外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議(第4回)議事録

 1.日時

令和2年1月10日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館5階5F5会議室

3.議題

1.外国人児童生徒等によるデジタル教科書の利用事例について

2.報告書取りまとめに向けて

3.その他

4.出席者

委員

齋藤座長、金森座長代理、井阪委員、犬飼委員、小澤委員、河村委員、築樋委員、土屋委員

文部科学省

中野教科書課長、季武教科書課長補佐、小林男女共同参画共生社会学習・安全課専門官

5.議事録

外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の
困難の軽減に関する検討会議(第4回)

令和2年1月10日



【齋藤座長】 定刻となりましたので,ただいまから,第4回外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議を開催いたします。
前回の会議では,第4回までと御連絡していたところですが,報告に向けた議論の時間をとるために,第5回も開催することにさせていただきました。
今回,報告書の素案を基に議論を行い,御意見を反映した案を,次回の会議でさらに検討し,取りまとめさせていただこうと思っております。よろしくお願いいたします。予定の変更に御協力いただきまして,ありがとうございます。
それでは,まず,配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
【季武課長補佐】 資料を議事次第に基づいて確認させていただきます。資料番号1番から3番と参考資料の4種類を配布しております。御確認いただき,不足がございましたらおっしゃってください。
【齋藤座長】 ありがとうございました。
議題に入る前に,最近のICTに関する動向について,事務局から御説明をいただきます。よろしくお願いいたします。
【季武課長補佐】 では,参考資料に基づいて御説明させていただきます。
今般議論の中心となっております音声教材やデジタル教科書を使用するに当たり,そのベースとなるICT環境の整備について,今年度の補正予算で大きな動きがございましたので,現状を簡単に報告させていただきます。
参考資料1枚目を御覧ください。一番上の黄色マーカー部分にありますとおり,今年度の補正予算におきまして,児童生徒向けの1人1台端末と,高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するための経費が盛り込まれることとなりました。
これについて,3枚目にロードマップを掲載しております。小学校5年生から中学校1年生における環境整備に始まり,令和5年度内には小中学校全学年において1人1台の端末を整備していくこととしております。今回の議論においても,音声教材やデジタル教科書等,ICTを活用した教材を使っていくに当たって,ハード面の整備における課題や,教室内で1人だけパソコンを使う際の配慮に関する議論等もありましたが,今後,1人1台の端末環境が整備されることで,状況も変わってくるのではないかと考えております。今後のICT活用に向けて,大きな影響を与えるものですので,御報告させていただきます。
いま一度,参考資料1枚目を御覧ください。中ほどに,1人1台端末環境の整備は,多様な子供たちを誰一人残すことのない公正に個別最適化された学びや創造性を育む学びにも寄与するものであり,特別な支援が必要な子供たちの可能性も大きく広げるものであるということを,文部科学大臣メッセージとして発信しております。外国人児童生徒に向けても,1人1台端末環境が整備されることで,より一人一人に対応した教育ができるよう,環境整備を進めていければと考えております。
以上です。
【齋藤座長】 ありがとうございます。何か御質問ございますでしょうか。
では,議題に入らせていただきます。
まず,外国人児童生徒等によるデジタル教科書の利用事例について,事務局から御報告いただきます。お願いします。
【季武課長補佐】 では,資料1に基づいて説明させていただきます。
教科書発行者に御協力いただき,トライアルとして,外国人児童生徒や障害のある児童生徒に,実際にデジタル教科書を活用していただいております。実際にデジタル教科書を使っていただいている学校で,どのように活用されているのか,授業がどのような状況になっているのか等,直接見せていただきました。
今回伺ったのは横浜市立並木第一小学校です。土屋委員にも御同席いただき,12月18日に国語の授業を見学させていただきました。
対象クラス,児童については,国際教室における取り出し授業で,小学校3年生の児童3名に対する授業を見学いたしました。こちらの3名は,会話は問題なく日本語でできるけれども,学習の中で,文章を読んだり,書いたり,発表したりする場面では支援を必要としている,JSLの評価参照枠ステージでは3から4に当たる児童です。
内容については,一般の教室との並行学習として行われる国語の授業で,単元は「言葉を分類する」というものでした。今回の視察までには10日程度,学習者用デジタル教科書を使っていただいた状態であり,また,JSLカリキュラムを踏まえた指導を実施していただきました。
次に,「ICT環境と授業での学習者用デジタル教科書等の使用法」という項目についてです。ICTの環境としては,2ページ目の写真のとおり,児童1人につき1台のiPadがあり,さらに児童のiPadとつながった大型提示装置が1人につき1台,計3台の大型提示装置が並んでいて,常に児童3人のiPadの画面が映し出されていました。また,教室には無線LANが敷かれており,プリンターも1台設置されていました。
具体的なデジタル教科書の活用方法については,まず,教科書本文のポイントとなる部分にマーカーを引いて,全員で狙いを確認しました。次に,「言葉を分類する」という単元であったこともあり,付属教材のワークを用いて,単語を特徴ごとに分類し,考え方を端末上に記入しました。その後,大型提示装置に投影されている各自のワーク画面を見ながら,先生の進行の下,それぞれどういった観点から,どのように言葉を分類したのかということについて,クラスで発表し合いました。最後に,ワークで作業した内容を,自分の記録としてプリンターで印刷しました。
授業後には,先生方や御同行いただいた横浜市教育委員会の方々と意見交換をさせていただきました。その際に出た御意見を,「教員・教育委員会へのヒアリング結果」という項目に記載しております。まず,デジタル教科書の機能について,国際教室では,現在,ルビ付きの紙の教科書等を準備していますが,学習者用デジタル教科書の総ルビ機能を以て置き換えることができるため,特に来日直後の児童等には有効であるとの御意見を頂きました。ただし,総ルビ機能は,特に来日直後ですぐに漢字の読みを教えることが難しい児童に向けて有効な機能であり,児童の日本語活用能力に応じて活用することが必要とのコメントも頂いております。
2点目のマーカー機能についてです。今回の授業でも実際に使われていましたが,例えば,先生が指導者用デジタル教科書を大型提示装置に投影し,今,どの部分を読んでいるのかをマーカー機能を用いて示しておくことで,児童生徒は作業箇所を視覚的に確認することができます。口頭の説明だけでは,今,教科書のどの部分を読んでいるのかということを把握しづらい場合もあるため,作業箇所を視覚的に確認できるよう,指導者用デジタル教科書や大型提示装置と組み合わせて使用できると良いのではないかという御意見を頂きました。
