第2節 地理歴史

第1款 目標

 我が国及び世界の形成の歴史的過程と生活・文化の地域的特色についての理解と認識を深め、国際社会に主体的に生きる民主的、平和的な国家・社会の一員として必要な自覚と資質を養う。

第2款 各科目

第1 世界史A

1 目標

 現代世界の形成の歴史的過程について、近現代史を中心に理解させ、世界諸国相互の関連を多角的に考察させることによって、歴史的思考力を培い、国際社会に生きる日本人としての自覚と資質を養う。

2 内容

(1)諸文明の歴史的特質

 文明の成立とその発展、世界諸地域の文化的特色を理解させる。その際、諸地域の歴史・文化の基盤となっている風土、民族、言語、宗教などに着目させる。

ア 文明と風土
 農耕及び牧畜の発生、都市文明の成立、古代帝国の発展などに着目させ、人類がつくりあげた文明の特色と意義を理解させる。

イ 東アジアと中国文化
 東アジアの風土と諸民族、漢字文化、儒教と国家などに着目させ、東アジアの歴史・文化の特色を理解させる。

ウ 南アジアとインド文化
 南アジアの風土と諸民族、仏教・ヒンドゥー教文化、イスラム教の影響などに着目させ、南アジアの歴史・文化の特色を理解させる。

エ 西アジアとイスラム文化
 西アジアの風土と諸民族、パレスチナの歴史、イスラム文化などに着目させ、西アジアの歴史・文化の特色を理解させる。

オ ヨーロッパとキリスト教文化
 ヨーロッパの風土と諸民族、キリスト教文化などに着目させ、ヨーロッパの歴史・文化の特色を理解させる。

(2)諸文明の接触と交流

 諸文明の接触と交流の歴史を中心に各時代の特色を世界的視野で把握させる。また、同時代の諸地域の文化を比較させ、文化・文明に対する多様なものの見方を養う。

ア 2世紀の世界
 漢帝国とローマ帝国を両極とするユーラシア大陸の東西交流の歴史の理解を通して、2世紀前後の世界の全体像を把握させる。

イ 8世紀の世界
 イスラムの拡大期の西アジア、地中海世界、インド、中央アジア、中国など諸地域相互の接触と交流の歴史の理解を通して、8世紀前後の世界の全体像を把握させる。

ウ 13世紀の世界
 モンゴルのユーラシア大陸征服を中心に、東西世界の接触と交流の歴史の理解を通して、13世紀前後の世界の全体像を把握させる。

エ 16世紀の世界
 大航海時代のヨーロッパとアフリカ、アメリカ、アジアとの接触と交流の歴史の理解を通して、16世紀前後の世界の全体像を把握させる。

オ 17・18世紀の世界
 ヨーロッパの絶対主義国家、アジアの専制国家などの政治、経済、文化の交流、相互に与えた影響などの理解を通して、17・18世紀の世界の全体像を把握させる。

(3)19世紀の世界の形成と展開

 ヨーロッパによる世界支配、世界の一体化の過程とそれに対するアジアの対応などに着目させ、現代世界の形成過程を理解させる。

ア 19世紀のヨーロッパ・アメリカ
 市民革命とその影響、諸国間の戦争と国際関係、近代国家の成立、19世紀における諸民族国家の成立などに着目させ、近代国家の形成過程を理解させる。

イ 産業革命と世界市場の形成
 産業革命と技術革新、機械制工業、資本家と労働者の形成、ヨーロッパ諸国による植民地の拡大、貿易活動、資本主義化の中の農業、都市と市民生活・市民文化などに着目させ、現代社会の形成過程を理解させる。

ウ アジア諸国の変貌と日本
 ヨーロッパの進出期における日本を始めとするアジア諸国家の状況、植民地化の過程での抵抗や挫折、近代化の過程でのアジアの伝統文化とヨーロッパ近代文化の接触、19世紀のアジアの変貌などに着目させ、現代世界の形成過程を理解させる。

(4)現代世界と日本

 地球的規模で一体化した現代世界の歴史を理解させ、そこに現れた歴史的課題について考察させる。その際、世界の動向と日本とのかかわりに着目させる。

ア 二つの世界大戦と平和
 第一次世界大戦と第二次世界大戦の原因やそれが及ぼした影響に着目させ、平和の意義などを考察させる。

イ アメリカ合衆国とソビエト連邦
 資本主義の変容とアメリカ合衆国の主導的役割、ロシア革命とソビエト連邦の成立、第二次世界大戦後の社会主義国家の出現などに着目させ、米ソ対立とその背景や核兵器問題などについて考察させる。

ウ 民族主義とアジア・アフリカ諸国
 アジア・アフリカの民族運動や植民地独立の経過を理解させ、アジア・アフリカ諸国が抱える問題などについて考察させる。

エ 地域紛争と国際社会
 第二次世界大戦後の世界で起こった地域紛争、人種・民族問題などに着目させ、その歴史的背景や国際社会の構造などについて考察させる。

オ 科学技術と現代文明
 原子力の利用、情報科学、宇宙科学の出現など現代の科学技術の人類への寄与と課題に触れ、人類の生存と環境、世界の平和と安全などについて考察させるとともに、国際的な交流と協調の必要性に着目させる。

カ これからの世界と日本
 諸国、諸地域の交流、相互依存がますます進む中で、多様性を認め合いながら日本が世界の諸国と共存する方向を21世紀を展望しつつ考察させる。

