外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議(第5回)議事録

 1.日時

令和2年2月12日(水曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省東館5階5F5会議室

3.議題

1.報告書(案)について

2.その他

4.出席者

委員

齋藤座長、金森座長代理、井阪委員、犬飼委員、小澤委員、河村委員、築樋委員、土屋委員

文部科学省

中野教科書課長、季武教科書課長補佐、小林男女共同参画共生社会学習・安全課専門官

5.議事録

外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の
困難の軽減に関する検討会議(第5回)

令和2年2月12日


【齋藤座長】 ただいまから,第5回外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議を開催いたします。
年度内の報告書の取りまとめに向けて,会議の開催はこれで最終回とさせていただく予定です。
本日は,前回の報告書素案に肉付けや具体化を行い,構成を整えた報告書案を元に議論していただきます。
それではまず,配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
【季武課長補佐】 本日の資料としては,議事次第と,資料1として報告書の案を付けております。さらに委員の皆様におかれましては,本日,机上参考資料としまして,事前に御確認いただいた報告書案からの変更を見え消し等で示した資料を置かせていただいております。
また,同じく机上配付として,第2回に配付させていただいた「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」の結果について,訂正がございましたので,訂正版の資料を配付しております。こちらについて,簡単に担当から説明させていただきます。
【小林専門官】 第2回会議において委員の皆様に配付いたしました,9月末に公表した調査の結果について,集計に誤りがあり,1月10日に修正したものを再度報道発表いたしましたので,訂正版の資料を配付させていただきました。修正箇所については赤字で見え消しとさせていただいておりますので,恐縮ですが御確認のほどよろしくお願いいたします。
【齋藤座長】 ありがとうございました。
それでは議題に入らせていただきます。資料1の報告書案について,事前にメールにて調整中の段階のものを事務局から送付させていただいていますが,前回会議の素案の状態から,肉付けや具体化をした上で,今回,構成を整えることとしています。
まず,前回の素案からの修正点を中心に,事務局から御説明をお願いいたします。
【季武課長補佐】 では,資料1について,説明させていただきます。
前回御覧いただいた素案と,これまで頂いた御意見を基に,事務局で作成した案を,事前にメールにて御覧いただきました。資料1はそこで頂いた御意見を反映したものとなっております。先ほど申し上げましたとおり,委員の皆様には,机上資料としてメールでの照会からの修正履歴等を残したものをお配りしておりますので,そちらを御参照いただきながらお聞きいただければと思います。
では,大きな修正につきまして,修正趣旨などを説明させていただきます。まず構成について,素案の段階では,「3.ICT教材による外国人児童生徒等の教科書使用上の困難の軽減」に,「(3)ICT教材の使用・導入のための課題・留意点」という項目を置き,「4.対応すべき事項」としておりましたが,内容が重複するところがありましたので, 「4.ICT教材の利用に係る今後の方向性と課題,留意点」にまとめております。
続きまして,3ページの【外国人児童生徒等への支援】における「(学校での取組)」の項目について,特別な教育課程の編成や,DLAに関する部分に関して,前回よりも具体的な書き方をしております。
こちらは「日本語指導」の中に,基礎的な日本語の指導のみならず,教科指導に必要な日本語の指導も含まれていることを明らかにするとともに,特別な課程の中で,各自の日本語の能力に応じて,どのような指導を,どのようなタイミングで行うために,ICTを活用できるのか,きちんと考える必要があるということを明記する趣旨で書いております。
続いて,5ページの「2.外国人児童生徒等が教科書使用に当たり抱える困難」について,多岐にわたる外国人児童生徒等が抱える困難に関し,最初に列挙する形で書いております。四つ目の黒丸について,素案の段階から,「障害のある児童生徒と同程度の読みの困難」ということを書いておりましたが,困難の度合いを比較する必要はなく,あくまで外国人児童生徒等で,日本語に通じていないことが理由で読みに困難がある場合であっても,しっかりと支援をしていく必要があるということを明らかにする趣旨で記載しておりますので,それを踏まえつつ,小澤委員からの御指摘を反映しております。
続いて,6ページの「3.ICT教材による外国人児童生徒等の教科書使用上の困難の軽減」について,読みやすさの観点から,最初に導入の文章を記載いたしました。また,本報告書ではICTを活用した教材のことを「ICT教材」とさせていただくことを明示しております。さらに,どのようにICT教材を外国人児童生徒等の学びの質の向上につなげることができるのかについて検討していくということを示し,次の文章につなげる形とさせていただきました。
続いて, 7ページ目の一番下にございます「(2)ICT教材の活用により期待される効果」という項目について,素案ではそれぞれの内容を単純に並べる形で書いておりましたが,構成を整え,「外国人児童生徒等の言語学習」「児童生徒の学び方・意欲」「より効果的な指導,教師の負担軽減」と,それぞれ内容を分ける形で記載しております。
続きまして,9ページ目の下段にございます「4.ICT教材の利用に係る今後の方向性と課題,留意点」について説明いたします。まず「音声教材について」という項目については,素案では,制度改正が必要ということを記載しておりましたが,具体的にどのような改正が必要かといったことについて,現在事務局の方でも検討を進めているところですので,そうした検討を踏まえ,より内容を具体化した案を今回示しております。
こちらは事前に御覧いただいたものよりも具体的な内容にしております。具体的には,著作権法の第33条の3等を具体的に示しているほか,インターネットでの提供についても触れております。
また,事前に情報共有させていただきました, 2月10日に,文化審議会の著作権分科会において,現在当会議で検討を行っている旨,報告をさせていただいたところです。そこで頂いた意見としては,基本的に反対をされるようなものではありませんでしたが,留意点として,障害のある児童生徒の学習の用に供するための教材として作成された音声教材について検討している内容を,単純に外国人児童生徒に広げるのではなく,外国人児童生徒のためにどういった政策をとっていくのかということは切り分けた上で,しっかりと検討してほしいという御指摘を頂きました。