また,3点目の読み上げ・朗読機能について,特に少人数の取り出し授業で,ほかの児童の指導をしている間に活用することができる点で有効ではないかとの御指摘を頂いています。例えば,文節の切れ目が分からない児童の場合,読み上げ・朗読機能を活用して,そういった練習をすることができるという利点があるのではないかということです。一方で,来日直後の日本語がほとんど定着していない児童の場合は,読み上げ機能を使用するだけでは単語の意味等が分からないので,読み上げ機能があれば済むわけではなく,しっかりと個別的な指導と合わせて対応していくことが必要である旨,併せて御発言がありました。また,ICT機器の持ち帰りができれば,家に帰っても読み上げ機能を活用した反復練習ができるため,一層効果的であるとの御指摘もありました。なお,現在並木第一小学校では児童によるiPadの持ち帰りは実施していないと伺っております。
4点目について,今回視察させていただいた児童はJSL評価参照枠ステージでは3から4ということで,日常会話は日本語で問題なく行えましたが,母語を使用した指導が有効な児童の場合には,翻訳機能があれば便利なのではないかという御指摘も頂きました。
2ページ目では,実際の指導への活用についてまとめております。
1点目について,デジタル教科書のそれぞれの機能は便利だけれども,常にその機能を使用することが良いとは限らず,機能を使うことを目的とするのではなく,あくまでデジタル教科書の機能の良い部分を生かすという意識が必要であると御指摘頂いております。例として書いておりますが,先ほど御指摘のあったとおり,総ルビ機能が有効な場面がある一方で,将来的に教科学習に追いついていくためには漢字もしっかり習得していく必要があるため,児童生徒の日本語習得の段階に応じて,ルビをあえて使わず,漢字は児童生徒自身に読ませるといった指導も必要です。このように,児童生徒に合わせた使い方をしっかり意識することが必要であるというコメントを頂きました。
また,1点目とも重複しますが,2点目について,外国人児童生徒等への指導に当たっては,「読む」ことも「書く」ことも必要であるため,まとめはデジタル教科書ではなく,あえて紙のノートに書かせる等,指導の目的ごとに適切な指導方法を選択する必要があるという御指摘を頂きました。デジタル教科書を使うということを目的とするのではなく,あくまでツールとして良さを生かすということを意識して授業をすることの重要性について,先生からもお話がありました。
3点目について,今回,授業を見学させていただいたのは国語でした。国語は一番苦手という外国人児童生徒等が多いものの,デジタル教科書を使うことで,意欲的に授業に取り組めている様子であるとのコメントを頂きました。今回,デジタル教科書を使った授業しか見させていただいていないのですが,授業では,児童が皆,積極的に発言して,授業に取り組めているという印象でした。
4点目について,少人数で個に応じた授業をする場合と,通常学級で一斉授業をする場合で,効果的な使い方は異なるため,留意が必要であるとの御指摘を頂きました。
また,5点目について,ただツールを使うだけではなく,それを授業の目当てに明確につなげる,授業の構成力の向上が必要であるという御指摘もあり,先生方がしっかりデジタル教科書を使いこなせるように,またツールとしてより良い方向に持っていけるように,授業力の向上と合わせて進める必要があるというコメントを頂いています。一方で,先生方が授業をより効率的に行える,例えば手書きでルビを付けていたところを,機能を使って自動的に行える等といった利点について,しっかりと先生方に理解いただいて,積極的に活用を進めていただく必要があるだろうというコメントも頂いたところです。
資料には記載していませんが,同じくトライアルでデジタル教科書を使用いただいている浜松市より中学校の国語でデジタル教科書を使っていただいた感触を伺っています。このケースでは4名の生徒がおり,JSL評価参照枠ステージ2の生徒が1名,他の生徒はステージ5という,ステージに差がある状況です。範読するときや,皆で合わせて読むときに,ついてこられる生徒とついてこられない生徒の差ができてしまうため,範読等についてこられない生徒に,読み上げ機能を使って,個別に分からないところを繰り返し聞いてもらう等の使い方が有効であるという感想を頂いております。
3ページ目からは, JSLカリキュラムやJSLの評価参照枠ステージ,DLAの狙い等に関する参考資料を付けております。
発表は以上でございます。
【齋藤座長】 ありがとうございました。では,今御報告いただいたデジタル教科書の使用事例に関して,何か御質問ございませんか。
どうぞお願いします。
【井阪委員】 前回,デジタル教科書を見せていただいたところ,大変見やすくて非常にすばらしいと思ったのですが,音声が非常に機械的であったことが少し気になっています。実際に使われているときに,イントネーションが普通の会話とは異なる音声を聞いて,子供たちはどの程度理解できていたのか等,何か感じられることがあれば教えていただきたいです。
【齋藤座長】 イントネーションやアクセントの自然さに関してほかにも御質問があれば,併せてお聞きしようかと思いますが,いかがでしょうか。築樋委員,お願いします。
【築樋委員】 前回,説明があったかもしれないのですが,もう一度確認です。漢字の総ルビ機能について,例えば5年生の国語の教科書を読むのに,まだ2年生までの漢字しか学習していない場合,3年生以降の漢字についてはルビが入る等の対応はできているのでしょうか。
【齋藤座長】 傍聴席にデジタル教材を出版されている出版社の方から合図をいただきました。この点については、現段階では対応はできないとのことです。
では,先ほど井阪委員からございましたアクセントとイントネーションの件に関してお願いします。
【季武課長補佐】 アクセント等につきまして,御指摘のとおり,機械読み上げですと,自然なイントネーションではないものもありますが,発行者からデジタル教科書と合わせて朗読の教材が販売されているものもあります。機械での読み上げは,直接,デジタル教科書の機能に含まれており,発行者,教科を問わず全てのデジタル教科書において使える機能かと思うのですが,一方で,自然な発声で読み上げる朗読音声は,現在教材として扱っています。障害のある児童生徒の場合,機械音声の方が聞き取りやすい場合もあるとも伺ったのですが,外国人児童生徒等において,機械読み上げではなく,自然な発声の音声が良いという場合には,現状,そういった教材付きのものを用意していただく必要がございます。
【齋藤座長】 よろしいでしょうか。ではほかの御意見があればお願いします。
【井阪委員】 ありがとうございます。実は障害のある児童生徒には機械的な合成音声を非常に嫌だと感じる子もいます。感覚の問題になるので,自閉傾向の強い子供たちに当てはまることが多いかもしれませんが,外国人であろうと,日本人であろうと,機械音声に抵抗のある子がいるということが一点です。また,第2回会議において報告させていただきましたが,発音を学ぶという点も非常に重要ですので,機械音声だけでは,正しいイントネーションで入っていかないのではないかという不安があります。私の指導している自閉傾向のある子供たちの中には,デイジー教科書の平坦な読み方よりも,感情を込めて俳優さんが読まれている,ペンでタッチする音声付きの教科書を使って学習した方が学びになるという子供もいます。前回,光村出版の方とお話しさせていただいたときに,光村図書のデジタル教科書は別途,俳優さんが読んでおられるデータも作られているとのことなので,そういった教材をうまく並行して利用できたら,子供たちは学びが広がるのではないかなと感じました。
【齋藤座長】 ありがとうございます。ほかはいかがですか。
これまでは音声を中心にした音声教材のことについて検討を重ねてきたのですが,今回は,情報を紙媒体とは違う形で提供できるデジタル教科書を用いた授業ということでしたが,何かございますか。
