山形県立山辺高等学校 インタビュー概要

1.実施日

平成23年7月25日(月曜日)

2.インタビュー対象者

山形県立山辺高等学校 校長 堀英司 氏
山形県立山辺高等学校 教頭 奥山留美子 氏
山形県立山辺高等学校 教諭 大泉康 氏
山形県立山辺高等学校 教諭 影山敦司 氏

3.概要

(それぞれの学科の現状と課題について)

  •  福祉科は平成8年度に開設され、今年で15年目。県内唯一の福祉の専門高校、介護福祉士の養成高校として開設された。開設以来、介護職のみならず保健・医療・福祉、幼児教育そして高校の教員としての人材を輩出してきた。現在も教科「福祉」の専門学科として指導を展開している。その中でも介護福祉士の養成教育を行う「福祉系高校」として来年度に完成年度を迎える。介護福祉士の合格率が全国平均で50%のところ、平成20年度から合格率100%を維持している。教育活動の中でどのような職業観の育成を図っていくのか、介護の仕事を生きがいと感じる生徒に対して、どのような介護が良いのか自ら考えていく力を身に付けさせるのかが今後の課題である。学校では中学校を訪問して福祉科の魅力を伝えるなど、福祉科の人気の向上に取り組んでいる。
  •  食物科は近年の食育の関心の高まりからか、入試の倍率が高い。卒業と同時に調理師の資格を取得できるが、調理職の求人が少なく就職が課題である。食物科の進路については、進学と就職が半分ずつぐらいの割合である。
  •  看護科は平成14年度より専攻科を含め、5年一貫教育になった。1期生が卒業した平成19年度から、5年連続で国家試験の合格率100%を達成している。しかしながら、勉学の厳しさから中退する生徒もおり、生徒に対し全教職員が力を入れて「継続することの大切さ」を教育していくことが今後の課題である。

(福祉科の履修時間について)

  •  福祉系高校として、到達目標を達成すべく教育課程の編成を行っている。履修時間数を確保するため、本校では登校日数を増やし、7時限授業の週2回実施等創意工夫している。授業時間確保のために、生徒の生徒会活動、ボランティア活動、部活動に影響が出ているのも事実である。
  •  医療的ケアのカリキュラム導入について、今後介護福祉士の業務が拡大していくにつれ、履修単位の増加が予想される。平成25年度からの痰の吸引に係る増時間や指導体制については、本校として対応可能と考えているが、これ以上履修時間が増えるのであれば高校での介護福祉士養成は非常に厳しくなる。
  •  高校、専門学校、実務経験と多様な人材が現場で利用者の方々と関わることで福祉の現場は活性化していく。高校での介護福祉士養成教育を困難と結論づけるのではなく、高校で介護福祉士を養成する意義にもぜひ目を向けていただきたい。

(学科間のつながりについて)

  •  学科間の横のつながり、連携ができるよう、お互いの学科の生徒が認め合えるように工夫している。例えば、食物科は他の学科40名分の食事を作る。福祉科、看護科の生徒は学校祭で血圧を測るなどしている。また、地域と連携した取組には3学科の生徒が一緒に参加している。
  •  卒業したあとの現場では、いろいろな職種の人と連携して仕事を行う。学校では現場のミニチュアができればと考えている。近年は医師、看護師の医療職と介護職の線引きが変わってきており、連携を図れるようにしたい。
  •  平成19年度から平成21年度には目指せスペシャリスト(「スーパー専門高校」)事業を実施し、「独居高齢者(シルバーシングル)と共に生きるスペシャリストの育成」事業を福祉科、看護科、食物科の3科で実施した。3科が連携してそれぞれの役割をもって事業を進めることができ、大きな成果を上げることができたと考えている。

(教員養成、採用について)

  •  現状、福祉科では、高校教員(福祉)免許に加えて、現場経験、研修が必要になる。近年の介護福祉士養成課程を巡る制度改革で翻弄されており、教員をそろえるのが大変になっている。
  •  教員免許の修士化について、教員の質向上は大切であるが、修士化して現場経験を積まずに2年過ごさせるより、むしろ現場経験を積ませるべきと考える。そのためには教員定数を増やして欲しい。
  •  山形では大学卒業後新卒で教員になることは難しく、常勤講師を5~6年経験したあとに採用される教員が多い。生徒が減る中で採用が抑制されている。従来であれば中堅教員が若手教員を指導していたが、若手教員が少なくなり中堅教員がいつまでも若手のままで、教員の指導力向上に影響が生じている。
  •  県内で看護、福祉系の専門高校は本校だけであり、他の学校との教員の人事交流が難しい。その分、同じ教員が長年本校におり、就職、進学した生徒が教員を訪ねて頻繁に学校にやってくる。
  •  カリキュラムの改訂は、一刻も早く学校現場に連絡いただきたい。特に、現場の教員が日常の業務と並行して必要な研修を進めるためには、県教育委員会と連携しながらかなり早い段階で教員の研修を計画していく必要がある。本校では開設当初より医師講師や看護師講師を確保できているが、すべての学校で医師講師や看護師講師を確保できるとは限らない。

(高校授業料の無償化について)

  •  昨年度から実施されている高校授業料無償化で高校の授業料が無償となったため、保護者の授業料部分の負担がなくなっているが、依然として学校徴収金は各科ともにあるため、学校徴収金の納入手続き等がこれまでと同じように必要である。そのため、学校としての事務負担は変わっていない。授業料部分の負担がなくなったため、無償化前と比べて学校徴収金の未納者が少なくなった。
  •  また、授業料が無償となり、授業料の減免手続きはなくなったが、学校徴収金については、一部でこれまでと同じように減免手続きを行っている。減免手続きに要する学校の事務負担は授業料無償化前後で変わっていない。
  •  授業料がなくなったため、従来、県が負担していた授業料・学校徴収金の引き落としの手数料の県予算が削減されつつあり、今年度は引き落とし回数を減らした。このまま削減されると学校徴収金の引き落とし手数料を保護者に転嫁せざるを得ない。
  •  看護科の専攻科は無償化の対象外であるため、今後、専攻科も授業料無償化の対象にしてもらいたい。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年10月 --