これについて,現状困っていらっしゃる外国人児童生徒等のために,まずは音声教材で対応することとしており,外国人児童生徒等を支えるための施策としては,現在男女課においても検討いただいておりますし,当課においてもデジタル教科書の在り方の検討等を通じて,引き続き検討していくものと考えている旨,回答しているところです。
さらに音声教材の項目について,素案の段階では一つにまとまっていた内容を分け,別立てで書かせていただくほか,申請や提供時の製作団体への負担にも配慮しつつ,多くの児童生徒が音声教材を利用できる運用をしていけるよう検討すること等を書いております。
デジタル教科書の項目についても,素案の段階では列挙していたところを,「機能について」と「制度について」という形でまとめております。
また, 10ページ目から11ページ目にかけて,ICT教材の使用に当たり,しっかりと児童生徒等に配慮しながら進めていくということと併せて,前回御説明させていただいたように, 1人1台端末環境の実現に向け児童生徒それぞれの状況を踏まえつつ,着実にハードの整備を進めるべきということを追記しております。加えて,ICT教材を先生方がしっかりと使いこなせるようにしていく必要があるということについても,改めて明記しております。
最後に, 11ページ目から12ページ目について,前回御指摘いただいたように,これまで現場で行われてきた取組をしっかりと生かした形で,ICT教材等の作成にもつなげていけるようにしていくといったことを,将来的な検討事項として書いているところでございます。
以上でございます。
【齋藤座長】 ありがとうございました。質問のある方がいらっしゃいましたら挙手をお願いします。どうぞ。
【井阪委員】 8ページ「外国人児童生徒等の言語学習」における「4.音声化による文章の意味の理解」という項目について,2行目に「単語や文章の意味の理解」とありますが,6ページの上から7行目では,「語彙の意味や文の内容が理解できない」という表現になっているので,表現を統一すると良いのではないかと思いました。
【季武課長補佐】 承知いたしました。反映させていただきます。
【齋藤座長】 言語学的には,「単語」という言葉よりは,もしかすると「語」の方が正確かもしれません。
【井阪委員】 そうですね。
【齋藤座長】 ただ,一般的に分かりやすいのは「単語」かもしれないので,どちらか統一していただけると良いのではないかと思います。
【季武課長補佐】 齋藤座長と御相談させていただいた上で,反映いたします。
【齋藤座長】 今は言葉の使い方の問題でしたけれども,ほかにも何か御質問があればお願いいたします。
【小澤委員】 2点あります。まず,著作権法の改正というところまで踏み込んだ制度の見直しというのは,本検討会議の到達点として,一定のすばらしい成果を提示されていると思われますが,著作権法以外に,例えば教科書バリアフリー法の改正等も連動するのでしょうか。
また,恐らく厳密な権利関係の調整となると,「外国人児童生徒等」の対象者をどのように限定するかといった議論がいずれ出てくるのではないかと思います。本日配布いただいた訂正版の調査データには,例えば日本国籍を持っていても日本語が困難な児童生徒も対象としているので,恐らく帰国子女もこのデータの中に含まれております。第1回会議において,対象をどのようにするか議論した際,帰国子女のように,もともと日本国籍を持っているが,海外で生まれており日本語が不自由という児童生徒を含むとされていましたが,そのことも含めて,対象者をどのように限定するのかという点と,教科書バリアフリー法等関連の法律との関係にどういった課題があるのかについてお聞かせいただきたいと思います。
【齋藤座長】 お願いします。
【季武課長補佐】 まず1点目について,御指摘のとおり,教科書バリアフリー法についても改正することは考えておりますが,具体的な改正点については検討中です。ただ,メインになるのが著作権法第33条の3ということで,今回明記をさせていただいております。
2点目の「外国人児童生徒等」の範囲についても,2ページ目に記載しておりますとおり,日本国籍の児童生徒も含めて,日本語指導が必要な,日本語に通じない児童生徒を対象とした制度にするべきと考えているところです。したがって,御指摘のとおり,帰国子女であっても,日本語指導が必要な場合には対象に含めるようにしていくものと考えております。
【齋藤座長】 河村委員,お願いします。
【河村委員】 33条の3について,報告書案の中では「公衆送信も可能とすること」と書かれておりますが,現在33条で製作している音声教材はオンラインで配付しているという実態があります。オンラインといっても,誰でもアクセスできるものではなく,特定の申請をして,許可を得た児童生徒だけがアクセスできるというもの,あるいは学校の特定の方を通じて初めてアクセスできるというもので,いわゆるネットで簡単にダウンロードできるものではないのですが,このような配付に関しても,外国人児童生徒については公衆送信権の関係でできないということなのか,もともと33条では公衆送信が認められていないためにできないということなのかで,少し意味が違ってくるのです。
現状できていることをどのように理解するかということなのですが,公衆送信の問題については,これまでも著作権課とも教科書課とも協議をしてきており,最初は難しいと言われていたことが,必要な措置であり,法解釈上も可能であることから,現状に落ちついている経緯があります。その対象として,必ずしも障害のある子供だけではなく,外国人児童生徒も含まれており,同じシステムを活用するという場合には,公衆送信の問題は解決すると私は理解しておりますが,その点を御説明いただけますでしょうか。
【齋藤座長】 ありがとうございます。今御指摘があったのは,9ページから10ページについてということでよろしいですか。10ページの上から4行目から,「音声教材を活用して,外国人児童生徒等の学びを充実させるために,関係団体の理解を得た上で,著作権法第33条の3の規定を見直すこと。その際,インターネットを利用した提供(公衆送信)も可能とすること」と記載がありますが,それが違うということでしょうか。
【河村委員】 現在インターネットを利用して音声教材を配付しているというシステムがあります。そこに今回議論の対象となっている外国人児童生徒も新たに利用対象として含まれるということであれば,公衆送信の問題はないと理解してよろしいのかということです。
具体的にどうすれば解決するのかということについて,今あるシステムは,インターネットは使っていますが,閉じられた特定の児童生徒しか利用できないシステムとして運用しております。そこに新たに利用対象者を拡大して,本検討会議において検討している外国人児童生徒が含まれるようにすることで,システムをそのまま活用できると理解してよろしければ,問題は解決すると私は考えます。外国人児童生徒の場合はそこに無理があるのか,つまり外国人の場合は同じシステムを使えない可能性があるということなのかどうか,もし分かれば御説明をいただきたいと思います。