3 内容の取扱い

(1)内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。
 ア 科目の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成するものとし、細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないこと。
 イ 文明の意義、文化の比較、国際関係の展開などを取り扱う際、比較文化的視点も考慮するとともに各時代における世界の中に日本を位置付けて考察させるようにすること。
 ウ 風土、民族の扱い、歴史地図の活用などについては「地理A」及び「地理B」との関連を考慮すること。

(2)内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)については、諸文明の成立と諸地域の文化の発展に関する具体的事実に触れながら巨視的に把握させ、その特色や歴史的意義について考察させるものとし、個々の地域の細かな歴史の展開には触れないこと。
 イ 内容の(2)については、同時代史的な取扱いで世界の歴史の発展を学ばせることとし、アからオまでのうち二つ程度を選択して学ばせること。
 ウ 内容の(3)及び(4)については、次の事項に留意すること。
 (ア)客観的かつ校正な資料に基づいて歴史の事実に関する理解を得させるようにすること。
 (イ)政治、経済、社会、文化、生活など様々な観点から歴史を取り上げ、近現代世界に対する多角的、柔軟な見方を養うこと。
 エ 内容の(4)については、単に知識を与えるだけでなく現代の世界が当面する課題について考察を加えさせること。その際、核兵器の脅威に着目させ、戦争を防止し、民主的な平和な国際社会を実現することが重要な課題であることを認識させること。

第2 世界史B

1 目標

 現代世界の形成の歴史的過程と世界の歴史における各文化圏の特色について理解させ、文化の多様性・複合性や相互交流を広い視野から考察させることによって、歴史的思考力を培い、国際社会に生きる日本人としての自覚と資質を養う。

2 内容

(1)文明の起こり

 人類が各地域の自然環境に適応しながら各文化圏の素地を成す文明を築き上げていったことを理解させる。

ア オリエント文明
 オリエント文明の成立と発展、イラン民族の活動などを中心に、古代オリエントの歴史の展開を概観させる。

イ 地中海文明
 エーゲ文明、ギリシア・ローマ文明などを中心に、古代地中海世界の歴史の展開を概観させる。

ウ インド文明
 インダス文明、アーリア人進入以後の文化、社会、国家の発展などを中心に、古代インドの歴史の展開を概観させる。

エ 中国文明
 黄河文明、秦・漢帝国の成立と発展などを中心に、古代中国の歴史の展開を概観させる。

(2)東アジア文化圏の形成と発展

 風土、生活、文化に着目させながら、東アジアの歴史と文化の形成過程を理解させる。特に、中国文化が北方の遊牧民族的要素を加え、また、西方文化の影響も受けながら朝鮮、日本、ベトナムを含む隣接諸地域の文化形成に大きな役割を果たしたことに着目させる。

ア 遊牧民族の活動と東アジア世界の形成
 3世紀から6世紀にかけての中国農耕民族と北アジア遊牧民族の対立抗争と交流、唐帝国の発展と東アジア諸民族の活動などに着目させ、東アジアの文化の展開を理解させる。

イ 中国社会の変遷と隣接諸民族の活動
 唐帝国の動揺から元帝国の崩壊までの中国の社会の変遷と契丹、女真、モンゴルなど北方民族の活動に着目させ、中国と隣接諸民族の関係を理解させる。

ウ 中華帝国の繁栄と朝鮮、日本
 明・清帝国の発展や中国と朝鮮、日本の関係などに着目させ、繁栄期の東アジアの文化について理解させる。

(3)西アジア・南アジアの文化圏と東西交流

 風土、生活、文化に着目させながら、西アジア・南アジアの歴史と文化の形成過程を理解させる。特に、イスラム教の成立とその特色、イスラム世界の拡大とイスラム文化、イスラムが浸透したアフリカ・イベリア・インド・東南アジアの歴史と文化にも着目させる。また、ユーラシアの東西交流の歴史を通して、同時代的な世界の歴史を把握させる。

ア イスラム世界の形成
 イスラム教の成立とその特色、アラブ民族とイスラム帝国の拡大、イスラム文化の発展などを理解させ、イスラム世界形成の歴史的意義を考察させる。

イ イスラム世界の発展
 イスラム世界におけるトルコ民族の活躍、西アジア・アフリカにおけるイスラム諸国の発展に着目させ、諸地域のイスラム社会の特色を理解させる。

ウ 南アジア・東南アジア世界の展開
 南アジア・東南アジアの伝統文化とイスラム化に伴う社会の変容などに着目させ、南アジア・東南アジアの文化の多様性について理解させる。

エ ユーラシアの東西交流
 ユーラシア大陸や海路を通じての東西交流に着目させ、民族や文化の接触・交流・融合について理解させる。

(4)ヨーロッパ文化圏の形成と発展

 風土、生活、文化に着目させながら、ヨーロッパの歴史と文化の形成過程を理解させる。その際、ビザンティンやロシア・東ヨーロッパ世界の独自性にも触れる。また、キリスト教文化や変動期のヨーロッパの政治や社会の特質、大航海時代に始まるヨーロッパ世界の拡大とその背景を理解させる。

ア 東西ヨーロッパ世界の形成
 古代地中海世界が解体した後の東西ヨーロッパ世界の形成過程、封建社会やキリスト教文化の特色などを理解させ、ヨーロッパの文化の基盤について考察させる。

イ ヨーロッパの変革と大航海時代
 14・15世紀のヨーロッパ社会の変動、ルネサンス、宗教改革、新航路の開拓などに着目させ、16世紀以後のヨーロッパ世界拡大の背景を理解させる。

ウ 17・18世紀のヨーロッパと世界
 絶対主義国家の盛衰、ヨーロッパにおける国際関係の展開、アメリカ大陸、アジアへの植民地進出などに着目させ、世界におけるヨーロッパ諸国の活動を理解させる。