【河村委員】 現在教科書発行者において製作されているデジタル教科書は,HTMLという形式で編集されていることが多いのですが,EPUB形式で製作されていると,デイジーの音声教材と同じく,肉声をシンクロさせることも,合成音声を選択することもできます。
またEPUBの場合,合成音声を選択しても,非常に手間はかかりますが,規格としてイントネーション等もコントロールして読ませる方法がございます。したがって,デジタル教科書では合成音声しか出せないというわけではなく,技術的には,現在のデジタル教科書のプラットフォームにおいても,少なくともEPUBである場合には,デイジーの国際標準規格に沿って,肉声も合成音声も自由に使うことができるのです。ただし,実際に使う教材がどういうものであるかは,また別の問題であると分けて考える必要があるかと思います。
【齋藤座長】 ありがとうございました。ほかはよろしいですか。
【土屋委員】 横浜市においでいただき,ありがとうございました。
私も,この3人の子供たちの通常の授業の様子というのは今までに何回も見たことがあり,元々頑張る子供たちなのですが,今回,御視察いただいたときの授業は,より一層,意欲的に取り組んでいたと感じております。子供たちは,紙の教科書を「今の教科書」,デジタル教科書を「未来の教科書」と呼び,「未来の教科書を使うよ」と担当者が言うと,より意欲的になっている様子でしたので,効果的に使用できたのではないかと思います。
ただ,先ほど御報告にもありましたが,デジタル教科書の使用が全てに効果を生むという訳ではございませんので,どういう場面で,どのような機能を使うか,すなわち使い方の工夫というものが必要になろうかと思います。先ほど教員への周知に関する御指摘もありましたが,学校の教員は,デジタル教科書を実際に使用して,具体的にどんなことができるかということが十分には分かっておりませんので,デジタル教科書を使用するに当たっては,デジタル教科書でどのようなことができるのか,また機能をどのように使うことができるのかということについて,研修を十分に行う必要があるのではないかと思っております。恐らく,子供たちは,常日頃,スマホやパソコン,タブレットを使用しておりますので,使用方法について慣れるのは教員よりも非常に早いのではないかと思います。では,指導する側がそれをどう生かすかという部分の研修については,十分に行う必要があると感じております。
【齋藤座長】 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。
私からも一点述べさせていただきます。今回視察した授業は,国語科の「言葉を分類する」という単元とのことでした。深く読み込む,自分の考えや体験,感じたことを表現する等の活動を行う大きな単元ではありませんでした。それが関連したためか,報告書において,デジタル教科書の機能のなかでも,比較的単純な機能の有効性のみが,挙がっているかと思います。それ以外にも,例えば場面と場面の関係を考えていくときに,挿絵を瞬時に切り替える機能等が使用できると,理解や思考の助けとなり,学びを促していくのではないかということが想像できます。そういったことについても,今後,デジタル教科書・教材を外国人児童生徒の教育にどう生かすかというところで,検討すると良いのではないかと思いながら伺っておりました。
それでは,次に,本日のメインの議題になりますが,資料2の報告書(素案)について,事務局から御説明をいただき,その後,少しずつ区切りながら,委員の皆様方より御意見を頂くという流れで進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【季武課長補佐】 それでは,資料2の報告書(素案)について説明させていただきます。一部形式的な誤りがあり申し訳ありませんが,一通り,事務局から趣旨等を説明させていただき,それを踏まえて,本日の議論を行っていきたいと考えております。
まず目次について,「はじめに」から始まり,「外国人児童生徒等を取り巻く環境」,「外国人児童生徒等が教科用図書使用に当たり抱える困難の状況」,「ICT教材による外国人児童生徒等の教科用図書使用時の困難の軽減」,「対応すべき事項」と項目立てしております。音声教材とデジタル教科書等をまとめて「ICT教材」と呼んでおります。
ページをおめくりいただきまして,「はじめに」から説明させていただきます。まず,本会議が設置された経緯や検討の概要について記載しております。こちらについては,3点目にございますとおり,障害のある児童生徒のために製作されている音声教材や,今年度から教科書に代えて使用することができるようになった学習者用デジタル教科書について,いずれも随意のタイミングで教科書の音声情報を入手できることに着目し,特に外国人児童生徒に対して,音と文字とのマッチングをしやすくする等,教科書使用上の困難を軽減する上で有効かについて,議論を進めているということを述べております。
次に「1.外国人児童生徒等を取り巻く環境」について,現在の状況や関連する取組を一通り記載しております。
最初に,「学校現場における外国人児童生徒等の現状」について,日本語で十分に日常会話ができない児童生徒や,日常会話はできても,学年相当の学習言語が不足しており学習活動への参加に支障が生じている児童生徒を,「日本語の指導が必要な児童生徒」と呼んでおります。現在,日本語の指導が必要な児童生徒は増加傾向にあり,10年前から1.5倍にまで増えています。
2点目について,日本語の指導が必要な児童生徒には,外国籍のみならず,日本国籍の児童生徒も増えているので,国籍に関わらずサポートすることが必要とされている旨を書かせていただいています。本報告書では,日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒も含めて,「外国人児童生徒等」と記載しております。
3点目について,特別支援学校に通っており,かつ日本語の指導が必要な児童生徒等もおりますので,そのような二重の困難を抱える児童生徒への支援も必要とされていることを記載しております。
4点目について,増加傾向にある外国人児童生徒等の持っている背景は様々です。例えば母語として,ポルトガル語や中国語,フィリピン語,スペイン語等が多い状況ではありますが,多様化しています。また,現在,日本語指導が必要な児童生徒が在籍する学校は全学校数の2割程度ではありますが,その割合は徐々に増えております。また,日本語指導が必要な児童生徒を受け入れている学校のうち,当該児童生徒が1人だけというところが最も多くなっておりますが,一方で5人以上在籍している学校も多数ございます。さらに,地域によって,児童生徒が背景に持つ国や,どのように外国人児童生徒等に対応しているのかといった環境の違いもあります。学校や地域によって,外国人児童生徒等を受け入れている現場の状況は様々であるということを記載しております。
5点目において,外国人児童生徒等の滞在の長期化や,日本生まれの外国籍の子供の増加により,教育上の課題は複雑化しており,これまで以上に多様な配慮が必要となっているということを記載しております。
次に,「外国人児童生徒等への指導体制」について記載しております。
1点目について,文部科学省においては,日本語指導に必要な教員定数の着実な改善に取り組むとともに,齋藤座長にも入っていただいている日本語指導アドバイザリーボードを設置し,外国人児童生徒等の教育に関する施策への助言を頂くほか,自治体等に赴いて講演や指導助言を行っていただく等の支援を行っているところでございます。
2点目について,地方公共団体においては,先ほど申し上げましたとおり地域や学校によって状況が様々であるため,取組も様々に行われているところです。例えば,実態に応じて,教員,非常勤講師,日本語指導に関わる人員の配置を行うほか,土屋委員の御発表にもございましたが,来日直後の外国人児童生徒等に対して,学校外で日本語初期指導を行ったり,学校生活の体験等の取組を行ったりしている場合もあります。自治体によっては,こういった取り組みを行っていない場合もございます。地域の状況により,取組は大きく異なっております。