これは恐らく著作権課の解釈とつながってくるので,少し複雑なのですが,なぜこのように申し上げるかと申しますと,実は37条は障害者に限定をして公衆送信権を明確にしている規定なのです。教科書も33条や37条で製作できますので,実態としては教科書発行者から来るデジタルデータの到着が遅い場合は,製作団体は37条を利用し,スキャンして作ったりするのです。時間的に制約のあるときは,デジタルデータを使わないで作って提供するということを実態として行っています。
したがって,デイジー教科書のネットワークに関しては,現在37条で作ったものも実は含まれているのです。ほかにもそういうものがあり,要するに37条か33条,どちらかで作ったものがネットワークを通じて得られるという実態がありますので,その場合,37条は障害者に限定されているという法律の趣旨からして,外国人である場合には明らかに障害者には該当しないので,別の取り扱いになるという解釈があるのかもしれないと思い,確認をしたいということであります。
【齋藤座長】 では,お願いします。
【季武課長補佐】 著作権法の33条の3や37条については,第3回会議の参考資料で条文を付けておりますので,そちらを参照いただくと良いかと思います。河村委員の御指摘のとおり,現在,33条の3においては公衆送信について言及がありませんが,37条には公衆送信についても規定がございます。
当初,33条の3において教科用特定教科書としてメインで想定していたのが拡大教科書であったために,具体的に公衆送信に関する規定を入れていなかったという経緯がございます。その後,実際に音声教材も使われるようになってきまして,実態としてインターネットを利用しての提供の必要性が上がっているという状況です。
先ほど御指摘いただいたとおり,外国人についてはほかの条文で読めるところがないということと,今の実態として音声教材が使われており,データとしてインターネット経由で提供することの重要性やニーズが高まっているという状況を踏まえまして,33条の3においてしっかりと公衆送信についても位置付けることが適当であると考えております。
これによって,障害のある児童生徒と日本語に通じない外国人児童生徒等がいずれも33条の3の規定に基づいて,同様にインターネットを利用して音声教材の提供を受けることができるようにしようと考えているところでございます。まだ調整中なので,具体にここをこう変えますというのはないのですが,その方向で検討を進めさせていただいております。
【河村委員】 よく分かりました。
【齋藤座長】 ありがとうございます。そうすると,今,案で出していただいている10ページの4行目からの文章を,そのままストレートに読んで構わないということでよろしいですね。
ほかに御質問はございますか。先ほど小澤委員からも河村委員からもありました,誰を対象にするのかに関しては,恐らくかなり複雑なのですが,今のところは,共通理解として,先ほど御説明のありました文部科学省の調査における「日本語指導が必要な児童生徒」の定義に基づくということで次に進めさせていただき,また議論が必要であれば,報告書の取りまとめの内容についての確認が終わった後で御相談させていただければと思います。
それでは,内容に関して議論を進めさせていただきたいと思います。前回はパートごとに議論いただきましたが,今回は全体を通して,「こういった点でさらに検討を加える必要がある」「こういった点を統一した方が良いのではないか」「これまでの議論が反映されていない」等がありましたら,御意見を頂ければと思います。非常に丁寧に具体的に記載してございますので,大きな変更は必要ないのではないかと思いますが,是非お気付きの点がありましたらよろしくお願いいたします。
【犬飼委員】 2点確認をさせていただければと思います。
まず,7ページ目の「2.学習者用デジタル教科書」という項目について,内容としては,以前「レイアウトが同じ」というお話をさせていただいていますが,デジタル教科書の定義としては,「紙の教科書と同一内容」ですので,「レイアウトを含めて」という箇所を,「同一の内容をそのままデジタル化した教材」という形に変えていただければと思います。
また,「機能」の箇所については,リフロー機能もデジタル教科書に含まれておりますので,「文字の拡大,リフロー表示,総ルビ」といった形で,リフロー表示も記載していただければと思います。
次に,10ページ目の「学習者用デジタル教科書について」という項目です。「機能について」という箇所に,「現在は,発行者や教科によって,有する機能や操作方法が異なっており,学校現場での円滑な活用に資するよう,機能等について,統一的な基準の設定を促すことが求められている」と書かれています。
会議の中でそういった趣旨の御発言は確かにありましたが,この表現ですと誤解を与えてしまうかもしれません。発行者や教科によって操作等が違う部分もありますが,現時点で明らかな問題となっているわけではなく,これから使っていただく中で,そのような違いが問題となるのか検証していくこととなります。よって,現段階では「問題がある」という論調や,「基準が必要」といったところについて,少し書き方を御検討いただければと思います。
また,その下の「制度について」についても,最初に申し上げたとおり,「紙と全く同じレイアウト」ではなく,「紙と同じ内容」と変えていただきたく思います。加えて,「幅広い児童生徒にとって,より使い易いものとする観点も含めた在り方の検討が必要とされている」という表現についても,「幅広い児童生徒」がどこを指しているのか分かりませんが,読み方によっては「現状のデジタル教科書に問題がある」という論調にも見えますので,この記述が必要であるとすれば,幅広い児童生徒というよりも,あくまで外国人児童生徒の学習に資する部分,例えば肉声音声等については今後検討や検証が必要といった具合に,書き方を少し考えていただければと思います。
さらに,その下の「希望する外国人児童生徒等が」という箇所について,本検討会議では,肉声による音声が効果的という話が出ていました。学習者用デジタル教科書のそのものの費用負担の話もございますが,前回デモンストレーションさせていただいた光村図書の国語のように,肉声音声を含んだデジタル教材とセットもございますので,教材も含めた費用負担の在り方についても併せて検討いただければと思います。
【齋藤座長】 ありがとうございました。「4.ICT教材の利用に係る方向性と課題,留意点」という項目に関する御指摘でした。書き方によっては少し強いメッセージになりすぎてしまうので,まず事実がどうなっているのかということを書いた上で,今後検討が必要であるという書き方をすべきではないかという御指摘でしょうか。
【犬飼委員】 そうですね。実際にまだ検証されていませんので,書き方を検討いただければと思います。
【齋藤座長】 「こうすべきだ」という書きぶりではなくて,「そういった観点からより良い在り方を検討していくことが必要だ」という書きぶりとしつつ,ここに挙がっているような観点について検討していくということですよね。
【犬飼委員】 はい。
【齋藤座長】 分かりました。10ページの「学習用デジタル教科書について」の三つの黒丸について,全体的にそういうトーンで書き換えるということでよろしいでしょうか。
【犬飼委員】 そうしていただければと思います。
