第2節 社会

第1 目標

  社会生活についての理解を図り、我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育て、国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う。

第2 各学年の目標及び内容

〔第3学年〕

1 目標

(1)自分たちの生活は、地域にある公共施設の働きや地域の人々の協力によって支えられていることを理解できるようにし、地域社会の成員としての自覚を育てる。

(2)地域の人々の生活は、自然環境と結び付いて営まれており、地域によって消費生活や生産活動に特色があることや人々の生活の様子は変化していることを理解できるようにし、地域社会を大切にする態度を育てる。

(3)地域における社会的事象を具体的に観察し、地図その他の具体的資料を効果的に活用することができるようにするとともに、地域社会の社会的事象の特色を考えるようにする。

2 内容

(1)自分たちの地域の人々が、公民館、図書館などの公共施設を利用している様子及び地域の清掃や交通安全などの活動に参加している様子を観察したり調べたりして、地域の人々は協力して生活の向上や住みよい環境づくりに努力していることに気付くようにするとともに、自分も地域社会の一員として協力できるようにする。

(2)自分たちの市(区、町、村)の特徴ある地形、土地利用の様子や集落の分布、交通の様子などについて観察したり地図に表したりして、地域の人々の生活は自然環境と深い関係があることや場所によって人々の生活には違いがあることを理解できるようにする。

(3)自分たちの市(区、町、村)を中心にした地域の商店や商店街の様子について調べて、地域の人々は品質や価格などを考えて購入していることや、商店や商店街などでは販売について工夫していることを理解できるようにするとともに、自分たちの地域は消費生活を通して広く国内の他地域などとかかわりがあることに気付くようにする。

(4)自分たちの市(区、町、村)を中心とした地域の重要な生産活動は、自然環境を生かしながら営まれていること及び原料の入手や生産品の販売などの面で工夫がなされていることについて調べて、地域の生産活動の特色と工夫について理解できるようにするとともに、自分たちの地域は生産活動を通して広く国内の他地域などとかかわりがあることに気付くようにする。

(5)自分たちの市(区、町、村)を中心にした地域の人々の生活について、家屋や道具、交通などの移り変わりを中心に調べたりそれを年表にまとめたりして、地域の人々の生活は、およそ100   年くらいの間に大きく変わってきたことを理解できるようにするとともに、地域の文化財や年中行事に関心をもち、人々の願いについて考えることができるようにする。

3 内容の取扱い

(1)内容の(1)については、生活科との関連を考慮して、自分と地域の人々や地域社会とのかかわりについて考えさせるよう配慮する必要がある。

(2)内容の(3)については、地域の消費生活の特色を消費者の立場から考えさせるよう配慮する必要がある。

(3)内容の(3)及び(4)については、地域の生活が国内の他地域だけではなく、外国ともかかわりがあることに気付かせるよう配慮するものとする。その際、児童に無理のない取扱いをする必要がある。

〔第4学年〕

1 目標

(1)地域社会における人々の健康や安全を守るための諸活動、地域の地形や産業などの様子及び地域の発展に貢献した先人の働きを理解できるようにし、地域社会の成員として地域社会の発展を願う態度を育てる。

(2)自然環境としての国土の特色や自然条件からみて国内の特色ある地域における人々の生活の様子について理解できるようにし、広い視野から地域社会の生活を考える態度を育てる。

(3)地域における社会的事象を具体的に観察し、地図や各種の資料を効果的に活用できるようにするとともに、社会的事象の特色や相互の関連などについて考えるようにする。

2 内容

(1)地域の人々の生活にとって必要な飲料水、電気、ガスなどの確保及び廃棄物の処理についての対策や事業が計画的、協力的に進められていることを見学したり調べたりして、これらの対策や事業は地域の健康な生活の維持と向上に役立っていることを理解できるようにする。

(2)地域社会において、火災、交通事故、盗難などの災害や事故から人々の安全を守るため、関係の諸機関が相互に連絡を取り合いながら緊急に対処刷る体制をとっていることを見学したり調べたりして、人々の安全を守るための関係機関の働きとそこに従事している人々の工夫や努力について理解できるようにする。

