多様な学習を支援する高等学校の推進事業に関する調査研究 事業成果一覧(平成27年度)


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団体名

調査研究課題名

調査研究概要

1

青森県教育委員会

ICTを活用した高等学校における遠隔教育の普及・推進

機材については,「生徒がよりよい環境で授業を受けられること」「すべての教員が負担感なく使用できるとともに,授業の工夫が可能であること」「事業終了後も指定校で活用でき,将来的には他の高校でも使用できること」というコンセプトのもと,業者によるデモンストレーションや先進地視察等を経て導入することができた。
授業については,生徒全員の顔が確認できるよう,モニターを確認しながら机の配置の微調整を繰り返した。授業者の発問に対しては,発声だけではなく生徒がジェスチャーを交えて答えることが有効であることが確認された。生徒の活動の場面でも,授業補助者のアシストにより,スムーズに移行することができた。また,授業終了後はシステムを活用し,授業担当者間での振り返りや次回の打合せ等を実施することができた。さらに,公開授業には県内外から中学校・高等学校教員等38名が参加し,熱心な質疑応答が交わされた。

[調査研究校:青森県立木造高等学校,青森県立木造高等学校深浦校舎 ]

2

山形県

定時制通信制課程における支援・相談体制の構築(外部機関の教育力を活用した学校と生徒の社会力の向上)

調査研究校を本県定時制・通信制課程の拠点校,県内5校の定時制・通信制課程を持つ県立高等学校を連携校とし,外部機関との連携と協働により,定時制通信制高等学校の組織的な問題解決力の向上を図ることを目指して実施した。拠点校にソーシャルワーカーを配置し,家庭等に問題を抱える生徒への相談活動など直接的な支援を行うとともに,外部機関との連携の推進やライフスキルアップセミナーの開催などを,教職員との協働のもと実施した。また,キャリアカウンセラーを配置し,生徒の就職先の開拓や外部との連携による進路実現の拡大を図った。このような取組を通じ,生徒が将来について真剣に考えることができるようになり,結果的に,拠点校における進路未決定者が,前年度より大きく減少している。
また,連携校には,ソーシャルワーカーを派遣し,拠点校における成果を共有し,それぞれの実状にあわせた取組を実施した。

[調査研究校:山形県立霞城学園高等学校 ]

3

神奈川県

定時制・通信制課程における支援相談体制の構築-外部機関とのネットワークづくりや重層的支援の充実を通して-

横浜修悠館高等学校では,生徒情報を一元化する試みを通して,生徒の状況を把握・共有化し,更なる支援へとつなげる必要性を認識することができた。支援連絡会議においては,修悠館サテライト相談員と教職員との意見交換及び情報共有が進み,調査研究を進めていく視点が得られた。また,上級学校への進学を目指す生徒に対する学習支援では国立大学合格者が出る等の成果があった。厚木清南高等学校では,就労支援に対する情報の共有化が図られ,障害者雇用に関わる支援連携を広げ,就労支援事業の基盤を整えることができた。また,在留資格を視野に入れて生徒の現状及び課題の把握を行えるようになった。アンケートの実施により「生徒が抱える学習に対する困り感」の具体的な状況の把握ができ,授業規律の確立や校内環境の整備等につなげ,「専門医による個別相談」事業の準備を整えることができた。

[調査研究校:神奈川県立横浜修悠館高等学校,神奈川県立厚木清南高等学校 ]

4

福井県教育委員会

通信制高校生徒の不登校状態を防ぐ支援体制の構築を目指して

独自の支援体制を構築し,生徒が社会で自立できることを目指した実践により,主に以下の成果が得られた。
1 欠席生徒の初期対応による不登校状態の未然防止の取組
連続欠席した生徒に対して教育相談係から,現状を把握するための文書を送付し,返送のあった生徒に対して電話での聞き取りや面談の機会を設けた。同時にこうして得た情報をもとに,教育相談委員会で支援方法についての話合いをもち,必要な支援を行った。その結果,連続欠席生徒のうち約3割が登校可能となった
2 教職員の意識改革によって効果的な生徒支援を目指す研究組織の立ち上げ
外部有識者のアドバイスにより,現段階では全体の制度面の検討よりも教職員の意識改革が重要だと判断し,新たに「グループ研究会」「全体研究会」の2つの研究組織を立ち上げた。ここでは日々生じる様々な悩みを出し合い,対応策・解決策を検討するなど,以前よりも活発に意見が出るようになり,教職員全体での課題の共有を可能とした。これにより教職員の意識改革スタートの基盤が構築された。