【齋藤座長】 具体的な文言については検討しまして,会議は本日が最終回ですので,私と金森副委員長とで確認等させていただいた上で,最終版を皆様に点検いただく形になろうかと思います。その際は御確認をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
これについて何か事務局からございますか。検討のところの書きぶりは,全体として少し調整が必要かもしれませんが,レイアウトの件について等,いかがでしょうか。
【季武課長補佐】 前回会議の議論を踏まえ,レイアウトという文言を少し強めに入れていたのですが,実際の規定に合わせた形で,修正案を検討したいと考えております。
おっしゃるとおり,10ページ目の内容については,現状どうなっているのかということと併せて,座長とも相談しながら案を作成させていただこうと思います。
【河村委員】 今お話があったレイアウトに関して,確かに法律上は「内容が同じ」ということですが,実際に私たちが伺ったり,見本を見せていただいたりしている範囲では,レイアウトも同じに作るということが実態であると感じたので,教科書業界の中ではそういう御解釈なのかなと思っておりました。教科書業界全体としては,内容が同じであればレイアウトについては同一である必要は必ずしもないという御理解をされているということでよろしいのでしょうか。
【犬飼委員】 書かれていることが紙と同じ内容というのが,制度上デジタル教科書の定義になっていますので,その前提で,記述の変更をお願いしたいという話をさせていただきました。加えて,先ほど申し上げたように,必ずしも紙面と全く同じレイアウトだけではなく,リフローもついていますので,現状の制度の中で作ったものとしては,同一内容で,リフロー機能も付いているということをお話させていただきました。
【季武課長補佐】 国としましても,レイアウト自体を変更したリフロー機能が付いているものはございますが,現時点では,レイアウトも含めて,検定した紙の教科書と同じ形でデジタル上に表示されるものについて,「同一なもの」として運用をしております。
【河村委員】 アクセシビリティーということを考えますと,どうしても紙のレイアウトをそのまま維持するということでは無理があるというのが,これまでの私たちの専門的な知見でして,デジタル教科書もアクセシビリティーについて是非御配慮いただきたいというのが,障害のある児童生徒の立場からのお願いでした。必ずしも同一のレイアウトでなくて良いということで,文科省としても,デジタル教科書を作られる教科書発行者としても御理解をいただけるのであれば,それにこしたことはないと考えております。
現状がどうかということよりは,外国人児童生徒の学習上の障壁を低くすることに役立つ機能を実現するためには,必ずしもレイアウトにこだわる必要はないということを御理解いただいてデジタル教科書が作られれば,大変良いことであると考えているところです。一言それだけ申し上げておきたいと思います。
【齋藤座長】 ありがとうございます。著作権その他の法律の状況と,実際の子供のニーズとのバランスをどう取りながらより良いものを開発するかという検討が進められている中で,現在,この議論が行われているというところで御理解いただければと思います。
それではそのほかにございませんか。
【金森座長代理】 9ページ末からの「音声教材について」という項目に関係あるのかもしれませんが,特に音声教材のうちマルチメディアデイジー教科書については,下学年・下学部用のデイジー教科書の提供が可能であるということになっておりますが,これは外国にルーツのある子たちにも適用されるのでしょうか。特に学習言語については困難を抱えている子がいますので,そういうことが可能かどうかを教えていただきたいです。また,11ページ末からの「外国人児童生徒等の抱える困難の軽減について」という項目に関連して,大阪のある市でアンケートを取ったことがあるのですが,実際に指導するための教材が非常に少ないという現状があります。2点の黒丸を読むとそのような意味合いも含まれているように感じますが,やはり教材の作製・製作が喫緊の課題であるのではないかという印象を強く持っておりますので,そういう表現を盛り込んでいただければと思います。
加えて,以前も申し上げましたが,保護者がどうしても母語しか分からないという御家庭もありますので,マルチメディアデイジー教材の多言語化についてもどこかに入れていただければと思います。
【齋藤座長】 ありがとうございます。1点目に御指摘いただいた,学年の枠を超えての利用に関して,外国人児童生徒についても特別支援の子供たちと同じ扱いで良いのかという点については,条文等でどこかに明記されているのでしょうか。それとも運用上の取り扱いとして,内規のような形になっているのでしょうか。
【河村委員】 運用上は,少年院等の教育機関においては,中学を卒業している年齢ではあるものの,小学校用の教科書を使わないと学習ができないという要請等があります。それを踏まえ,デイジーのネットワークの管理団体と教科書課との間で話し合って,学年を越えて,少年院等の学習で小学校5,6年生の教科書がどうしても必要という場合には提供して良いという運用はされていると理解しています。
同様に,一,二年前の学年の教材や教科書が必要ということもよくありますので,それらについても提供可能であるという運用をしてきていると理解しています。
【齋藤座長】 ありがとうございます。運用としてあるとのことでしたが,外国人のお子さんの学年に関しては,受入れ段階で状況によって学年を下げて学ぶことについて,文科省からも状況に応じて判断するようにという通知が出ていますので,受入れ段階で下学年での学習ということになっていれば,当然ながら,教科書もその学年のものを使用するということになるとは思います。ただ,例えば5学年に編入した児童の学力や学習歴を見たときに,来日前に出身国・出身地域ではまだ4年生の段階の学習を終えていないという場合に,特別の教育課程において「個別の指導計画」を立てて4年生の内容を一部分取り込んで学んだり,5年生の新しい内容を学ぶための準備として下学年の内容を学んだりすることは問題ないかと思うのですが,その学習に教科書を使うということについて認められるかどうかは,また次の別の問題なのでしょうか。
教員側が自分の裁量で,必要に応じて下の学年の紙の教科書を使うこと自体は恐らく何も問題ないと思うのですが,デジタル教材となった場合にどうなのかということについて,御説明をお願いします。
【季武課長補佐】 今,齋藤座長におっしゃっていただいたとおり,特別の教育課程で,自分の年齢よりも下の学年に当たる課程を組んだ場合,それに基づいた教科書が採択されると思いますので,当該教科書の音声教材であれば,下学年用であっても使うことは可能となっています。
【齋藤座長】 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
下学年用の教科書・教材が使用できるということの重要性を共有した上で,運用上もう少し積極的に様々なチャレンジをしつつ,その成果をまた次の展開にうまく結び付けられると良いのではないかと思いました。
では,小澤委員,お願いします。