(5)近代と世界の変容

 市民革命、産業革命、資本主義の発達など西欧近代のもつ世界史的意義、ヨーロッパ諸国の進出に伴う世界の変容などを理解させる。その際、現代世界に大きな影響をもつことになるアメリカ大陸の歴史にも着目させる。また、アジアの諸国の伝統、ヨーロッパ諸国によるアジアの植民地化、アジア諸国の動揺と近代化への動きなど近代史の大きな流れを理解させる。

ア 市民革命と産業革命
 市民革命と自由主義や国民主義の発展、産業革命と資本主義の展開などに着目させ、ヨーロッパの市民社会の発展について理解させる。

イ アメリカ合衆国とアメリカ文明
 アメリカ合衆国を中心に、アメリカ大陸諸国の発展やアメリカとヨーロッパの関係などに着目させ、アメリカ大陸の政治、社会、文化について理解させる。

ウ アジア諸国とヨーロッパの進出
 オスマン、ムガル、清帝国などアジアの諸国家の動揺と改革、ヨーロッパ諸国との関係などを理解させ、アジアの近代について考察させる。

エ 帝国主義とアジア・アフリカ
 19世紀後期からのヨーロッパ諸国によるアジア・アフリカの植民地化とアジア・アフリカの対応に着目させ、19世紀後期から20世紀初期の世界の歴史の特色を理解させる。

(6)20世紀の世界

 二つの世界大戦の両大戦間の世界の動きを世界恐慌や全体主義の台頭などを含めて理解させる。また、ソビエト連邦の成立と社会主義諸国、アメリカ合衆国の台頭と資本主義経済の変容、アジア・アフリカの民族運動の展開を通して、現代史の大きな流れを理解させ、20世紀の歴史の特色を考察させる。

ア 二つの大戦と世界
 第一次世界大戦、両大戦間の国際社会、第二次世界大戦と戦後の国際関係などを理解させ、20世紀の戦争や国際協調の歴史を考察させる。

イ ソビエト連邦と社会主義諸国
 ロシア革命とソビエト連邦の成立、第二次世界大戦後の社会主義国家の成立などに着目させ、ソビエト連邦と社会主義諸国の歴史について理解させる。

ウ アメリカ合衆国と自由主義諸国
 20世紀におけるアメリカ合衆国の経済の発展、国際政治における役割、資本主義の変容と国際化などに着目させ、アメリカ合衆国と自由主義諸国の歴史について理解させる。

エ アジア・アフリカ諸国の民族運動と独立
 アジア・アフリカ諸民族の民族的覚醒、独立運動、独立後の国家建設などに着目させ、20世紀のアジア・アフリカ諸国の歴史について理解させる。

(7)現代の課題

 現代世界の基本的な課題を歴史的視点から考察させる。

ア 国際対立と国際協調
 多極化した国際関係、核兵器問題、人種・民族問題、第二次世界大戦後の主要な国際紛争などに着目させ、現代の国際問題を歴史的に考察させる。

イ 科学技術の発展と現代文明
 巨大技術、環境問題などに着目させ、科学技術と現代文明を歴史的に考察させる。

ウ これからの世界と日本
 国際政治、国際経済、現代文明などにおいて人類の当面する問題について歴史的観点から考察を加えさせるとともに、これからの世界と日本を展望させる。

3 内容の取扱い

(1)内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。
 ア 科目の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成するものとし、細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないこと。
 イ 生徒の歴史的な思考力を培いかつ歴史に対し興味・関心をもたせるため、適切な主題を設けて学習できるようにすること。
 ウ 各時代に生きた人物、技術の発達と歴史のかかわりなどにも目を向けさせ、歴史の理解を深めさせること。
 エ 文化圏のまとめ方については、「地理A」及び「地理B」との関連に留意すること。

(2)内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)については、人類と文化の期限などを含め、文明の発展を学ばせること。また、オリエント文明にはイラン民族の文明も含めること。
 イ 内容の(2)、(3)及び(4)については、次の事項に留意すること。
 (ア)各時代の人々の生活や意識を具体的に理解できるようにし、政治史のみの学習にならないようにすること。
 (イ)各文化圏の歴史の展開や文化の特色を把握させ、文化圏としてのまとまりに着目させること。
 (ウ)隣接する文化圏相互の接触や交流をとらえ、文化の多様性や複合性も理解させる。その際、地中海地域、インド洋地域、中央アジアを文化の交流圏として設定するなど、接触や交流を時間的、空間的にとらえさせる工夫をすること。
 (エ)内容の(2)、(3)及び(4)に示した文化圏以外にも文化史的にまとまりのある地域を文化圏学習に取り入れることもできるが、その際、全体の配当時数や生徒の学習負担に配慮すること。
 (オ)比較文化的視点から世界の歴史の中の日本の位置付けにも着目させること。
 ウ 内容の(5)、(6)及び(7)については、次の事項に留意すること。
 (ア)客観的かつ公正な資料に基づいて歴史の事実に関する理解を得させるようにすること。
 (イ)世界の一体化の過程と現代世界成立の歴史的意義を理解させること。
 (ウ)ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカなど諸地域の政治、経済、文化的な結び付きを歴史的に正しく認識させること。
 (エ)政治、経済、社会、文化、生活など様々な観点から歴史を取り上げ、現代世界に対する多角的、柔軟な見方を養うこと。
 (オ)日本と関連する諸国の歴史については当該国の歴史からみた日本などにも着目させ、世界の歴史における日本の位置付けを明確にすること。
 エ 内容の(7)については、単に知識を与えるだけでなく、現代の世界が当面する課題について考察を加えさせること。その際、核兵器の脅威に着目させ、戦争を防止し、民主的で平和な国際社会を実現させることが重要な課題であることを認識させること。

