学習指導要領「生きる力」

Q&A

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7.音楽に関すること

Q(小・中学校)問7−1

 〔共通事項〕が新設された趣旨は何ですか。〔共通事項〕の指導に当たりどのような点に留意すればよいですか。

A答7−1

 指導のねらいや手だてを明確にし,児童生徒が感性を高め,思考・判断し,表現する一連の過程を重視した学習を充実することが求められています。このため,内容の全体構成を見直して,表現及び鑑賞に関する能力を育成する上で共通に必要となる〔共通事項〕を新設しました。

  

 小学校の事項アにおいては,音楽を形づくっている要素のうち,「音楽を特徴付けている要素」(音色,リズム,速度,旋律,強弱,拍の流れ,フレーズ,音の重なり,音階や調,和声の響きなど)及び「音楽の仕組み」(反復,問いと答え,変化,音楽の縦と横の関係など)を聴き取り,それらの働きが生み出すよさや面白さ,美しさを感じ取ることとしています。「聴き取ること」が中学校の「知覚」に当たり,「感じ取ること」が「感受」当たります。要素・仕組みを聴き取り(知覚し),その働きが生み出すよさなどを感じ取る(感受する)という一連の過程が音楽的な感受であり,感性を高め,思考・判断し,表現する過程となります。

 小学校の事項イは,「音符,休符,記号や音楽にかかわる用語について,音楽活動を通して理解すること」としています。音符,休符,記号や音楽にかかわる用語を単なる知識として取り出して教えても児童が学ぶ必然性を感じられなければ本当に身に付いたものとはなりません。 また,常に音楽活動の中で,感じたことを音符,休符,記号や音楽にかかわる用語で表し,それらを用いて思考・判断することが,表現の質を高めていくことにつながります。

 小学校音楽科の指導に当たっては,音楽を形づくっている要素や音符,休符,記号や音楽にかかわる用語を,表現及び鑑賞の各活動と関連させて,児童が学ぶ意義を感じながら音楽活動の中で生かして習得していくような指導の工夫が必要です。したがって,教師があらかじめ教えてしまうものではなく,児童が自分で発見し自分の言葉で言い表すようにしていくように指導することが大切です。

 中学校音楽科については,音楽を形づくっている要素について,従前は「音色,リズム,旋律,和声を含む音と音とのかかわり合い,形式など」を構成要素,「速度,強弱」を表現要素とし,それぞれ別の事項で示していました。今回の改訂に当たり,音(音色),音と音との時間的な関係(リズム,速度),連なりや織りなす関係(旋律,テクスチュア),音量の変化(強弱),音楽の組立て方(形式,構成)のような大きなくくりで再整理し,この順に「音色,リズム,速度,旋律,テクスチュア,強弱,形式,構成などの音楽を形づくっている要素や要素同士の関連を知覚し,それらの働きが生み出す特質や雰囲気を感受すること」(事項ア),「要素とそれらの働きを表す用語や記号などについて,音楽活動を通して理解すること」(事項イ)を〔共通事項〕として示しました。

 中学校音楽科の指導に当たっては,我が国や諸外国の様々な音楽の特徴をとらえる窓口として,表現及び鑑賞の各活動と関連させて,これらの要素に関する指導をすることが重要です。その際,どのような要素を知覚し,特質や雰囲気をどのように感受したのかをそれぞれ確認しながら結び付けていくこと,また,音楽に関する用語や記号などを用いてイメージや意図などを伝え合う活動を取り入れることによって,結果として,音を媒体とするコミュニケーションである音楽活動の質を高めていくことも大切です。

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Q(小学校)問7−2

 歌唱共通教材として取り扱う曲数が増えた理由は何ですか。

A答7−2

 歌唱共通教材を設けている意義は,我が国で親しまれてきた唱歌や童謡,わらべうた等を,子どもからお年寄りまで世代を超えて共有できるようになることにあります。また,我が国で長く歌われ親しまれてきたうたを取り扱うことは,我が国のよき音楽文化を受け継いでいく意味からも大切です。そのようなうたが更に取り上げられるように,これまで各学年ごとに4曲示してきた楽曲の中から,第1学年から第4学年までは4曲すべて(現在は4曲中3曲)を取り扱うこととし,第5学年及び第6学年は4曲中3曲(現在は4曲中2曲)を含めて取り扱うこととしました