【小澤委員】 今回のまとめ方で,音声教材が外国人児童生徒等にも有効活用される道が開かれるということは,非常にありがたいことだと思います。また,学習用デジタル教科書の制作者側にとっても,恐らくそうした知見等が将来的に反映されていきますので,良い形になっていくのではないかと思います。
先ほど金森委員がおっしゃった,例えば既存のマルチメディアデイジー教科書を翻訳提供できないかということは,かねてから考えておりますが,今回の法改正の中には恐らくその点は盛り込まれていません。将来的に,翻訳提供する場合の課題や具体的な方法等について検討を推し進めていくときに,現場・研究者の立場として協力できるのかどうか思い惑うことがあります。報告書案の12ページに,外国人児童生徒等の抱える困難の軽減に関し,「総合的な取組について検討する」とありますが,どういった方向性,可能性があり得るのかということについては,もう少しお知恵を頂ければありがたいと思っています。
【齋藤座長】 ありがとうございます。本日は,まずこちらの報告書案について最終的な検討をした後に,意見交換という形で,今の議題にお話を戻させていただくということでよろしいでしょうか。
それでは,報告書の内容に関しまして,土屋委員,いかがでしょうか。
【土屋委員】 報告書案の11ページの一つ目・二つ目の白丸に,学校でどのように使っていくかについて,周知・研修を図る旨が記載されています。一つ目の白丸の3行目の,「まずその存在を情報発信し,それによってどのような利点があるのか」という記述や,5行目の「母語での情報発信等により」という記述について,この「母語での情報発信」というものが,具体的にどのような形になるのか,少し分からないところがあります。
また,二つ目の白丸の2行目に,「研修等により教師の指導力の向上を図るための環境を整えること」という記述がございます。せっかく良い教材等があっても,それが学校で知られていない場合や,教育委員会によってはそこまでの研修をすることができない場合もあると思いますので,文部科学省からも,「研修」や「周知」の部分を強く打ち出していただけると,現場としても大変ありがたいと思っております。是非よろしくお願いいたします。
【齋藤座長】 ありがとうございます。この報告書が今後うまく機能していくようにというエールかと思いながらお聞きしましたけれども,一つだけ,母語での情報発信に関して何か具体的なイメージがあるかという点について,いかがでしょうか。
【築樋委員】 恐らく,前回私がお願いをしたところかと思いますが,マルチメディアデイジーの申請方法等についても,どのような条件の方がどのように申請していくかということについて,分かりにくいことがあります。その辺りを整えていただくにあたって,母語の対応が必要ではないかと思い,前回申し上げたところです。
今土屋委員がおっしゃった,11ページの一つ目の白丸の6行目にある「使用条件等」が,恐らく,どのような人が使うか,対象をどうするかというところとかなり関わってきていると思いますので,実際にICT教材が使われることになりましたら,その辺りはかなり詳しく検討されるべきことではないかと思いました。
【齋藤座長】 ありがとうございます。今回,本検討会議における議論の具体的な中身が報告書に反映されており,ここでどのような議論が起きたのかということが非常に分かりやすい内容になっているかと思います。一方で,会議では多岐にわたる議論がなされましたので,この1年で議論した結果は,次年度以降,具体的にどのように文科省として反映するかというところでは,直線的に結果が出せるもの以外も含まれています。したがって,今回の報告書がそのまま次の施策として具現化されるということではないとしても,何かしらのメッセージとして生かしていければと思います。その方法の一つとして,直接この課題の担当である男女共同参画共生社会学習・安全課において,対象の子供に対してだけではなく,先生方や保護者の方への情報発信の仕方についても,有識者会議等で議論されていると思いますので,その議論の際に本検討会議で議論した内容も併せて反映させられるような仕組みというものを検討いただけるとありがたいと思います。
あとは,委員の私たちがなるべく大きな声を上げて発信していくことも大事かと思います。
【築樋委員】 もう一点,音声教材と学習用デジタル教科書について,現場の先生方から御覧になったときに,どちらにどういった制約があり,どう使えるかといったことが,わかりづらい場合もあるかと思います。例えば学習者用デジタル教科書であれば,ある学年に入った子供たちはその学年のものを使うのであって,指導の下学年のものを使うということは想定されないかもしれませんが,例えばデイジー教科書であれば,場合によっては下学年のものも使えるかもしれないことや,小さな制約のようなものがあること,申請の仕方についても違いがあること等,私も今回の議論を通じて初めて学んだことがたくさんあるので,実際に現場へ発信していくときには,対照表にする等,分かりやすくしていただけると良いのではないかと思います。
【犬飼委員】 その点については,デジタル教科書についても,有償になりますけれども,下学年のものは使えないということではないと思いますので,築樋委員がおっしゃったように,それぞれにどういう特徴があるのかといったことを全体として整理しないと,どれが有効なのか検討しづらいと思いますので,オープンな形で整理できると良いのではないか思います。
【齋藤座長】 ありがとうございます。利用例みたいなものがあると良いのかもしれませんが,そこまで報告書の中に入れるかについては検討が必要かと思いますので,今回の議論の後,教科書課においてまとめていただくときに,分かりやすいような工夫をしていただければと思います。
では,井阪委員,お願いいたします。
【井阪委員】 私自身,研修については非常に気になっているところなのですが,やはりICT教材の使用による効果を伝えていただければと思います。私は口頭でしか効果を伝えられていませんが,2年間デイジー教科書を使ったら,もう読みを支援してもらう必要がなくなったという子供もいます。それが複数例あるということは,やはり音声で読んでもらうことによって,語彙が増え,漢字の読みも習得できたという効果があったということだと思います。そのことをきちんと伝えていただくことで,「では,使おう」と思うようになるのではないかと思います。とても大事なことだと思いますので,どこかに加えていただければ幸いです。
【齋藤座長】 ありがとうございます。今までこういった会議の中で,報告書にヒアリングの内容を具体的に入れるということはあるのでしょうか。井阪委員の御指摘は,ヒアリングで成果として挙げられたものを,何らかの形でアクセスできるように,ということだと思います。会議の議事録や資料は,毎回ホームページにアップしてあり,アクセスすること自体はできるようになっているけれども,探すのが大変だということですよね。どうでしょうか。
【季武課長補佐】 参考資料をどう付けるか等,改めて齋藤座長とも御相談させていただければと思います。