(3)県(都、道、府)内における自分たちの市(区、町、村)の地理的位置を確認し、また、県(都、道、府)全体の地形や主な産業、都市や交通網などを調べたり白地図などに記入したりして、それらの特色について理解できるようにするとともに、県(都、道、府)内における人々の生活は国内の他地域や外国ともかかわりがあることに気付くようにする。

(4)地域の文化や開発などに尽くした先人の具体的な事例を調べて、先人の働きや苦心を当時の人々の生活の様子や考え方、技術や道具などの面から理解できるようにするとともに、現在にあっても地域の人々の生活の向上と安定のためにいろいろな努力がなされていることに気付くようにする。

(5)地図その他の資料を活用して国土の位置、地形、気候などの概要を調べて、それらの特色を理解できるようにするとともに、自然条件からみて国内の特色ある地域を取り上げ、人々が自然環境に適応しながら生活している様子に関心をもつようにする。

3 内容の取扱い

(1)内容の(1)、(2)及び(4)については、取り上げる対象や事例を精選するよう配慮する必要がある。

(2)内容の(5)の国土の位置の指導については、我が国の領土と近隣の諸国を取り上げるものとする。その際、我が国や諸外国には国旗があることを理解させるとともに、それを尊重する態度を育てるよう配慮する必要がある。

〔第5学年〕

1 目標

(1)我が国の食料生産、工業生産の特色及び運輸、通信などの産業の様子やこれらの産業と国民生活との関連について理解できるようにし、我が国の産業の発展に関心をもつようにする。

(2)我が国の国土の様子について理解できるようにし、環境の保全と資源の重要性について関心を深めるようにするとともに、国土に対する愛情を育てる。

(3)地図、年表、統計などの基礎的資料を効果的に活用することができるようにするとともに、社会的事象の意味について考えるようにする。

2 内容

(1)我が国の農業や水産業の現状に触れ、それらの産業に従事している人々が生産を高める工夫をしていることを理解できるようにするとともに、国民生活を支える食料生産の意味について考えることができるようにする。
 ア 我が国の農業について、主な農産物とその分布、土地利用の特色などを地図や資料などで調べて、我が国の農業は自然環境と深いかかわりをもって営まれていることや国民の食料の確保の上で農産物の生産が大切であることなどを理解するとともに、農業の盛んな地域の具体的事例を調べて、農業に従事している人々の工夫や努力に気付くこと。
 イ 我が国の水産業について、主な漁港や漁場、漁獲高などを地図や資料などで調べて、我が国の水産業の特色や国民の食生活の上で水産資源が大切であることなどを理解するとともに、水産業の盛んな地域の具体的事例を調べて、水産業に従事している人々の工夫や努力に気付くこと。

(2)我が国の工業生産の現状に触れ、工業に従事している人々が生産を高める工夫をしていることを理解できるようにするとともに、国民生活を支える工業生産の意味について考えることができるようにする。
 ア 我が国の工業について、工業地域の分布や各種の工業生産の特色などを地図や資料などで調べて、原料を輸入し製品を輸出している我が国の工業の特色や国民生活の上で工業生産が大切であることなどを理解するとともに、工業の盛んな地域の具体的事例を調べて、工業に従事している人々の工夫や努力に気付き、また、各種の公害から国民の健康や生活環境を守ることが大切であることを考えること。
 イ 我が国の伝統的な技術を生かした工業について、それが盛んな地域や生産物を地図や資料などで調べて、原料や土地の条件、技術などを生かして生産していることを理解するとともに、伝統的な技術を生かした工業製品のもつ意味について考えること。

(3)我が国の運輸、通信などの産業の現状に触れ、それに従事している人々の工夫や努力について理解できるようにするとともに、国民生活を支えるこれらの産業の意味について考えることができるようにする。
 ア 我が国の陸上、海上、航空などの運輸業や主な貿易相手国との輸出入の品目などについて、地図や地球儀、資料などで調べて、我が国の運輸業の働きや貿易の特色について理解するとともに、これらの産業に従事している人々の工夫や努力に気付くこと。
 イ 我が国の放送、新聞、電信電話などの産業について、見学したり資料で調べたりして、これらの産業は国民の日常生活と深いかかわりがあることや国民の生活に大きな影響を及ぼしていることを理解するとともに、これらの産業に従事している人々が工夫や努力をしていることやこれからの生活において情報の有効な活用が大切であることに気付くこと。

