【調査研究課題名】
令和2年度高等学校における教育の質確保_多様性への対応に関する調査研究(学び続ける高校プラットフォーラムの運営_充実)
【調査研究成果概要】
本調査研究では、全国各地の高校教育関係者が、高校教育改革に取り組む豊富な事例情報へアクセスできるよう、高校教育改革に関するポータルサイトである、「学び続ける高校プラットフォーム-みらいの職員室-」(https://www.mext.go.jp/mirashoku/index.html)を創設した。
本ポータルサイトにおいては、高校が自ら課題に向き合う「自発性」、チャレンジを特定の人や期間に限定させない「持続性」、そして、適切な振り返りの仕組みにより、不断に取り組みの改善を図っていく「自律性」の3点がカギになると考え、これらの視点に基づいて事例の分析・紹介を行っている。
また、高校教育改革に取り組む学校や教育委員会の事例紹介だけではなく、関連する分野の有識者へのインタビュー、高校教育改革に意欲を持つ実践者の交流・対話の場づくりに取り組む団体へのインタビューなどを通し、幅広い事例の記事を公開している。
【調査研究課題名】
生徒の学校満足度を向上させるための教職員研修とアンビシャス学習プログラムの構築
【調査研究成果概要】
[調査研究校:クラーク記念国際高等学校]
本校は、「挑戦と創造の教育」を教育理念として掲げて1992年に開校した広域通信制高等学校で、約10,500名の生徒が、全日型、通信型(フレックス学習コース、Web学習コース)から、一人ひとりのニーズに合った通学スタイルを選択して学んでいる。
2年間の調査研究の成果と課題を踏まえ、最終年度となる本年度は、成果が見られた事項の更なる充実を目指すとともに、残された課題の解決に向けて調査研究に取り組んだ。
(1) 2015年度に開発した「キャリア学習1」のプログラムの改善及び実施
(2) 2019年度に開発した「キャリア学習2」のプログラムの実施
(3) 資質・能力の向上に関する指標(育成指標)を踏まえた研修の実施
その結果、eポートフォリオに蓄積された生徒の学びの履歴などから、「主体的・対話的で深い学び」が実現された生徒の姿及び生徒の変容を見取ることができた。
また、育成指標を踏まえたキャンパス長及びキャンパス長候補者に対する研修を実施することができた。
【調査研究課題名】
定時制高等学校における日本語指導を必要とする生徒への支援体制の構築(個に応じた日本語指導の充実に向けた学校の教育力の向上)
【調査研究成果概要】
[調査研究校:県立生浜高等学校(三部制定時制・普通科)、県立市川工業高等学校(定時制・工業科) ]
(1)調査のねらい
日本語指導を必要とする生徒にそれぞれの日本語能力に応じた適切な学びを提供し、自己肯定感や学習意欲を向上させるとともに、日本語能力及び基礎学力を確実に定着させる。『見立て→指導計画→指導→評価』のPDCAサイクルを確立させることで、個に応じた指導の充実、学校の教育力向上を目指す。
(2)調査研究の内容
・個別状況の把握と個のニーズに応じた支援の充実
(見立てシートのデータ化と活用の利便性向上)
・各教科の授業における指導の充実
・外国につながる生徒への個別対応と支援体制の充実
・外国につながる生徒への指導に関する職員アンケートの実施と分析
(3)成果(○)と課題(●)
○日本語指導を必要とする生徒への支援について、学校全体の取組として捉えられるようになった。
○外国につながる生徒のみでなく、きめ細やかな支援や指導が必要な生徒に対しての支援体制、個に応じた指導や配慮ができるようになった。
●「支援体制の活用」が充分とは言い難い面があり、体制の不備の有無も含めて、引き続き検討が必要である。
【調査研究課題名】
「多様性への対応に関する調査研究事業」~多様な学習ニーズを支える持続可能な体制の構築
【調査研究成果概要】
[調査研究校:神奈川県立横浜修悠館高等学校]
多様な困難のある生徒に対して、より効果的な支援体制づくりを行い「自立と社会参加」へつなげていくことを目ざし、次の3点について研究を行った。
(1)通信制における自校・他校通級の組織体制づくり
地域の関係機関と連携した自校通級における指導体制を構築するとともに、それを基盤とした他校通級のシステムの在り方、課題と対応策等について整理した。