【齋藤座長】 ありがとうございます。文科省から参考資料として出すにあたっては,会議の各回の会議資料とは少し異なり,非常に権威性を持つので,かなり慎重にしなければならない側面があるということは,私たちも了解しておく必要はあるかと思います。
【井阪委員】 例えば文科省事業で金森委員と協力して研究した成果が公表されています。それこそ探さないとアクセスが難しいのですが,そういうものを添付していただくというのはどうでしょうか。
【齋藤座長】 検討してくださると思います。
【井阪委員】 よろしくお願いします。
【齋藤座長】 ほかにございませんか。河村委員,お願いします。
【河村委員】 著作権法33条の3について,先ほど,金森委員や小澤委員がおっしゃったことに関連して,33条の3を改正して,公衆送信もできるようにしてほしいという話がありましたが,さらに,もし多言語化が必要であるとすれば,それについても現在著作権法47条の6において,33条の3は変形と翻案ができると規定されているのです。これは第3回の参考資料の6ページ目に記載されています。47条の6の第4号に規定がある通り,33条の3の第1項について,変形と翻案は可能とされていますが翻訳は入っていません。第5号では,視覚障害者等のための複製等について定めた37条の3項について,翻訳も含めて可能とされています。
このように,4号と5号とでは翻訳が入っているかいないかという違いがございます。先ほど議論した公衆送信権に関しても,33条の3と37条で公衆送信権まで含めて制限しているか,していないかというところで違いがあり,33条の3においても公衆送信を可能にするということが,今回の報告書において今後の措置に含まれているのですが,先ほどおっしゃったようなニーズがあるとすれば,47条の6の第4号についても,第5号と同様に,変形又は翻案だけではなく,翻訳も付け加える形はいかがかと思います。
【齋藤座長】 ありがとうございます。この点についてはどうでしょうか。
【季武課長補佐】 おっしゃるとおり,現状33条の3に基づいて翻訳を行うことはできないので,多言語化についても,33条3を基準として行うことはできません。また,翻訳を行うとなると,著作権が海外にも影響することとなるので,今回の改正の目的である,まず今ある音声教材をしっかり,すぐにでも外国人児童生徒に使ってもらうということとは,少し異なります。多言語化は,外国人児童生徒のためにも,今後検討していかなければならないことの一つだとは思うのですが,今の時点では,音声教材の多言語化まで含めてはおりません。
【齋藤座長】 今回は,音声教材を中心にしたICT教材を,来年度以降,外国人の子供たちが,特別支援の子供たちが今利用している状況と同じような形で利用するための法整備というところですので,ひとまずはという御意見かと思われます。一方で様々な技術が発展していき,翻訳もできるようになれば,翻訳の教材そのものの作り主も変わる可能性があります。今後の方向性を探りながら,多様な子供たちの教科書の使用上の困難をさらに軽減するような方策を考えていくにあたって,また皆さんのお知恵をお借りすることもあるのではないかと期待したいと思います。
おおよそ報告書の内容につきましてはよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それではせっかくの機会なので,少し関連する議題についてディスカッションをしたいと思うのですが,その前に,今回の報告書の最後に,本検討会議における全5回の議論から,今後に向けての提言を「終わりに」というような形で付け加えても良いのではないかということを,事務局と相談しているところです。
本検討会議に御出席いただいている委員の皆様方は,非常に多様な立場で子供たちの教育に関わられ,研究をされ,あるいは実践の場に立ち会われていらっしゃる方で,そのような皆様と検討したことにより,例えば,私や土屋委員,築樋委員が外国人の子供の支援や日本語教育で検討してきたところを超えた視点を得たり,あるいは具体的な支援の可能性に気付かされたりということがたくさんございました。
そういったこの会議の良さを背景に,最後に「終わりに」という形で,立場の異なる者による議論を展開していくことの重要性といったことを少し加えてはいかがかと思っています。具体的な文言はまだ作られていないのですが,教科書の製作をされる方,それから特別支援というお立場で実際に音声教材を使われている方,また音声教材を製作,提供していらっしゃる方がここに集っているということで,立体的に子供の課題や解決の可能性を探れたということは非常にすばらしいと思いますので,そういった内容を加えてはどうかと思っています。
それともう一点,先ほどから議論に上がっている著作権の問題も含めまして,使う側も,あるいは,今回の検討の結果を受けて,音声教材を製作していく側も,メディアリテラシーという視点で,教育に何かしらメッセージを出していく必要性を強く感じました。もちろん製作される側の立場としては,著作権を維持しながらどのように良いものを創造的に作っていくかということだと思いますし,支援する側としては,少し直截な言い方をすると,著作権があるがために制約が多い中で何ができるかということになりますが,両方の立場からこの問題を考えるときに,客観的に,法律にも照らし合わせながら検討するためのリテラシーが必要だということを,最後に加えてはどうかと思っているところです。
今の2点と,先ほど小澤委員や金森委員から御提案のあった,さらに外国人児童生徒における困難を軽減し,学習参加できるようにするための教科書のありようについてという三つについて,ざっくばらんにお話を伺えればと思います。いかがでしょうか。
【小澤委員】 今回の報告書は,既存の法に関する対応が含まれているといった点で,非常に具体的な提言になっています。先ほど議論のあった翻訳については非常に残念ですが,それは将来の課題としていただければと思います。これまでの5回の検討会議で方向性を見通せたということは,成果としては非常に大きかったと思っています。
法整備に加えて,教材の開発や先生方の教育法の共有化といった体制のことと,今後の研究の在り方等を含めた3本柱で,「終わりに」の方向性がまとめられていくと良いのではないかと考えています。
「今後の可能性」として,ここで議論されて課題となっていた点について,引き続き検討するための政策的な枠組みが継続されるよう問題提起をして,報告書を終わりにしていただけると,非常に展望が見えるのではないかと感じています。
【齋藤座長】 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
【土屋委員】 まずは外国人児童生徒のためにこういった教科用図書の困難の軽減に関する検討会議が始まったということは,私たちとしても大変ありがたく,うれしく思っております。外国人児童生徒は,各地域,学校によって状況も異なりますし,日本語力や,学習に参加できるかどうかという部分も,個人によって大きな違いがあります。授業に参加できるかどうかという部分は,子供たちの学習意欲にも大きくつながってくるところです。