3点目においては,学校における取組を記載しております。外国人児童生徒等が在籍している通常学級での取組については,以前,井阪委員からも御発表いただきました。例えば,通常授業において個別に学習する時間等を活用し,先生がスマホを用いて外国人児童生徒等の母語に翻訳して教える等,必要に応じた支援を行いながら,教科学習のための指導が行われているということを記載しております。
4点目について,在籍学級以外の教室で日本語指導等の特別な指導を行う場合もございます。平成26年度からは,特別の教育課程を編成・実施することも可能となりましたが,その実施に当たっては,個別の指導計画の作成と評価が必要とされているところです。
このような特別な指導等については,外国人児童生徒等の状況に合わせた指導を行うことが必要であり,日本語の能力が不十分な児童生徒には基礎的な日本語習得のための指導を行わなければいけませんし,生活に必要な言語能力があっても,学習に必要な言語能力がない児童生徒に対して,日本語での学習についていけるようにするための指導を行わなければなりません。
次に「外国人児童生徒等への日本語指導及び教科指導」について記載しております。
1点目について,特別な教育課程による日本語指導については,児童生徒の発達段階を十分考慮しながら,個別の指導計画を設定した上で実施していただくことが重要です。指導計画の作成に当たっては,日常生活に必要な日本語を学ぶだけではなく,「日本語と教科の統合学習」等,5つのプログラムを組み合わせて行っていくこととされております。
2点目について,具体的な教科学習においては,日常的な会話はある程度できるけれど,学習活動への参加は難しい児童生徒に対して,日本語で学ぶ力を身に付けることを目的として開発された「JSLカリキュラム」を踏まえた指導や,教科書の内容で分かりにくい部分を書き下したリライト教材による指導等が行われているところです。また,在籍学級での学習の補習として,国語の音読の練習やワークシート,宿題の補助等の活動も行われています。
3点目について,現在,日本語の力の把握のために,DLA(Dialogic Language Assessment For Japanese as a Second Language)という,JSLカリキュラムを円滑に行うために開発された各日本語能力のアセスメントが活用されています。第1回会議における築樋委員の御発表の中で,DLAの評価基準ごとに教科書の使用状況等を調査いただくほか,有効な支援を分析していただいておりました。その点についても記載しております。
以上が,「外国人児童生徒等を取り巻く環境」に書かせていただいた内容です。
続いて,「2.外国人児童生徒等が教科書使用に当たり抱える困難」において,教科書使用上の困難について挙げております。
1点目について,日本語に通じていないこと等に起因して,教科書を使用するに当たって困難が生じているということを,念頭に置いて考えるべき点として記載しております。
2点目について,先ほどお話ししたとおり,取り出し指導等は行われているものの,そういった授業は週に数回程度の場合が多く,在籍する学級では日本語能力に配慮した授業が行われているとは限らない状況です。また,家庭においてもサポートを受けられないという場合が多々あります。
3点目について,問題なく会話ができていても,実際に文字を読んだりするときに,音と文字を対応させる能力が弱い場合もあります。また,習得の難易度が高い漢字について,辞書等を用いて自分で調べようにも,読み方が分からないので調べられないという点で,困難を抱えている児童生徒も多いという指摘を受けております。
4点目について,外国人児童生徒等においては日本語に通じていないために困難が生じていることから,障害のある児童生徒とは困難の理由が異なるということには留意が必要ですが,外国人児童生徒等の読みの困難の程度は,障害により読みが困難な児童生徒と同等,若しくはそれ以上という場合もあるということを御発表いただきました。それを踏まえて,障害のある児童生徒と同様,日本語に通じない児童生徒への支援も必要であるということを改めて記載しております。
5点目について,対象となる児童生徒一人一人の状況によって必要な支援や効果的な支援が異なる旨を記載しております。母語の土台がしっかりでき上がっている場合には母語をベースとした支援,来日前にほとんど学校教育を受けていない場合には思考の土台となる日本語を確立するための支援等,子供の状況に応じた支援が必要であるということを書いています。
6点目では,教育段階によっても教科書の使用状況が異なる旨を記載しております。中学校段階になりますと,卒業後の進路を意識した教育が行われるため,教科指導の必要性も高いということを書いております。また,教科学習の内容が難しくなるので,教科ごとの専門的な用語等も増え,さらなる支援が求められるということも書いております。
また,音読に当たって困難がある場合,具体的にどのような点で困難さを感じるかについては一様ではなく,逐次読みになってしまう等,基礎的な課題がある児童生徒もいれば,漢字が読めない,語彙が理解できないといった,内容に関わる点で困難を抱えている児童生徒もいるということを,7点目に書いております。
このように,支援の重要性は高い一方で,求められる支援の内容がかなり多岐にわたっている,児童生徒ごとに異なる支援が必要となっているのが現状であるということを,最後に記載しております。
以上を踏まえ,「3.ICTを活用した教材による外国人児童生徒等の教科書使用時の困難の軽減」においては,これまで申し上げたような課題を,音声教材やデジタル教科書等のICTを活用した教材により解消していくことができないかについて記載しております。特に,児童生徒が1人であっても,随意のタイミングで音声情報を得ることができるという機能に着目しながら,どのようなアプローチができるのか,どういった課題があるのかについて記載しております。
まず,「(1)ICT教材の活用の可能性」について,音声教材と学習者用デジタル教科書のそれぞれの特徴について書いております。こちらは概要になりますので,内容は割愛させていただきますが,先ほど申し上げたとおり,どちらも,先生がついていなくても,児童生徒が自分のタイミングで音声を得ることができるというところが大きな特徴になっています。さらに,デジタル上の画面で読んでいる箇所をハイライトしたり,分かち書きをしたりといった機能を持つものもある旨,記載しております。
(2)では,現場において,ICT教材にどのような効果が期待できるかについて記載しております。
1点目,6ページ目の一番下の白丸において,実際に行われている外国人児童生徒への支援の内容を記載しております。例えば,漢字が読めない場合には,個別に読み方を教える,ルビを振る等の対応がなされているほか,単語の切れ目が分からない場合には,読んでいる箇所を先生が示しながら指導する,手書きでその切れ目にスラッシュを入れる等の対応がなされております。また,文章の意味が分からない場合には,やさしい日本語や母語で説明する等の対応がなされている旨,書いております。
こうした対応の一部について,音声教材や学習者用デジタル教科書等のICT教材を活用することで代替したり,さらに学習効果を高めたりすることにつなげられるのではないかということを2点目に書いております。
3点目に記載しておりますが,例えば,従来であれば先生が児童生徒について内容を読み聞かせていた場面で,ICTを活用した教材を使用することで,児童生徒が任意のタイミングで音声情報を得ながら学ぶことができるようになります。分からない箇所を何度も繰り返して聞いたり,速度を自分で調整しながら聞いたりすることは,文字との対応関係を学ぶ一助となります。