(2)ICTを活用した多様な学習支援
独自の動画コンテンツ等を開発し、多岐にわたる学習ニーズに応えるとともに情報共有の円滑化を図る方法の検討など学びの体制づくりを行った。
(3)校内「支援データベース」の運用や「修悠館マイページ」による支援体制の構築
「支援データベース」の運用により多様な困難のある生徒の情報を蓄積し、整理共有することで効果的な支援を行ったり、「修悠館マイページ」を活用し個別相談を実施したりすることができた。
【調査研究課題名】
「関係機関等とのネットワークの構築による重層的支援の充実を目指して」
~ICT機器及び外部人材等の専門家との連携による、学習上又は生活上に困難を有する特別な教育的支援を必要とする生徒への指導・支援の充実~
【調査研究成果概要】
[調査研究校:県立山口高等学校、県立徳山高等学校、県立下関双葉高等学校、県立下関西高等学校、県立小野田工業高等学校、県立宇部西高等学校]
高等学校においては、発達障害あるいはその可能性のある生徒など、学習上又は生活上に困難を示す特別な教育的支援を必要とする生徒が増加傾向にあり、特に、定時制や通信制課程においては、中学校の学習内容の定着を図ることが難しい生徒や、中学校時に通級による指導を受けていたり、発達障害等の診断を受けていたりするなどの生徒も見受けられる。
このような状況において、定時制や通信制課程の教職員による指導や支援の充実に加え、特別支援教育に関する専門性のあるスタッフ等の配置による相談支援・指導体制の充実を図った。
また、特別支援教育やユニバーサルデザインの視点を踏まえた情報支援機器等の活用により、在籍する生徒が「分かる」「できる」を実感し、自己肯定感を高めることができる授業づくりなど、多様な教育的ニーズに応じた適切な指導や支援の方法について研究・検証を行った。
【調査研究課題名】
多様な学習ニーズに応えるための指導方法の確立
【調査研究成果概要】
[調査研究校:徳島県立徳島中央高等学校]
[協 力 校 :徳島県立徳島科学技術高等学校、徳島県立富岡東高等学校、徳島県立鳴門高等学校、徳島県立名西高等学校、徳島県立池田高等学校]
これまでの取組で構築した支援・相談体制を活用し,取組内容を充実・深化させ,指導方法を確立し,定時制・通信制課程の全ての高等学校で活用可能にすることを目的としている。
今年度も,取組の有効性・有用性の整理,客観的な検証を進めた。また,定時制・通信制課程の生徒が抱える共通の課題及び対応策として汎用化の可能性についても検討した。
就労・ソーシャルスキル向上・学力向上の取組において,それぞれ勤労意欲向上,自己有用感・自己肯定感の向上がみられ,設定目標値に到達することができた。また,アンケート結果やルーブリック評価などにより,成果が可視化できており,評価方法の充実がみられた。さらに,各校で取り組んでいる指導方法を他の学校に導入し,各校が自校の実態を踏まえ,分析・検証することで一定の成果を得ることができた。
【調査研究課題名】
スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーと協働し,個々の生徒の学習ニーズに応じた指導方法の確立~社会でより良く生きていく力をつけるために~
【調査研究成果概要】
[調査研究校:京都市立西京高等学校 定時制]
教職員がスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと協働し,各々の専門性を生かして生徒が学習に臨む態勢を整えた上で,個別の学習ニーズに応える学習指導方法と学習成果の評価方法の開発を目標とした。
教職員と専門職との協働体制確立が進み,必要な対応が増えたことで,生徒の学校への定着につながったケースが増えている。さらに,1・2年生の総合的な探究の時間や自立活動の時間(通級)において取り組んだソーシャルスキルトレーニングも効果を表しつつある。
学習指導方法と評価方法の開発にあたっては,教員が生徒の学習状況を把握する「学習状況のチェック表」と授業で意識する点をまとめた「授業のチェックリスト」の活用,生徒が見通しを持って目標を立てて振り返る「自己目標マップ」とルーブリック形式で評価を行う「My Guidepost」の活用を試行した。それぞれ生徒の成績向上という効果が一定見られるという結果を得られた。
