高等学校における次世代の学習ニーズを踏まえた指導の充実事業(令和元年度)(2)

多様な学習ニーズに応じた指導方法等の確立・普及

千葉県

【調査研究課題名】
定時制高等学校における日本語指導を必要とする生徒への支援体制の構築(個に応じた日本語指導の充実に向けた学校の教育力の向上)

【調査研究成果概要】
[調査研究校:県立生浜高等学校(三部制定時制・普通科),県立市川工業高等学校(定時制・工業科)]
(1)調査のねらい
日本語指導を必要とする生徒にそれぞれの日本語能力に応じた適切な学びを提供し、自己肯定感や学習意欲を向上させるとともに、日本語能力及び基礎学力を確実に定着させる。『見立て→指導計画→指導→評価』のPDCAサイクルを確立させることで、個に応じた指導の充実、学校の教育力向上を目指す。
(2)調査研究の内容
・教員の見立て力向上のためのツール作成
・授業研究及び教材開発
・多文化理解教育の充実
・専門家による研修会の実施
・教育課程の検討
(3)成果
・生徒の状況を踏まえ、各校それぞれの見立てシートを作成・活用し、生徒の困り感を把握することができた。
・日本語の授業だけでなく、日本語指導が必要な生徒の授業において、日本語指導員や他教科の職員と連携して実施することができた。
(4)課題
・生徒に身に付けさせたい力を明確にし、取組を通して生徒や職員の変化を図るための評価指標を位置付ける必要がある。
これらを基に、次年度の調査研究につなげる。

 

神奈川県

【調査研究課題名】
「高等学校における次世代の学習ニーズを踏まえた指導の充実事業」~通信制課程における多様な学習ニーズを支える持続可能な体制の構築~

【調査研究成果概要】
 [調査研究校:神奈川県立横浜修悠館高等学校]
 通信制には全日制と比べ、様々な困難を抱える生徒が多く通っており、それぞれの生徒に対して効果的な支援を行い「自立と社会参加」へつなげていくことを目指し、次の3点について研究を行った。
(1)通信制における自校・他校通級の組織体制づくり
通級による指導のプログラム例を作成し、評価方法や単位認定について整理するとともに、個別の支援計画等を活用した在籍校との連携等、受け入れ手続きについての詳細を定め、他校通級について周知した。
(2)ICTを活用した多様な学習支援
PDF形式でのITレポートの作成環境を整えたり、動画コンテンツについての利用調査を行うことで改善を図ったりするなど、ICTを活用した幅広い学びの体制を整えた。
(3)校内支援データベース、横浜修悠館マイページを利用した支援体制の構築
データベースの運用により、生徒の様々な情報を共有し指導や支援につなげたり、マイページを活用し個別相談を実施したりすることができた。

 

山口県

【調査研究課題名】
「関係機関等とのネットワーク形成と重層的支援の充実を目指して」~ICT機器及び外部人材等の専門家の活用による、学習上又は生活上に困難を有する特別な教育的支援を必要とする生徒への指導・支援の充実~

【調査研究成果概要】
[調査研究校:県立徳山高等学校・県立山口高等学校]
高等学校において、特別な教育的支援を必要とする生徒の中には、1年次の教科学習のつまずきや人間関係上のトラブル等の問題が学年の進行とともに複雑かつ困難になり、心理的な不安定や不登校の原因等につながっているケースもある。特に、定時制や通信制課程においては、中学校の学習内容の定着を図ることが難しい生徒や、中学校時に通級による指導を受けていたり、発達障害等の診断を受けていたりするなど、支援を必要とする生徒が増加傾向にある。
このため、多様な教育的ニーズに対応できる体制を整備するため、生徒に寄り添い、生徒が自己肯定感を高め、自信をもって社会に参加できるよう、外部専門家等と連携した相談支援体制の充実を図るとともに、ICT機器等の活用による「分かる・できる」を実感できる一斉指導時の配慮や工夫等、多様な教育的ニーズに応じた適切な指導・支援方法について研究を行った。

 

徳島県


【調査研究課題名】
 多様な学習ニーズに応えるための指導方法の確立

【調査研究成果概要】
 [調査研究校:徳島県立徳島中央高等学校,徳島県立徳島科学技術高等学校,徳島県立富岡東高等学校,徳島県立鳴門高等学校,徳島県立名西高等学校,徳島県立池田高等学校]
これまでの取組で構築した支援・相談体制を活用し,取組内容を充実・深化させ,指導方法を確立し,定時制・通信制課程の全ての高等学校で活用可能にすることを目的としている。
今年度も,取組の有効性・有用性の整理,客観的な検証を進めた。また,定時制・通信制課程の生徒が抱える共通の課題及び対応策として汎用化の可能性についても検討した。
就労・ソーシャルスキル向上・学力向上の取組において,それぞれ勤労意欲向上,自己有用感・自己肯定感の向上がみられ,一定の成果があった。また,アンケート結果やルーブリック評価などにより,成果が可視化できており,評価方法の充実がみられる。次年度は,各校で取り組んでいる指導方法を他の学校に導入し,分析・検証することで「指導方法の確立」に繋げたい。
 