さらに,4点目になりますが,児童生徒が1人でも音声教材を得られれば,教師が不在のときや,ほかの児童生徒に個別に対応している時間にも自習できるようになり,学習の時間が延びるほか,先生もより効果的に授業を進められます。「ここは1人でやっておいてね」という区切りがしやすくなりますので,先生が直接,個別に教えなくてはいけない内容に,より丁寧な指導をすることができ,外国人児童生徒等の学力を向上させることに資すると考えられる旨を記載しております。1人で教科学習を進められるようになることで,児童生徒の学ぶ意欲を高めることにもつながると考えられます。
5点目について,日本語の習得においては,毎日継続して学習していくことが重要であるところ,ICT教材を使うことで,誰にも気兼ねせずに自分のペースで何度も音声を聞くことができます。そのため,教科学習のみならず,日本語の習得の観点からも,学習効果が高いと考えられます。
ここまでは特に音声を意識して記載しているところですが,学習者用デジタル教科書や音声教材等を画面で表示する場合には,ルビ振りやハイライト機能,分かち書き等の機能も使うことで,さらに学習効果を高めることができる場合もある旨を6点目に書かせていただいているところです。
また,7点目については,河村委員から御指摘いただいた点ですが,母語の教科書を音声教材化したデータをオンラインで入手できる場合がありますので,母語でしっかり学べる児童生徒には,こちらも有効ではないかということを記載しております。
続いて,(3)にまいります。こちらは,(2)で述べた外国人児童生徒等への指導におけるICT教材の活用に当たって,どのようなことが課題となっているかについて書いております。
8ページ目の2点目では,まず音声教材について,現行制度では障害のある児童生徒のみ使用が認められておりますので,外国人児童生徒等が使用できるよう,制度の在り方を見直す必要があるということを書いております。
次いで,3点目になりますが,デジタル教科書については,現在無償給与の対象ではなく,導入は各自治体や学校の判断に委ねられているため,その点にハードルがございます。また,現状,教科書発行者ごとに機能や操作方法が異なっているため,「自分の使っている教科書に対応するデジタル教科書には使いたい機能がない」といったことも起こり得るということを記載しております。
さらに,ICT教材の使用に当たって,ハード面のみならず,周囲の生徒,保護者の理解や,教師へのサポートといった環境整備も必要になります。この点,最初に申し上げましたとおり, 1人1台の端末環境が整備されることで,状況は変わってくるかとは思うのですが,それでも,ほかの子とは違う教材を使うことになったときに,きちんと対応できるよう,環境整備を行う必要があると考えております。
5点目においては,ICT教材を活用した指導に当たって,教材の特性を生かすために,先生方に留意していただくことを書いております。
まず,文字だけでなく,音による指導の重要性をしっかりと意識していただいた上で,音声情報をより効果的に使うというところを意識していただく必要があること。次に,音声情報を活用することで文字と音との対応関係を学ばせるのみならず,漢字や単語の意味を理解し,それを運用する力を高めることが重要であるということ。さらに,教科等の学習を支える思考力の土台としての日本語の力をしっかりと培う必要があること。こちらについては,日本語指導の狙いの中にも含まれておりますが,その点についても忘れずに,しっかりと行う必要がございます。
最後に,母語と日本語の間における文法の違いや,語の意味範囲の違い,背景にある文化や社会的状況の違い等についても考慮した上で指導していくことが必要であること。を以上4点を書かせていただいております。
続いて,「4.対応すべき事項」です。こちらは3.の(3)で挙げた課題を踏まえ,具体的にどのような対応が必要かについて記載しております。
まず,音声教材については,先ほど3.の(3)でも挙げましたが,制度の在り方を見直す必要がございます。
また,音声教材の質を向上させていくことも重要ですので,音声教材等の製作団体と教科書発行者が連携し,知見の共有や作業の効率化等を図ることで,より良い教材を製作していただくことも必要と考えております。
9ページ目,学習者用デジタル教科書については,先ほど申し上げたように,現状,費用負担がハードルとなっておりますので,その在り方についてしっかりと検討していくことが必要です。また,発行者や教科によって付いている機能が違う場合がありますので,ビューア等の規格の統一等を検討することが必要ではないかということを書いております。
次に,ICT活用の環境整備について,まず,周囲の児童生徒等の理解を得られるように配慮しながら,ICT教材の活用を進めていくことが必要です。また,日本語指導をしている先生方の多くが,まだ音声教材や制度として始まったばかりの学習者用デジタル教科書について十分に御存じではない状況ですので,その存在をしっかり周知するとともに,機器の使用方法や教材の活用方法等についても情報発信することで,先生が活用できるようにしていくことが重要です。
さらに,家庭での自習にも活用できるよう検討することが重要ということを書いております。
指導については,先ほど申し上げた,より効果的に使うために必要な点や,念頭に置いておくべき点等,指導に当たって留意すべき点について,教師等に向けた周知をしっかりと行うことが必要である旨を記載しております。
最後に,次の白丸において,将来的に,さらに総合的な支援について検討していくことが必要である旨記載しております。外国人児童生徒等を対象としたやさしい日本語や母語の教材,図像,図や絵を活用した教材等の普及・活用の促進等についても,今後もしっかり取り組んでいくべきということで書いております。
長くなってしまいましたが,以上,一通り説明させていただきました。
【齋藤座長】 ありがとうございました。
それでは,報告書の素案について,皆様から質問を,御意見も含めてお伺いできればと思います。まず,「1.外国人児童生徒等を取り巻く環境」について御意見,御質問等ありましたら,御発言をお願いいたします。
【小澤委員】 まとめ方はこれで適当かと思います。報告書に書き込む内容ではなく,関連する意見として,学校現場では,教員の方や補助教員の方たちが外国人児童生徒の支援を懸命に行っていらっしゃいます。3ページの「外国人児童生徒等への指導体制」の3点目に相当するかと思いますが,以前見せていただいたように,教科書の一部を母語に翻訳する等,児童生徒一人ひとりの必要に応じた支援をされています。
こうした既存の努力や試行錯誤が,ICT教材の中に吸収・取り込まれ,活かされていくような仕組みができると良いなと思いました。
また,リライト教材等についても,今は紙ベースではないかと思うのですが,今後,ICT化され,音声化されていくと,非常に良いのではないかと思います。
加えて, DLAに関してですが,DLAを一生懸命やっていらっしゃる小学校が大阪にあります。私は放課後に外国人児童を支援させていただきながら,その様子を傍から見させていたく経験がありました。DLAの場合は,先生方の技術習得が非常に重要となるように感じました。DLAを全国の先生方が自由に使い,生かしていく方向が望ましいとは思いますが,そのためには,様々な普及に向けた努力が必要なのではないかと思いました。外国人児童生徒にデジタル教科書や音声教材が利用可能されるようになれば,DLAの中にもそうしたツールの活用を組み込んでいけると良いのではないかと思います。DLAは評価,アセスメントのツールですけれども,それを学習に生かされている先生方は結構多くいらっしゃいます。DLAの中に,ICTによる支援の観点を盛り込んでいくような時機に,そろそろ来ているのではないかと思いました。