(4)我が国の国土の様子について、土地利用、人口分布、資源の分布、交通網、自然災害などを地図や資料などで調べて、これらが国内各地の人々の生活や産業と密接な関連をもっていることを理解できるようにするとともに、国土の保全や水資源の涵養などのために森林資源が大切であることに気付くようにする。

3 内容の取扱い

(1)内容の(1)のアについては、農業の盛んな地域の具体的事例は、稲作のほか、野菜、果実、畜産物などの生産の中から一つを取り上げるものとする。

(2)内容の(2)のアについては、工業の盛んな地域の具体的事例は、金属工業、機械工業、化学工業などの中から一つを取り上げるものとする。

(3)内容の(3)のイについては、放送、新聞、電信電話などの中から一つを取り上げるものとする。

(4)内容の(4)については、森林資源の育成や保護に従事している人々の工夫や努力及び環境保全のための国民一人一人の協力の必要性に気付かせるよう配慮する必要がある。

〔第6学年〕

1 目標

(1)国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産について関心と理解を深めるようにし、我が国の歴史や伝統を大切にする心情を育てる。

(2)日常生活における政治の働きと我が国の政治の仕組みや考え方及び我が国と関係の深い国の様子や国際社会の中で占めている我が国の役割を理解できるようにし、世界の中の日本人としての自覚を育てる。

(3)地図、年表などの各種の基礎的資料を効果的に活用することができるようにするとともに、社会的事象の意味をより広い視野から考えるようにする。

2 内容

(1)我が国の歴史は、大和朝廷による国土統一が行われてから、政治の中心地や世の中の様子などによって幾つかの時期に分けられることに気付き、それぞれの時代の歴史上の主な事象について、人物の働きや代表的な文化遺産を中心に理解できるようにするとともに、我が国の歴史や先人の働きについて関心を深めるようにする。
 ア 身近な地域や国土に残っている遺跡や文化財などを調べて、自分たちの生活の歴史的背景に関心をもつとともに、我が国の歴史を学ぶ意味について考えること。
 イ 遺跡や遺物などを調べて、農耕が始まると人々の生活や社会の様子が変わったことや、大和朝廷による国土の統一の様子について理解すること。その際、神話・伝承を調べて、国の形成に関する考え方などに関心をもつこと。
 ウ 大陸文化の摂取や大化の改新、大仏造営などの様子について調べて、天皇を中心とした政治が確立していったことを理解すること。
 エ 貴族を中心とした華やかな生活の様子や寝殿造りなどについて調べて、京都に都が置かれていたころの政治の様子や日本風の文化が起こったことを理解すること。
 オ 源平の戦い、鎌倉幕府の始まり、元との戦いなどについて調べて、武士が勢力をもつに至ったころの様子について理解すること。
 カ 京都の室町に幕府が置かれたころの代表的な建造物や絵画などについて調べて、そのころ新しい文化が生まれたことを理解すること。
 キ 鉄砲やキリスト教の伝来、織田・豊臣の天下統一などについて調べて、戦国の世が統一されていくころの様子について理解すること。
 ク 江戸幕府の始まり、大名行列や鎖国などについて調べて、身分制度が確立し、武士による政治が安定したことを理解すること。
 ケ 歌舞伎や浮世絵、国学や蘭学などについて調べて、江戸時代の人々の暮らしの様子や新しい学問が起こったことを理解すること。
 コ 黒船の来航、明治維新、文明開化などについて調べて、明治時代に入り廃藩置県や四民平等などの諸改革が行われ、欧米の文化を取り入れつつ我が国の近代化が進められたことを理解すること。
 サ 大日本帝国憲法の発布、日清・日露の戦争、条約改正などについて調べて、国力が次第に充実し、国際的地位が向上したことを理解すること。
 シ 日華事変、我が国にかかわる第二次世界大戦、日本国憲法の制定などについて調べて、戦後は民主的な国家として出発したことを理解すること。