【調査研究課題名】
令和2年度「高等学校における次世代の学習ニーズを踏まえた指導の充実事業」高等学校定時制・通信制課程における飛行・犯罪歴を有する生徒等の学習ニーズに応じた指導方法等の確立およびその普及を図る
【調査研究成果概要】
[調査研究校:NHK学園高等学校]
再犯防止推進法に則して、少年院等における少年のうち、高等学校で学ぶ意欲のある者に対する教育を行なうことは、学びを通して社会で活動する強い意識を育て、生徒が自らの主体的な生き方を確立することにつながる一助となる。
このことから、少年院等にいる少年に、高校教育を多様な手法を用いて指導を展開して、指導方法の確立のために多摩少年院の協力を仰ぎ調査研究を進めた。
今年度の具体的内容については、NHK高校講座のタブレット視聴、タブレットでレポートを作成送信、オンラインスペース上で自身の学習状況も確認する、といった一連のネット学習の流れが学習開始からスムーズに行うことができた。合わせてスクーリング出席、テスト受験についても多摩少年院の協働により効果的に実施された。
また、新型コロナウイルス下のため本人、保護者、少年院、保護観察所等の関係者のケース会議は困難であった。後期に多摩少年院の尽力によりテレビ会議形式で実施、再犯防止に向けた貴重な機会を得ることができた。
学校活動と関連するところとしては、在院中の振り返りシートに加え、集中スクーリング時に将来の検討ワーク、地域と連携した活動や校内整備を実施、生徒の進路指導、社会参加等を行ない、多様な共に学び合う機会となった。
その他、検討課題であった院内スクーリング面接指導、試験等については、院内実施の教育活動の単位認定等も含めて、法務省「少年院在院者に対する高等学校教育機会の提供に関する検討会」で検討がなされている。
【調査研究課題名】
通信制高等学校における多様な生徒に対する個の強みを伸ばす指導方法の調査研究
【調査研究成果概要】
[調査研究校:学校法人 国際学園]
本調査研究は、通信制高校に入学してくる多様な生徒に対して、生徒が自身の持つ強みを伸張し、社会を生き抜く力を身に付け、自らの将来を切り拓いていけるようにするために、生徒の学習ニーズに応じたどのような指導方法が有効かを明らかにし、これからの高校通信教育に望まれる取り組みを示すことを目的とした。平成 27 年から取り組んできた調査研究事業により構築したキャリアガイドシステムを、実際の現場でどのように活用することが有効かを明らかにするとともに、現在まで取り組んできた活動の一層のレベルアップを図り、より充実した生徒支援・相談体制を構築し多様な生徒の学習ニーズに応じた通信制高校の在り方やそれに基づく新たな取り組みを行うものであった。
その結果、生徒がスマートフォンを用いてアンケートに答えることで,生徒のニーズを測り、教員と情報を共有するシステムの構築とその改善を行うことができた。
【調査研究課題名】
通信制課程卒業者の社会参加意識の向上にむけたキャリア教育指導法確立プロジェクト ~能動的な選択による進路実現にむけて~
【調査研究成果概要】
[調査研究校:明誠高等学校通信制課程]
本事業では、当法人に在籍する様々な困難を理由に通信制高校を選択した生徒の卒業時の進路未決定率の高さに注目し、「能動的な進路選択の意識向上」へと生徒を導く方法を考察していくことを目的とする。在籍者の抱えている困難の大小、原因などはさまざまである。そこですでに得ている情報をもとに、社会意識の向上を目的としたSST及びJSTを企画実施し、専門家の指導の下、実行しながら、定期的なアンケート調査とその分析により効果を検証する。本年はその最終年である。調査結果から本事業が生徒に一定の効果をもたらしたと考えている。3年間を通してプログラムを受講した生徒は益田所属生だけと決して多くはなく検証が足りない状況である。ただ、本年度、益田卒業生の進路決定率については90%を超える結果となった。これまで実施した指導の成果と必ずしもイコールではないにしても、本事業が生徒の進路決定の際に影響を与えたことは間違いないと確信する。
【調査研究課題名】
過疎地と共生する通信制生徒への学習支援事業~人口減少が続く地域における地域が学校、地域人が先生そして産・官・学協定事業で地域のこどもを地域が育てる