【齋藤座長】 御意見ありがとうございました。まとめ方はこのとおりということですが,報告書の前後に,小澤委員がおっしゃった,現場におけるこれまでの努力とICT教材の活用によって一層効果的に活かされ,学習環境より豊かに整えていけると良い,というような文言が入ると,御示唆も反映されるのではないかと思いました。
ほかにはいかがでしょうか。
【金森座長代理】 現在,小学校1年生と2年生の外国人の児童を支援しておりますが,ようやく「あ」から「は」までの平仮名が読めるという状態です。DLAは,日本語をある程度話すことができて,日常生活を何とか送ることができる段階の評価参照枠になっているかと思いますが,それ以前の子供たちの評価方法やデジタル教材の開発,実態に応じたプログラムの開発等が必要ではないかという印象を受けています。
【齋藤座長】 ありがとうございます。
どちらかというと,男女共同参画共生社会学習・安全課のお話かとは思いますが,私の知っている範囲で申し上げますと,DLAは認知的な発達を捉えることを軸にして開発されているので,金森委員が御指摘くださったように,日本語を学習し始めた直後の初期段階を細かく捉えるということは難しいかと思います。その段階では,指導している先生方が御経験を基に,例えば,50音表に文字を書かせてみたり,音を発してそれを書かせてみたり,様々な形でチェックをしているのですが,全国的に共通する評価の具体的なツールは,まだ開発されていないというのが実情です。そのあたりの課題については,今回の検討における直接の中身ではないかもしれませんが,今後検討していく必要があるのではないかと思いながら伺っておりました。
ほかにいかがでしょうか。
【築樋委員】 今回の中身と特別に関係がある訳ではないとは思うのですが,3ページの1番上の,在籍人数が「1人の学校が最も多く3,144校」という部分と,次の項目の「日本語指導に必要な教員定数」という部分に関連して,例えば,現状,1人しか在籍していない学校にも日本語指導に関わる教員の配置があるという状況ではないということを踏まえて,より先生方の御負担が軽減され,在籍している担任の先生が対応できる環境を作るためにも,ICTの活用は有効であると思いました。
【小澤委員】 私もその点は文章に書き込むべきだと思っております。少数しか在籍していない,いわゆる少数在籍校の全国的な散在傾向が,恐らく今後,一層強まるのではないかと思います。すでに,フィリピン系の子供は全国に分布していますので,とりわけ,そのような学校において,ICTによる支援の拡充が求められていると思います。
【齋藤座長】 ありがとうございます。今の御指摘は,3ページの上のところを少し具体的に書き込んではどうかという御提案ですね。
ほかはよろしいでしょうか。それでは,次に,本検討会議の非常に重要な議題,議論の一つになりますけれども,「2.外国人児童生徒等が教科書使用に当たり抱える困難」に関して,御意見,御質問等ございましたら,よろしくお願いします。
【河村委員】 4ページの2の4点目に,障害により読みが困難な児童生徒との比較が出てくるのですが,この場合の「障害」の中に聴覚障害児が入っているのかということと,聴覚には障害がない子供の読みの困難に関する研究成果が反映されているのかということが,少し気になっております。
イギリス等では,ディスレクシア等の子供と生まれつき難聴の子供とを比較したリテラシーの調査が行われております。そこでは,目には障害がないものの聴覚に障害がある子供の方が,より読みに困難を抱えているのではないかという結果が出ております。イギリスの調査の場合は,さらに弱視の子供も対象としていたと思うのですが,様々な障害に対する特別の支援に関するこれまで蓄積や成果を持ち寄って,外国人の児童生徒の困難を解決する可能性及び困難度の比較を行うと良いのではないかと思います。今回言及されている困難の程度が,聴覚障害児を含むものとなっているのかどうかについて,補足の情報を頂けましたらありがたいです。
【小澤委員】 河村委員が指摘されている点は,私が報告したところに関わるかと思います。ここでの「読みが困難な児童生徒」は,ディスレクシアによって読みが困難な子供たちに対象を限定しており,聴覚障害の子供たちを範疇に入れていません。このときの調査では,現在,音声教材の支援を受けている読み困難な子供たちと比較して,外国人の子供たちの困難がどの程度かということの検証を目的としておりました。障害の度合いによって,もっと読み困難な子供たちがいるであろうということは,河村委員のおっしゃるとおりだと思います。したがって,提案文章の「障害により読みが困難な児童生徒」という表現よりは,「読みが困難な児童生徒」と書き直した方が,誤解がなくて良いかと思います。
【齋藤座長】 ありがとうございます。整理しなければならないのは,ディスレクシアや聴覚障害も含め,そうした障害のある外国人児童生徒と,そういった障害が全くなく,日本語の獲得にまだ困難,課題があるという外国人児童生徒とでは,読みに困難を抱えている理由が全く違うということです。そこを混ぜて議論することは非常に危険であるという点は,共有できているかと思います。
【河村委員】 聴覚に関して申し上げている理由はもう一つございまして,この委員会と並行して,「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会」という表題で,様々な障害者の読書の推進に向けた委員会が開かれております。当初のヒアリング対象には,聴覚障害者関係団体が入っていなかったのですが,改めて,聴覚障害者関係団体等に少し広げてヒアリングをしましたところ,読みの困難に関する要望が出されました。「聴覚障害により読みに困難があるのだ」ということが,団体の要望として公式に出されておりますので,そういった横の広がりの視点も必要かと思い,申し上げました。
【齋藤座長】 ありがとうございます。
ほかはよろしいですか。
それでは,次に,5ページからの「3.ICTを活用した教材による外国人児童生徒等の教科書使用時の困難の軽減」にまいります。本会議において最も中心的に議論してきたところになりますが,御意見・御質問等ありましたらお願いいたします。
【築樋委員】 6ページ目「②学習者用デジタル教科書」の「機能」のところに,「教科書発行者により異なるが,児童生徒の特性に応じてカスタマイズできる機能」とあります。この「カスタマイズ」の中には,先ほど小澤委員がおっしゃったような,日本語の指導が必要な児童生徒への支援に関してこれまでに現場で蓄えられてきた視点が必要であると思います。現状のデジタル教科書については,日本語指導が必要な児童生徒という視点は,まだ十分に入ってきていないのではないかと思うところもあります。「今あるデジタル教科書の機能を使うことは外国人の子供に有効であろう」という議論ではあったのですが,この先は,そもそもデジタル教科書を作る段階において,日本語の指導が必要な児童生徒がいるということと,そのような子供に対してどういった支援が必要であるかということに配慮したうえで,カスタマイズできる機能に入ると良いと思うので,その辺りを今後の課題として入れていただけるとありがたいです。
【齋藤座長】 ありがとうございます。
「4.対応すべき事項」に追記するか,今後の課題として最後の項目に追記することになるかと思います。今回の検討の会議の中で結論を出すということは難しいですが,この検討会議の中で,出た議題として記載いただけると良いかと思います。
では,ほかにいかがでしょうか。
【犬飼委員】 ICT教材について,報告書においては音声教材と学習者用のデジタル教科書が対比されて書かれていますが,これまでのお話を伺っていると,児童生徒それぞれの実態や実情に応じて,適切な教材があると思います。当然のことながら,音声教材については,これまでの障害者等々の知見の蓄積を反映しながら作られております。新しく制度化された学習者用デジタル教科書については,まだまだ十分に周知されておりませんが,法令に基づいて作られたものであり,教科書のレイアウトと同じ形で作られていることによって,学習を進めるに当たっての一助となる部分もあります。したがって,その子供の実態に合ったICT教材を使えることが望ましいと思います。素案にも記載がありますが,現状,法令上外国人児童生徒等が音声教材を使えないという問題と,デジタル教科書が有償であるという問題があります。無償の音声教材を使えるようにするということだけではなく,有償のデジタル教科書についても,保障も含め,より活用が進むよう国として考えていただければと思います。
加えて,現状,外国人児童生徒が音声教材を使用できるようになるためには,制度改正が必要となるかと思います。その点について,一言申し上げたいことがあります。現行法令は,著作者に対する著作権の制限という形で,著作物を無償で提供させるという形の制限法であるということを少し考えていただきたいと思っています。現状,障害のある子供たちに使われるときに,対象者を限定してデータを配信することで,セキュリティーを担保していただいていると思いますが,外国人児童生徒にも提供するということになると,著作者の立場からすれば,対象者をしっかり確定した上で,是非,データ提供に当たりデータの流出や目的外使用等がないようにしていただければと思います。
加えて,著作者からは,現行の教科書バリアフリー法において,教科書データを発行者から文部科学省を通じてボランティア団体へ提供していることに対し,十分に理解いただけていないこと等から,デジタル化されたデータの提供について,余り良い印象を持たれていない場合もあります。外国人児童生徒への対応が必要であるということに関して,著作者の方からも御理解いただけるように広く議論をしていただいた上で制度改正されることが望ましいのではないかと思います。著作者の意向として,デジタルデータの提供が難しいということになると,教科書に掲載できないなど制作に支障が出てくるおそれもありますので,是非,お考えいただければと思います。
【齋藤座長】 ありがとうございます。ほかにいかがですか。
【河村委員】 全体の記述としては,非常によく整理して書かれていると思います。