(2)政治は国民生活の安定と向上を図るために大切な働きをしていることに気付くようにするとともに、現在の我が国の民主政治が日本国憲法の基本的な考え方に基づいていることを理解できるようにする。
 ア 身近な公共施設の建設や災害復旧の取組みなどについて調べて、そこには地方公共団体や国の政治の働きが反映していることを理解すること。
 イ 選挙の様子や国会の働きなどを調べて、現在の政治は国民が選んだ代表者による議会政治によって成り立っていることを国民主権と関連付けて理解すること。
 ウ 日本国憲法には国家の理想、天皇の地位、国民としての権利及び義務などの重要な事柄が定められていることを調べて、それらは国家や国民生活の基本であることを理解すること。

(3)今日、我が国は経済や文化の交流などで世界の国々と深いつながりをもっていることを理解できるようにするとともに、平和を願う日本人として世界の国々と協調していくことが大切であることを自覚できるようにする。
 ア 我が国と経済や文化などの面でつながりが深い国があることを調べて、それらの国の人々の生活の様子などを理解し、他国と協調を図るためには正しい国際理解が必要であることを考えること。
 イ スポーツや文化などの国際交流、平和な国際社会の実現に努力している国際連合の働きについて調べて、世界平和の大切さと我が国が世界において重要な役割を果たしていることを理解すること。

3 内容の取扱い

(1)内容の(1)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア 児童の興味や関心を重視し、取り上げる人物や文化遺産を精選して具体的に理解させるとともに、歴史的事象を網羅的に取り上げることがないよう配慮する必要があること。
 イ イの神話・伝承については、古事記、日本書紀、風土記などの中から適切なものを取り上げること。
 ウ イからサまでについては、例えば、次に掲げる人物を取り上げて指導すること。
 卑弥呼、聖徳太子、小野妹子、中大兄皇子、中臣鎌足、聖武天皇、行基、鑑真、藤原道長、紫式部、清少納言、平清盛、源頼朝、源義経、北条時宗、足利義満、足利義政、雪舟、ザビエル、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、徳川家光、近松門左衛門、歌川(安藤)広重、本居宣長、杉田玄白、伊能忠敬、ペリー、勝海舟、西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允、明治天皇、福沢諭吉、大隅重信、板垣退助、伊藤博文、陸奥宗光、東郷平八郎、小村寿太郎、野口英世
 エ シについては、取り上げる歴史的事象を精選するとともに、その指導に当たっては、児童の発達段階を考慮し社会的背景にいたずらに深入りしないよう配慮すること。

(2)内容の(2)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア 政治の働きと国民生活との関係を具体的に指導する際には、国民の祝日に関心をもち、その意義を考えさせるよう配慮すること。
 イ アについては、租税の役割についても取り上げるよう配慮すること。
 ウ イについては、政治の制度や機構に深入りすることのないよう配慮すること。
 エ ウの天皇については、日本国憲法に定める天皇の国事に関する行為など児童に理解しやすい具体的な事項を取り上げ、歴史に関する学習との関連も図りながら、天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにすること。また、ウの国民としての権利及び義務については、参政権、納税の義務などを取り上げること。

(3)内容の(3)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア アについては、数か国を取り上げること。
 イ ア及びイについては、観念的、抽象的な指導にならないように留意し、正しい国際理解と世界平和への努力が大切であることを理解させるよう配慮すること。また、我が国の国旗と国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育てるとともに、諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育てるよう配慮すること。

第3 指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては、博物館や郷土資料館等の活用を図るとともに、身近な地域及び国土の遺跡や文化財などの観察や調査を行い、それに基づく表現活動が行われるよう配慮する必要がある。

2 第2の内容の取扱いについては、次の事項に配慮する必要がある。
(1)各学年の指導については、児童の発達段階を考慮し社会的事象を公正に判断できるようにするとともに、個々の児童に社会的なものの見方や考え方が養われるようにすること。
(2)第4学年以降においては、児童が教科用図書の地図を活用するようにすること。

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-- 登録:平成21年以前 --