国語科において言語活動例を充実させている趣旨と,指導に当たっての留意事項について,教えてください。
中央教育審議会答申(平成20年1月)においても,教育内容に関する主な改善事項に挙げられているように,各教科等における言語活動の充実は,今回の学習指導要領の改訂において各教科等を貫く重要な視点です。国語科は,言語力育成の基盤となる教科であることから,言語活動例の充実等を行っています。
「話すこと・聞くこと」,「書くこと」及び「読むこと」の各領域においては,言語活動を通して,それぞれの指導事項の指導を行うという趣旨をより明確にするため,言語活動例を,新学習指導要領においては内容の(2)に位置付けました(これまでは、小学校学習指導要領では内容の取扱いに,中学校学習指導要領では指導計画の作成と内容の取扱いに規定)。また,基礎的・基本的な知識・技能を活用して課題を探究することのできる国語の能力を身に付けさせるという観点から,言語活動例を見直し,小学校では日常生活に必要とされる記録,説明,報告,紹介,感想,討論など,中学校では社会生活に必要とされる発表,討論,解説,論述,鑑賞などの言語活動を具体的に例示しています。各学校においては,これまでと同様に内容の(1)に示す指導事項を,(2)に示す言語活動例を通して指導することになりますが,学校や児童生徒の実態に応じて,様々な言語活動を工夫し,その充実を図っていくことが重要です。
なお,これらは例示であり,これらのすべてを行わなければならないものではなく,また,それ以外の言語活動を取り上げることも考えられます。
伝統的な言語文化に関する指導を重視する趣旨等はどのようなものですか。
古文や漢文等の伝統的な言語文化は,創造と継承を繰り返しながら形成されてきました。新学習指導要領では,改正教育基本法において伝統や文化に関する教育が重視されたことを踏まえ、伝統的な言語文化をを小学校低学年から取り上げて親しむようにし,我が国の言語文化を継承し,新たな創造へとつないでいくことができるよう内容を構成しています。
小学校では,例えば,低学年では昔話や神話・伝承など,中学年では易しい文語調の短歌や俳句,慣用句や故事成語,高学年では古文・漢文などを取り上げています。なお,伝統的な言語文化に関する指導については,第1学年から第6学年までの各学年において継続して指導し,古典に親しめるよう配慮することが必要です。
また、中学校では,生徒が古典に一層親しめるようにするとともに,我が国に長く伝わる言語文化について関心を広げたり深めたりすることを重視して指導するようにします。そのために,例えば,第1学年では文語のきまりや訓読の仕方を知って音読すること,第2学年では古典に表れたものの見方や考え方に触れること,第3学年では歴史的背景などに注意して古典を読むことなどを取り上げています。教材については,生徒が古典の文章の内容を概括したり古典の文章に関する様々な事柄に触れたりすることができるよう,古典の原文だけでなく,分かりやすい現代語訳や古典の世界について解説した文章などを適切に取り上げることが必要です。
ローマ字に関する事項が第4学年から第3学年に移動している趣旨とその指導に当たっての留意事項について,教えてください。
日常の中でローマ字表記が添えられた案内板やパンフレットを見たり,コンピュータを使う機会が増えたりするなど,ローマ字は児童の生活に身近なものになってきています。また,小学校3年生から,総合的な学習の時間においてコンピュータを用いた調べる学習などを行うなど,キーボードを用いる機会が増えます。これらのことから,これまでは第4学年であったものを,今回の改訂では,第3学年の事項とし,ローマ字を使った読み書きをより早い段階において指導するようにしたものです。
なお,平成21年度から22年度までの新学習指導要領への移行期間中,現行小学校学習指導要領による場合,平成22年度の第3学年の指導に当たっては,ローマ字の事項を加えることとしております。その教材については各学校の実態に応じて適切に工夫し指導する必要があります。
「書くこと」において,書いたものを読み合ったり発表し合ったりする指導事項が位置付けられた趣旨と,指導に当たっての留意事項について,教えてください。
文章を書くことは,多くの場合,読んでもらう相手がいることが前提です。その相手との交流を,書くことのまとめとして位置付けたものです。
「書くこと」の指導事項は,課題設定や取材に関する事項,構成に関する事項,記述に関する事項,推敲に関する事項,交流に関する事項と,学習過程に即して示しています。これは,自ら学び,課題を解決していく能力の育成を重視したものです。したがって,交流する際にも,書き終えたものの良し悪しだけではなく,課題を設定し,学習の見通しをもち,実際に書いてきた過程の全体を通して振り返ることができるようにする必要があります。その際,言語活動例を参考にしながら,児童自身が書く相手や目的,意図を明確にし,それらに即して工夫して書くことができるよう指導することが大切です。
音声の働きや仕組みに関する事項を第1学年に移動している趣旨と,指導に当たっての留意事項について教えてください。
音声の働きや仕組みに関する事項は,現行では第2学年及び第3学年の事項として設定しています。今回の改訂では,生徒が話し言葉として使用してきた音声がどのような特色をもっているのかということを,中学校の早い段階で指導するために,第1学年の事項として設定しました。また,新学習指導要領「外国語」の「3 指導計画の作成と内容の取扱い」に,「ウ 音声指導に当たっては,日本語との違いに留意しながら,発音練習などを通して2の(3)のアに示された言語材料を継続して指導すること。」とあることを踏まえ,関連した指導をすることが効果的です。