第3 日本史A

1 目標

 我が国の歴史の展開を、世界史的視野に立って理解させ、特に近代社会の成立と発展の過程を我が国を取り巻く国際環境などと関連付けて考察させることによって、歴史的思考力を培い、国民としての自覚と国際社会に生きる日本人としての資質を養う。

2 内容

(1)古代及び中世の日本とアジア

 国家の形成から戦国時代に至る我が国の歴史の展開について、アジア世界の動きを背景に概観させる。

ア 古代国家の形成と大陸文化の摂取
 日本の原始社会の推移、大陸文化の摂取とその影響、律令体制の推移、古代文化の成立などに着目して、古代国家の形成過程を理解させる。

イ 中世社会の展開とアジア世界との交流
 武家社会の進展、対外的な交流の拡大、都市や農村社会の変容、中世文化の形成などに着目して、中世社会の展開を理解させる。

(2)幕藩体制の形成と推移

 織豊政権期から幕藩体制の確立に至る過程について、ヨーロッパ世界の動きを背景に概観させる。

ア ヨーロッパ文化との接触と鎖国
 対外的な文化や経済の接触と交流、国内の政治や社会の動きなどに着目して、戦国時代末期から江戸時代初期までの歴史の展開を理解させる。

イ 幕藩体制の確立と都市及び農村の経済や文化
 幕府及び諸藩の支配体制の特質、都市生活を基盤とする町人文化、農村の生活文化などに着目して、幕藩体制の確立と経済や文化の発展を理解させる。

(3)日本の近代化への道と19世紀の世界

 幕藩体制の動揺、崩壊と我が国の近代化の要因の生成過程について、欧米諸国の発展とアジアへの進出を背景に理解させる。

ア 国際環境の変化と幕藩体制の動揺
 近代社会を形成した欧米諸国の日本への開国要求、幕府及び諸藩の改革への努力、近代産業の芽生えなどに着目して、幕藩体制動揺期の内外の情勢を理解させる。

イ 新思想の展開と教育の普及
 国学、洋楽などの発展、政治や社会を批判する思想の形成、教育や情報の普及などに着目して、我が国の近代化の基盤を形成した学問・思想の展開を理解させる。

(4)近代日本の形成と展開

 開国、明治維新を経て、近代日本が急速に形成された過程及び第二次世界大戦の終結に至った過程について、国際環境と関連付けて理解させる。

ア 欧米文化の導入と明治維新
 開国とその影響、明治政府による諸制度の改革、文明開化と殖産興業、明治初期の外交などに着目して、欧米文化の影響と近代化の推移を理解させる。

イ 近代国家の成立と国際関係の推移
 自由民権運動の展開、立憲体制の成立、条約改正、日清・日露戦争とその前後の国際環境などに着目して、近代的立憲国家の成立と国際関係の推移を理解させる。

ウ 近代産業の発展と国民の生活
 資本主義の発展と社会問題の発生、地域社会の生活と文化などに着目して、産業革命の進行による近代産業の発展と国民生活の変化を理解させる。

エ 政党政治と学問や文化の進展
 政党の役割と社会的な基盤、時代の変化と近代文化の形成などに着目して、明治中期から昭和初期までの政党政治の推移と学問や文化の進展を理解させる。

オ 両大戦をめぐる国際情勢と日本
 諸国家間の対立や協調関係と日本の立場、国内の経済・社会の動揺、アジア近隣諸国との関係などに着目して、二つの世界大戦とその間の内外情勢の変動を理解させる。

(5)現代の世界と日本

 第二次世界大戦後の民主化と復興、国際社会への復帰、経済の発展と現代の日本について、世界の動向と関連付けて理解させるとともに、我が国の課題と役割について認識させる。

ア 戦後の諸改革と国民生活の変化
 占領政策と諸改革、新憲法の成立、平和条約と独立、生活意識や価値観の変化などに着目して、我が国の再出発と国民生活の変化を理解させる。

イ 国際社会の動向と経済の発展
 東西関係の推移や我が国の国際社会への復帰、技術革新と経済の高度成長などに着目して、第二次世界大戦後の国際社会の動向と日本経済の復興、発展を理解させる。

ウ 現代の世界と日本
 経済や文化の国際的交流、科学技術の発展と世界の平和などに着目して、現代世界の動向と日本の課題及び役割を理解させる。

3 内容の取扱い

(1)内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。
 ア 我が国の歴史の展開を、諸外国との政治的な関係や経済・文化の接触・交流などと関連付け、世界の中の日本という視点から理解させること。
 イ 科目の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成するものとし、細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないこと。

(2)近・現代史の指導に当たっては、客観的かつ公正な資料に基づいて、事実の正確な理解に導くようにする。その際、核兵器の脅威に着目させ、戦争を防止し、民主的で平和な国際社会を実現することが重要な課題であることを認識させること。

(3)我が国の歴史の展開を、時代ごとに区切らずに考察することを通して、学習の深化と歴史的思考力の育成を図るため、次のアからオまでのうち二つ程度を選択して学習させるものとする。