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Q(中学校)問7−3

 歌唱共通教材として7つの楽曲が示された理由は何ですか。

A答7−3

 我が国で長く歌われ親しまれている歌曲を歌唱教材として取り扱うことは,我が国のよき音楽文化を世代を超えて受け継がれるようにする上で大切です。また,生活の中の様々な場面で音楽を楽しんだり,共有したりする態度を養うことにつながっていきます。

 そこで,「我が国で長く歌われ親しまれている歌曲のうち,我が国の自然や四季の美しさを感じ取れるもの又は我が国の文化や日本語のもつ美しさを味わえるもの」の観点から取り上げたものを歌唱教材に含めることとし,この観点に相応しい7つの楽曲を,歌唱共通教材として示しました。

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Q(小学校)問7−4

 音楽づくりの指導に当たって,どのような点に留意すればよいですか。

A答7−4

 事項アについては,音遊びや即興的に表現することを通して音の面白さに気付いたり,音楽づくりのための様々な発想をもてるように指導することが大切です。

 事項イについては,音を音楽に構成する児童の学習過程を大切にし,特に,その過程で児童が新しい発想や考えをもったり,試行錯誤したりする姿を大切にすることが求められます。音を音楽にする契機としては,〔共通事項〕に示した「音楽の仕組み」を手がかりにして,児童が思いや意図をもって音楽をつくるように指導することが重要です。

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Q(中学校)問7−5

 創作の指導に当たって,即興的に表現することをどのように位置付ければよいですか。

A答7−5

 創作について「言葉や音階などの特徴を感じ取り,表現を工夫して旋律をつくること」(事項ア),「音素材の特徴を生かし,反復,変化,対照などの構成を工夫しながら音楽をつくること」(事項イ)のように示し,指導内容を焦点化しました。その上で,「内容の取扱いと指導上の配慮事項」に,生徒が即興的に音を出しながら音のつながり方を試すなど,音を音楽へと構成する体験を重視することを示しました。この配慮事項は,事項ア,イのいずれの指導においても特に重視する必要があります。

 指導に当たっては,理論的な学習を先行させ過ぎたり,はじめからまとまりのある音楽をつくることを期待したりするのではなく,例えば,生徒が自由に音を鳴らしながら音の質感を感じ取り,長さ,高さ,強さ,音色などを意識して,音と音とを連ねたり組み合わせたりするような創造的な活動ができるようにすることが大切です。

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Q(小学校)問7−6

 第3学年及び第4学年の鑑賞教材の選択の観点に,我が国の音楽が位置付けられた趣旨は何ですか。

A答7−6

 児童がこれからの国際社会で活躍するような日本人となるために,我が国や郷土の伝統や文化を受けとめ,そのよさを継承・発展させていくような教育が求められています。そのためには,我が国の音楽文化に親しみ,自ら表現,創作したり,鑑賞したりすることが重要となり,これまで第5学年及び第6学年で「箏や尺八を含めた我が国の音楽」としていたものを,より柔軟な取扱いを可能とするため「和楽器の音楽を含めた我が国の音楽」として,第3学年及び第4学年から我が国の音楽に聴き親しみ,味わって鑑賞することを示しました。

Q(中学校)問7−7

 我が国の伝統音楽の学習を充実する上で,伝統的な歌唱や和楽器の指導に当たって,どのような点に留意すればよいですか。

A答7−7

 歌唱教材を選択する観点の一つとして「民謡,長唄などの我が国の伝統的な歌唱のうち,伝統的な声の特徴を感じ取れるもの」を新たに示しました。また,器楽指導について,従前の「3学年間を通じて1種類以上の和楽器を用いる」規定に加え,「表現活動を通して,我が国や郷土の伝統音楽のよさを味わうことができるよう工夫すること」とし,和楽器を用いる趣旨を示しました。

