財団法人 全国高等学校定時制通信制教育振興会報告書概要

1.学校の設置形態及び規模・組織形態等に見る現状と課題

  •  学校の設置形態は、全定併置校が59.4%を占め、次いで、定時制単独の単位制を採用している学校が15.3%となっている。通信制課程では通信制単独校、次いで定時制・通信制併置校、全日制に併置された学校の順になっている。過去は全定併置が一般的で、いわゆる伝統校に通信制課程が併置されていたが、定通単独校へと変わりつつある
     
  •  単位制の実施に伴い、三学期制から二学期制に学期を変更する学校が増加し、定時制課程では三学期制を採用している学校は56.7%、二学期制を採用している学校は42.9%と、二学期制は大きく伸びて来ている。通信制課程では単位の認定の関係もあり半期で単位の認定等が行われる二学期制を採用しているところが80.3%と圧倒的に多い。
     
  •  設置学科は、定時制課程では需要の多い普通科に次いで専門学科が多く設置されているが、通信制課程では普通科がほとんどで、実技等を伴う専門学科の設置が難しい。
     
  •  養護教諭等は、定時制課程19.1%、通信制課程59.1%が配置されておらず、様々な心身の健康上の課題をもった支援を要する生徒が多く在籍する定時制・通信制課程においては、一刻も早く改善されるべき重要課題。
     
  •  ソーシャルワーカーの配置も定時制・通信制課程共に数%しかなく、支援を必要とされる生徒や通院をしている生徒が多く在籍している定時制・通信制課程では、一刻も早く改善されるべき重要課題。
     
  •  三修制の実施状況は、10年前から大幅に実施校が増え、定時制課程70.3%、通信制課程70.5%、全体70.4%で実施している。

2.生徒の実態

  •  定時制課程・通信制課程への転編入学者の多くは全日制課程からの生徒である。
     
  •  生徒の就業状況は、定職に就いている者は、定時制課程1.5%、通信制課程5.3%、全体で2.8%、パート・アルバイト等が35.6%、無職が60%以上という状況である。勤労青少年のための定時制・通信制課程の高校という従来の考え方が大きく変わってきている。
     
  •  退学者率は、定時制課程11.3%、通信制課程4.4%、全体7.5%であった。退学理由については、定時制課程では進路変更、学校不適応という理由で退学する生徒が多く、通信制課程では進路変更に次いでその他(高等学校卒業程度認定試験等による単位取得等)が多くなっている。
     
  •  定時制・通信制課程の高校に学ぶ生徒の3人に1人は何らかの理由で小学校や中学校から不登校を経験した生徒が在学しており、課程別では、定時制課程31.3%、通信制課程14.6%となっている。
     
  •  生徒の家庭環境等について調査した結果、未成年で母子家庭の生徒は、定時制課程26.5%、通信制課程16.1%で2.5人に1人の生徒が母子家庭である。父子家庭の生徒は4.9%と数値としては小さいが、母子家庭と合わせたひとり親の家庭環境に育つ生徒は30%を超えている
     
  •  特別な支援を要する生徒は、全体では7.6%在学している。内訳については、定時制課程7%、通信制課程8.5%である。これは全日制高校への入学が困難な生徒は定時制課程を、毎日の通学が困難な生徒の多くは通信制課程を選択しているものと考えられる。
     
  •  特別な支援を必要とする生徒の判断方法としては、主として、長期にわたる不登校経験、障害者手帳の取得等、専門医の判断、カウンセラーの意見等が挙げられる。

3.生徒の意識

  •  入学した動機・理由については、「高等学校の卒業資格が必要だと思ったから」(全体33.4%)が定時制課程30.4%、通信制課程45.8%と高い比率を示している。その他、「全日制課程に合格する自信がない・合格しなかったから」(全体18.1%)が定時制課程20.5%、通信制課程8.1%、「経済的に働く必要があったから」(全体10%)が定時制課程11.1%、通信制課程5.4%、「経済的には問題はないが、働きながら学ぶことに意義があると思った」(全体7.5%)が定時制課程8.4%、通信制課程3.9%となっている。特徴的な回答として、「自分のペースで学習が進められるから」(全体16.0%)が定時制課程15.6%、通信制課程17.7%「健康・身体的理由により毎日通学出来ないから」(全体3.3%)が通信制課程では8.6%と高い比率を示していることである。
     
  •  生徒が学習したいと考える科目は、定時制課程45%、通信制課程50%が資格取得に関係する科目を上げており、高等学校卒業資格と共に就職等に有利な資格取得を目的としていると考えられる。
     
  •  家庭での学習に費やす時間は、定時制課程77.1%、通信制課程49.8%の生徒が家庭学習はなしとの結果である一方、1時間以上家庭で学習をする生徒は、定時制課程11.6%、通信制課程34.2%であった。家庭学習を行っていない理由については、定時制・通信制課程ともに「疲れ」「勉強嫌い」「テレビやゲームなどの趣味」等であり、家庭学習習慣以前の自ら学ぼうとする学習に対する姿勢に問題がある。
     
  •  高等学校で学ぶ目的は、「高等学校卒業の資格取得」49.2%、「就職のため」36.5%、「大学等への進学希望」20%強であった。
     
  •  卒業後の進路については、定時制課程35.7%、通信制課程22.8%が就職と答えている。大学、短大、専門学校等への進学を希望する比率は、定時制課程33.0%、通信制課程41.4%となり、通信制課程では進学希望が就職希望を上回る結果が出ている。

4.提言

  •  定時制・通信制高等学校は勤労青少年の教育機関としてのみでなく、今後はより多様な生徒の再挑戦の教育機関として定時制・通信制教育の位置付けが望まれることから、一人ひとりのライフステージに合わせる学習方法で学び、何時でも、何処でも、学びたいときに学べる条件と環境と施設の整備・拡充を図ることが必要。また、修得した単位を積み上げる単位制高校の一層の推進が望まれる。
     
  •  学校外での学修による単位認定が多様化してきているが、その単位認定基準については、設置者の裁量に委ねることも大切であるが、一定の基準が望まれる。
     
  •  全日制高校中退生や不登校生、支援を必要とする生徒など多様な生徒の受け入れを担う定時制・通信制課程において、今後望まれることは、教員の増員、相談室等の施設・設備の充実と養護教諭・スクールカウンセラーを全校に配置、教職員への生徒の進路・健康・精神面等の相談相手になる教員のカウンセリング研修等の実施。
     
  •  単位制を実施している学校では、学年制と異なり生徒の安全管理が非常に難しく、災害等の発生時の連絡体制、生徒の状況確認などの安全対策の基本的な部分で困難が生じるため、安全対策についての指針作成が早急に必要。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成24年05月 --