ア 法制の変化と社会
 日本における各時代の法制の特色とその変化を理解させるとともに、それらが社会的な背景とどのように関連していたかを考察させる。

イ 産業・生活技術と交通の発達
 産業や生活の中の技術及び交通機関の発達などが、とのように生産の拡大、生活の変化、人、物、情報の移動をもたらしたかを考察させる。

ウ 教育の普及と文化の進展
 教育の普及とそれを取り巻く各時代の文化が、社会の発展や人々の生活にどのような影響を及ぼしたかを考察させる。

エ 日本人の生活と信仰
 日本人の衣食住を中心とした生活様式の変化及び精神生活の推移について、時代的背景や地域とも関連付けて考察させる。

オ 地域社会の形成と発展
 地域社会がどのように形成され発展してきたかについて、政治的・経済的な条件、時代的背景や国際的な動きとも関連付けて考察させる。

第4 日本史B

1 目標

 我が国の歴史の展開を、世界史的視野に立って総合的に理解させ、我が国の文化と伝統の特色についての認識を深めさせることによって、歴史的思考力を培い、国民としての自覚と国際社会に生きる日本人としての資質を養う。

2 内容

(1)日本文化の黎明

 旧石器文化、縄文文化及び弥生文化の時代の日本列島における人類の生活の発展について理解させる。

ア 日本列島における人類文化の発生
 人類の生活と自然環境との関連や原始信仰などに着目して、旧石器文化及び縄文文化の時代の日本を理解させる。

イ 農耕の開始と社会生活の変化
 大陸文化の影響を受けて農耕や金属器の使用が開始されたことなどに着目して、弥生文化の時代の社会生活の変化を理解させる。

(2)古代国家と古代文化の形成

 大和朝廷による統一、律令に基づく古代国家の成立と推移及び文化の形成について、東アジア世界の動きとも関連付けて理解させる。

ア 国家の形成と大陸文化の摂取
 古墳文化の特色や大陸文化の摂取と日本に渡来した人々の果たした役割などに着目して、日本における国家の形成過程を理解させる。

イ 律令体制の推移と古代文化の形成
 隋・唐への使節の派遣、律令の制定、天平文化の特色などに着目して、律令に基づく国家体制の推移を理解させる。

ウ 文化の国風化と地方の動向
 大陸との関係の変化、政治の動き、荘園や公領の変遷、武士の台頭などに着目して、国風文化の成立と律令体制の動揺に伴う地方の動向を理解させる。

(3)中世社会の成立と文化の展開

 鎌倉幕府の成立から戦国大名の時代に至る武家社会の進展と文化の展開について、社会の動向と関連付けて理解させる。

ア 武家政権の成立と文化の新気運
 武士の土地支配や生活、鎌倉新仏教とその背景、宋・元との関係などに着目して、武家政権の形成過程と文化に見られる新しい気運を理解させる。

イ 武家政権の展開と国際関係
 公武関係の推移、日明貿易の拡大、武家文化の形成と公家文化、中国文化とのかかわりなどに着目して、武家社会の進展とアジア世界との交流を理解させる。

ウ 社会・経済の変容と庶民文化の萌芽
 産業の発展、農民や商工業者の動向、戦国大名の支配、文化の地方への普及などに着目して、都市及び農村の発達や下克上の社会と庶民文化の萌芽を理解させる。

(4)幕藩体制の推移と文化の動向

 織豊政権及び幕藩体制の特色と推移、文化の動向について、国際関係の変化とその社会や文化への影響にも触れながら理解させる

ア ヨーロッパ文化との接触と織豊政権
 国内の政治・社会の動きと対外関係、桃山文化の特色などに着目して、ヨーロッパ文化との接触とその影響、織豊政権の統一事業を理解させる。

イ 幕藩体制の形成と鎖国
 幕府及び藩の支配体制や身分制度、儒学の役割、対外関係の推移などに着目して、幕藩体制社会の特質と鎖国政策を理解させる。

ウ 産業経済の発展と都市や農村の文化
 幕藩体制の下での経済機構や交通・技術の発展、都市の繁栄などに着目して、農業や商工業の発展及び町人文化の形成、農山漁村の生活文化を理解させる。

エ 国際環境の変化と幕藩体制の動揺
 欧米諸国のアジアへの進出、学問・思想の新たな展開と近代化の基盤の形成などに着目して、幕藩体制の動揺と崩壊の過程を理解させる。

(5)近代日本の形成とアジア

 開国、幕府の滅亡と新政府の成立から明治時代の近代日本の歩みについて、アジアにおける国際環境と関連付けて理解させる。

ア 欧米文化の導入と明治維新
 開国とその影響、明治政府による諸制度の改革、文明開化と殖産興業、明治初期の外交などに着目して、欧米文化の影響と近代化の推進を理解させる。

イ 立憲体制の成立と政治思想
 自由民権運動の展開、憲法の制定と議会政治の開始、欧米の思想と日本の伝統的思想との関連などに着目して、立憲体制の成立とそれをめぐる政治思想を理解させる。

ウ 国際関係の推移と近代産業の発展
 条約改正、日清・日露戦争とその前後の国際環境、資本主義の発展と社会問題の発生などに着目して、アジア及び欧米諸国との関係の推移と近代産業の発展を理解させる。

エ 近代文化の発展と都市や農村の生活
 学問、科学技術、芸術の発展や教育制度の拡充、地域社会の生活と文化などに着目して、近代の文化の特色と国民生活の変化を理解させる。