京都市

【調査研究課題名】
スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーと協働し,個々の生徒の学習ニーズに応じた指導方法の確立~社会でより良く生きていく力をつけるために~

 [調査研究校:京都市立西京高等学校 定時制]
教職員とスクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)の協働により,それぞれの専門性を活かした支援で,生徒が学習に臨む態勢を整えることと,個別の学習ニーズに応える学習指導法と成果の評価方法の開発を目標とした。
生徒を直接指導する教職員と直接・間接に関わるSCやSSWという専門職とが協力する体制確立が進み,必要な対応をしたケースが増えた。さらに,令和元年度1年生より開始した通級による自立活動の指導や,新規の専門職スクールキャリアコンサルタント(SCC)との協働によるキャリア形成の取組などによる効果も表れつつある。
教員が生徒の学習状況を把握する「学習状況のチェック表」と授業で意識する点をまとめた「授業のチェックシート」,生徒が見通しを持ち,目標を立て,振り返る「自己目標マップ」を作成して学習指導法の開発に活用した。学習成果の評価方法確立の取組とともに,今後,実践と評価を行う。
 

学校法人NHK学園

【調査研究課題名】
高等学校定時制・通信制課程における非行・犯罪歴を有する生徒等の学習ニーズに応じた指導方法等の確立及びその普及を図る

【調査研究成果概要】
 [調査研究校:学校法人NHK学園高等学校]
2019年度は3名の生徒が、多摩少年院から入学年度内の学習を行なうことができた。そして2020年度はそれぞれ3年次生として、卒業を目指すことが可能である。また既入学生の卒業がかない、自分らしい職業を確保した。
1.体制、システムの確立
少年院、NTTdocomo交え複数検討した結果、院内におけるネットレポート作成送信、添削後の返信というネット学習をスタートできた。
2.特別活動領域
「成長を促す振り返りシート」の取り組みを継続、言葉の抽出とカウントによる分析を行なった。
3.他機関、地域との連携
出院に当たって、保護観察所と本人、多摩少年院統括専門官・担任、NHK学園担任、スクールソーシャルワーカーとケース会議を行ない、出口の支援を連携して行なった。
 

 

学校法人国際学園

【調査研究課題名】
通信制高等学校における多様な生徒に対する個の強みを伸ばす指導方法の調査研究

【調査研究成果概要】
 [調査研究校:星槎国際高等学校]
本研究調査では星槎国際高等学校を調査研究校として、平成27 年から取り組んできた調査研究事業により構築したキャリアガイドシステムを、実際の現場でどのように活用することが有効かを明らかにするとともに、更なる調査・研究・分析をして、現在まで取り組んできた活動の一層のレベルアップを図り、より充実した生徒支援・相談体制を構築し多様な生徒の学習ニーズに応じた通信制高校の在り方やそれに基づく新たな取り組みを推進し提言する。
その際、生徒が全国に在住する広域通信制高校の特徴を踏まえつつ、生徒の現在おかれた状態像の多様性のみならず、生活の基盤となる居住する地域の多様性にも着目する。
取り組みの観点として、ガードナーの提唱する多重知能の考え方を参考に、生徒個々が持つ強みをいかに把握し、伸ばしていくことができるかという取り組みにも注力する。
 


学校法人益田永島学園

【調査研究課題名】
通信制課程卒業者の社会参加意識の向上にむけたキャリア教育指導法確立プロジェクト
~能動的な選択による進路実現にむけて~

【調査研究成果概要】
 [調査研究校:明誠高等学校通信制課程]
 調査結果が示す通り、全体として、実施しているJSTの指導に一定の効果が確認できることは証明できた。一方で、本プロジェクトが目的とする通信制高校に在籍する生徒の、その中でも最も「社会意識」を「向上」させたい一定の層に対して、本プログラムの存在や実施したJSTの効果について、ポジティブに捉えることのできない結果も合わせて浮かび上がってきた。この「最も社会意識を向上させたい層」に主眼をおいた、あるいはアルバイト経験のある生徒からすると、やや退屈と思うかもしれない内容のJSTを実施してきたつもりであったが届かない部分があった。この2年間の結果を受け、来年度のJSTは、より具体的な内容になるよう改善していきたい。様々な背景の生徒が在籍している中で、より明確にターゲット層を絞り込んだ内容にすることも、ひとつの方法かもしれない。引き続き「能動的な進路選択の意識向上」へと生徒を導く方法を考察していく。
 

 

学校法人美作学園

【調査研究課題名】
過疎地と共生する通信制生徒の学習支援事業

【調査研究成果概要】
 [調査研究校:岡山県美作高等学校]
(1) ひきこもり、無職・無就学生徒の解消に向けた教育の実践。ひきこもりや無職・無就学生徒のための学習教室を開校し、学習及び社会支援活動を行う。その際、地域人材を教師役として、授業を実施する。
(2)不登校、引きこもり等の生徒及び家族のための本作成。不登校で苦しむ家族や生徒本人が抜け出すきっかけとする活動を目指す。
(3)高卒資格を持つ人への再教育の場。概ね30歳までの若者に対する再教育を実践する。学び直し事業だけでなく、就労活動支援としてハローワーク等との連携を行い、就労活動や経営者になる講話などを取り入れる。
(4)閉校した学校の活用。校内にある農産加工会社での就業体験(インターンシップ)を実施する。
(5)教員不足解消。自学自習というスタイルを用いて、教室に教師がいない場面でも学習することができる活動を実践する。生徒は、タブレットを用いて、株式会社クラッシーの学習動画やNHK高校講座の視聴を行う。

