著名人インタビュー 紺野 美沙子(こんの みさこ)さん

~子供の頃に学校で学んだことが今の自分にどうつながっているか~

今回は,女優としてテレビ・映画・舞台で活躍する一方,国際開発計画(UNDP)の親善大使として国際協力の分野でも活動中の紺野美沙子さんにインタビューしました。

女優業を志したのも先生のおかげ

-子供の頃,お好きだった教科は何ですか。

好きな先生が担当されている教科を頑張るということが多かったように思います。中学生の時,社会の先生が好きで,先生を慕って歴史の勉強を頑張ったり,地理の白地図を使った学習に一生懸命取り組んだり…。歴史クラブにも入りました。また,理科の先生も好きで,替え歌を作って元素記号を一生懸命覚えました。

-紺野さんが慕っておられた先生方の魅力的な点は,どのようなところだったのですか。

人間味にあふれ,子供たちとの距離が近い,そんな先生方が印象に残っています。一人一人の子供が「先生が自分を大切に思ってくれている」と感じることができると,子供たちは学校で安心感をもって過ごせると思っています。

-今の御自身に影響を与えてくださった先生はいらっしゃいますか。

小学校5年生の時に入った演劇クラブの顧問の先生です。御指導は厳しかったですが,そのおかげでみんなで発表会を作り上げるという一つの目標に向かってまとまることができたんです。クラブ活動を通して,仲間と協力してゼロから作り上げる面白さ,厳しさ,達成感を学んで,「演劇って面白いな,将来お芝居をする人になれたらいいな」という思いが芽生えました。

-女優業に進まれたのも先生の影響があってのことだったのですね。学校での学びが大人になってから生かされたという御経験があればお聞かせください。

漢字の学習はとても役に立っていると思います。日本語は,同じ読みでも違う漢字を使う,同音異義語や同訓異字がとても多いですよね。例えば,同じ「かん」と読む言葉でも,意味によって漢字を使い分けないといけない。その使い分けを身に付けさせてくれた日本の教育って素晴らしいと思います。
先日,万葉集の音楽朗読劇に出演させていただいた際に,万葉集をひもときました。当時は全部漢字で書かれているのですね。いわゆる「万葉仮名」と呼ばれるものですが,「万葉集の時代には,この言葉にこんな漢字を当てていたんだ」と,この年になってようやくその面白さが分かりました。これも子供時代に漢字をきちんと学んでいたおかげかなと思います。


新しい学習指導要領について

―新しい学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善に取り組まれることになります。

私が子供の頃は「アクティブ・ラーニング」という考え方がない時代で,苦手な授業ではいかに自分の存在を消すかが大事だったのですけれども(苦笑)。「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善によって,先生と子供たち,子供たち同士のやりとりによってその距離が縮まり,一人一人が自分の思いや考えを臆することなく発言できるようになるとすれば,とてもよいことだと思いますね。

-新しい学習指導要領では外国語活動が小学校3年生からになるなど,外国語教育も充実します。

外国語教育は大切だと思います。私自身はコンプレックスがありますし,いまだに苦労しています。でも,教育ってすごいですね。今は英語を上手に話す大学生も多く,私も,あっという間に息子に英語力を抜かれてしまいました。ましてや,小学生のうちから英語を楽しく学ぶことができるようになって,今の子供たちがうらやましいです。


国連開発計画(UNDP)の親善大使活動を通じて

-先ほども話題に上がったように,紺野さんは国連開発計画(UNDP)親善大使を務めるなど国際貢献にも尽力されていらっしゃいますが,子供の頃から国際貢献に御関心がおありだったのですか?

そういうわけではないです。帰国子女でもありませんし,語学も成績は良くなかったですし…。でも,中学校に奉仕活動のサークルがありまして,サークルを通じてボランティア活動に参加していました。

-中学校ではどんなボランティアをなさったのですか。

学校近くの高齢者施設に行き,入所者の方とお話をしたり,施設のお掃除をしたりしておりました。「活動に参加するだけでボランティアなんてできるのかしら?」という疑問も抱いていたのですが,何回か訪問しているうちに,私たち中学生が顔を見せるだけで入所者の方が喜んでくださることに気付きました。その時に感じた驚きは今も忘れられません。
現在は,親善大使の活動で,数年に一度発展途上国に伺うのですが,その場に行くこと自体が大事なのだと思いながら訪問しています。

-国連開発計画(UNDP)の親善大使の活動の中で,様々な国に行かれて,厳しい環境にいる子供たちの姿を御覧だと思います。

東ティモール,カンボジア,ガーナ,ケニア,タンザニアなど,アジア・アフリカの本当に厳しい環境におかれた地域に伺い,初等教育さえ受けられない子供たちに話を聞きました。貧困や,女子という理由などでの差別があり,教育を受けられないのです。学校に行けない子供たちは,心から学校に行きたがっています。お友達と一緒に制服を着たい,ノートが欲しい,教科書が欲しい,と学校に対してものすごく憧れがあるんですね。初等教育が受けられないというのは,まさに「生きる力」を身に付けられないということで,大きな問題だと思います。
一方,日本では中学校までは義務教育を受けることができます。これは非常に恵まれていることです。今までに日本国内の学校を訪問して,日本の児童生徒に発展途上国の子供たちについて伝える活動をする機会もあり,小学校1年生であっても,厳しい環境に置かれた子供たちのことを理解し,彼ら彼女らに心を寄せてくれるんですね。それがとても嬉しいなと思います。ぜひ日本の多くの子供たちに発展途上国のことをもっと知ってほしいです。
例えば,青年海外協力隊やシニア協力隊により発展途上国に行かれた経験のある方が各地にたくさんいらっしゃると思うので,その方々の話を直接聞くと身近に感じていただけると思います。



保護者へのメッセージ

保護者へのメッセージ -最後に,同じ保護者として,これをお読みの保護者の方にメッセージをお願いします。

子育ての専門家でも教育の専門家でもないのですが,私が大切にしていたことを お伝えできればと思います。
まず,「今しかできないことを大切に」ということです。子供が親を必要としてくれる時間は長いようで短く,あっという間に過ぎてしまいます。外遊びでも何でもいいので,家族での時間を大事にしていただきたいなと思います。
もう一つ,子供は周りの子と同じものを欲しがったり,やりたがったりすることが多いのですが,「他の子と同じでなくていいんだよ。」と伝えてきました。子供たちには,他人と異なるということを恐れず,自分の好きなことを大事にしてほしいと思います。私の同級生でも,小学生の頃に周りの子と違うのを気にせず,自分が好きなことに取り組んでいた子が,その子にしか進めない独自の道を切り拓(ひら)いていたりするんですよね。子供自身の気持ちを大切にしてあげることは,とてもよいことなのではないかと思います。

 -本日はありがとうございました。

※ 中等教育資料8月号で,ここに掲載しきれなかった紺野さんのお話を紹介しています。ぜひ御覧ください。


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