 我が国の伝統的な歌唱の指導においては,その曲種に固有の発声の仕方,声の音色,コブシ,節回し,産字などの特徴について,また,和楽器の指導においては,楽器の音色や響き,奏法,表現力の豊かさや繊細さなどの特徴について,生徒自らが気付くようにし,それらを生かした表現を追求していく過程で,伝統音楽のよさなどを感じ取ったり味わったりすることのできる指導を工夫することが大切です。

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Q問7−8

 鑑賞の指導において,感じ取ったことを言葉で表す(小学校),根拠をもって批評する(中学校)などの言語活動が位置付けられた趣旨と指導上の留意点について教えてください。

A答7−8

 小学校音楽科において鑑賞の活動を行う際,児童が聴き取ったことやそれらから感じ取ったことを言葉で表すなどして,自分の聴き取ったことや感じ取ったことを確認したり,友達と意見を交換したりすること等により,主体的な鑑賞活動が可能となります。

 指導に当たっては,教師が,「楽曲のどこからそのように感じたのか」などと問い掛けることによって,想像したことや感じ取ったことを言葉で表していく活動を設定することが大切です。児童が気付いたことや感じ取ったこと,心に思い描いた様子を言葉に表すなどして相手に伝えることによって,教師の発問と児童の応答の中などで一人一人の感じ方のよさを認め,友達の感じ方に気付いたり,自分の感じ方を広げたりするように指導することが大切です。

 中学校音楽科における音楽教育には,音楽の構造や曲想,味わったことや自分なりに評価したことなどについて,生徒が言葉で表すなどして,幅広く主体的に鑑賞する能力を育てていくことが求められています。

 鑑賞した音楽について「感じたこと」や「その音楽的な理由」を述べるだけではなく,その音楽が「自分にとってどのような価値があるのか」などを考えて言葉で表す活動が,鑑賞の能力をはぐくむことにつながります。こうした能力を育成することは,多様な音楽の特徴をとらえ,理解を深め,音楽文化を尊重する態度を育てることになり,生徒個人にとっても,また,次の時代の音楽文化を一層豊かにしていくことにとっても意味あることと言えます。

 指導に当たっては,「この曲を作曲した人に手紙を書こう」,「家族の方に紹介するとしたら,どのように伝えるか」といった親しみやすい課題を設定して,対象となる音楽に対して生徒が自分なりに価値判断したことを,その理由を含めて表すことができるようにすることが大切です。

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Q(小・中学校)問7−9

 移行措置で留意すべきことは何ですか。

A答7−9

 小学校音楽科の移行措置は次のとおりです。

  1. 新学習指導要領の全部又は一部について実施できること。
  2. 歌唱共通教材については,第1学年から第4学年までは4曲すべてを取り扱うこととし,第5学年及び第6学年は4曲中3曲を含めて取り扱うこと。

 このように,小学校音楽科は,1.のように全部又は一部を先行して実施できるとしていますが,2.の歌唱共通教材については,必ず新学習指導要領の規定によることとしています。

 中学校音楽科の移行措置は次のとおりです。

  1. 新学習指導要領の全部又は一部について実施できること。
  2. 「我が国で長く歌われ親しまれている歌曲のうち,我が国の自然や四季の美しさを感じ取れるもの又は我が国の文化や日本語のもつ美しさを味わえるもの」の観点から取り上げたものを歌唱教材に含めること。
  3. 「赤とんぼ」,「荒城の月」,「早春賦」,「夏の思い出」,「花」,「花の街」,「浜辺の歌」の共通教材の中から各学年ごとに1曲以上を含めること。

 このように,中学校音楽科は,1.のように全部又は一部を先行して実施できるとしていますが,2.の教材選択の観点及び3.の歌唱共通教材については,必ず新学習指導要領の規定によることとしています。

 各学校においては,新学習指導要領の趣旨等の一層の理解に努めていただき,円滑に全面実施できるよう準備を進めていただきたいと思います。

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初等中等教育局教育課程課

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