学校法人八洲学園

【調査研究課題名】
 『支援を要する子どもたちに対しての就労支援の取り組み研究』

【調査研究成果概要】
 [調査研究校:学校法人八洲学園 八洲学園高等学校]
 八洲学園高等学校では手帳を有する子どもたちも含め、手帳を有さないがコミュニケーション能力に遅れがある子どもや小・中学校、高等学校における不登校経験者など、様々な特徴や経験を持つ子どもたちを「支援を要する子ども」と定義づけ、その子どもたちに対し、特に進路活動、就労支援に関する取り組み体験を「慣れる」まで繰り返す学習活動を計画した。この学習活動計画は何度も成功体験を味わうことで「自信」をつけ、「自己肯定感」を持たせ、自立を促すことを目標としている。
本調査研究を実施するにあたり、複数分野の外部アドバイザーを招き、学習内容やその実施報告をおこない、意見交換の為の検討会議を年間で3回開催し、様々な分野からの助言を取り入れ、PDCAサイクルを繰り返しながら、年間を通して実施しできる計画を策定した。

 

学校法人野田鎌田学園

【調査研究課題名】
広域通信制高等学校におけるソーシャルワーカー支援体制の構築

【調査研究成果概要】
 [調査研究校:あずさ第一高等学校]
 目的
・学校内にSSW支援体制を構築する
成果
●退学理由を「学校生活」や「経済的理由」とする生徒数の減少
●学校内にSSW支援体制を構築していくために…
・教職員が、SSWの業務内容を具体的にイメージできるように、SSWの認知度を上げる必要がある
・認知度の向上には、研修やケース会議を重ねることが有効
・複数キャンパスにまたがる通信制高等学校のため、ケース会議を行うために
  “対面での会議”の他、“電話やメールといったツールの利用”“遠隔システムを用いたオンライン会議”を行う
⇒ チーム学校として、より迅速に生徒支援を行える可能性が見いだされた。
今後
複数キャンパスにまたがる通信制高等学校内で円滑に支援を行うために…
・遠隔システムを用いた「遠隔ケース会議」を導入する
・従来の「配置型」「巡回型」にも属さない「中間型」の動き方を検討する
 

 

奈良県

【調査研究課題名】
社会自立に向けた学習指導法の確立

【調査研究成果概要】
 [調査研究校:奈良県立大和中央高等学校]
 定時制に在籍する様々な教育的ニーズをもつ生徒を対象に、「ICT機器を活用した学習支援」と「通級による指導」の2つの研究を柱に、社会自立を可能にする学習指導法について検討を進めている。
「ICT機器を活用した学習支援」では、タブレット端末と学習アプリを活用し、基礎学力の定着と、その結果醸成される生徒の自己肯定感の高まりについて調査研究を行っている。本研究においては、アプリを活用した学習が、生徒の基礎学力の向上に一定の有効性があることを確認しており、今後、内面変化との関係において有意性の検証を行う。
「通級による指導」では、 社会的適応等に困難のある生徒の自立と社会参加を目指した指導に取り組んでいる。自尊感情や学習意欲が低い生徒も「この授業を受けて自信がついた」と述べ、授業では積極的に挙手する等の変容が見られた。今後、生徒の自己理解、自尊感情の向上、不注意等への指導・支援の在り方を検討する。
 

 

和歌山県

【調査研究課題名】
通信制課程におけるICT機器等を活用した遠隔教育による多様なニーズに対応する学習支援や教育活動

【調査研究成果概要】
[調査研究校: 和歌山県立南紀高等学校 ]
県中南部の広範な地域から生徒を受け入れている南紀高等学校通信制課程では、田辺市の本校とは別に、約100キロ離れた場所に新宮学級を設置している。日曜スクーリングの際には、本校から2名の教員が新宮学級への巡回指導を行っているが、新宮学級の生徒は、田辺本校の生徒と比べ、学習指導等を受ける機会や学校行事等に参加する機会が少ない。
今回の調査研究では、ICT機器等を活用し、田辺本校から新宮学級にいる生徒に向けて、オンラインによるレポートの指導や担任による面談を行い、レポート作成やテストに効果があるかを検証した。また、オンラインで新宮学級の生徒に向けた始業式の講話や田辺本校と新宮学級が合同で卒業式の予行練習を行い、実施状況を確認した。
これらの調査研究から、ICT機器等を活用することにより新宮学級に通う生徒が地理的条件に影響されることなく、田辺本校に通う生徒と同じ条件の学習活動等の機会を得られることが確認できた。

 

 

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初等中等教育教育局参事官(高等学校担当)付

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(初等中等教育教育局参事官(高等学校担当)付)