(6)両世界大戦と日本

 第一次世界大戦から第二次世界大戦に至る20世紀前半の我が国の歴史について、世界情勢と国内の動きを関連付けて理解させる。

ア 第一次世界大戦と日本の経済
 対外政策の推移、第一次世界大戦の国内の経済・社会に及ぼした影響などに着目して、国際社会と日本のかかわりを理解させる。

イ 政党政治の発展と大衆文化の形成
 政党の成長とその基盤、社会運動の活発化、大衆社会の成立と生活文化などに着目して、政治の動向及び文化の特色を理解させる。

ウ 第二次世界大戦と日本
 国際間の対立、国内政治と経済の動揺、戦時体制の強化、アジア近隣諸国との関係などに着目して、第二次世界大戦と日本のかかわりを理解させる。

(7)現代の世界と日本

 第二次世界大戦の終結から今日に至る20世紀後半の我が国の歴史について、世界の動向と関連付けて理解させるとともに、広い視野から日本の文化や課題について認識させる。

ア 戦後の諸改革と国民生活の変化
 占領政策と諸改革、新憲法の成立、平和条約と独立、生活意識や価値観の変化などに着目して、我が国の再出発と国民生活の変化を理解させる。

イ 国際社会の動向と経済の発展
 東西関係の推移や我が国の国際社会への復帰、技術革新と経済の高度成長などに着目して、第二次世界大戦後の国際社会の動向と日本経済の復興、発展を理解させる。

ウ 現代の世界と日本
 国際理解の推進と日本文化の特色、世界の中の日本の立場などに着目して、現代世界の動向と日本の課題及び役割を理解させる。

(8)地域社会の歴史と文化

 地域社会の歴史と文化についてその地域の自然条件や政治的、経済的諸条件と関連付けて総合的に理解させる。

3 内容の取扱い

(1)内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。
 ア 我が国の歴史と文化を、各時代の国際環境との監査にも留意し、世界の中の日本という視点から理解させること。
 イ 科目の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成するものとし、細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないこと。
 ウ 文化に関する指導に当たっては、各時代の文化とそれを生み出した時代的背景との関連、外来の文化などとの接触や交流による文化の変容や発展の過程などに着目させ、我が国の文化と伝統の特色とそれを形成した様々な要因を総合的に考察させるようにすること。また、生活文化については、時代の特色や地域社会の有様などと関連付けるとともに、民俗学などの成果に基づきその具体的な様相を把握させること。

(2)近・現代史の指導に当たっては、客観的かつ公正な資料に基づいて、事実の正確な理解に導くようにする。その際、核兵器の脅威に着目させ、戦争を防止し、民主的で平和な国際社会を実現することが重要な課題であることを認識させること。

(3)内容の(8)の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 地域の範囲は、学校所在地を中心とする日常の生活圏、都道府県、それらを包含する地方など、学習指導上の観点に立って適宜設定すること。
 イ 学習指導上の観点や地域の特性に応じて、まとまった時間を設定して実施したり、内容の(1)から(7)までの学習に関連させて適宜実施したりするなど、効果的な方法をとること。
 ウ 地域の史跡や諸資料の調査・見学などを取り入れるとともに、遺物、伝承などの文化遺産を取り上げ、祖先が地域社会の向上と文化の創造や発展に努力したことを具体的に理解させ、それらを尊重する態度を育てるようにすること。

(4)生徒の歴史的思考力を深めさせるため、次の事項に留意しながら、適切な主題を設けて行う学習を実施するよう配慮するものとする。

ア 主題の設定に当たっては、例えば次のような観点が考えられること。
 (ア)我が国の文化と伝統の特色について、自然条件や時代的背景、国際環境などと関連させて総合的に学習できること。
 (イ)歴史上の人物について、その果たした役割や生き方などを時代的背景や地域の特性との関連において学習できること。
 (ウ)我が国の歴史の展開にみられる各地域の特性と時代的変化について、政治的、経済的条件などとの関連において学習できること。
 (エ)衣食住、年中行事、冠婚葬祭、生産用具などの生活文化について、時代や地域の特性との関連において学習できること。

イ 主題の選択に当たっては、できるだけ観点の異なるものを取り上げ、また、特定の時代や地域に偏らないこと。

第5 地理A

1 目標

 世界の人々の生活・文化に関する地域的特色と共通の課題を理解させ、世界を大小様々な地域的まとまりから考察させることによって、地理的な見方や考え方を培い、国際社会に生きる日本人としての自覚と資質を養う。

2 内容

(1)現代世界と地域

 現代世界の特色を地図の活用や地域調査を通して理解させ、現代世界を地理的にとらえる方法について考察させる。

ア 地球儀、世界地図で読む現代世界
 交通・通信の発達による世界諸地域の位置、距離関係の変化及び国境を越える交流の進展、国家間の結合、領土問題などに関する現代世界の特色と動向を、地球儀や多様な地図を活用して理解させる。

イ 地図の機能と活用
 情報の地図化や読図などの活動を通して地図に親しませるとともに、地図上の位置、距離関係を踏まえて社会的諸事象をとらえることが効果的であることを理解させる。

ウ 地域の変容と現代世界
 地域調査などを通して国際化の進展の影響が身近な地域にも及んでいることを理解させる。

(2)世界の人々の生活・文化と交流

 自然環境及び社会環境の多様性を背景に、世界の諸民族の生活の特色を理解させ、異なる地域に生きる人々が交流を深める際の課題などについて考察させる。

ア 自然環境と人間生活
 自然環境の地域的特色を理解させ、世界の人々の生活・文化が各地域の自然環境と深くかかわっていることに着目させ、自然と人間との関係の変容について考察させる。

イ 諸民族の生活・文化と地域性
 世界の諸民族の生活・文化を地域の自然環境及び社会環境と関連付けて理解させ、地域によって異なる人々の生活・文化を理解することの意義について考察させる。