私はもともと国語担当なのですが,やはり外国人児童生徒は,教科の中で一番苦手とするのが国語である場合が多く,私が聞いている生徒たちも「一番苦手なのは国語」と答えます。デジタル教科書があることで,苦手意識がある部分を一歩先に進めることができるのではないかと思います。また,横浜市の学校を御視察いただいた際,子供たちもデジタル教科書を「未来の教科書」と言いながら喜んで使っていました。こういったところで,この検討会議も含め,今,外国人児童生徒に関する検討が何歩も先に進んできたのではないかと,私も感じております。
先ほど来,翻訳に関する議論もございました。翻訳が全てできれば確かに一番良いことではありますが,例えば横浜市の場合,103か国につながる児童生徒が在籍しておりますので,103か国分の翻訳というのは不可能ですし,ある特定の言語の翻訳となってしまうと,その言語に対応できる子供たちは良いのですが,対応できない子供たちはそこの部分でも弱者になってしまいます。したがって,まずは日本語で日本語を学んでいくこと,授業に一歩参加をして,そこから自らの学習につなげていく,そのような指導が必要なのではないかと思っております。
【齋藤座長】 井阪委員,どうぞ。
【井阪委員】 小澤委員がおっしゃった「研究の在り方」というお話に少し心が止まりました。マルチメディアデイジー教科書は,子供たちにとって非常に良いものであり,非常に助けられていて,私の関わっている子供たちにとっては,本当になくてはならないものだと思っています。
ただ,さらに改良するべきところはあります。例えば,ボランティアの方が読んでくださっているので,速度がその方によって違うのです。したがって,ある方が読んでいるときには少し速度を速める,この方のときにはゼロでちょうど良い等,子供たちは調整しながら読んでいます。ルビについても以前御指摘がありましたが,マルチメディアデイジー教科書をさらに改善するために,検討会議のような検討の場が持たれると有り難く思います。
【齋藤座長】 ありがとうございます。今の仕組みでは,デイジー教材を作るのがボランティアの方であり,その良さあるけれど,少し課題も残っているところを,どのように調整していくかというお話かと思いますが,河村委員,その点について何かございますか。
【河村委員】 この委員会に出席させていただいて大変勉強になりました。ありがとうございました。私はデイジーの規格を作り,さらにデイジーと同じ機能を出版社が使う標準技術であるePUBに移植するという開発をずっとやっており,今年中に,ePUBにデイジーと同じ機能を持たせるための国際標準がISOの規格として成立する予定です。
教科書発行者,あるいは出版社全体において,電子出版をするときには,障害の有無を問わず,必要とする人たちが使えるよう,是非アクセシビリティーを高めていただきたいという立場で参加させていただきました。出版物がデイジーと同じようにアクセシビリティーを完備すれば,著作権は制限なしで保障されますし,出版社にとっても,販路がそれだけ増えるということですので,皆にとって良いのです。
それを実現するまでに様々なハードルがあると出版関係者から伺っておりますので,アクセシビリティーに関する認識も含めて,「こういうことが必要だ」「これがハードルとなって学習ができず困っている子供たちがいるのだ」ということをそれぞれの立場で理解していただいて,教科書も含めたどの出版物についても,元の出版からアクセシブルになるということを実現できたら良いと思います。教科書課の範囲とは少し違うのかもしれませんが,出版そのものをアクセシブルにしていくにはどうしたら良いかということも横に見ながら,この報告書を生かしていけたら良いのではないかと思います。
【小澤委員】 井阪委員が指摘された問題点と,河村委員の今の発言を踏まえてになりますが,マルチメディアデイジー教科書は,基本的には発行者が提供するのがベストだと思います。外国人児童生徒も,障害のある子供たちも,困難性が多様なのです。したがって,ボランティアの方の読みが早かったり遅かったりという御指摘がありましたが,様々な困難にカスタマイズして対応していくといったところに,ボランティアの方や多様な支援団体が活躍できると良いのではないかと思います。
基盤となるテキストが既に提供されているという形になっていきますと,外国人児童生徒においても翻案の中に翻訳が入ると良いのですが,翻案,要するにスピードあるいは読み方等について研究の深度によって様々ニーズを盛り込むことができると思います。多様なニーズに対応していくという方向性と基盤整備とが,上手にパラレルで進んでいくと好ましく思います。
【築樋委員】 今回,この会議に出させていただいて,私も大変たくさん学ばせていただき,本当にありがたかったと思っています。
ここで全員が一生懸命話し合いをして形を作っていくわけですので,やはり多くの方に知っていただけるよう周知していくことが非常に大事だと思います。今回のような検討会議をされても,その後の周知や啓発が進まず,例えば次年度に予算が付かなかったということもあります。せっかく様々な提案が出てきているのにそれが広がっていかないことについては,残念に思うところもあります。
外国人教育は,特に散在地域を含めて,情報が伝わらないということがありますので,長いスパンで周知させていくといったことをやっていただきますと,大変ありがたく思います。是非お願いいたします。
【犬飼委員】 私もこの会議に出させていただいて大変勉強になりました。様々な面で外国人児童生徒の大変さが改めて分かりました。
デジタル教科書に関して言えば,令和元年度より制度化され,どの発行者も試行錯誤しながら製作しています。私自身、「障害のある子供にはこういった機能が必要だろう」というのは,一定理解していたと思いますが,外国人児童生徒については,「総ルビで一定程度対応ができるのでは」と考えていた程度でした。
本検討会議において「音声というものは非常に大事なのだ」というお話がありました。現状,肉声音声は教材という扱いになっていますが,今回の議論を踏まえたり,今後も様々な知見を頂いたりするほか,デジタル教科書を使っていただく中でいろんな声を頂いて,先ほど小澤委員がおっしゃったように,発行者として,ある程度全ての子供たちが使えるようなものを提示して,それ以上のことであれば,ボランティアの方等にお願いするという形で製作していけると一番良いのではないか思っています。この話は持ち帰って,教科書協会でもまたよくお話をさせていただければと思います。どうもありがとうございました。
【金森座長代理】 もともと障害者差別解消法は障害者を対象にしておりますが,そこでよく言われる合理的配慮に基づく教材の提供ということで,合理的配慮を必要とする対象に,障害者だけではなく外国人児童生徒等も含めていただいて,ハード・ソフト面の研究開発充実といいましょうか,そういう方向で取り組むのが良いのではないかという印象を受けています。
【齋藤座長】 ありがとうございます。今のお話ですと,教科書のアクセシビリティーを検討するときにも,「外国人の子供」というように限るわけではなく,合理的な配慮でインクルーシブな教育の考え方を,外国の子供,あるいはそれ以外の個性を持っている子供にも適用して考えていくということでしょうか。
【金森座長代理】 はい。
【齋藤座長】 ありがとうございます。