[調査研究校:福井県立道守高等学校通信制 ]

5

長野県教育委員会

遠隔教育による多様な学習の支援とICTによる確かな学力の育成

平成27年度開校した2キャンパス制の佐久平総合技術高校にビデオ会議システムを導入し,専門科目の実習の遠隔授業を中心に実施しました。
異なる生徒集団が画面越しに協働学習を行うことによる新しい学びの創出を目指し,様々な科目,学習集団において遠隔授業を行いました。また,きめの細かい学習指導のために英語の補習等で遠隔教育システムによる講座も実施しました。書画カメラやタブレットなどのICT機器も活用し,少しでも対面授業に近づけるよう授業を工夫しています。
生徒や参観者のアンケートの結果から,機器の映像面ではほぼ満足がいく結果が得られましたが,音声面ではやや改善の余地がある結果となっています。授業を行いながら新たな工夫を重ねることにより,生徒の遠隔授業そのものに対する評価も向上しています。

[調査研究校:長野県佐久平総合技術高等学校(浅間キャンパス・臼田キャンパス) ]

6

静岡県教育委員会

単位制の定時制高等学校におけるソーシャルワーカー支援体制の構築~単位制・定時制高等学校における生徒の社会的包摂~

(1)複数・常駐型SSWの校内組織への効果的な位置付け
SSWが外部機関との連携をとりやすくするため,校内の特別支援教育コーディネーターやSCとの連携関係などを整理した。その上で,年次主任に生徒に関する情報を集約させ,年次主任には特別支援教育コーディネーターと相談しながら,SSWと生徒をつなぐキーパーソンとしての役割を与えた。
(2)支援事例の積み上げ
SSW任用後の半年間で,ケース担当表への登載39人,インテークシート作成27人,アセスメントシート作成6人,ミニケース会議開催12回,ケース会議開催5回を数えた。
(3)今後の展望
複数人体制は,多角的な視点が得られるメリットや,常駐型による継続的な生徒との関係づくりや迅速な初期対応ができるメリットを更に伸ばしつつ,新たな課題を整理して研究を継続したい。

[調査研究校: 静岡県立静岡中央高等学校 ]

7

徳島県教育委員会

「つなぐ」徳島プロジェクト~「支援・相談」でつなぐ生徒の未来~

検討会議・運営委員会等で機能分担し,情報共有と事例検討,事業執行に係る指導評価を行うことができた。検討会議では人形劇等上演の取組から就業場面を演じることでの模擬就業体験の有効性について助言,支援相談員からは,就労に先立つ職業観の不足と,それを補うための取組の必要性が指摘された。拠点校と協力校での支援・相談結果では,生徒を取りまく状況の違いから支援相談状況の差異が認められ,28年度以降拡充の際,各学校での就労支援・ソーシャルスキル向上支援・学力向上支援の各支援の構成比率を検討する上で,参考となった。生徒の中には,就労実現のほか全日制課程生徒とともにインターンシップ発表会で発表する等,成果がみられた。県独自調査(7月実施)結果によれば,自己肯定感について肯定的に捉える割合は依然として全日制課程生徒より低い状況にあるが,学年の進行に伴う割合の増加が認められた。

[調査研究校:徳島県立徳島中央高等学校 ]

8

徳島県教育委員会

過疎地の高校における遠隔授業の導入に関する調査研究~総合教育センターを配信拠点とする体制の構築について~

本県では遠隔授業の試行をとおし,配信・受信側による事前・事後打合せ,生徒アンケート,教職員の意見等を踏まえた改善を行うことによる遠隔授業システムの構築に取り組んだ。試行前には,画像・音声タイムラグ,コミュニケーション等に対する生徒たちの不安もあったが,対面授業に近い学習環境(機器整備等)を整え,プレゼンテーションソフト,インターネット等を活用することによって,不安もある程度解消でき,遠隔授業への理解が図られた。また,遠隔授業での適正人数,授業者(配信側)・補助者(受信側)の役割等の基本的な整理をすることができた。
本格的な導入に向けて,機器配置・操作,効果的な指導方法や資料提示,生徒の取組内容や理解度の把握,授業における評価方法の構築等,今後もハード,ソフト両面での工夫改善が必要であり,新たな授業手法となる効果的な遠隔授業の在り方について更なる調査研究を行う。

