目標に盛り込まれた「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」とは,どういうことを意味しているのでしょうか。また,具体的にはどのような指導を行うのでしょうか。
小学校の家庭科では,生涯の家庭生活を支える基盤となる能力をはぐくむといった視点から,現行の「家庭生活への関心を高める」を「家庭生活を大切にする心情をはぐくみ」としました。このことは,家庭生活への関心を高めるとともに,衣食住などの生活の営みを大切にしようとする意欲や態度をはぐくむことを重視したものです。
これらの意欲や態度は,家庭科における家庭の仕事や生活時間の学習,衣食住などの実践的・体験的な学習を通して身に付くものです。このようにしてはぐくまれた心情が生涯にわたる家庭生活を支える基盤となります。
内容構成が現行の8つから4つの内容へと改善されましたが,学習を進めるに当たって留意すべきことはなんでしょうか。
内容構成の変更は,今回の改善の基本方針の一つである「中学校の内容との体系化」の視点を踏まえたものです。具体的には,中学校技術・家庭科〔家庭分野〕の内容との系統性や連続性を重視し,小学校・中学校ともに同様の枠組みをもつ4つの内容となりました。学習を進めるに当たっては,それぞれの学習指導要領の解説などを参考に小学校の基礎・基本の整理を行い,小・中学校5年間を効果的につないで確かな学力をはぐくむよう指導を充実する必要があります。
家庭科における食育についてはどのように進めていけばよいのでしょうか。
学校における食育の推進にあたっては,児童が食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付け,生涯にわたって健やかな心身と豊かな人間性をはぐくんでいくための基礎を培うことが大変重要です。
家庭科における食育の推進は,(1)家庭科の食に関する指導の一層の充実,(2)「家庭科などの食に関する指導を中核として,学校の教育活動で一貫した取組を推進(解説)」の二つの側面から充実を図る必要があります。各学校におかれては,児童の発達の段階や学校・地域の実態などを踏まえ,学校全体として一貫した食育の取組を推進していただくよう創意工夫をしていただきたいと思います。
中学校学習指導要領解説 技術・家庭編に,「第1学年で技術分野,第2学年で家庭分野に比重を置き」とありますが,1つの学年で一方の分野のみ指導し,他方の分野の授業はゼロ時間ということも許されるのでしょうか。
中学校学習指導要領解説 技術・家庭編では,各分野の各項目に配当する授業時数及び履修学年については,地域や学校及び生徒の実態等を考慮して効果があると判断される場合には,学年によって分野の授業時数に軽重をかけるという趣旨で「比重を置き」と記載しています。
これは,例えば,ある題材のまとまりで考えると,1学年は家庭分野を40時間,2学年は30時間にした方が効果的という場合には,柔軟に対応するということを想定しています。指導計画の作成と内容の取扱いにおいて、「いずれかの分野に偏ることなく配当して」と規定されているところであり、ご指摘の事例のように,ある学年では,どちらか一方の分野について,全く学習をしないということは不適切です。
技術分野では具体的にどのような題材で学習させればよいのでしょうか。
今回の学習指導要領の各内容は「(1)広く現代社会で活用されている技術について学習する項目等」,「(2)それらの技術を活用したものづくり(製作・制作・育成)を行う項目等」,「(3)ものづくりの経験を通して深めた技術と社会・環境とのかかわりの理解を踏まえ,現代及び将来において利用される様々な技術を評価し活用する能力と態度を育てる項目等」で構成されています。そして,それぞれの指導のねらいに応じて題材を検討することが大切です。
その際,例えば内容「A材料と加工に関する技術」の(1)で,木材や金属・プラスチックといった主な材料とそれぞれの加工技術についてすべて学習させるということではないことに注意してください。
地域で林業が盛んである学校では「木材」を中心に「加工に関する技術」について,また,「両刃のこぎり」を中心に「加工に関する技術」について学習させるなど,地域や学校及び生徒の実態等を十分に考慮し各学校で題材を設定することが大切です。
技術分野において「ものづくり」を行う際に,どのような点に配慮すべきなのでしょうか。
各内容における「ものづくり」について指導する項目等に,「設計図」や「フローチャート」などを用いて新しいアイデアを生み出したり,課題の解決策を検討したりする「計画・設計」といった活動が位置づけられていることに配慮が必要です。
また,その際,「知識と技術の習得とともに,知的財産を尊重する態度や技術にかかわる倫理観,緻密さへのこだわりや忍耐強さなどの育成のために有効な方法である」といったものづくりの長所が生かせるようにすることも大切です。
内容の取扱いに「技術に関する倫理観」や「新しい発想をうみだし活用しようとする態度」の育成が示されたのはなぜでしょうか。
例えば中学校学習指導要領解説(技術・家庭編)には,「技術に関する倫理観」としては,使い手の安全や環境に対する負荷の軽減に配慮して設計・製作することの大切さなどについて指導することが例示されています。また,「新しい発想をうみだし活用しようとする態度」では,知的財産を創造するとともに,他の人のアイデアを活用することの重要性について指導することが示されています。これらは現代社会で技術を活用する際に必要となる,「ものをつくる側が持つべき重要な態度」であることから,すべての内容で指導することとしました。
家庭分野の目標に盛り込まれた「これからの生活を展望する」の意図するところはどこにありますか。また,具体的にはどのような指導を行えばいいのでしょうか。
「これからの生活を展望する」とは,「将来にわたって自立した生活を営む見通しをもつ」ということです。家庭分野では,中学生の自己の生活の自立を目指して学習を行いますが,その過程で「自分にもこのような形で自立できるかもしれない」などと自立への見通しや期待をもつことを意図しています。
指導事項「生活の課題と実践」は,3事項から1又は2事項を選択するとありますが,どのように決めればよいのでしょうか。生徒が選ぶべきなのでしょうか。
「生活の課題と実践」は,生活の中から生徒が課題を見付け,計画を立て,実践し,評価,改善を行うという一連の問題解決的な学習を大切にしています。その視点からとらえると,生徒の主体性を尊重することが大切であり,中学校学習指導要領解説には,「3学年を見通した全体的な指導計画を作成する中で,生徒が学習事項を選択できるようにすることが望ましい」としています。
初等中等教育局教育課程課
-- 登録:平成21年以前 --