少し早いようですけれども,まとめとさせていただきたいと思いますが,事務局からは何かございますか。
【季武課長補佐】 本日,本当に様々な御意見を頂きましてありがとうございます。
今回頂いた意見を踏まえて,修正案を作り,座長も御相談をさせていただきます。また, 頂いた御発言の趣旨の確認等,改めて皆様方にさせていただくかもしれませんが,その際は御協力をいただければ幸いです。
【齋藤座長】 ありがとうございました。それでは報告書についても大筋御了解いただいたものとして,頂いた御意見を反映させたものを,また皆様に確認いただくというプロセスを経ることになるかと思いますが,まずは事務局と座長で預からせていただきたいと思います。
最後に,私と,座長代理を務めていただいた金森委員から一言ずつお話しさせていただいて,事務局にお返しするようにしたいと思います。
私としては十分議論が進んだので,特に大きなことをお話しするわけではないのですが,本検討会議には,今後,音声教材やデジタル教材を利用することになる一般学級の担任や日本語指導担当教員の方がいらっしゃいませんでした。先ほど築樋委員からも御指摘がありましたが、そのような教員の方々にここでの議論をどううまく伝えるかというのは非常に大事なことだと考えています。
同時に,この会議の報告書や,デジタル教科書を普及させていくプロセスの中で,外国の子供たちや特別支援の子供たちの事例等が織り込まれることによって,多様な子どもたちを対象とした教科用図書の利用に関して,先生方が力量を高めていく機会になるのではないかと思っています。デジタル教材についての知識やスキルもそうなのですが,先ほど金森委員からもありましたインクルーシブという考え方を,「特別支援の子供たちだけに向けたあの支援のことね」というイメージから開放して,広く多様な子供たちへの教育において重要な理念,考え方として,先生方が自分の教育を振り返り,学ぶ非常に良い機会になるのではないかと強く感じています。
また,盛んに翻訳のお話が出てきましたが,今様々な翻訳ソフトがある中で,外国人児童生徒自身が自分で翻訳をすることと,こちら側から翻訳したものを提供するということとを並行して進め,彼らが複数の言語を操作できるようなスキルを高めていく教育も目指す必要があるのではないかと,今回の会議を経て強く感じました。例えば手話を使う子供たちがバイリンガルと捉えられるようになり,外国の子供たちについては,日本語ができないという側面だけではなく,もう一つの言語,あるいはもう二つの言語や文化を持っているという側面に光が当てられるようになると,学校教育の場面でも,あるいは地域活動の場面でも彼らの複数の言語の力が生かされる環境が出来上がっていくのではないかと感じました。
今回,翻訳まではなかなか難しいということでしたが,先ほど犬飼委員から「実際にやってみた成果として何が課題かというところを検討することが大事ではないか」というお話があったとおり,この議論を通して法的な整備という第一歩を踏み出すことに関わらせていただいて非常にありがたいと思いますし,できるだけ私も様々な場でこの検討会議のお話等をさせていただいて,普及においても,また次なる展開に向けても力になれればと思っているところです。
報告書の取りまとめにはこれからもまだ少し時間をいただき,御協力いただくこともあるかと思いますが,引き続きよろしくお願いいたします。
では,金森委員,お願いいたします。
【金森座長代理】 私はただ,感謝と反省だけです。齋藤座長が座長として非常に適任の方で,議事の進行は滞りなくスムーズに行っていただけましたし,最後も的確にまとめていただいて,非常に感謝しております。また委員の方々の協力も得まして,この検討会議が無事終わりそうですので,非常に喜んでおります。私自身本当に多くのことを勉強させていただいて,この検討会議の委員になることによって非常に成長できたのではないかと思います。感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。
【齋藤座長】 ありがとうございます。
それでは,今後について事務局からよろしくお願いいたします。
【季武課長補佐】 今後について,今回頂きました御意見について,改めて御趣旨等を確認させていただきながら,座長と相談して反映し,今月中をめどに,取りまとめ等を行ってまいります。またメールや電話等で御相談させていただくことになると思いますので,引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【齋藤座長】 ありがとうございます。
それでは最後に,中野課長より御挨拶をお願いいたします。
【中野課長】 本当にありがとうございました。齋藤座長,金森座長代理をはじめ,委員の皆様方には大変お忙しい中,5回にわたる会議で本当に熱心な御議論をいただきまして,心より感謝申し上げます。また会議以外でも様々な場面で御相談をさせていただき,多大なる御助力を頂きまして,ありがとうございました。報告書の取りまとめに向けて,引き続き御助言を頂ければと思います。
先ほど座長からもありましたように,今回いろいろな立場の先生方にお集まりいただき,我々も大変勉強させていただきました。齋藤座長が,毎回多様なお立場からの御意見を高める進行をしてくださったことにも本当に感謝しております。また土屋委員に御助力いただき,実際に外国人児童等がICT教材を活用する現場も見せていただきまして,大変勉強になりました。
今回,「教科書の使用上の困難の軽減」ということで,教科書課が主たる事務局として務めさせていただきましたけれども,もとより特定教科書等につきましては特別支援の担当とも密にやりとりしておりますし,今回の検討の対象が外国人児童生徒ということで,男女共同参画共生社会学習・安全課からも参加させていただき,さらに本日は諸事情により出席ができておりませんけれども,著作権課とも,毎日のようにやりとりをして検討しております。
もちろん,今回の取りまとめで終わりではございませんので,これからの施策に生かさせていただくとともに,これを現場で是非生かしていただけるように,分かりやすい周知,届けられるような周知に努めさせていただきたいと思います。
幸いこの検討会議の途中で,1人1台端末環境の整備を含むGIGAスクール構想が打ち出されました。障害のある児童生徒のみならず,外国人児童生徒等にも使っていただくことで,非常に指導の幅が広がる,学習の可能性が広がるということにつきましても,周知啓発という意味では大変良いチャンスではないかと思っております。
そういう意味で時宜を得た御報告を頂きましたので,是非事務局として生かさせていただきたいと思いますし,先ほど来ありますように,実際に運用する中で,様々な課題も出てくると思いますので,本検討会議が終わりましても,可能でしたら,また様々なところで御助言を頂ければと思います。本当にありがとうございました。
【齋藤座長】 ありがとうございました。
それでは,これにて閉会といたします。全5回の会議で実りのある議論をしていただきまして,本当にありがとうございました。

―― 了 ――
 

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