[調査研究校:徳島県立海部高等学校 ]

9

高知県教育委員会

遠隔教育における学校体制の構築と生徒の能動的な学習を支援する汎用的な学習指導方法の研究

(1)配信側と受信側の両方に生徒がいる教室型(合同)の遠隔授業を6回(生物基礎・世界史A)試行した。アンケート結果では双方の生徒及び教員とも肯定的な評価が多く,授業として成立することが明らかになった。
※単独授業:10回(生物基礎・世界史A・英語会話Ⅰ)
※交流活動:4回(総合的な学習の時間など)
※職員交流:40回(遠隔教育サミット,小規模校サミット,打合せなど)
(2)遠隔授業において,通常授業と同様の質を担保する授業づくりにより,生徒に対する簡潔で明解な説明,的確な教材の提供,学習評価の具体的手法など,両校教員の授業改善に効果があることがわかった。
(3)教室型(合同)の遠隔授業により双方の生徒が刺激を受け,社会性の育成につながることが明らかになった。
(4)受信側の生徒の学習状況の把握は,ネットワークカメラを導入し,相手校の映像を自校から操作することや,机間指導の代替として,受信校のサポート教員による手持ちムービーカメラの活用が効果的であることがわかった。
(5)11月9日~10日に「遠隔教育サミットin高知」を開催し,全国の指定県が集まり(参加者:県外30名・県内65名),情報共有や研究協議を行い,実践課題の解決や遠隔教育の推進に大いに役立った。

[調査研究校:高知追手前高等学校(本校),吾北分校 ]

10

長崎県教育委員会

高等学校における遠隔教育の普及推進に関する調査研究~Web会議システムを用いた遠隔授業による教育効果について~

離島部の同じ島内にある高等学校において,Web会議システムを用いて教科「芸術(音楽)」と教科「家庭」の遠隔授業を実施し,効果的な指導及びその成果や課題等について検証するため実践研究を行った。授業の内容の理解度についての質問に対し,実技を伴わない講義型の授業においては両教科とも8割以上の生徒が肯定的な回答をした一方で,指導者の画像や音声の明瞭さについてはやや課題を残す結果となった。
また,本土部の高等学校において,同システムを用いて生徒の論理的思考力を高めることを主目的とした遠隔授業を実施した。授業理解度,画像及び音声とも9割以上の生徒が肯定的な回答をしたが,2教室同時配信した場合,機器の準備も含め音声環境の改善が必要である。
実技型の授業の工夫をはじめ一層効果的な指導法,より安定した通信環境の整備,また使用教科用図書の著作権など,さらなる研究と検証を進めていきたい。

[調査研究校:長崎県立対馬高校,豊玉高校,上対馬高校,島原高校 ]

11

学校法人科学技術学園

定時制・通信制高校が可能な学習支援の構築についての調査・研究

(1)定時制では学び直しと学習意欲の回復について,ICTを活用した取り組みを展開し,少人数・個別での学習についても改めて取り組んだ。また,授業以外での学校生活全体(行事,部活動,習い事クラブ等の従来の活動)についても点検した結果,学校生活全体の充実が有効であることがわかり,学習意欲の回復の選択肢の幅が拡大した。
(2)通信制では他の教育団体等で学ぶ機会や意欲を喪失している生徒・保護者に対して,スクールソーシャルワーカーが家庭訪問を実施した結果,スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの両方を展開することで相乗効果があることが検証された。
通常の高校では達成できない目的を持った生徒の学習支援では,生徒の興味・関心のある科目の教材を提供し,スクーリングを試みた。また,全通併修では不登校生に通信制の自学自習が可能な教材の提供をした。その結果,教材の水平,垂直方向の充実が多層かつ多様な生徒に対応する最も重要な要素であることが確信できた。

[調査研究校:科学技術学園高等学校 ]