ウ 諸地域の人々の交流と日本の課題
 自然環境及び社会環境の多様性を背景にして、諸地域の人々の交流の現状と課題を具体的に理解させ、日本人が世界の諸地域の人々と交流する際の課題などについて考察させる。

(3)現代世界の課題と国際協力

 地球的課題のうち、特に地域性を踏まえて把握させることが大切な課題を地球的及び地域的な視野から理解させ、それらの課題の解決に当たっては各国の取組とともに国際協力が必要であることを考察させる。

ア 地球的課題の出現とその要因
 環境、資源・エネルギー、人口、食料及び居住・都市問題などの動向に着目させ、現代世界は地球的課題を多く抱えていることを理解させ、それらの諸課題を出現させた要因について考察させる。

イ 諸地域からみた地球的課題
 地球的課題は諸地域共通の課題であるとともに各地域によって現れ方が異なっていることを理解させ、地球的課題を地域的な視野から把握することの意義やそれに対する各国の取組について考察させる。

ウ 地球的課題への国際協力と日本
 地球的課題の解決には、各国の取組のみならず、国際協力が必要であることを理解させ、日本の地球的課題への取組や国際協力において果たしている日本の役割などについて考察させる。

3 内容の取扱い

(1)科目の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成するものとし、細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないよう配慮するものとする。

(2)内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)のアについては、特に国際化の進展という観点から、現代世界の特色と動向を大観させるよう工夫すること。イについては、作図は簡単なものにとどめ、図法には深入りしないこと。また、作業的な学習を取り入れ、そのための時間を適切に設けること。ウについては、指導計画の中に野外調査の時間を設けて、積極的に実施すること。
 イ 内容の(2)のア、ウ及び(3)のイ、ウにおいては、二つ又は三つの事例を適切に選んで取り上げ、重点的で具体的な学習ができるようにすること。なお、事例として取り上げる地域については、各項目間で調整し、全体として一部の地域に偏ることのないよう工夫すること。
 ウ 内容の(2)のアについては、自然環境の地域的特色を大観させるにとどめ、自然環境の影響は過大又は過小に評価しないよう扱うこと。イについては、世界の諸民族のうちから三つ程度の民族を適切に選んで取り上げ、それらの民族の生活様式を生徒の身近な生活様式とも比較しながら扱うよう工夫すること。ウについては、海外生活や海外旅行の体験者や外国人の協力を得たり、それらの人々の体験などをまとめた書物を活用したりして、体験的な学習などについても工夫すること。
 エ 内容の(3)のアについては、地球的課題の出現の要因を多面的に扱うように工夫すること。イについては、指導の観点や生徒の興味・関心に留意し、適切な課題を精選して取り上げること。ウについては、地球的課題を自らの課題としても受け止めさせ、主体的な取組を促すよう工夫すること。

第6 地理B

1 目標

 世界の人々の生活・文化に関する地域的特色とその動向を、自然環境及び社会環境と関連付けて理解させ、世界と日本を比較し多面的に考察させることによって、地理的な見方や考え方を培い、国際社会に生きる日本人としての自覚と資質を養う。

2 内容

(1)現代と地域

 現代世界の特色を地図的な観点から理解させ、地図の活用や地域の調査などを通して世界や日本の諸地域を把握する方法について考察させる。

ア 交通・通信の発達と世界の結合
 交通・通信の発達が人々の地理的視野を拡大し地域間の交流を一層密接にしていることを理解させ、国際社会の形成に大きな役割を果たしていることについて考察させる。

イ 現代世界の国家と国家群
 現代世界の地域構成を理解させ、現代世界の国家、国家間の結合、領土問題などの動向ついて考察させる。

ウ 球面上の世界と地図
 地球表面上の方位、位置関係は、日常生活におけるそれとは大きく異なることに着目させ、世界諸地域の地球表面上の方位、位置、距離関係や時差及び世界地図の利用上の問題などについて理解させる。

エ 地理情報と地図
 地域に関する情報を適切に選択、処理し、地図化するなどの活動を通して、地域の特色を資料に基づいて把握する方法を考察させるとともに、日常生活において活用できる地図・画像も目的に応じて作成されていることを理解させる。

オ 地域の調査と研究
 地域調査などを通して、特に地域の変容の様子に着目させて、国際化の進展の影響が身近な地域にも及んでいることを理解させるとともに、世界の国々に関する資料を活用した文献調査を通してその特色を理解させ、世界や日本の諸地域を調査・研究する方法について考察させる。

(2)人間と環境

 成果の人種・民族及び人間の生活・文化の特色を国家とも関連付けて理解させるとともに、人間を取り巻く環境の多様性についても理解させ、人間と自然との関係や環境問題について考察させる。

ア 人種・民族と国家
 世界に居住する人種・民族の地域的特色を理解させ、人種・民族と国家との関係などについて考察させる。

イ 世界の人口問題
 世界の人口の分布や動態を地球的視野から理解させるとともに、人口問題の現れ方は地域によって異なっていることを理解させ、その解決への取組について考察させる。

ウ 自然環境の地域性
 世界の自然環境の地域的特色を、自然を構成する諸要素を相互に関連付けて、総合的に理解させる。

エ 人間生活と環境
 生活様式や生産様式、集落の立地など人間の諸活動を自然環境及び社会環境と関連付けて理解させ、人間と自然との関係の変容について考察させる。

オ 世界の環境問題
 世界の環境問題の動向を地球的視野から理解させるとともに、環境問題の現れ方は地域によって異なっていることを理解させ、その解決への取組について考察させる。