【調査研究成果概要】
[調査研究校:岡山県美作高等学校]
(1)ひきこもり、無職・無就学生徒の解消に向けた教育の実践 ひきこもりや無職生徒のため、学校敷地外で平日スクーリングを実施した。
(2)高卒資格を持つ人への再教育の場 働きながら学び直しを行う意義生徒を若年の生徒たちに体感させる良い刺激となった。
(3)閉校した学校の活用 平素とは異なる、自然豊かな静かな学習環境でのスクーリングが行われた。
(4)ICTを活用した教員不足解消の自学自習スタイル 年度当初の全国一斉休校の際、逸早くオンライン授業を取り入れた。また、NHK高校講座を導入し自学自習のスタイルを構築した。
(5)地域人材の活用 「匠に聴く」という講演会を開催し、通信制生徒の卒業後の自立に向けた意識改革の一助とした。
【調査研究課題名】
多様な学習ニーズに応じた指導方法などの確立・普及~通信制高等学校におけるソーシャルワーカー支援体制の構築~
【調査研究成果概要】
[調査研究校:あずさ第一高等学校]
通信制高等学校でスクールソーシャルワーカー(以下、SSWとする)の支援体制の構築を試み、以下の3点について大きな成果があった。
1 私立通信制高等学校の生徒には、学びに向かう力を育成する環境として、多様性ある支援ニーズがあることがわかった。特に、「経済的な問題」や「特別な支援を要する問題」が多いことがわかった。
2 広域通信制の場合、教職員との信頼関係を築きやすい一方で、各キャンパスを巡回する必要もあり短時間での見立てを求められるという課題が見つかった。この課題の解決手法の一つとして、遠隔システムを導入することは有効だとわかった。
3 教職員対象のアンケートからは、「SSWとの連携希望」を多くが望んでいることがわかった。SSW研修や遠隔ケース会議などを通じて、SSWの役割が理解され、期待されるようになってきた。
【調査研究課題名】
社会自立に向けた学習指導法の確立
【調査研究成果概要】
[調査研究校:奈良県立大和中央高等学校]
本研究では、定時制に在籍する多様な教育的ニーズをもつ生徒を対象として、「ICT機器を活用した学習支援」及び「通級による指導」の2つの研究手法により、生徒の自己肯定感を高めるとともに、社会自立を可能にする学習指導法の検討を行った。
「ICT機器を活用した学習支援」では、1年次の全生徒を対象に、1人1台のタブレット端末とモバイル学習教材の活用により、基礎学力の定着を図るとともに、学習に対する意識の変化について調査研究を行った。「通級による指導」では、特別な配慮が必要な生徒を対象に、個に応じた指導に取り組むとともに、組織的・継続的な指導が可能となるよう校内体制の整備を行った。
調査研究の結果、生徒の基礎学力の向上や学習面・生活面における肯定的な意識変化などの点において成果が得られた。また、本研究を通して、高等学校における通級による指導の拡充や人材の育成を目的とした基礎資料を作成することができた。
【調査研究課題名】
定時制・通信制課程におけるICT機器等を活用した多様なニーズに対応する学習支援や教育活動
【調査研究成果概要】
[調査研究校:和歌山県立南紀高等学校通信制課程、和歌山県立きのくに青雲高等学校通信制課程、和歌山県立伊都中央高等学校定時制課程]
昨年度の調査研究の検証結果をもとに、定時制・通信制課程に在籍する不登校傾向の生徒や育児のために登校が不十分な生徒等、特別な支援を要する生徒に対し、ICT機器等を活用した指導方法等の確立に向け更なる検証を行った。
今年度の調査研究では、昨年度に南紀高等学校通信制課程で確立したビデオ通話アプリによる学習支援の手段を活用し、同校における調査研究の対象を拡大することができた。また、他の定時制課程、通信制課程の高等学校にも調査研究の対象を広げることで、多様な学習ニーズに対応する学習支援や教育活動の研究を行い、特別な支援を要する生徒の学習環境を保障するとともに、生徒の学びに対する意欲の向上を確認することができた。
今後は、県内の全日制課程・定時制課程における特別な支援を要する生徒に対し、調査研究で得た成果を活用するとともに、様々な支援や学習において、成果の活用が行われるよう普及していく。
初等中等教育教育局参事官(高等学校担当)付