なお,平成21年度から23年度までの新学習指導要領への移行期間中,現行学習指導要領による場合,平成23年度の第1学年の指導に当たっては,音声の働きや仕組みに関する事項を加えることとしております。その教材については各学校の実態に応じて適切に工夫し指導する必要があります。
読書活動を充実するに当たっての留意事項について,教えてください。
言語に関する能力をはぐくむに当たっては,読書活動の充実が不可欠です。国語科はもちろん,各教科等において,発達の段階を踏まえた指導のねらいを明確にし,読書活動を推進することが重要です。
小学校国語科においては,「話すこと・聞くこと」,「書くこと」及び「読むこと」の各領域の指導の中で,必要な図書資料を得ることなど,目的を明確にして学校図書館を計画的に利用し,読書活動を進めることが大切です。
また,各学年の「読むこと」には,物語や詩,伝記,説明、記録、解説などの多様な本や文章を読んで感想を述べたり考えを表現したりする言語活動例を示しています。例えば,一冊の本だけでなく,同じ主人公や作家の本やシリーズへと,児童の読書範囲が広がるよう工夫して指導することが求められます。このような言語活動を通して,本の題名や種類などに着目したり,索引を利用して検索をしたりするなどにより,児童自ら必要な本や資料を選ぶことができるように指導する必要があります。
中学校国語科においては,読書に関する指導事項と言語活動例を「読むこと」の内容に位置付けました。これは,国語科における読むことの学習指導の成果が,生徒の学習意欲を高め,読書力を養い,日常の読書活動に役立つものになることを一層重視したからです。具体的には,新聞やインターネット,学校図書館等の施設などを活用して得た情報を比較したり,自分の読書生活を振り返ったりするなどの言語活動例を示しました。このような言語活動を通して,指導事項に示した,本や文章などから必要な情報を得るための方法を身に付けたり,情報を基に自分の考えをまとめたりすることなどについて指導する必要があります。
また,「読むこと」の学習だけでなく,「話すこと・聞くこと」や「書くこと」の学習において,説明や発表・報告などのために本や文章などを読むことは頻(ひん)繁に行われます。こうした際に,学習・情報センター,読書センターとしての機能を備えた学校図書館などを計画的に利用し,その機能の活用を図るようにすることが大切です。
書写の指導に当たっての留意事項について,教えてください。
書写の指導については,手紙を書いたり記録をとったりするなどの日常生活や学習活動に役立つようにする観点から改善を図っています。
例えば第5学年及び第6学年では,用紙全体との関係に注意して書いたり,書く速さを意識して書いたりすることや,目的に応じて使用する筆記具を選び,その特徴を生かして書くことなどを求めています。
また,毛筆を使用する書写は,第3学年以上の各学年で行い硬筆による書写の能力の基礎を養うよう指導し,硬筆を使用する書写の指導は,第1学年から第6学年までの各学年で行うとともに,文字を正しく整えて書くようにすることに留意する必要があります。
書写の配当時数の目安が変わったことについて,その趣旨と指導に当たっての留意事項について教えてください。
書写の指導に配当する授業時数は,現行では,第1学年は国語科の授業時数の10分の2程度(約28単位時間),第2学年及び第3学年は各学年10分の1程度(約11単位時間)としています。これを,今回の改訂では,第1学年及び第2学年は20単位時間程度,第3学年は10単位時間程度と改めました。これは,現行の3年間の書写の総配当時数を維持しながら,第1学年と第2学年の国語科の授業時数が同じになったことに合わせて,書写の配当時数をそろえるようにしたものです。その際,「話すこと・聞くこと」,「書くこと」,「読むこと」及び〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕における指導と関連させた指導計画になるよう配慮するとともに,文字文化に親しみ,社会生活や学習活動に役立つよう内容や指導の在り方の改善を図ることが大切です。
国語科における,小学校と中学校との関連について教えてください。
今回の改訂においては,教育基本法に義務教育の目的(第5条第2項),学校教育法に義務教育の目標(第21条)がそれぞれ規定されたことを踏まえ,義務教育9年間を見通して,発達の段階に応じた小学校教育と中学校教育の連続性の確保を重視していることに留意する必要があります。国語科の指導内容は,系統的・段階的に上の学年につながっていくとともに,螺旋的・反復的に繰り返しながら学習し,能力の定着を図ることを基本としています。そのため,児童生徒の実態に応じ,各学年段階で重点を置くべき指導内容を明確にして,その系統化を図りました。
「解説・国語編」では,巻末に「付録4」として「各学年の目標及び内容の系統表(小・中学校)」を掲載しています。これを見ると,例えば各領域の指導事項が,小学校・中学校ほぼ同じ学習過程に即して配列されており,それに基づいて各学年段階でどのような指導を行うことになっているか理解できます。この表などを参考にしながら,小学校での指導に当たっては、指導内容が中学校でどのように発展していくのか、中学校での指導に当たっては,指導すべき内容に関連して小学校でどのような指導が行われてきたのかを把握することが大切です。
初等中等教育局教育課程課
-- 登録:平成21年以前 --