1点,誤解のないように,認識を共通にしておきたいという意味で申し上げておきたいのですが,6ページの上から5行目からの2行に,「文部科学省においては音声教材製作団体に調査研究を委託しており,その成果物である音声教材は,障害のある児童生徒に無償提供されている。」という一文がございます。この書き方には間違いはありません。ただし,調査研究を委託しているということと,製作費を国が負担しているということとは別です。音声教材にはいろいろありますが,そのうち一番需要数の多いデイジー教科書については,製作費を国が負担しているとは言えない状態です。ディスレクシア児童生徒の家族を含むボランティアが,大変必死に尽力して製作している結果,無償提供されております。文章上具体に書く必要はないのですが,安定的な予算によって提供されているものではございません。また,学校教育法改正のときの国会等における文部科学省の御答弁で,再三,学習上のバリアを克服できる機能がありますと御説明されておりましたが,こちらはデイジー教科書がモデルになっており,今,手に入るデジタル教科書のことではないと私は認識しております。
では,デイジー教科書とデジタル教科書の非常に大きなギャップをどのように解決すれば良いかということについてです。先ほど御意見がございましたように,学習者用デジタル教科書は,教科書発行者が発行するものと定められているところ,発行者においては,紙の教科書の内容をすべて記録したものであるというデジタル教科書の要件を,「レイアウトが同じ」と理解しておられると思います。「レイアウトが同じ」としますと,本当にアクセシブルな教科書というのは作り難いです。複雑なレイアウトの教科書と全く同じレイアウトと言われると,どうしようもなくなってしまいます。実際には,教科用特定図書等に含まれる拡大教科書は,基となる教科書と同じものということでありながら,レイアウトを変更しています。同様に,デジタル教科書の制度においても,内容を崩さず,変更せずに,レイアウトを変えることが可能だということにできれば,デジタル教科書がデイジー教科書の機能を持つということも可能であると私は考えます。したがって,教科書バリアフリー法ばかりが解決策ではなく,制度的に,デジタル教科書は紙の教科書とレイアウトが同じものだけを指すのかというところが課題となります。点字の教科書や拡大教科書のレイアウトは,基となる教科書と決して同じではありません。しかし,これまで同じものであると理解して運用してきておりますので,そういった点の見直しからも解決することができるのではないかと思います。先ほど来述べておりますとおり,ボランティア団体が製作した拡大教科書は,国が買い取って児童生徒に無償で提供するという制度が定着しております。標準的なものは教科書発行者が発行し,ボランティア団体が特別なニーズに対応したものを製作して,デイジー教科書も含め,国が費用負担するという道は制度的には開き得ると考えます。デジタル教科書の定義をもう一度考えてみることと,教科書バリアフリー法の運用の中でも考えてみることの2点が,重要なことかと思います。
【齋藤座長】 御意見ありがとうございました。
どういう場所で誰が使うかということに合わせた多様なレイアウトがあると,さらに良いのだろうとを改めて思いながら伺っておりました。クラスの中で周りの子と一緒に学習する場合は,教科書と同じレイアウトが良いのでしょうけれど,その子の特性に合わせて個別に指導する場合は,その子の特性がマイナスに作用しないようなレイアウトや,様々な工夫をした教科書を使えると良いのではないかと思います。様々な可能性を御示唆いただき,ありがとうございます。
ほかの御意見はいかがでしょうか。
【小澤委員】 今回の直接の検討内容ではないのですが,最初に,1人1台端末環境を作っていくという政策の話がありました。ハードが整備されていきますと,問題は中のソフトになりますが,ソフトの議論は今どういう段階にあるのでしょうか。少し時期尚早な言い方になるかもしれませんが,例えばデジタル教科書を標準装備するということになると,議論の仕方も少し変わります。私は,犬飼委員も河村委員もおっしゃっていたように,教科用特定図書とデジタル教科書の2つの制度をうまく併せて機能させることで,障害のある方や外国から来た方等,多様な状況に起因する多様な困難に対応していくことが重要ではないかと感じています。その前提として,ハードが整った場合のソフトの整備について,政策議論の状況を教えていただきたいです。
もう一つ,11月26日に「外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議」において本検討会議の議論成果が中途報告されていますね。報告をされた際の委員の方々の反応や御意見を教えていただいた上で,引き続き議論ができると良いかと思います。
【齋藤座長】 それでは,この報告書の内容からは少し外れてしまいますが,一旦2つの御質問について確認をさせていただきます。
【季武課長補佐】 まず,1点目のハードの整備との関係について,先ほど御説明を飛ばしてしまいました参考資料の2枚目を御覧いただければと思います。ハードを整備することが今年度の補正予算で決まりましたが,小澤委員から御指摘いただいたとおり,ハードだけ,箱があるだけでは何もできないので,それと併せてソフト面や,それを使う先生方の指導体制についても,しっかり進めていかなくてはいけないと考えているところです。資料の左下に「ソフト」という項目がございますが,デジタルならではの学びの充実に向け,デジタル教科書・教材等,良質なデジタルコンテンツの活用促進ということを書いております。
実際にどう検討していくのかにつきましては,まさにこれから有識者会議を立ち上げて検討していこうとしている段階です。資料の一番下,「今後の主な検討課題」というところにも記載しておりますが,デジタル教科書の今後の在り方については,来年度中をめどに方向性を示せるよう検討を進めていきたいと思います。その中で,外国人児童生徒等が使用するに当たり,多様化した環境の中で,どのような機能が必要なのか,どういった観点から使えるようにしていく必要があるのか,制度は紙と全く同じでないといけないのか等も含め,検討していければと考えているところです。
【齋藤座長】 ありがとうございます。11月26日の有識者会議での中間報告において,何か御意見等が出ておりましたら,お知らせいただければと思います。
【小林専門官】 委員の方々の反応としては,やはり,有効であるという御意見が非常に多かったです。委員の中には特別支援教育に長く携わっていらっしゃった方もいらっしゃいまして,音声教材を実際に現場で使ったこともある方でしたので,外国人の子供たちに日本語指導という場面で使うことの有効性についてお話しいただきました。ただ,費用負担が今どうなっているのか等,こちらの会議と同じような御質問が委員からも出されていたところです。
【齋藤座長】 ありがとうございました。それでは,1人1台コンピュータ時代,「コンピュータ」とは書いてありますが,タブレットを手にできるような時代に,ソフトとしてデジタル教科書等をどう備えていくか,あるいはソフトの中身自体をどういった形で提案していくかということについて,今後,検討していく際に,本検討会議で検討した結果を生かしていただけるとありがたいと思います。
また,「外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議」の委員の方々からも好評価を頂いているというお話がありました。その有識者会議も,本検討会議と同時期に終わるということですが,本会議の報告書が出来上がった暁には,外国人教育の御担当部局で,是非,活用いただきたいと思います。
それでは,「4.対応すべき事項」に移らせていただきたいと思います。これまで皆様からいただいた御意見の多くは,こちらに該当するのではないかとも思いますが,改めて8ページから9ページにかけて御覧いただき,御意見・御質問等ありましたらお願いいたします。
【土屋委員】 9ページの「ICT活用の環境整備について」の3点目にございます,「家庭での自習にも使用できるよう検討すること。」という部分を,是非強く打ち出していただけると,大変ありがたいと思っております。
7ページの下から三つ目の白丸における,2行目の後半に,「誰にも気兼ねすることなく,自分のペースで何度も反復して音声を聞けることは,学習効果が高いと考えられる。」とあるように,ICT教材の活用効果は高いと感じます。では,実際にそれをどう使うか,どの場面で使うかについて,例えば,小学校において音読の宿題が出ます。外国につながる児童生徒の保護者は必ずしも音読の指導を家庭でできるというわけではございませんが,デジタル教科書を用いることで,音声読み上げ機能を使い,家の中で練習をすることができます。家庭での使用が可能であれば,学校の中で音読の指導をする時間が節約でき,さらに,子供たち自身が一斉授業に参加することができるという点で,非常に大きな効果があると思います。
ただ,先ほど犬飼委員がおっしゃったように,データの流出への懸念を持たれている方や,著作者の中にもデジタルデータを好まない,望まない方もいらっしゃるので,家庭での使用に向けてはクリアしなければいけない課題が多数あるかとは思うのですが,1人1台の端末があるといっても,それを自宅に持ち帰ることは,かなり難しいと思います。学校の中ではデジタル教科書を使ったとしても,家に帰ってデジタル教科書を使うことができない,今までの紙ベースの教科書で音読の練習をするとなってしまうと,効果が薄くなってしまいます。音声教材を使えば良いという御意見もあるかとは思うのですが,やはり,家で練習をした教材と同じ見た目の教材で学校の授業に参加できた方が,子供たちの意欲にも,学習の効果にも影響が大きいのではないかと思います。また,子供たちが家庭で練習したうえで在籍学級の授業に参加することにより,教員のその場での指導時間を節約できます。この点は,教員の多忙化が叫ばれている中で,働き方改革にもつながる部分ではないかと感じておりますので,デジタル教科書を家庭で,家に帰ってから自宅で自習する際にも使えるようにしていただけると大変ありがたいです。是非よろしくお願いいたします。