12

学校法人国際学園

通信制高等学校における多様な生徒への個別支援システムの研究・開発

調査研究校が展開する,全国に居住する生徒に対応した学習センターにおいて,入学から卒業まで継続的に実施する各種面談の質問・対応項目を,専門家を加えた事業推進会議において精査・統合し,調査研究校内で標準化を図るとともに,生徒の状況に応じて個別に指導をすることを目的として作成したシステム(キャリアガイドシステム)を構築して運用していく。
現在,キャリアガイドシステムβ版が構築され,全国学習センターにて順次システム入力を進めている。今後,このシステムをブラシュアップし生徒の入学前の状況を含めた状態像を把握するとともに,それぞれの生徒の良さを伸長していくための個別支援計画作成を進めていけるようにする。
今後とも継続して,通信制高校で課題とされる,生徒個々の状況の把握をすすめるとともに,個に応じた指導の質の向上を調査研究を通じて図っていく。

[調査研究校:星槎国際高等学校 ]

13

学校法人太平洋学園

定時制・通信制課程における生徒の自立を促す支援・相談体制の構築~「自立支援プログラム」「地域連携プログラム」の作成と実践を通して~

平成27年度は,本校の生徒・教員,県内の中学校・関係機関等へのアンケート調査を実施し,現状把握と課題を明らかにすることに努めた。
その結果,自立支援プログラムは「生活のための学力(基礎学力)」,「社会性のスキル」の2つの柱で取り組むことにした。また,地域連携プログラムはスクールソーシャルワーカーの活用だけでなく,大学との連携による学習支援,地域の資源を生かした出前授業,生徒の地域へのボランティア活動などを踏まえて総合的に取り組むことにした。
平成28年度から,生徒の自己肯定感を高め自立を促すための自立支援プログラムと地域連携プログラムの作成とその実践を行い,その成果を検証していく。

[調査研究校:太平洋学園高等学校 ]

14

岩手県教育委員会

教育の質保障を目指し小規模校が連携する遠隔授業の実証的調査研究

平成27年度は,次年度からの本格的な遠隔授業の実証的調査研究に向け,主に環境整備に取り組み,本県における調査研究に適した使用機器の選定,調査研究校2校及び総合教育センターへの機器の設置,動作確認まで完了した。
この中で,効果的な配信方法の工夫,校内や総合教育センター内における機器の操作方法の周知,想定される機器トラブルへの対処等の課題を整理した。
遠隔授業の具体的な実施内容については,推進事業検討会議を開催し,学識経験者を交えて,遠隔教育システムの利点を生かした授業形態や調査研究校間の連携の在り方等について検討し,次年度に取り組むべき事項を明確化した。
また,先進校視察として青森県立木造高等学校を訪問し,調査研究校の教員及び総合教育センターの研修指導主事が実際に模擬授業を体験する機会を得たことで授業展開上の利点のみならず,遠隔授業における制約や留意点等についても具体的に理解を深めることができた。

[調査研究校:西和賀高等学校,岩泉高等学校 ]

15

学校法人
白百合学園

通信制を生かした支援体制の構築とアセスメント方法の開発~一人一人の個性・能力を生かすための支援体制を設計し,それをアセスメントによってより効果的な取組に改善する試み~

本校の調査研究のねらいは,生徒一人一人の多様な個性・能力を生かすための学習プログラムや運営組織を設計し,それをアセスメントによってより効果的な支援体制を構築することにある。平成27年12月,全生徒を対象にしてこれまで実践してきた取り組みに対する「数値的自己アセスメント」「記述式自己アセスメント」を行った。ここから分かったのは,生徒の社会性やコミュニケーション力の向上のために「社会参加」や「自己表現」の場を学習活動に取り入れることの必要性だった。また外部有識者を助言者とするアセスメント検討会議を通して,外部機関との連携の重要性やその効果を検証する方法を学んだ。その結果,次年度の学習プログラムとして外部機関と連携し社会体験を行う企画を立案し,「スクール・ソーシャルワーカー」を含めた生徒支援のための運営組織を設計することができた。これらの改善点を生かして,より教育効果の高い通信制教育を目指していきたい。

[調査研究校:仙台白百合学園高等学校 通信制課程〔エンカレッジコース〕 ]


お問合せ先

初等中等教育教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成28年06月 --