供達が明るく、生き生きと学び、地域からも愛される、そんな学校に作り上げることができる」ということを紹介したかったからです。
同校の取組みは、決して奇をてらうものでもなく、特別な予算を必要とするものでもなく、どこの学校でも実施可能な取組みなのですが、同校の特筆すべき点は、過去から連綿として存在する学校の教育理念が揺るぎないものであること、目指すべき子ども像の実現に向けたシナリオがきちんと描けていること、そのシナリオを実現するための地に足の着いた戦略が検討させていること、教育の実践のためのちょっとした工夫を至る所に凝らしていること、教職員達が一貫したビジョンを共有していること、教職員達のチームワークの良さがあること、一人一人の教職員の高いモチベーションがあること、地域や保護者を巻き込むための仕組みづくりの上手であることなどにあるのです。
もちろん、このような同校の取組みのためには、教職員達の膨大なエネルギーが必要となります。ただ、教職員達が一丸となって「一生懸命」になっている時間というのは、同じ長さの時間でも密度が違います。一つの事に一生懸命頑張り、密度の濃い時間を送っている人々の姿は、それを見る人の心を打つものです。「子ども達のために」学校を少しでも良くしようと、一生懸命に頑張り、密度の濃い時間を送っている教職員に教えられている子ども達は、授業以上に教えられているものが大きいだろうし、それが、何よりの生徒指導であるかもしれません。皆様におかれても、もし、ご都合が許せば、一度、同校を訪問することをお勧めいたします。
今回号は特に無し。
(すべてを記載しているわけではありませんので、必ず正式文書で確認をお願いします。)
初等中等教育局児童生徒課
-- 登録:平成21年以前 --