富山県立雄峰高等学校長 髙田幹夫氏 インタビュー概要

1.実施日

平成23年8月22日(月曜日)

2.インタビュー対象者

富山県立雄峰高等学校長 髙田幹夫 氏 

3.概要

(学校の概要)

 創立74年。昼間定時制(単位制・(普通科・生活文化科))、夜間定時制(単位制(普通科・情報ビジネス科))、通信制(単位制・(普通科・生活文化科・衛生看護科))、専攻科(生活科学科)を設置。昼間定時制は2部制となっており、生徒の学習形態に合わせて履修することが可能。また、3修制をとっている。例えば、昼間定時制では入学生の5~6割の生徒は3年で卒業する。そのため、5割が定時制と通信制との併修で学んでいる。

(生徒の現状)

 平成23年5月現在、富山県の定時制高校の在籍生徒のうち、正規就労している生徒は1人であり、アルバイトも含めて36%である。働きながら学ぶという、当初に定時制に期待された役割と実態は大きく異なっている。また、富山県の定時制高校へ入学する生徒の4割は不登校経験者であり、コミュニケーション能力や基本的生活習慣が身に付いていない。保護者と子どもとのコミュニケーションが不足しがちである。また、自己肯定感をいかに高めるかも重要である。
 本校では、週3日間(午後)、カウンセラーの派遣を受けて、生徒が様々な悩みや進路等について相談できる環境を整えている。
 また、生徒には、自分で生きる力を身に付けさせ、卒業後に自立して生活できるようにしなければいけない。3年間で卒業可能であるとしても、内容が伴わないのは良くない。

(高校無償化の影響)

 定時制・通信制課程に通う生徒については、経済的に豊かではない家庭の生徒も多く、もともと授業料減免等を受けていた者が多いため、無償化によって大きな恩恵を与えられたとはそれほど考えていない者も多い。経済的負担から高校進学を諦めざるを得ない家庭の生徒への支援については、国全体で検討していかなければならない。

(教育課程における工夫)

 小学校から不登校がちの生徒もおり、基礎基本を十分身に付けさせるとともに、興味・関心を高める科目や行事を設定することが必要である。また、義務教育段階の教育内容とのつながりを如何に上手く保てるかにも気を配る必要がある。
 このほか、本校では、総合学習の時間を活用して、自分自身について考え、自分を表現する学習(科目:「わたしと出会おう」設定)にも取り組んでいる。

(特別な支援を要する生徒について)

 学習障害や発達障害を抱える生徒が増えているが、小学校や中学校からの情報伝達が十分ではない面がある。一応概略の情報は受け取れるものの、個々の生徒ごとの特性などについては、高校側からアプローチして把握する状況であり、人員の問題もあり苦慮している。
 こういった課題に教員のみで対応するには無理があり、スクールカウンセラーや相談員など、外部との連携が重要になってくる。学校と外部機関をコーディネートする人材が必要である。

(定時制という名称について)

 先ほど示したように富山県の定時制高校では「働きながら学ぶ」という生徒は4割を切り、本校でも同様な割合であることから、入学案内の際には、「単位制」であることを意識的にアピールするようにしている。新たな形態での学校という点で、単位制としてアピールする方がなじみやすく効果的である。

(今後の取組)

 今後は、生徒の実態やニーズ等を踏まえた指導を充実させるため、夜間定時制を学科改編し、学び直し等を支援する学科を設置することを検討している。 
 また、新たな学習システムとして、通信制の生徒の自主登校による学習を支援するため、「自主学習支援室(仮称)」を設置するとともに、学校生活に適応できていない生徒に対して、NPOや大学・医療機関等と連携し専門的な指導を行う「適応指導室(仮称)」を設置することを考えている。
 このほか、現在、地域の生涯学習の場として通信制において10の講座を開講しており、充実を図り、県の生涯学習カレッジ富山地区センターを併設し、富山地域の受講者や地元住民の交流のための場とすることとしている。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年10月 --