【井阪委員】 同じところで意見を申し上げたいと思います。私は読みの苦手な子供たちに,毎日デイジー教科書を使用させています。私が3年前に通級担当になった児童は,4年生,5年生と使うことによって,6年生になった現在,デイジー教科書を使用しなくてもほぼ内容が分かるという状態になりました。1学期まではルビを振ったテストを使用していましたが,本人から「もうルビがなくても大丈夫」と言うまでになりました。その子だけかと思っていたのですが,今,5年生の児童も,3年生,4年生と使ったことで,同じように,自分でテストを解ける状態にまでなりました。集中的に読み上げ機能を使うことによって,早期に改善し,早期に習得するということが見えてきたのです。したがって,自宅で自習できると,より早く日本語を習得することにもつながるのではないかと,非常に期待しております。
もう一点,一番気になっていることが,教師が使えるのかというところです。私がいる大阪では,現在,教員がどんどん若返っているところです。特に本校は,新任から6年目までの教員の割合が多く,そのほとんどが通常学級の担任をしています。毎年3,4人の新任教員が着任するため,授業改善のために,教員が教員を指導するという若手研修会も持っているほどです。一方で,以前,徳島等に行かせていただいた際,教員の年代層が少し上であるように感じました。デジタル教科書が導入されると,今とは全く違う授業形態になっていくと思います。ある程度,ICTを使った授業をしてきた教員は,「この場面で使って,このようにすれば良い」,「こんなふうに使おう」というイメージができるのですが,ICTを使うことが苦手という教員もいます。本校には読みに困難を抱える児童がたくさんいるので,デイジー教科書を通常学級でも使える状態にしているのですが,デイジー教科書であっても使える人と使えない人がいるくらいです。学習者用デジタル教科書を用いて指導することによりどのような授業ができるのかについて,御提案いただけるような体制を今後作っていただくことで,より充実していくのではないかと考えています。よろしくお願いします。
【齋藤座長】 ありがとうございます。ほかにいかがですか。
【小澤委員】 7ページの一番下の丸についてです。以前河村委員が御指摘されており,私も目からうろこだったのですが,マラケシュ条約に基づき,音声教材の国を越えた活用ができないかという御指摘だったと思います。確かに,実際に母語教材を使用する場合には,母語支援員を配置する等の措置が必要になるであろうと思います。特別支援対象である外国人児童生徒等は通常学級にも在籍していると思われますので,まずは具体的にどのような海外のデジタル教科書が利用できるのかという情報を周知していくことが大切と考えます。例えば,ブラジルから来た子供たちであれば,「日本ではこういった条件の下で,こんなブラジルのデジタル化された教科書が手に入ります」という情報が周知されていくと,通常学級に在籍している外国人児童生徒も,特別支援学級に在籍している外国人児童生徒も,「障害がある」という条件に該当する子供が活用できる可能性が高まるのではないかと思います。現状,「そうした教材が使える」という情報がないために,有効な教材が届いていないと児童生徒はいるものと思われますので,必要としている子供に届けられるような情報提供の徹底について追記しておくべきと考えます。素案では,「その場合」以下を読むと,「こういった条件があるので,これは難しい」とも読めます。今の時点でも,実際にできることがあれば,追求すべきではないかと思いました。
それから,9ページの最後にございます「やさしい日本語や母語の教材,図像,図や絵を活用した教材等の普及・活用の促進」という箇所について,こちらは私が以前指摘した点かと思いますが,「母語の教材」という表現ですと,「母語を学ぶ教材」と受け取られる可能性があると思います。私が発表した文脈では,「母語翻訳された教材」と表現していただいた方が,正確に意味が通じると思います。母語教育のための教材ということではなく,教科書の内容や学習内容を理解させていくための教材ということが伝わるよう,少し表現を考えていただけるとありがたいです。
【齋藤座長】 ありがとうございます。2点,御意見を頂きました。河村委員,お願いします。
【河村委員】 障害のある児童生徒向けの母語の教科書の入手についてですが,ブラジルは,ほぼ100%カバーできると思います。また,タイもかなりの率でカバーされていると思いますし,バングラデシュも相当のカバー率だと思います。まさに国ごとではございますが,現実に母語教材へのニーズがあれば,そこから取り寄せるということは適法にできますし,それを仲介する活動についても,それほど難しいことではないので,期待できると思います。
【齋藤座長】 ありがとうございます。リソースを集約して,誰もが使いやすいように開示していく仕組みを構築していくということかと思いました。今,既に文部科学省の御担当部局において,外国人児童生徒のための様々なリソースを集めた「かすたねっと」というサイトが運営されていますので,そこに情報を提供することはすぐにできることかと思います。加えて,今,話として挙がっているような情報は,恐らく,外国人児童生徒教育専門の研究者等だけでは手の届かない情報ですので,もしかしたら,教科書関係の部署と,業界関係者,特別支援関係者,さらに外国人児童生徒の日本語指導に実際に携わっている者との間で円滑に情報を流通させるためのネットワークを作っていくことが必要なのかもしれないということを改めて感じました。以前,素案について事務局と相談した際に,9ページの最後の黒丸の項目の意図や意味合いとして, 小澤委員に御提案いただいたことを考えていらしているように思いましたので,もう少し,そこを発展的な文言で記載すると良いのではないかと思いながら伺っておりました。
ほかにございますか。
【築樋委員】 8ページの「音声教材について」という項目について,今回,音声教材を勉強させていただいて,先ほど河村委員が言われたように,支援に関わる様々な方が無償で作ってこられたというその作り方と,そういう形であるからこそ,無償で多くの方に使ってもらえるということが,とても良いなと思いました。外国人教育においては,学校現場での指導もあるけれども,現状としては,地域で支援をしてくださって,地域で教えてくださっている方が非常に多いので,音声教材を申請して使う方が,デジタル教科書よりも手に入りやすい,使いやすい形ではあると理解しました。そうしたときに,例えば,現状,障害のある児童生徒のみが使用可能となっておりますが,日本語の指導が必要な児童生徒も使用可能とした場合や,音声教材等を家庭でも使用可能とした場合に,その範囲はどうなっているのか,申請はどういう形で行うのかということについて,母語でも発信する等して,保護者の方にお知らせできれば,保護者の方が申請するということもできると思うので,そういった点についても,是非,報告書に入れ込んでいただけるとありがたいと思います。
【土屋委員】 今の内容とはちょっと変わってしまうのですが,9ページの「指導について」という部分についてです。先ほど井阪委員からもございましたし,並木第一小学校の視察報告の中でもお話をさせていただいたのですが,やはり,ICT教材,デジタル教科書を使うに当たっては,かなり教員の研修が必要になってくるかと思います。今,素案では「教師等に向けた周知を行うこと。」とされているのですが,周知だけでなく,各地域で研修会を行う際の研修の支援等もお願いできると大変ありがたいと思っておりますので,是非よろしくお願いいたします。
【金森座長代理】 重複するかと思いますが,9ページの「ICT活用の環境整備について」の3点目に「家庭での自習にも使用できるよう検討すること」とあります。今,実際にiPadに持ち運びのケースを付け,児童に持って帰っていただき,また学校に持ってくるということを続けてみようと思っております。その場合,親も一緒に勉強したいという御意見もありましたので,是非,家庭での自習ができるような体制ができると良いという印象を受けております。
また,既に御指摘がありましたが,デイジーの多言語化によって,保護者も分かるし,児童生徒本人も分かるということで,そういった多言語化した教材の製作もこれからやっていこうかと思っております。小澤委員のホームページにも載っておりますので,そういうものをできるだけ活用しながら,保護者も本人も日本語を学習できるような体制というものが必要かと思います。
【齋藤座長】 ありがとうございました。
皆様から,ほぼ全体に関わる御意見も含めて,御指摘いただいたかと思いますので,この報告書(素案)に関する御意見,御質問は,ここまでとさせていただきたいと思います。
それでは,この後のスケジュールにつきまして,事務局より御説明させていただきます。お願いいたします。
【季武課長補佐】 資料3について説明いたします。
前回,4回までとさせていただいていたところ,1回増やさせていただきまして,第5回までとさせていただこうとしております。
次回,第5回につきましては,2月12日の水曜日,時間は書いていないのですが,14時から16時で調整させていただこうとしているところです。
次回までに,報告書(素案)につきまして,今回いただいた御指摘を踏まえたものを御確認いただき,その上で,第5回の議論をできればと考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【齋藤座長】 ありがとうございました。
それでは,時間となりましたので,本日はこれで閉会させていただきたいと思います。報告書(素案)として非常に詳細に,これまでの議論を丁寧に反映させてくださったものを御提案いただきましたので,大変有意義な議論ができたかと思います。次回開催までに,報告書を修正して提案してくださるということですので,引き続き,御協力をお願いいたします。
それでは,本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

 

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