(3)生活と産業

世界の人々の生活の地域的特色とその動向を産業や居住の問題と関連付けて理解させ、交通・通信、流通などの産業の動向が人々の行動や地域の産業、文化などに及ぼす影響について考察させる。

ア 産業の立地と地域の変容
 農業、工業など産業活動の地域的特色をその立地と形成の諸条件と関連付けて理解させ、産業の立地と地域の変容の関係について考察させる。

イ 産業の国際化、情報化と地域分化
 諸地域の産業活動の現状と動向を国際化、情報化の進展と関連付けて理解させ、これらの社会の変化が諸地域の産業活動に及ぼす影響について考察させる。

ウ 都市、村落の機能と生活
 都市、村落の機能や結び付きなどの地域的特色と動向を人々の生活と関連付けて理解させる。

エ 産業、人口の都市集中と都市問題
 産業や人口の都市集中の地域的特色を理解させ、それらが地域の産業や生活・文化に及ぼす影響や快適な環境づくりを目指す諸活動について考察させる。

オ 行動空間の拡大と生活意識の変化
 世界の人々の消費や余暇に関する行動の地域的特色とその動向を地理的諸条件と関連付けて理解させ、消費や余暇の行動圏の拡大が諸地域の産業や開発に及ぼす影響について考察させる。

(4)世界と日本

 地域の特色を総合的に把握する方法を考察させるとともに、日本の全体的な特色を理解させ、国際社会における日本の立場と役割について考察させる。

ア 世界の地域区分と地域
 自然や文化などの多様性に着目させて世界を幾つかの地域に区分する方法を理解させるとともに、世界の地域の特色を総合的に把握する方法について考察させる。

イ 日本の地域性とその変容
 日本の国土の特色とその変容を、位置や領域などの諸要素を関連付けて、総合的に理解させる。

ウ 国際化の進展と日本
 現代世界における日本の立場と役割を地理的な観点から総合的に考察させるとともに、国際社会に生きる日本人としての態度について考察させる。

3 内容の取扱い

(1)内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。
 ア 科目の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成するものとし、細かな事象や高度な事項・事柄には深入りしないこと。
 イ 指導内容の構成に当たっては、特定の項目に偏らないこと。
 ウ 各項目の中にできるだけ日本を含めて扱うとともに、日本と比較関連させて考察させること。

(2)内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)のア及びイについては、事例を通して具体的に扱い、現代世界の特色と動向を大観させるよう工夫すること。ウ及びエについては、取り上げる地図・画像を精選し、高度な図法には深入りしないこと。また、作業的な学習を取り入れ、そのための時間を適切に設けること。オについては、指導計画の中に野外調査と文献調査の時間を設けて、積極的に実施すること。なお、世界の国々に関する文献調査については、適切な国を一つ選んで扱うこと。
 イ 内容の(2)のイからオまで及び(3)の各項目においては、世界の諸地域のうちから二つ又は三つの地域を適切に選んで取り上げ、具体例を通して学習できるようにすること。また、系統地理的な方法と地誌的な方法との相互補完の関係に留意し、取り上げた地域については多面的に扱うよう努めること。なお、取り上げる地域については、各項目間で調整し、全体として一部の地域に偏ることのないよう工夫すること。
 ウ 内容の(2)のアについては、世界の諸民族のうちから三つ程度の民族を適切に選んで取り上げ、それらの民族の生活様式を生徒の身近な生活様式とも比較しながら具体的に把握させること。イ及びオについては、地球的及び地域的な視野からとらえ、理科的、政治・経済的な内容には深入りしないこと。ウについては、自然環境の地域的特色を大観させるにとどめること。エについては、自然環境の影響を過大又は過小に評価することのないよう扱うこと。
 エ 内容の(3)のア及びイについては、農牧・林・水産業や鉱・工業などの産業別に網羅した扱いは避けること。なお、これらの項目の指導内容が他の項目の指導内容に比べて増大することのないよう特に留意し、精選すること。ウについては、集落の発生論や形態論・機能論には深入りしないこと。エについては、特に現代世界の動向に留意して扱い、政治・経済的な内容には深入りしないこと。オについては、我が国の国民生活の動向にも留意して扱うこと。
 オ 内容の(4)のアについては、世界の諸地域を網羅的に取り上げることはせず、三つ程度の地域を選んで取り上げること。なお、この項目の指導内容が他の項目に比べて増大することのないよう特に留意し、ここではアジア、アフリカといった州、大陸以上の大きな地域は取り上げず、また、地域を構成する諸要素を有機的に関連付けて把握させることのできる地域を適切に選んで取り上げること。イについては、世界を構成する一つの地域として扱い、日本の諸地域を扱ったり、諸要素を網羅的に扱ったりはしないよう特に留意すること。ウについては、現代世界の地理的認識を基にして、日本の立場と役割を具体的、多面的に扱うよう工夫すること。

第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。
(1)地理歴史科の目標を達成するため、教科全体として調和のとれた指導が行われるよう、適切に留意すること。
(2)中学校社会科及び公民科との関連並びに地理歴史科に属する科目相互の関連に留意すること。

2 指導の全般を通じて、情報を主体的に活用する学習活動を重視するとともに、作業的、体験的な学習を取り入れるよう配慮するものとする。そのため、地図や年表を読みかつ作成すること、各種の統計、年鑑、白書、新聞、読み物その他の資料に親しみ、活用すること、観察、見学及び調査・研究したことを発表したり報告書にまとめたりすることなど様々な学習活動を取り入れるとともに、教育機器などの有効な利用を工夫して学習効果を上げるようにする必要がある。

お問合せ先

初等中等教育局

-- 登録:平成21年以前 --